著者
中山 晴夫 小島 敏明 草野 昌男 遠藤 和則 高橋 雅春 須貝 吉樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.550-557, 2006 (Released:2007-03-02)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

IFN治療著効後に血中HCV RNAが再陽性化したC型慢性肝炎の2例を経験した.症例1は54才男性,HCV genotype 2a. 1992年にIFNα2bの26週投与で著効と判定された.以後肝機能は正常であったが,12年後に肝機能の増悪と共にHCV RNAが陽性化した.HCV RNAは1カ月後に陰性化し肝機能も正常化したが,9カ月後に再度HCV RNAが陽転した.症例2は68才男性,HCV genotype 1b. 2003年にIFNβ2週後α2b/Ribavirin併用療法22週治療で著効と判定された.治療終了後2年2カ月目に,肝機能は正常のままHCV RNAが陽性化し持続した.治療前後におけるHCV NS5B領域の塩基配列の検討より,残存したHCVの再燃であると考えられた.以上のようにIFN著効例であってもHCV RNAが再出現する症例があり,注意深い経過観察が必要であると考えられた.
著者
小島 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.322-327, 1989-12-20
被引用文献数
1

滋賀県下の神社の神饌と直会膳にみられる魚料理について調べた結果の要約は次の通りであった。1.フナずし切りの神事は湖南北東部地方と湖東地方で行われていた。湖西地方にはシイラのすし切り神事がシイラ切りの神事として残されていた。2.馴れずしを神饌として供える神社は草津市、守山市、野洲群、栗太群などの湖南北東部地方に集中していた。すしの種類ではフナずしが一番多く供えられ、他にめずし、モロコずし、ドジョウずし、ハスずし、雑魚ずし、ウグイずし、サバずしなどがみられた。3.直会膳に出される馴れずしもフナずしが一番多く、他にモロコずし、ドジョウずし、ハスずし、ニシンの糀づけなどがみられた。4.馴れずし以外の魚の熟饌には「なます」料理が多くみられた。熟饌に用いられる魚は淡水魚が多かったが、塩サバや塩シイラ、塩ブリなどの海産塩物もあった。5.直会膳に出される馴れずし以外の魚料理の中には、現在家庭料理として残っていないものもみられた。湖岸近くの神社では淡水魚が多く使用されていたが、山間部では海産塩干物の使用が多かった。6.生饌には生の淡水魚が多く供えられていたが、海産塩干物もかなり多かった。以上の結果より、古来滋賀県ではいろいろな種類の馴れずしが漬けられていたことや、湖魚や海産塩干物が大切な食品材料であったことがわかった。
著者
