著者
熊澤 茂則 中村 純 太田 敏郎 矢崎 一史 宮城 健 福本 修一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.35-42, 2010-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
19

健康食品素材として利用されているプロポリスは,ミツバチが植物の特定部位を集めてつくった樹脂状物質であり,採集される地域によりその含有成分が異なる.最近,未解明であった沖縄産プロポリスの起源植物が,分析化学と生物行動学的研究手法によりトウダイグサ科の常緑樹木オオバギと同定された.そして,このオオバギが高い抗菌活性と抗ガン活性を有していることも見いだされ,新たな有用植物資源としての可能性に期待がかけられている.
著者
辻本 久美子 太田 哲 藤井 秀幸 小松 満
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.3-24, 2022-07-20 (Released:2022-08-02)
参考文献数
60

世界各地の土壌水分を毎日観測する手法として, 水循環変動観測衛星GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計AMSR2による観測輝度温度を用いる手法がある. 本研究では,そのアルゴリズム全体の中で, 湿潤土壌の誘電率と体積含水率とを関連づけるモデルについて, 既存モデルの比較検討と室内実験による検証を行った. 特に,観測周波数や土性の違いが湿潤土壌の複素誘電率に与える影響に着目した. さらに,土壌水分特性と誘電特性の関連に着目し, Pedotransfer関数を用いて土壌水分特性に基づいて誘電率を推定する手法を提案した. Dobsonモデルに対してMironovモデルの適合範囲が広いこと, Mironovモデルによる吸着水の量と誘電率の値には他モデルとの差異が大きく疑問が残ること, 風乾時土壌水分量と吸引圧500 MPa下での水の誘電率を用いると 実験土壌に対する複素誘電率がよく再現できること,が示された.
著者
太田 陽子 海津 正倫 松島 義章
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-48, 1990-04-15 (Released:2009-08-21)
参考文献数
124
被引用文献数
56 53

This paper reviews studies conducted between 1980 and 1988 on relative sea level changes and coastal evolution during the Holocene in Japan. The Japanese Working Group of IGCP Project 200, on “late Quaternary sea level changes, ” compiled the two-volume “Atlas of Sea Level Records in the late Quarternary in Japan” in 1987, which included materials related to this topic, based on papers published since 1980. The group also compiled the “Middle Holocene Shoreline Map of Japan (1:200, 000), which demonstrated the location of the middle Holocene shoreline with numerous data on height and radiocarbon age representing the sea level of that stage, and with 15 insets, considered to be typical examples of various types of study. Numbers of papers by year in terms of research field and study area are summarized in Figs. 1 and 2. Several review papers on sea level study have been also published in the last several years, in addition to local studies.Relative sea level curves published in the past 10 years are shown in Fig. 3. The curve patterns show noticeable local or regional differences, reflecting tectonic factors with a different amount and character in each area. Some areas characterized by a rather late culmination age of the postglacial transgression contrast with most of the Japanese coast, which has a culmination age of ca. 6, 000 to 6, 500y.B.P. Two minor fluctuations of Holocene sea level which were pointed out by OTA et al. (1982), have been recognized in several areas; a eustatic origin for such fluctuation is most likely, judging by the nearly coincident occurrence of climatic fluctuation revealed by pollen analyses, molluscan assemblage analyses and submarine core data.The following topics are discussed in particular detail in this paper: 1) Progress of excavation on the Holocene lowland and coral reefs, in order to obtain systematic samples for identification of marine limits and samples for analyses of various fossils and for dating. 2) Holocene marine terrace study with special reference to coseismic uplift and volcanic activity. 3) Identification of the former sea level on the rocky coast. Barnacles and tube worms (Pomatoleios kraussii) as sea level indicators are discussed, including problems with accuracy of radiocarbon dating. 4) Problems concerning the recognition and accuracy of former shorelines in the large alluvial plain. 5) The significance of small drowned valleys as a suitable field for the reconstruction of sea level change. 6) Climatic fluctuation during the Holocene, with relation to sea level fluctuation. 7) Increased overseas studies on Holocene sea level change by Japanese scientists.
著者
太田 嗣人
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肥満による炎症とインスリン抵抗性の誘導にMCP-1-CCR2非依存性の未知のケモカインシグナルが関与している可能性がある。肥満モデルの脂肪組織では野生型マウス(WT)に比し、CCR5とそのリガンドの発現が増加していた。高脂肪食を摂取したCCR5欠損マウスは、耐糖能異常と肝脂肪蓄積に抵抗性を示した。肥満モデルの脂肪組織におけるCCR5+マクロファージ(ATM)細胞数は著明に増加していた。一方、肥満のCCR5欠損マウスははWTに比しATMの総数は減少し、M1からM2優位へとATM表現型の転換を認めた。肥満により脂肪組織ではCCR5+ATMの浸潤・集積が増加する。また、CCR5欠損によるインスリン抵抗性の減弱にATMの量の低下のみならず質的変化、つまりM1からM2へとダイナミックなATMの表現型シフトが寄与しうる。

