著者
嘉瀬 文孝 太田 智裕 太田 宏樹 青山 寿美香 大内 和真 星 晴彦 飯田 泰明
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.250-256, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
15

目的と方法:抗原定量検査(LUMIPULSE SARS-CoV-2 Ag)は,SARS-CoV-2の検査において無症候性患者のスクリーニング検査,および退院時の陰性確認検査として使用することが可能である。今回,我々はCOVID-19と診断された入院患者のうち,同時に2本の鼻咽頭ぬぐい液検体が採取された患者(n = 156)を対象に,抗原定量検査とRT-PCRを比較し,抗原量による陰性確認と感染力の推測について検討を行った。結果:抗原定量検査の陽性一致率は97.4%(111/114),陰性一致率は42.9%(18/42),全体一致率は82.7%(129/156)であった。陰性確認では,RT-PCR陰性に相当する抗原量のカットオフ値は8.82 pg/mLであった。感染力の推測では,Ct値35以上に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。考察:COVID-19患者の陰性確認における抗原定量検査のカットオフ値は8.82 pg/mLであり,メーカーが推奨しているカットオフ値1.34 pg/mLよりも高い結果であった。そのため,COVID-19患者の陰性確認において,1.34 pg/mLをカットオフ値とした場合,抗原定量検査はRT-PCRと比較して陰性になるまで時間を要する可能性が示唆された。また,ウイルスの感染力の推測では,Ct値35以上に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。抗原量による感染力の推測においては今後,ウイルス培養を含めたさらなる検討が必要であると考える。
著者
太田 修司 吉川 衛 庄司 和広 谷藤 泰正
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.360-364, 2006-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23

鼻内処置ならびに経鼻挿管治療において, 出血予防目的でエピネフリンが一般的に用いられている。しかしながら, 現在までに鼻内塗布血管収縮薬について有効濃度についての報告は少ない。今回我々は, 出血予防で鼻内処置に使用するエピネフリンおよびフェニレフリンの使用至適濃度について比較検討したので報告する。対象は鼻, 副鼻腔疾患の既往がなく, 1週間以内に上気道炎を罹患していない24-32歳 (平均 : 26.3±3歳) の健常成人ボランティア9名 (男性5名, 女性4名) 。測定は0.02%-0.001%エピネフリン, 0.5%および0.1%塩酸フェニレフリン, 及び対照用生理的食塩水を用い, 各濃度別薬剤2mlを染みこませたガーゼを被験者の右鼻腔内に3分間挿入した。その後内視鏡による貼付処置前後の色調及び粘膜収縮の観察と, 通気度計による通気度 (圧・流量曲線) 測定を行った。結果は, 内視鏡による粘膜色調, 収縮変化観察において, 対照を除く各群において収縮および下鼻甲介粘膜に貧血様の蒼白色調変化を認めた。通気度改善率の検討では対照群 (生食) との比較において0.02%, 0.01%エピネフリン群及び, 0.5%フェニレフリン群問に有意な通気改善を認めた。経鼻挿管に使用する出血予防血管収縮薬至適濃度は0.01%エピネフリンおよび0.5%フェニレフリンで効果があると考えられる。
著者
太田 信子 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.339-346, 2013-09-30 (Released:2014-10-02)
参考文献数
10
被引用文献数
3

The Cambridge Prospective Memory Test (CAMPROMPT)原版を原著者らの許可を得て翻訳して,日本版を作成し,健常者242 名および脳損傷者57 名に実施した。その結果から,検査法の信頼性を検査者間信頼性,平行検査信頼性,内的整合性から検討した。検査者間信頼性について,1 名の評価者と4 名の採点者との一致率 (98.2%) および相関 (1 名はSpearmanʼs ρ=0.986,3 名はそれぞれSpearmanʼs ρ=1.000) から,採点方法の信頼性が高いことが示された。平行検査信頼性について,バージョン間の相関(Spearmanʼs ρ=0.537)から,成績はバージョンの影響を受けないことが示された。内的整合性について Cronbachʼs α は脳損傷群 0.849 と健常群 0.817 から,対象によらず一貫して展望記憶機能を評価することが示された。4 つの年齢別に標準値の作成により,標準化を行った。信頼性の検討を通じて,CAMPROMPT 日本版は,十分な信頼性を有する評価法であることが確認された。
著者
吉村 英翔 太田 光祐 田渕 研
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
都市有害生物管理 (ISSN:21861498)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-9, 2021 (Released:2022-06-20)
参考文献数
18

