著者
小林 大介 宮田 裕光
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-022, 2021 (Released:2022-03-30)

アーユルヴェーダはインド発祥の補完代替医療であり,体質ごとに異なる心理的特徴を呈することが伝統的に示されている。体質(プラクリティ)や体調(ヴィクリティ)の判断には,ヴァータ・ピッタ・カパの3 要素が用いられ,それらはトリドーシャ理論と総称されている。本研究では,トリドーシャ理論と,性格特性(Big Five尺度),気分状態(POMS-2 成人用短縮版),およびマインドフルネス(5因子マインドフルネス質問紙)との関連を,オンライン質問調査により検討した。大学生23名が,上記の心理学上の質問紙に加え,プラクリティとヴィクリティを判定する問診票に回答した。その結果,プラクリティにおいては,ピッタのみ情緒不安定性およびネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,調和性と有意な負の相関を示した。ヴィクリティにおいては,ヴァータがより多くのネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,カパのみマインドフルネスと有意な負の相関を示した。これらの結果は,アーユルヴェーダの体質論が,現代の心理学上の質問紙とも一定程度の関連があることを示唆しており,トリドーシャ理論に関する心理学的研究の実現可能性が示唆された。
著者
森 伸一郎 小林 巧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.I_633-I_646, 2020 (Released:2020-09-08)
参考文献数
38

2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震(Mj6.1)で推定震度が大きかった地域の墓地(地点数:44墓地,墓石総基数:4,249基)を対象に詳細な墓石挙動調査を実施し,墓石被害率分布と推定震度分布を比較した.地震直後に公開された気象庁や防災科学技術研究所の推定震度分布では高槻市と茨木市の広い範囲で震度6弱が推定されていたが,墓石被害は茨木市内に集中し,高槻市南部では墓石落下がなく,その他ずれや回転といった被害もほとんどなかった.また,地形区分と比較した結果,軟弱地盤である後背湿地で墓石落下がなく,安威川より西側の千里丘陵裾部の扇状地で墓石被害が集中していた.
著者
林 俊介 橋本 晃男 鶴原 亜紀 相羽 裕子 荒毛 将史 大類 伸浩 野見山 武徳 小林 朝夫
出版者
航空医学実験隊
雑誌
航空医学実験隊報告 (ISSN:00232858)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.37-45, 2017 (Released:2018-01-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Vigilance maintained at all times, or “See and avoid” concept recommended is a primary means of mid-air collision avoidance. It is well known to be difficult to detect aircraft mid-air on a collision course which has constant relative bearing to another aircraft and constant velocity of each aircraft. To understand the collision course making other aircraft appear motionless is essential for pilots to avoid mid-air collision. Since 2008, Aeromedical laboratory has conducted flight simulation of a collision course for cadets. This simulation flight consists of three sections, including the comparison of a collision course with a non-collision course, attention distribution, and visual scanning. Our collision course simulation effectively provides knowledge of visual scanning, attention distribution, see-and-avoid other aircraft, and human perceptual limitation.
著者
福田 満 小林 麻貴
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

高脂肪高コレステロール食を投与したラットに大豆ヨーグルトを摂取させると、血漿イソフラボン濃度が上昇し、血漿TNF一α濃度は低下した。大豆ヨーグルトの摂取により内臓脂肪量の増加は抑制され、内臓脂肪組織のTNF一α遺伝子発現量も低下した。大豆ヨーグルトの摂取はラットの内臓脂肪量を減少させ、主に内臓脂肪遺伝子発現量の調節により血漿炎症性サイトカイン濃度を低下させると推定された。
著者
岩田 和彦 小林 哲則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.1, pp.57-65, 2023-01-01

多様な音声表現が可能な対話音声合成の構築を目的として,複数の異なる音声表現を収集する手法の設計に取り組んだ.従来は,それぞれを適切な表現とすることに注意が向けられ,互いに他の表現とは無関係に表出させた音声が収集されていた.しかし,このような収集方法を採ると,それぞれの表現の隔たりが大きくなり,それらの合成音声を対話の流れの中で発話ごとに使い分けたときに違和感が生じるという問題が起こる.そこで,話し手の心的状態が次々と変化して,収集したい音声表現が満遍なく出現するように進行する対話シナリオを導入した収集手法を設計した.所望の音声表現を対話の流れの中で順に表出させることで,全体としての調和が保たれた表現となることが期待できる.実際に,対話の状況に応じて異なる複数の音声表現を収集し,これらと従来の方法で収集した音声表現とに基づく合成音声を用いたそれぞれの模擬対話の対比較による主観評価を行った.本手法で収集した音声表現の合成音声では,異なる表現を対話の流れの中で使い分けたときの自然性が改善されていることが示され,本手法の有効性が確認された.
著者
正路 徹也 小林 祥一 孟 憲国 金田 博彰
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
資源と素材 (ISSN:09161740)
巻号頁・発行日
vol.112, no.10, pp.683-687, 1996-09-25 (Released:2011-01-27)
参考文献数
2