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著者
太田正孝 著
出版者
宝文館
巻号頁・発行日
1927
著者
山内 仁 福田 忠生 小枝 正直 太田 俊介
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.11-18, 2021 (Released:2021-01-21)
参考文献数
11

In the Rescue Robot Contest (ResCon), rescue dummies, which is called as ‘Damiyan’, are employed for competition evaluation. Rescue teams are required to rescue Damiyan gently and quickly. In addition, it is also required to identify the signs that are presented, and these are the evaluation items. Therefore, Damiyan needs various sensors to quantify “neck bending”, “pressure on body”, “posture” and “impact” as evaluation indicators of gentleness. In addition, the functions of “presenting color”, “uttering sound” and “presenting two-dimensional code” are implemented as the presentation of signs to be identified. To achieve this, we have developed a new Damiyan that incorporates the microprocessor BlueNinja as a core system for sensing, communication, and overall system control. In addition, an airtight body was manufactured to measure the grip strength, which measures the pressure on the body. The body is molded using a 3D printer and flexible filaments, and the surface is coated with a solvent to ensure airtightness. By using this new Damiyan, we achieved stable operation and reduction of management operations. In this report, details of the concept, the policy and the process of developing this newer Damiyan are described.
著者
山内 良太 北村 哲也 大西 史峻 渡邉 清孝 小西 克尚 大村 崇 太田 覚史 森 拓也 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.416-421, 2018-04-15 (Released:2019-05-09)
参考文献数
10

38歳男性.1998年(26歳)から意識消失発作,高血糖による入院歴がある.難聴や知能低下も認めたことから代謝性疾患が疑われ,乳酸値の高値とミトコンドリア遺伝子3243点変異からMELAS(Mitochondrial myopathy,Encephalopathy,Lactic Acidosis,Stroke-like episodes)の診断に至った.当初より心電図や心臓超音波検査では心肥大の所見を認め心筋症の合併が疑われていた.心肥大の精査のため施行された心内膜心筋生検で変性したミトコンドリアを認めたことからミトコンドリア心筋症と考えられた.明らかな心不全症状は認めなかったが,心臓MRI検査では前壁,側壁,下壁に遅延造影とT2強調画像で高信号を認めた.その後数年間にわたり画像検査でのMELASによるミトコンドリア心筋症の心肥大進行の経過を追うことができた.画像診断を用いた心不全を発症する前の早期からのミトコンドリア心筋症の報告は他に認めず報告する.
著者
宮原 謙一郎 若月 康次 坪島 功幸 太田 大樹 片野坂 公明 水村 和枝 西条 寿夫 田口 徹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12243, (Released:2022-08-05)
参考文献数
25

【目的】線維筋痛症は広範囲の痛みを主訴とする慢性疾患であるが,痛みの主たる発生源である筋組織内の変化は十分に特徴づけられていない。本研究では,線維筋痛症モデルラットを用いた組織学的解析からこの点の解明を試みた。【方法】7~9週齢の雄性SDラットに,生体アミンの枯渇剤であるレセルピンを投与し線維筋痛症モデルを作製した。モデル動物の下腿筋標本において,壊死線維や中心核線維の有無,筋湿重量や筋線維横断面積の変化を観察・定量化した。【結果】モデル動物では,壊死線維や中心核線維は観察されなかったが,筋湿重量が顕著に低下し,筋線維横断面積が顕著に減少することがわかった。【結論】本研究ではレセルピン投与による線維筋痛症モデルラットの筋内に生じる組織学的変化を明らかにした。得られた結果は難治性疼痛である線維筋痛症のメカニズム解明に繋がる基礎的知見であり,同疾患に対する理学療法アプローチの確立に有用であると考えられる。
著者
太田 幸志 原田 和弘 増本 康平 岡田 修一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12221, (Released:2022-08-05)
参考文献数
40

【目的】他者との運動実施が高齢者の運動継続に望ましい影響を与えるかと,この影響の強さは基本属性や外向性(性格の1側面)によって異なるかを検証した。【方法】神戸市灘区で計3回の質問紙調査(事前,1年後,3年後)を実施した。1年後の運動継続は434名を,3年後の運動継続は380名を分析対象とした。【結果】重回帰分析の結果,事前調査で他者と運動を実施していることは,1年後と3年後の運動継続へ有意に影響していなかった。他者との運動実施と基本属性や外向性との交互作用項のうち,仕事の有無との交互作用が3年後の運動継続へ有意に影響していた。層別解析の結果,統計的に有意でなかったが,仕事をしている者のほうが,他者との運動実施による好影響を受けやすい傾向にあった。【結論】本研究では,仕事状況によって影響の強さは異なる可能性があるものの,他者との運動実施が運動継続に及ぼす影響は限定的であることが示唆された。
著者
河合 結実 橋立 博幸 太田 智裕 山根 佑典 中筋 祐輔
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12194, (Released:2022-08-09)
参考文献数
30