小島 智恵子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.研究内容本研究は、原子力の民事利用開発の中でも高速増殖炉(以下FBR)を事例とし、日本とフランスのFBR開発を歴史的に分析することを目的としている。本研究では一次資料の収集に最も重点をおいた。特にフランスのFBR開発に関する一次資料に基づいた歴史研究はこれまで日本では殆ど行なわれていないので、同一次資料をフランス原子力庁アーカイブス,フランス国立図書館,パリ国立高等鉱業学校図書館等で可能な限り収集した。本研究ではさらにオーラルヒストリーの手法を導入し、FBR研究に貢献したフランス人研究者へのインタビューを実施した。日本よりも早くFBR開発が進められたフランスでは、その中心的役割を果たした研究者の方々がご高齢になられていることもあり、最優先でインタビューを行った。以上の資料をもとにFBR開発の歴史をまとめその中で日本とフランスのFBR開発の歴史的特徴、日仏研究協力の歴史的変遷を総括した。2.研究の意義・重要性これまでの原子力開発史に関する研究は主にアメリカの研究を対象としていたが、本研究では日本とフランスのFBR開発を中心に歴史分析をするという新しい視点を導入したことに意義がある。少なくとも日本では本研究が日仏FBR開発の通史としては初めての試みである。この研究の中で、初期のフランスのFBR開発においては米仏協力が重要な役割を果たしていたこと、FBR開発では国際協力が大きく貢献していたこと、初期の日本のFBR開発においてはフランスが指導的立場であったこと等を明らかにした。フランス人研究者へのインタビューの回答では、フランスではタブー視されている内容も含まれており、またフランス人的観点による日本のFBR開発に対する建設的な批判も得た。本研究のテーマは、日本人の研究者だからこそ扱うことができたという点においても重要であると考える。
著者
小島 治
出版者
京都府立医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.Zoladexの抗腫瘍効果の基礎的検討1)ヒト培養胃癌細胞(KATO-III細胞とMK01細胞)とヒト培養乳癌細胞(HBC-4細胞とHBC-5細胞を用いてZoladexの抗腫瘍効果を検討した。胃癌、乳癌ともFR陽性細胞(KATO-III細胞とHBC-4細胞)の増殖を抑制した。1×10^<-7>MのE_2を加えるとZoladexの効果がよく発揮された。2)ヌードマウスヒト移植胃癌、乳癌培養細胞をメスヌードマウスに移植して、それぞれの細胞によってつくられた同型腫瘍の増殖を検討した。Zoladexを投与すると、ヌードマウスの血清E_2濃度は著明に低下し、それに伴い腫瘍の増殖も抑制された。FR陽・陰性細胞間の増殖の差は認められた。2.ヒトスキルス胃癌患者へのZoladexの投与1)ヒトスキルス胃癌患者へのZoladex投与による血清E_2の変化は投与4〜5日目より著明に低下し、同閉経前女性患者におけるE_2の低下は最大であった。高齢女性では投与前のE_2が低いので、Zoladex投与の影響はあまりなかった。しかし、E_2の高い男性患者ではE_2の低下が認められた。Zoladexの投与量は乳癌の投与量と同じ量であった。2)Zoladex単独投与によるヒトスキルス胃癌の抗腫瘍効果は明瞭でない。現在、予後を検討しているところである。以上、Zoladexをヒトスキルス胃癌患者へ投与して、その安全性は認められている。その治療効果、予後に対する影響を今後検討せねばならない。
著者
山下 謙一郎 若生 忠幸 小原 隆由 塚崎 光 小島 昭夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.444-450, 2005-11-15
参考文献数
27

