著者
小島 弥生 太田 恵子 菅原 健介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.86-98, 2003
被引用文献数
20

人は自分の自己呈示的行動に対し,他者から何らかの評価を受けることを期待する.その際,期待する評価の方向性に個人差があり,自己呈示方略に影響を与えていると考えられる.本研究では菅原(1986)をふまえ,他者からの肯定的な評価の獲得を目標としやすい「賞賛獲得」と,否定的な評価の回避を目標としやすい「拒否回避」の2つの独立した欲求を想定し,その強さを測定する尺度の作成を試みた.研究1では,賞賛獲得欲求と拒否回避欲求が独立した因子として抽出され,2つの欲求尺度の信頼性,併存的妥当性が検証された.研究2では,賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の強さによって他者からの評価的フィードバックへの情緒的反応が異なることが示され,尺度の構成概念妥当性が支持された.研究2の結果から,2つの欲求の概念により,他者からの評価が自己概念とは異なるものであった場合の対処方略についても説明できる可能性が示された.このことから,賞賛獲得欲求・拒否回避欲求の概念が,自己呈示と個人の社会的適応の問題をはじめとする様々な社会的行動を考える上での重要な枠組みを提供し得ることが示唆された.
著者
江尻 愛美 河合 恒 藤原 佳典 井原 一成 平野 浩彦 小島 基永 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.125-133, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
25

目的 本研究は,都市部の地域在住高齢者における社会的孤立の予測要因を縦断的に明らかにし,その予防策を検討することを目的とした。方法 2012年10月1日時点で東京都板橋区の9町丁目に在住する65歳から85歳の高齢者7,015人を対象として,郵送法による質問紙調査を行った。回答が得られた3,696人に対し,2014年に再度質問紙を送付し,2,375人から回答を得た。孤立は,「別居家族や友人等との対面・非対面接触頻度が合計で月2,3回以下」と定義した。その他の調査項目は,2012年の性,年齢,健康度自己評価,現病歴,手段的日常生活動作(IADL),外出頻度,団体参加頻度,家族構成,主観的経済状況とした。孤立の予測要因を検討するため,上記の調査項目と,2014年の孤立の有無との関連を,t検定,カイ二乗検定およびロジスティック回帰分析で検討した。結果 孤立に関してデータが完備した1,791人中,2014年の孤立者は348人(19.4%),非孤立者は1,443人(80.6%)だった。多変量のロジスティック回帰分析の結果,男性(調整オッズ比,95%信頼区間:1.88,1.41-2.50),加齢(1歳増加)(1.03,1.01-1.06),団体参加頻度が週1回以上の者と比較して,月1~3回の者(1.62,1.04-2.53),主観的な経済状況が苦労していない者と比較して,苦労している者(1.67,1.20-2.32),2012年の非孤立者と比較して,孤立者(10.24,7.60-13.81)と,孤立状態不明者(8.15,3.76-17.67)は,孤立の発現率の高まりと有意に関連していた。また,ベースライン時に孤立していなかった者において,男性(2.39,1.57-3.64),健康度自己評価が非常に健康である者と比較して,健康でない者(3.99,1.33-11.94)は,2年後に新たに孤立する可能性が有意に高かった。結論 都市高齢者の孤立を予防するためには,社会活動への定期的な参加が有効である可能性があり,孤立の危険性の高い高齢男性に対して活動への参加促進を図っていくことが効果的であると考えられた。
著者
恒次 祐子 芦谷 浩明 嶋田 真知子 上脇 達也 森川 岳 小島 隆矢 宮崎 良文
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.347-354, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

5種類の味と香りの異なるチョコレートに対する主観的快適感と被験者の性別およびパーソナリティの関係を検討したところ, 以下の結果が得られた.1) 女性群においては,i) チョコレート全体に対する快適感が男性群よりも有意に高いこと, ならびに個別のチョコレートについては, 苦みを強くしたチョコレートにおいて快適感が男性群よりも有意に高く, オーク材抽出物を添加したチョコレートにおいても高い傾向にあることが認められた.ii) 快適感に対する男性性ならびに女性性の有意な正の影響が認められた.2) 男性群においては,i) 快適感に対するタイプA型傾向の有意な正の影響が認められ, 特性不安の有意な負の影響が認められた.3) チョコレート別の快適感とパーソナリティとの関係について,i) 男性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートの快適感と女性性との間に有意な正の相関が認められた.ii) 女性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートならびに甘みを強くしたチョコレートの快適感と男性性との間に有意な正の相関が認められた.以上により, チョコレートの快適感に評価者個々人のパーソナリティが影響を与えていることが明らかとなった. 今後個人の価値観や好みを重視したチョコレートの創造を検討していく上で, 有用な示唆を与えるものと考えられる.
著者
加藤 雅大 奥川 雅之 小林 義光 小島 昇
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第54回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.24, 2011 (Released:2012-03-09)