オオスズメバチ Vespa mandarinia の個体数と植生タイプおよびその面積との関係を利用して,越冬メス(営巣前の女王)とワーカーの個体数予測モデルを作成した.越冬メスの個体数は,半径 900 m 以内の天然林や二次林を含む森林面積によって正の影響を受けた.一方,ワーカー個体数は半径 300 m 以内の森林と針葉樹林で構成されている植林地と正の関係があり,牧草地とは負の関係にあった.この有効空間スケールと植生タイプ,その面積の違いは,越冬メスとワーカー間で採餌活動の範囲や意図が異なることを反映していると考えられる.ワーカーの個体数予測モデルを用いて,東北農業研究センター周辺地域(盛岡市西部と滝沢市)におけるオオスズメバチの生息域を地図化した.このような地図は,将来,蜂による刺傷被害の危険地域を示すハザードマップの開発につながるだろう.
著者
太田 伸幸
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

対人関係の4つの型(協同,競争,個人,ライバル)に分類し,この基準に基づいた尺度を作成した.次に,実際にライバルが存在する者を対象とした面接調査を実施し,ライバル認知の成立には社会的比較の対象になることと,双方向のライバル関係の成立には一定以上の親密性が必要であることを示した.そして,ライバルの概念に関して,日本の学生およびアメリカの学生を対象にしたWeb調査を実施した.因子分析を用いた検討の結果,日本人とアメリカ人とでは,競争に対する価値観が異なることが示唆された.
著者
太田 康晴 田口 昭彦 秋山 優
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重度の糖尿病をきたすWolfram症候群は、WFS1遺伝子の変異により発症する。我々は、WFS1欠損マウスの膵β細胞において時計遺伝子ネットワークの出力部分の転写因子に異常がある(DBP活性の低下)ことを見出した。DBP活性が膵β細胞特異的に抑制されるような遺伝子改変マウスは顕著なインスリン分泌不全を伴う耐糖能障害を呈していた。正常な膵β細胞は、摂食が始まる時間に備えてインスリンが速やかに分泌されるような準備状態を作るが、DBP活性が抑制されている膵β細胞はこのような準備が出来ないことが示唆された。つまり膵β細胞における体内時計の異常はインスリン分泌不全さらには糖尿病を引き起こす可能性が高い。
著者
竹森 康弘 澤武 紀雄 里村 吉威 太田 英樹 渡辺 弘之 河上 浩康 岡井 高 高橋 豊 磨伊 正義 服部 信 秋山 高儀 永川 宅和 橋本 琢磨
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2386-2392, 1987 (Released:2007-12-26)
参考文献数
24
被引用文献数
6

各種消化器系疾患 (悪性疾患455例, 良性疾患303例) の血清CA 125値を測定し, 臨床的意義を検討した. 膵癌(66%), 肝細胞癌(51%), 胆道癌(47%)の順で高い陽性率がみられた. CA 19-9, DU-PAN-2, CEA陰性の膵癌でCA 125陽性例がかなりみられた. 胃, 大腸癌での陽性例はほとんど stage IV以上または非切除例で, 特に腹膜転移群では他のマーカーに比して明らかに陽性率が高かつた. 一方, 良性疾患での偽陽性率は一般に低かつたが, 腹水を有する肝硬変, 劇症肝炎, 重症の膵炎では本抗原の上昇がみられ, その増減は腹水の消長に一致していた. 以上より, 血清CA 125は膵, 胆道癌の診断のみならず, 腹水や腹膜転移の有無を把握するのに有用と考えられた.
著者
塩野 裕之 桑原 修 前田 元 太田 三徳 宮崎 実
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.773-778, 1994-11-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
10

国立療養所刀根山病院外科において縦隔郭清を伴う肺癌切除術 (以下, 肺癌切除術) 後の乳糜胸を10年間で8例経験した.4例は保存的に治癒したが, 残る4例は再開胸術を要した.後者では再開胸術前に脂肪を経口投与することにより, 胸管損傷部位が明らかとなった.そこで術後乳糜胸予防を目的として, 麻酔導入時に経鼻胃管より脂肪 (牛乳) を注入し, 胸管の流量を増加させ, 縦隔郭清時および術野洗浄時に胸管と乳糜瘻が容易に視認できるようにした.最近14ヵ月間の肺癌切除症例55例全例に対してこの方法を併用したところ, 術後乳糜胸の発症は認めず, また注入に伴う合併症はなく, 乳糜胸予防に有効と思われた.
著者
松井 彦郎 太田 英仁 内田 要 林 健一郎 犬塚 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.232-238, 2020-10-01 (Released:2020-12-04)
参考文献数
10

背景:小児重症例の約半数を占めている小児循環器疾患の集中治療は歴史的に小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた一方で,社会的に集中治療の専門性整備の必要性が増加している.目的:小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にする.方法:本研究では2019年10月現在の公的ホームページに掲載されている利用可能の専門医・研修施設・厚生労働省保険算定・人口統計の情報を用いて,全国における①小児科医・小児循環器医の集中治療専門医取得状況・分布,②小児循環器診療施設の集中治療専門研修施設状況,③集中治療室管理料算定数と専門医数の比較を行い,小児循環器領域における集中治療専門性の課題を描出した.結果:集中治療専門医を有する医師は小児科専門医の0.6%(99/16,545名),小児循環器専門医の1.1% (6/538名)であり,地方21県においていずれも不在であった.小児循環器関連施設(170施設)中,集中治療専門医研修施設認定は56%(96/170名)と低値であり,大学病院・総合病院においては専門医取得困難な環境が推察された.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では都市部に医師が多く,小児特定集中治療室管理料は全国の約20%の普及にとどまるのみであった.結語:日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.
著者
太田 敬子
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.327-366,490-49, 1992-03-20 (Released:2017-11-29)