The availability of GPS (Global Positioning System) has been examined in three areas. The first is a fixed point on the roof of a building of the University of Tokyo. The second area is around the Hishikari gold mine, southwestern Japan. The area was selected because topographic maps (1/25, 000) are published. The topography consists of gentle hills. The third area is Yunnan Province, southwestern China, where foreigners are prohibited to use topographic maps. The surveyed area is mostly mountainous. Measured values at the fixed point are scattered within 100m from the true position. The average point is located 30m south from the true position. In the Hishikari area, each GPS value is compared with the coordinates given by a topographic map. The deviation between the GPS value and the coordinates is within 300m. The reason why the deviation is larger than the error at the fixed point is that the coordinates given by a map includes error. In Yunnan, the accuracy was checked by the reproducibility. At many sites, satellites were not found because of steep slopes and high trees. A relatively wide space was located, however, within 300m from each site. When 4 satellites were found in wide areas, values were scattered in a circle with a diameter of 200m. When 4 satellites were found in narrow areas, the diameter was 500m. When only 3 satellites were found, the diameter was 1, 000m. These values are larger than the error of the pacing (less than 10 m for 100m distance). The result suggests that the GPS can provide location data with the accuracy enough to geoscience discussions in regional scales.
著者
小林 武
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.52-76, 2010-03

西洋近代的なutility の観念は,19世紀後半に中国や日本に紹介された。「功利」や「利用」「楽利」といった漢語がその訳語にあてられたが,儒教や道家思想が「利」や「功利」の追求を,人間を打算的にし,心の純粋さを汚すと否定的に考えてきたこともあって,「功利」という訳語は,中国では日本と違って普及しなかった。清末においては,「楽利」の語が代わって用いられたが,それでもutility の考え方は,何にとっての利,誰にとっての利なのかという公私観とも関連して,その理解が容易に進まなかった。 このように清末におけるutility観念の受容と理解の問題は,たんに翻訳論に止まらず,中国の倫理思想上の大きな問題に関係していたが,本稿では,この大きなことがらには踏みこまず,次の4点に限って考察したい。 (1)19世紀の漢英字典・英漢字典に見えるutility の訳語 (2) 清末と明治において翻訳紹介されたW.S.ジェヴォンズ(1835 ~ 82)の経済学書に見えるutility の訳語 (3)「功利」という言葉に対する伝統的理解の概略 (4) 李提摩太(ティモシー・リチヤード)(1845 ~ 1919)の著書と梁啓超(1873 ~ 1929)の論文に見られる分業と利の捉え方 要するに,清末における功利観を主として言葉を手がかりに考察し,utility観念の受容と理解の背後に,人間と倫理をめぐる大きな文化的背景のあったことを知ろうとする。

1 0 0 0 文体論

著者
小林 英夫
出版者
京都帝国大学
巻号頁・発行日
1946

博士論文
著者
小林 英夫
出版者
東京都立大学
巻号頁・発行日
1978

博士論文
著者
福田 卓司 三宅 誠 小林 孝仁
出版者
The Textile Machinery Society of Japan
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.P390-P396, 1993-10-25 (Released:2009-10-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1
著者
内藤 久士 小林 裕幸 内田 桂吉 大森 大二郎 千葉 百子 山倉 文幸 米田 継武
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.203-210, 2000-10-25 (Released:2014-11-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2

目的: 老化および持久的トレーニングがラット骨格筋の熱ショックタンパク質 (HSP72) の発現に及ぼす影響を遅筋および速筋に分けて検討することであった. 対象および方法: 若齢 (12週齢) および老齢 (100週齢) のF344雌ラットが年齢群ごとに, コントロール群および運動群の2群に分けられた (各群n=6). 両年齢群のトレーニング群は, トレッドミル上での持久的ランニングを75-80%Vo2maxの強度で1日60分, 週5日の頻度で10週間にわたって行われた. トレーニング期間終了72時間後, ヒラメ筋 (遅筋) および長指伸筋 (速筋) が摘出され, ウェスタンブロット法により, HSP72が定量された. 結果: コントロール群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群95±5ng・老齢群100±6ngおよび長指伸筋の若齢群22±2ng・老齢群20±5ngであり, 各筋とも年齢による差が見られなかった (P>0.05). 一方, トレーニング群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群116±3ng・老齢群116±4ngおよび長指伸筋の若齢群66±2ng・老齢群43±6ngで, 各筋ともに同年齢のコントロール群よりも有意に (P<0.05) 高い値を示した. しかしながら, その増加率は, ヒラメ筋 (若齢群+22%・老齢群+15%) と長指伸筋 (若齢群+200%: 老齢群+115%) では異なるものであった. 結論: 持久的トレーニングは, 骨格筋のHSP72の発現を増加させるが, 老化は速筋 (長指伸筋) において, その応答性を低下させる.
著者
小林 純也
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会
雑誌
歯科放射線 (ISSN:03899705)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-09-30)
参考文献数
11