本研究では,科学館等の展示物を説明するツアーガイドロボットの開発を目的としている. ツアーを行う際に,子供たちの安全を確保することが重要である. 本論文では,サービスロボットの安全性確保を目的とした自己復元機構を有する倒立振子型移動ロボットの段差および傾斜路走行問題に対して,空気圧シリンダによる重心移動制御システムを導入し,その有効性について検討する.
著者
氷見 徹夫 高野 賢一 山下 恵司 小笠原 徳子 正木 智之 小幡 和史 堤 裕幸 小島 隆 一宮 慎吾 澤田 典均 横田 伸一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.239-244, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
7

粘膜防御機構は自然免疫の最前線であり,上皮細胞に加えて免疫系細胞などを含む複合的なシステムで構築されている。耳鼻咽喉科領域では扁桃・アデノイドに代表される粘膜関連リンパ装置は,その抗原捕捉機構を駆使して,免疫記憶の形成と特異的抗体産生機構に関与している。一方,上気道の最前線である鼻粘膜もまた抗原捕捉に伴う免疫反応を行っているとともに,ウイルス・細菌感染やアレルギー炎症の場としても重要である。われわれは,扁桃やアデノイド,そして鼻粘膜の上皮についての研究を行い,機械的バリアを含む自然免疫の新しい概念を提唱してきた。ここでは,われわれの研究より得られた知見をもとに,扁桃,鼻粘膜の基本的な免疫臓器としての機能解析と,それぞれの類似性・相違性,自然免疫・獲得免疫での位置づけについて言及する。
著者
中山 信弘 田中 辰雄 藤本 由香里 白田 秀彰 大野 幸夫 今村 哲也 金子 敏哉 蘆立 順美 潮海 久雄 横山 久芳 前田 健 上野 達弘 島並 良 寺本 振透 小島 立 福井 健策 野口 裕子 三村 量一 桶田 大介
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

創作・流通・利用をめぐる環境の変化に対して現行著作権法の規定は、著作物に関わる多種多様な利害を適切に調整するためには硬直的に過ぎるとの視点にたち、著作権・著作者人格権の内容と制限に係る解釈論・立法論上の提言と、制度設計の基礎となるべき実証的・理論的な分析手法を提示した(これらの成果を論文集『しなやかな著作権制度に向けて」として刊行する予定である)。また出版者の権利のあり方に関する政策提言、著作権と刑事罰の運用に関する共同声明、シンポジウムの開催等、社会に対する情報発信・提言を積極的に行った。
著者
藤江 雄太郎 小島 由香 長屋 俊
出版者
学術文献普及会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.34-43, 2015

<p>今日世界中で数多くのデジタル化資料が無料公開されている。本稿では,これらの資料の発見性を高める方策を検討するため,NACSIS-ILLのログに注目し,分析を行った。ILLログのうち,無料で公開されているデジタル化資料が利用できるという理由で謝絶に至ったログを抽出,案内されている資料を調査した。その結果,無料デジタル化資料はWeb上の広い範囲に散在し,特に国内では60%程度がNDLSearch・CiNii Articles・J-GLOBAL・J-STAGEの各サイトに加えて検索エンジンで検索すれば発見可能な資料であることがわかった。また,これらのサイトはメタデータ連携が部分的で,収録状況の詳細が明示されていないことがわかり,発見性低下の一つの要因になっていることが示唆された。</p>
著者
藤江 雄太郎 小島 由香 長屋 俊 フジエ ユウタロウ コジマ ユカ ナガヤ シュン Fujie Yutaro Kojima Yuka Nagaya Shun
出版者
学術文献普及会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.34-43, 2015-08

今日世界中で数多くのデジタル化資料が無料公開されている。本稿では,これらの資料の発見性を高める方策を検討するため,NACSIS-ILL のログに注目し,分析を行った。ILL ログのうち,無料で公開されているデジタル化資料が利用できるという理由で謝絶に至ったログを抽出,案内されている資料を調査した。その結果,無料デジタル化資料はWeb 上の広い範囲に散在し,特に国内では60%程度がNDLSearch・CiNii Articles・J-GLOBAL・J-STAGE の各サイトに加えて検索エンジンで検索すれば発見可能な資料であることがわかった。また,これらのサイトはメタデータ連携が部分的で,収録状況の詳細が明示されていないことがわかり,発見性低下の一つの要因になっていることが示唆された。 / There is now a multitude of digitizedmaterials that have beenmade available for free around the world. In order to consider measures to improve the discoverability of these free resources, the authors have analyzed the transaction logs from NACSIS-ILL logs. The authors surveyed the interlibrary loan transactions where the request was cancelled because an item was freely available to see what types of materials were requested. As a result, the authors found that the digitized materials are widely-scattered on the web and of particular significance approximately 60% of the domestic digitized materials are discoverable using the search engines and following services: NDL Search, CiNii Articles, J-GLOBAL, and JSTAGE. While there is a partial linkage between the metadata existing in each of these sites, it is not possible to see detailed information about the contents and that fact contributes to the decreased discoverability.
著者
小島 道裕
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.180, pp.107-128, 2014-02-28