The Mirdasid dynasty ruled Aleppo and its region in northern Syria from 415 A.H./1025 A.D. to 473 A.H./1080 A.D.. The Mirdasid was a family of the Kilab tribe (Banu Kilab) which belonged to the northern Arab tribes. Banu Kilab, taking advantage of political disorder caused by the decline of the 'Abbasid's rule, had extended their influence into the Aleppo region. The Mirdasid principality was founded upon their strong military power. This paper aims to investigate the first period of the Mirdasid dynasty on the point of foreign policy and influence in the international relations. From the middle of the tenth century, the Aleppo region had been threatened by two powerful foreign states; the Fatimid Caliphate in Egypt and the Byzantine empire, both of which aimed to annex this region. Under such circumstances, Salih b. Mirdas, the first prince of the Mirdasid dynasty succeeded in gaining control of Aleppo city with support of a Syrian Arab alliance. To extend their power, the Mirdasides made use of the balance of power between these Great Powers and their limited ability to advance their territorial ambitions into Syria. The principal approach to their foreign policy was to negotiate with each of them, receive their recognition for possession of Aleppo, and then nominally establish an independent state under their patronage. However, before receiving their recognition, the Mirdasides had to engage in some battles with them. As a result, Thimal, the third prince, succeeded in obtaining recognition as the ruler of Aleppo from both of the Great Powers and stabilized the supremacy of the Mirdasid dynasty in the Aleppo region. However, the author has also ascertained that this success owed much to the internal affairs of the Fatimid caliphate and the Byzantine empire and changes that occured in the diplomatic relations between them. The author also examines concretely the position of the Mirdasid princes in international relations. As a result, she has found that their subordinate posture in the diplomatic negotiations did not mean a dependent character. It should be noted that recognition from foreign powers to be the governor of Aleppo was indispensable for the Mirdasid princes to achieve stability within their states ; and to receive such recognition was the principal purpose of their foreign policy.
著者
坂上 伸生 渡邊 眞紀子 太田 寛行 藤嶽 暢英
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.24-32, 2004-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Sclerotium grain is the resting body of ectomycorrhizal fungi found in forest soils. A melanic-spherical shape in approximately 1-2mm diameter characterizes the external feature of the grain, and a hollow structure with honeycomb transverse wall appears inside the grain. In our previous studies, we reported a high aluminum concentration inside sclerotium grains and suggested the close relationship between the status of active aluminum and the distribution of these grains in Andosols (Watanabe et al., 2001; 2002). Here we examined the chemical properties focused on active aluminum and carbon in several nonallophanic Andosols under forest vegetation for further discussions on the regulating factor of the distribution of the sclerotium grains. In each studied soil profile, the mean weight of sclerotium grain (mg grain^<-1>) had a tendency to increase with the content of exchangeable aluminum, content of total organic carbon and nitrogen, carbon content of humic acid extracted from soils. The ratio of Alp to total organic C(Al_p/T-C) showed a strong negative correlation between the mean weight sclerotium grains regardless of profiles. The bonding ratio of carbon and aluminum in soils was assumed to be one of the factor influencing the development of sclerotium grains.
著者
太田 直斗 相澤 裕紀 厳島 行雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-24, 2020-08-31 (Released:2020-09-24)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

Rosch et al.(1976)をはじめとするオブジェクト認知に関する先行研究では,上位カテゴリー(文具),基本カテゴリー(ペン),下位カテゴリー(赤ペン)というカテゴリーの階層構造において,基本カテゴリーが最初に認識されることが主張されてきた.しかし,そのような先行研究では,「機能」という上位概念がどのように認識されるのかという問題は検討されてこなかった.本研究では,機能カテゴリー(切る)が,オブジェクトの認識システムにおいてどのような役割を担うのかについて,概念へのアクセスの速さに着目して検討を行った.実験1, 2では機能カテゴリーによるオブジェクトの認識が上位カテゴリーよりも速く行われることを明らかにした.RSVPによる検出課題を行った実験3では,機能カテゴリーと基本カテゴリーの検出成績(d’)の差は有意ではなかったが,機能カテゴリーは上位カテゴリーよりも検出成績が優れることが明らかとなった.これらの結果は,機能カテゴリーはオブジェクトの認識の初期段階で認識可能であり,人工オブジェクトを認識するうえで重要な役割を担う概念であるということを示唆している.