ネギのさび病抵抗性を改良するため, '聖冬一本', '岩井2号', '長寿', 'せなみ', '冬扇一本', '豊川太'の6品種を育種素材(C_0)として循環選抜を行った.循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った.2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団(C_2)を得た.さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC_2S_2系統を得た.実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した.春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC)の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた.C_1からC_2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C_2S_2世代では大幅な向上が認められ, C_2S_2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった.以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.
著者
安藤 元夫 幸田 稔 小島 孜 曽根 秀一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.520, pp.287-295, 1999
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

The noticeable point of The Hanshin-Awaji Earthquake is enormous damages in inner city, especially in wooden clustered houses area. In order to generalize the damages of clustered houses, we have made comprehensive surveys in 4 areas where had different kind of earthquake shock. (3 areas had a shock with seismic intensity of 7, the other had with 6) The purpose of this study is making following points clear. 1. The factor of damages in the wooden clustered houses areas. (The relationship of structure, arrangement, construction time to the degree of damages) 2. What the wooden clustered houses areas used to be before the earthquake.
著者
北橋 忠宏 福永 邦雄 小島 篤博 長田 典子
出版者
関西学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

現在の物体認識では、認識中の対象物に人間が触れることなど論外である。それは認識システムが対象を外観的特徴に基づき認識しているため、対象物が手影になることや外見が変更されることを排除する必要があるからである。これに対し人間は、人の動作・行動とそれに関与する事物との強い関連を知り、人の行動を観察することで事物や機能・用途を予測し認識できる。この方策を物体認識に導入し、新しい物体認識方式を提案した。提案システムは、(1)系列画像の解析部、(2)2種類の辞書:行為・行動に関する辞書と物体に関する辞書、(3)推論機構、から構成される。(1)では、系列画像の背景を消去し変化領域を従来手法により求め、その中の肌色領域の抽出により顔や手を求める。それらの位置・動きから人物の見掛けの動作を求める。同時に人体以外の変化領域を見出し、両者の時間経過を求めるとともに、それらの相互関係を求める。(2)の行為・行動辞書には行為・行動の特徴と通常関連する物体の項目を設けた。物体辞書は従来の外観的特徴を排し、用途や機能などを新たな特徴に掲げた。見出し語も、従来の事物名称ではなく、用途・機能による概念分類(例えば、可搬物、可食物)が用られる。これら2種類の知識はそれぞれ概念階層にまとめられる。(3)2種類の辞書は共通する項目をもち、これらにより関連付けられ、この関連性を基に(1)で認識した人物動作から関連する物体を辞書の探索によって推測し、(1)で抽出した人体以外の変化領域を人体動作と関連付け、認識のための推論機構の基礎をなしている。また、最近(1)に隠れマルコフモデルを導入し行為・行動認識で良好な結果を得た。人の後姿から扱っている物の認識とか、ものまねやしぐさの認識ができそうである。
著者
刈谷 三郎 上野 行一 小島 郷子 笹野 恵理子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「遊び」の活動に着目して、日本と韓国の子どもの日常生活や「遊び」の現状を調査し、子どもの置かれている実態を把握する。そして、いわゆる「実技教科」と呼ばれる、音楽科、図画工作科、体育科、家庭の学校での教科カリキュラムと子どもの日常生活における「遊び」の経験がどのように関連しているかを分析し、「遊び」と実技教科カリキュラムとの関係を考察することを目的とした。これまで私たちが行ってきた「教科教育における授業評価システムに関する教科横断的研究」(平成13-15年科学研究費助成)及び、戦後の教育課程比較や学習指導方法の比較をまとめた「日韓教科教育入門」(平成17年)の研究において比較的似通った教育課程を持つ両国で、子どもたちの「遊び」と実技系教科がどのように関わり、結びついているかの比較を行った。これまでの研究成果を元に、まず、子どもの「遊び」の日韓比較を、合計約2000名の児童を対象として都市部と地方に分け調査を行い、当該調査の分析と考察を行った。これについては「日本・韓国の子どもの遊び比較研究」と題し、刈谷三郎が2007年12月2007International Leisure Recreation Seminar(ソウル)において、その成果を発表した。韓国における高学歴志向、少子化、受験といった社会的背景が、子どもの「遊び」に深く投影されていることを指摘した。質疑の中で東北アジアでの研究への発展が示唆された。引き続き、子どもの「遊び」の実態把握からよみとれる日常生活経験を軸に、実技教科カリキュラムとの関連において考察を行い、遊びを自発的な自己完結的な子どもの日常生活文化として考えると、日本の子どもは実技教科が形成する学校教科文化と子どもの日常生活文化の乖離を強く意識し、韓国の子どもの方が、日常生活文化と学校の実技教科文化との接続を認識し、融合的に把握していること論証した。これらの研究成果は韓国・日本教育学会誌(韓国・日本教育学研究)において「実技系教科と遊びの日韓比較研究」として掲載予定(2008年8月)である。しかしながら、現時点では当初の目的の一つであった、新たな実技教科カリキュラムモデルの提案には至らなかったことが課題として残された。
著者
田村 光 阿部 定範 杉浦 功一 前田 真悟 池田 信良 小島 正夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1662-1665, 2006-07-25
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