洛中洛外図屏風歴博甲本は、現存最古の洛中洛外図屏風として知られているが、制作された目的や、発注者については明らかでなく、作者についても定説を見ない状況が続いていた。これに対して筆者は、描かれた事物の分析によって、室町幕府の実権を握る細川高国が、将軍足利義晴のために御所を自邸の付近に造り、家督を嫡子稙国に譲ったことを契機として、絵師狩野元信に発注した、という仮説を立てた。しかし、発表後に、これに対する批判も出されたため、今回の共同研究での成果も踏まえて、それらについて検討を行なった。描かれた将軍御所が何であるかは、年代や制作目的の鍵となる問題だが、筆者が想定したとおり、細川高国が造った「柳の御所」であることが、文献史料の再検討から確定し、発注者は、細川高国ないしその周辺であることが明らかとなった。作者については、土佐派とする説は積極的な根拠がなく、狩野松栄とする説も時代的に無理があって、画風からも歴史的背景からも、美術史のこれまでの通説通り、狩野元信周辺に求めるのがやはり妥当である。筆者の説を否定する立場の黒田日出男氏は、この間いくつかの論考を発表しているが、結果的には筆者の説とほとんど変わらないものとなっており、異なる部分については黒田氏の方が誤っていることを指摘した。筆者の解釈や記述にも誤りや不十分な点があったが、本共同研究をはじめとするこの間の研究の進展で、総体的には学界としての定説に近づいていると言える。
著者
小島 聡子
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-41, 2013-05

近代は「言文一致体」・「標準語」を整備し普及させようとしていた過渡的な時代である。そのため,当時,それらの言語とは異なる方言を用いていた地方出身者は,標準語を用いる際にも母語である方言の影響を受けた言葉づかいをしている可能性があると考え,近代の東北地方出身の童話作家の語法について,彼らの言葉づかいの特徴と方言との関連について考察した。資料としては,宮沢賢治の『注文の多い料理店』,浜田広介の『椋鳥の夢』を全文データ化してコーパスとして利用した。その上で,文法的な要素に着目し,格助詞・接続助詞等の一部について,用法や使用頻度・分布などを既存の近代語のコーパスと比較し,その特徴を明らかにすることを試みた。また,『方言文法全国地図』などの方言資料から,彼らの言葉づかいと方言との関連性を探った。その結果,格助詞「へ」の用法・頻度については,方言の助詞「さ」の存在が関連している可能性があることを指摘した。また,接続助詞の形式,限定を表す表現などにも方言からの影響がある可能性を指摘した。
著者
小島 毅
出版者
青土社
雑誌
現代思想
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.p102-109, 1991-11
著者
小島 伸俊
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.264-269, 2002-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1 4

色再現評価用標準物体色分光データベース (SOCS) を用いて, アジア人の素肌色の分光反射率の特徴解析を行った. 素肌の分光反射率は3つの主成分で表現できること, 化粧用ファンデーションの主成分とは異なることを確認した. また, 分光反射率の違いが, 顔色の見えと印象に大きな影響を及ぼすことを実験的に示した. 分光情報は, 色素沈着部位の強調画像化, 色素沈着の深さ分布の推定, 肌の構成色素の分離に対しても非常に有効であった.
著者
楠見 孝 米田 英嗣 小島 隆次
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.415-424, 2008
被引用文献数
2

本研究は,教育用の3次元仮想空間オンラインチャットコミュニケーション・システムにアバターの表情機能を導入して,ユーザの会話に対する動機づけや相手の感情理解の精度に及ぼす効果とユーザビリティの評価に基づくシステムの改良を検討した.実験1では,15組の大学生ペアが,スマイリー入力表情システムと表情なしシステムの両方を用いて英語でチャットを行い,ユーザビリティを評価した.その結果,大学生のユーザビリティ評価においては,スマイリー入力表情システムの表情なしシステムに対する優位性を示すことはできなかった.そこでこのユーザビリティ評価に基づいて,スマイリー入力表情システムをアイコン入力表情システムに改良した.実験2では,16組の大学生ペアが,アイコン入力表情システムと表情なしシステムの両方を用いて日本語でチャットを行い,相手の感情を推測した.参加者の感情の推測はアイコン入力表情システムの方がより正確であった.最後にコミュニケーション・システムの改良に関する今後の課題を検討した.