【目的】脊髄損傷後に両下肢の痙縮と歩行障害を認めた症例に対する振動療法を併用した運動療法の経過について記述することを目的とした。【症例】脊髄損傷受傷から12週後の回復期病院入院時,歩行に全介助を要し,両側足関節底屈筋の痙縮modified Ashworth scale(以下,mAs)2,足関節背屈の関節可動域(以下,ROM)右−10°,左−20°であった。【結果】足関節底屈筋の痙縮に対する振動療法を併用した運動療法を入院後16週間行った結果,足関節底屈筋mAs右1+,左1,両側足関節背屈ROM 5°へ改善し,補装具を用いた軽介助歩行が可能となった。入院16週後以降も運動療法を継続した結果,入院24週後の退院時では,両側足関節底屈筋mAs 1へ改善し,補装具を用いずに見守り歩行が可能となった。【結論】脊髄損傷後の本症例では,振動療法を併用した運動療法が痙縮,ROM,歩行能力を改善させるために有益であったと考えられた。
著者
岩室 史英 舞原 俊憲 太田 耕司 戸谷 友則 岩室 史英
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では、広視野の主焦点を有するすばる望遠鏡に、多天体ファイバー分光器を開発して搭載すること、およびそれを用いて、本研究題目にかかげた「初期銀河と原始クェーサーの形成過程の研究」を行っていくことを目標にして、FMOSと呼ばれる新しい機能を備えた分光器システムの開発的研究を進めてきた。この分光観測装置は、可視域の0.9ミクロン帯から1.8ミクロンまでの近赤外線スペクトルを、約400本の光ファイバーを用いて大型分光器に導入するもので、研究計画では、赤方偏移の値が2〜5以上の比較的宇宙のはじめに存在している銀河とクェーサーなどを、観測目標にしながら、予定されていた試験観測期間にそれらの形成過程の糸口を得ることを想定していた。実際にFMOSを搭載する補正光学系や姿勢制御機構を用いた試験観測を2度実施したが、主焦点制御機構の不具合や、複雑な分光器システムの調整に予想以上の時間が必要となったため、銀河やクェーサーをターゲットにした試験観測自体は少し実施時期が遅れてきている。しかし、広視野かつ多天体分光機能をもつFMOSに対する今後の研究全般に対する期待は大きく、この装置をつかった色々な研究課題の検討もまた、予想以上に進んできた。したがってこの研究成果報告では、FMOS装置の開発的研究の進捗に関する詳しい報告と、その装置を大型望遠鏡の主焦点に搭載して行うことのできる非常に先進的な観測の計画内容についての報告を主に行う。具体的には、開発的研究面では、冷却分光器の低温性能、光学系全体としての結像性能、検出器の特性とデータ取得制御、アーカイブシステムとのインターフェースなど、また観測計画の検討の面では、初期銀河の形成過程の系統的研究、ダークエネルギー探査プロジェクトの検討、などがあり、平成19年度からの本格的な観測的研究が期待できる。
著者
太田 明廣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.297-300, 2002-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

天然物として不快臭源から芳香物質まで多様なにおい物質が知られている。不快臭源としては腐敗アミン, 含硫物質が代表的で, また, 最近では加齢臭も話題になっている。これら含硫物質や加齢臭源の化学構造について説明する。一方, 芳香物質としては精油, 動物性香料が知られている。特に植物の約80科に含まれる精油はその成分と共に薬剤, 食品, 化粧品などに広い用途が見られる。これら天然におい物質の生成についてふれ, 更に, 化学構造とにおいとの関係についても述べる。
著者
戸谷 友則 太田 耕司 岩室 史英 秋山 正幸 田村 直之
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

現在の最新宇宙論における重要問題はいくつかあるが、その最大のものは「宇宙のダークサイド(暗黒面)」という言葉で以下の三つにまとめることができる。すなわち、(1)宇宙を加速膨張させる「ダークエネルギー」、(2)宇宙の重力を支配する「ダークマター(暗黒物質)」、そして(3)宇宙の晴れ上がりから最初の天体形成と宇宙再電離をつなぐ「ダークエイジ(暗黒時代)」である。その中でも、ダークエネルギーは現代物理学の根源的な改訂につながる可能性すら秘めた、とくに重大な問題として認識されている。すばる望遠鏡の新観測装置FMOSを用いたバリオン振動探査計画により、このダークエネルギーに迫る事ができると期待されている。本研究の目的は、このバリオン振動探査計画のサーベイデザインを検討し、FMOS完成の際にすみやかに観測提案書を作成する準備を進める事にある。この目的のため、戸谷を中心に分光ターゲット銀河選定の手法や実現性を詳細にしらべた。「すばるディープフィールド」や、「すばるXMM-Newtonディープフィールド」と呼ばれる領域のすばる望遠鏡を中心とする膨大なデータをもとに、バリオン振動探査に使用できる銀河が十分に存在するかどうかを精査した。その結果、バリオン振動探査に十分な数の銀河があり、また、イメージングサーベイデータから測光的赤方偏移計算の手法により効率よく選択できる事も判明した。また、メンバーがハワイに集まってミーティングを開催し、FMOS装置に対する理解を深めるとともに、今後の問題点を洗い出して計画の推進に役立てた。国際的な注目も高く、国際会議で進捗状況を報告した。