症例は, 73歳,男性.平成13年11月胆石にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.術中胆嚢が穿孔し,胆汁が腹腔内にこぼれた.摘出胆嚢は肉眼的に腫瘍を認めなかったため,病理検査は,一割面のみに行われたが,明らかな悪性所見は認めなかった.良性胆嚢と判断されたため,胆嚢は特に保存はされず廃棄された.<br> 平成15年6月臍部痛にて当科受診.腹部エコー, CTにて臍のすぐ尾側の腹直筋内に辺縁不整な腫瘤像を認め,切除生検にて腺癌の転移と診断されたため,入院の上,平成15年8月腫瘍を含む腹壁を切除した.腹膜播種を疑う明らかな所見も認めなかった.組織学的に高分化腺癌の転移と診断された.明らかな原発部位を同定することはできなかった.平成16年1月再度腹壁に再発し, 2月より照射施行(58Gy/41回/29日).一旦腫瘍は縮小したものの,再増悪を認めたため,抗癌剤(CDDP+5-FU)を開始したが軽快せず,全身状態悪化し2004年7月死亡した.
著者
小島 夏彦
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では汽水湖中海で2年間,水質,渦鞭毛藻群集,休眠胞子(シスト)の定期的な調査を行い,(1)中海に生息する渦鞭毛藻群集の実態,(2)これら渦鞭毛藻群集が環境変化の中でどのような変動を見せるのかを明らかにすることができ,(3)群集変動はどのようなメカニズムのもとで起きているのかについて手がかりを得た.これらのことは今後の汽水域での渦鞭毛藻研究の指針になるものと考えられる.中海の渦鞭毛藻群集として32種が認識された.以前の中海におけるプランクトン調査では渦鞭毛藻は多くて数種が認識されていたにすぎない.したがって本研究で初めて中海の渦鞭毛藻群集の実態が明らかになったと言える.この群集で優占し,しかもほぼ周年観察されるものとしてProrocentrum minimum,Heterocapsa rotundata,small Gymnodinium complexがあげられる.特にProro.minimumの赤潮状態にも至る圧倒的な優占と無殻渦鞭毛藻の多様性の高さが中海渦鞭毛藻全体の特徴として指摘できる.中海では上述したように3つのグループが周年存在するがその個体数の変動は激しい.群集変動のメカニズムについては,汽水域が極めて環境変動が激しいことから,環境が短期間に大きく変化するような場所では常に環境状態をモニターできる状況に渦鞭毛藻が存在することが他種に対してアドバンテージを得ることになると考えられる.これはどういう形にしろ周年水中に遊泳体として存在することが環境変化に対する素早い対応を導くことを意味する.その意味では本湖で優占する上記3グループのほとんどがこの条件のもとに生息し,汽水環境に適応していると言える.これらのことから,シスト形成種は不適環境をしのぐための適応と考えられてきたが,汽水環境では特に独立栄養種は,シスト形成についてはそれほどプラスには働かないと考えられる.以上のことを考慮すると,古生態学へ渦鞭毛藻シスト群集を応用する時に過去のシスト群集がその当時の汽水湖の遊泳体群集を忠実に反映しているとは考えにくい.そのような状況を考えれば中海底質に多い従属栄養種のシスト群集の遊泳体群集の中での働きをさらに調べる必要があろう.
著者
入江 功 滝川 清 小島 治幸 吉田 明徳 浅野 敏之 渡辺 訓甫 富樫 宏由 後藤 智明 村上 啓介 佐藤 道郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本調査は、平成10年から12年の3年間をかけて、九州各県にある九州大学,佐賀大学,長崎大学,熊本大学,鹿児島大学,宮崎大学,大分日本文理大学,九州共立大学,東海大学(静岡),東和大学などの大学が協力体制をつくり、(1)各大学が所在する県の海岸を対象に、海岸の景観・利用・防災に関する共通のアンケート用紙でサーベイし、(2)既往最大級の津波・高潮による浸水域を求め、これをとりまとめるものである。本調査が計画検討されていた平成10年頃には、既に次年度発足へ向けての海岸法の改正が検討中であり、学識経験者の海岸の開発保全に対する意見が要請される趨勢にあった。このため、少なくとも各大学の所在する地域の海岸については、十分な知識と理解を持っておくことが重要であると認識され、まず海岸の「防災」「環境」「利用」について、九州全域の海岸のサーベイを行うことになった。同時に九州沿岸は、南西域の津波、内湾および北部域の高潮に脆弱な海岸が多いため、津波計算、高潮計算をベースに沿岸の自然力に対する危険度をハザードマップで認知する手法を検討した。まず、海岸環境のサーベイにおいては、多くの評価項目から厳選した55項目を用い、各大学所属県の海岸を現地踏査した。その際撮影した海岸の写真画像を用い、別途写真画像のみで同じ55項目の評価項目で評点をつけ、現地踏査と写真画像とで評価結果がどの程度異なるかを主成分分析により調べた。その結果、両者の違いはほとんどないことが分かったので、今度は九州全海岸127地点について、写真画像のみを用い、17名程度の学生・職員により海岸環境の相対評価を行った。また、ハザードマップの在り方に付いては、3年間を通して議論の対象となった。まず、防災担当部局(者)は人間宣言すべきであること、すなわち、その危険度に至る前提、不確定さを明示すること、危険度としては、可能最大の自然力を対象とすること、宮崎海岸のように津波警報等の住民伝達が間に合わない場合の避難システムをマップ表示すること等の意見が出された。結局数値計算結果に、これらの考え方をどう生かして行くかの議論が締めくくりにもなった。
著者
湯浅 勲 小島 明子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