After the accident of Fukushima Daiichi nuclear power plant, many people in Japan have a concern about biological effect with low dose and low dose rate radiation. In such situation, some people also have concerns to radiation usage for diagnostics and therapies. As the current amendment of medical law provides the rules of radiation diagnostics strictly, medical workers, treating radiation for medical, have to understand the biological effects with exposure to ionizing radiation to explain the effects of medical radiation to patients.Acute irradiation of high dose radiation induces several types of DNA damages. Among of them, DNA doble-strand breaks (DSBs) are most serious damages to cells and constructing organs, because remaining of DSB damages could lead to cell death, subsequently dysfunction of organs (deterministic effects). Therefore, living beings are developing DNA repair systems such as non-homologous end-joining and homologous recombination. Miss-repair and non-repair could generate gene mutation, and subsequently lead to tumorigenesis (stochastic effects).Exposure of radiation also causes excess accumulation of ROS (reactive oxygen species)/oxidative stress, which may lead to biological effects of low dose rate radiation. We found that mitochondria damage contributed to accumulation of ROS and activation of oxidative stress in human normal fibroblasts under low dose rate irradiation. We also observed that low dose rate irradiation also caused gamma-H2AX positive micronuclei in the presence of ATM inhibitor. As ATM is an important protein kinase of oxidative stress responses as well as DNA damage responses, anti-oxidative stress function may be important to repress micronuclei formation. In order to provide relief to concerning people, we have to clarify the biological effects of low dose and low dose rate radiation more.
著者
小林 正史 柳瀬 昭彦
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.13, pp.19-47, 2002-05-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
38

弥生時代の米の調理方法を明らかにすることを目的に,上東遺跡P-ト資料の炭化物を分析した。上東資料が選ばれたのは,甕の大半に炭化穀粒が付き,米の調理に使われたことが明らかなためである。炊飯方法を復元する前段階として,おおまかな使用回数と土器の置き方を検討した。暫定的使用回数は,吹きこぼれの頻度と胴上半部のススの有無を基準にして推定した。この暫定的使用回数は「累積的受熱量」を反映するといえるが,累積受熱量が最も少ない甕は「1回のみ使用」と認定できた。次に,甕の設置方法を明らかにするために胴下部~底面のコゲとスス酸化の位置を検討した結果,環状コゲは直置き状態での側面からの炎による加熱を,「環状コゲ+円形コゲ」と「円形コゲのみ」は直置き状態での「側面からの炎の加熱と底面からのオキ火の加熱の組み合わせ」を示すことが明らかにされた。このように,上東資料は全て炉に直置きされていた。米の調理方法を推定するために,稲作農耕民の各種の伝統的米調理方法について,期待される炭化物パターンのモデルを提示した。この民族誌モデルでは,吹きこぼれ程度,コゲの種類と頻度,喫水線の高さ,加熱過程などの属性が米の調理方法を推定する際に重要だった。上東資料の加熱過程については,1回のみ米調理に使われた甕の検討から,吹きこぼれをシグナルに強火加熱から弱火加熱に移行することが明らかにされた。さらに,(1)吹きこぼれや喫水線下のコゲ付きが高い頻度でみられる,(2)喫水線が比較的高めである,などの特徴も,民族誌モデルにおける「炊き干し法」や「炊きあげる湯取り法」の特徴と一致した。中在家南資料の分析でも,東北地方の弥生時代前半の日常調理において炊きあげる炊飯が普及していたことが示されていることから,(2)の炊飯方法は弥生時代にかなり普及していたと考えられる。一方,「弥生時代の米の調理は粥・雑炊状が中心だった」という仮説も一般に受け入れられている。この仮説は,具体的根拠が示されていないが,「弥生時代の米は単位あたり収量が低かったため,農民の多くは米をあまり食べられず,増量できる粥・雑炊にした」と想定していると思われる。これに対し,本稿の分析の結果,(1)弥生時代には炊きあげる炊飯方法が普及していた,(2)弥生時代になると炊飯専用の甕が作り分けられていたなどの点から,弥生時代の米食程度は現在の主流仮説よりは高かったと考えられる。
著者
星野 由維 筒山 将之 杉本 博行 小林 大介 横山 裕之 望月 能成 谷口 健次
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.692-700, 2022-11-01 (Released:2022-11-30)
参考文献数
36

症例は85歳の男性で,腹痛・嘔吐を主訴に前医を受診し,小腸閉塞の診断で保存的加療を行ったが食事摂取で再燃を繰り返したため,精査・加療目的に当院に紹介受診となった.腹部ダイナミックCTにて,空腸に造影効果を伴う壁肥厚とその口側の腸管拡張を認め,空腸腫瘍とそれに伴う腸閉塞と診断した.寛解・増悪を繰り返す腸閉塞を認めており,手術適応と判断し腹腔鏡下小腸部分切除術と所属リンパ節郭清を施行した.術後病理検査にて小腸組織内に膵腺房組織を認め異所性膵が存在し,異所性膵組織の一部と連続性を持って異型細胞を認め異所性膵癌と診断した.根治切除可能であったが,術後2か月で多発肝転移・腹腔内リンパ節再発を認め,S-1内服を継続し現在も外来通院中である.今回,術前診断が困難な小腸異所性膵癌の1例を経験したので報告する.