多くの研究者によって報告されている細胞レベルでの研究において用いられている食品成分からの抽出物の濃度は生理的な条件化における血中濃度より高い濃度を必要する場合が多い。生活習慣病の予防戦略として応用するためには有効濃度についての検討が必要である。本研究の目的は次の問題点((1)アロエ、茶、月見草およびタイショウガなどの食用植物抽出物のガン細胞に対する作用メカニズムの解明とそれぞれのメカニズムの違いを明確にする。(2)これらの作用メカニズムの違いを考慮し、複数抽出物の同時摂取することにより低濃度で有効となるシステムを検討する。)について明らかにすることである。平成16年度の研究においては、月見草抽出物は細胞内活性酸素を増加させることによりガン細胞のアポトーシスを起こすが、ガン細胞の増殖抑制には関与しないこと、また、月見草抽出物によるアポトーシスには細胞内ポリアミンが関与するが、細胞増殖には影響しないことを明らかにした。また、西洋ニンジンの葉抽出物がガン細胞の細胞周期をG2期で停止させることよりなど、アロエ、茶、月見草、タイショウガおよびニンジン葉抽出物はそれぞれ異なるメカニズムで抗ガン作用を示すことを明らかにした。また、平成17年度においては、食物繊維により腸管内で生成される酪酸の作用メカニズムについても調べた後、問題点(2)について作用メカニズムの異なる成分の同時投与の影響について検討した。その結果、緑茶抽出物は酪産と同時に添加することにより相乗的にヒト大腸ガン細胞の増殖を抑制すること、またカフェインは酪産と同時に添加することにより相加的にガン細胞の増殖を抑制することを明らかにした。今後さらに検討することが必要であるが、今回の研究により低濃度で有効なシステムの確立するための手がかりを得ることができた。
著者
小島 美咲 出川 雅邦
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

雄の血中アンドロゲン濃度(Ad)が顕著に異なる2品種のブタとその交配で得たF1を用いて、肝臓における薬物代謝酵素の構成的遺伝子発現の性差を調べるとともに、性差発現における血中Adの関与を追究した。その結果、構成的発現に性差が見られる肝薬物代謝酵素の遺伝子発現は、Adにより閾値をもって抑制的に制御されていること、また、Adの高発現形質は常染色体性に優性遺伝することを明らかにした。
著者
劉力綺 筒井 茂義 小島 基伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.86, pp.13-16, 2007-09-03

筆者らは先にカンニングアントシステム(cAS)と呼ぶ新しいACOアルゴリズムを提案し,TSP を用いて評価を行い,cAS の有効性を確認した.本論文は,cASのQAPへの応用と並列化方式に関するものである並列化の目的は大きく二つに分類できる.一つは,与えられた時間内に よりクオリティーの高い解を得ることである.もう一つは,与えられたクオリティーの基準を満たす解を高速に得ることである本論文では第二の目的,すなわち高速化を達成することを目的に,複数のプロセッサを用いるcASの並列化の一方法と QAP における結果について述べる.The previously proposed cunning ant system (cAS), a variant of the ACO algorithm, worked well on the TSP and the results showed that the cAS could be one of the most promising ACO algorithms. In this paper, we apply cAS to solving QAP focusing our main attention on the parallelization of the cAS. Results show promising speedups of the parallel cAS.
著者
小島 杏子
出版者
日本女子医学研究会
雑誌
女子医学研究
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-43, 1951-02-25

日本女子医学研究会第6回総会演説抄録
著者
岡田 将彦 安形 麻理 小島 浩之
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.33-53, 2010

原著論文【目的】図書館における資料保存では, 紙の長期保存が端緒となってさまざまな取り組みがなされてきた。近年, 製本形態も扱った図書の状態調査が始まったが, 無線綴じや接着剤の状態に焦点を当てた調査はほとんどない。しかし, 戦略的な資料保存のためには状態調査が不可欠である。本研究では, 現代の図書の主流である無線綴じの状態を把握するため, (1)専門書を中心に所蔵する大学図書館における無線綴じ図書の割合を明らかにする, (2)損傷状況を明らかにする, (3)損傷の原因を検討する, の3点を目的に調査を行った。【方法】調査票は, 国立国会図書館による状態調査の調査票を基に, 無線綴じに特化した項目を追加して作成した。調査対象は, 大規模開架図書館である慶應義塾大学三田メディアセンターの蔵書のうち, 1962年以降に受入した図書とした。1960年代から2000年代までの10年ごとの資料群から, ドロットのランダムサンプリング法を用いて, 和書(日本語・中国語・朝鮮語)・洋書400点ずつ, 合計4, 000点を抽出した。6名の調査者が, 調査票にしたがい, 標本を調査した。【結果】調査の結果からは, 和書・洋書ともに, ソフトカバー・ハードカバーにかかわらず無線綴じの割合が一貫して増加していること, 洋書の方が無線綴じの採用時期は早かったが, その後の増加率は緩やかであること, 現在では和書の方が無線綴じの割合が高く, 2000年代には全体の75.3%(ソフトカバーでは94.8%)に達すること, などが明らかになった。無線綴じに特徴的な損傷である背割れの割合は和書の方が高かったが, 和書・洋書ともに出版後間もない2000年代の図書でも生じているという全体的な傾向は共通していた。分析の結果, 貸出回数が背割れの大きな要因であることが明らかとなった。