著者
大熊 将平 佐藤 愼司 山中 悠資 佐貫 宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.58-68, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
14

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震津波による福島県の被害に関して,現地調査及び数値シミュレーションを行い,海岸構造物の破壊機構を解明した.また,構造物へ大きな波力を及ぼす段波に関する水理実験を行い,津波の波面勾配が限界値を超えると段波が発生し,その限界値は海岸の地形勾配が緩やかなほど小さくなることが分かった.また,段波が構造物に作用する衝撃波圧は,入射波前面の波面勾配が大きくなるほど大きくなることが確認された.実験結果を津波の数値計算と組み合わせることで,福島県沿岸域の段波発生を分析した.その結果,中部では最大水位が高くかつ激しい段波が発生した可能性が高いことがわかり,中部で特に卓越する海食崖地形が,波面勾配の急峻化と段波の発生に影響しているものと推察された.
著者
市川 元啓 山中 克郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.273-276, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
5

診断推論の流れのうち, 最も素早く診断に至るsnap diagnosis. これが全ての症例で可能であれば, こんなに楽なことはない. しかしながらどんな名医であっても当然全ての症例でsnap diagnosisには至らない. 経験と知識を増やして疾患のパターンを記憶することによりsnap diagnosis可能な症例を増やすことは可能である. ここでは疾患を想起して単純な検査などを行えば診断に至る (そして見逃せば致命的な予後が待っているかもしれない) 疾患をいくつかの実例をあげて紹介する. ちなみに症例は多少の脚色はあるが全て自験例である. これらを参考に皆さんのsnap diagnosisのパターンが少しでも増えて実臨床に役立てていただければ有難い.
著者
山中 芳和
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.158, pp.11-22, 2015

本研究は,西田幾多郎門下の哲学者で近代の可能性を追求した文明批評家,土田杏村の教育観と教育目的論を考察し,それとの関連において主著の一つである『道徳改造論』を対象に,昭和初期の修身教科書批判の内実とその特質を明らかにする事を課題とする。 第一報では,「人格の自律」に焦点化された杏村の教育に関する議論が,道徳論の基底にあることを明らかにした。第二報の本稿では,『道徳改造論』を主な資料として,明治以来の教育を国家の絶対的権力による強制的教育であると理解していた杏村が,昭和初期の小学修身書をどのように批判し,いかなる改造の道筋を提示したのかを考察した。
著者
山中 芳和
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.157, pp.1-7, 2014

本研究は,西田幾多郎門下の哲学者で近代の可能性を追求した文明批評家といわれる土田杏村(1891 ~ 1934)の教育観と教育の目的に関する議論を考察し,それとの関連において,晩年の著作である『道徳改造論』を対象として,昭和初期の修身教科書批判の内実とその特質を明らかにする事を課題としている。 本稿はその第一報として,杏村の自由大学運動との関わりを考察する事を通して,彼の教育に関する議論が「人格の自律」に焦点化されており,この考えが道徳論の基底になっていることを明らかにした。続く第二報では『道徳改造論』を主たる資料として,杏村の修身教科書批判を考察する予定である。
著者
山中 芳和
出版者
岡山大学
雑誌
研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.77-85, 1994

国学思想において、このような被治者たるものの心構えが、政治論的文脈の中で説かれるようななったのは、前章で指摘したとおり本居宣長においてであった。すなわち、宣長は『古事記伝』において「政」という言葉について次のようにのべている、政は、凡ての君の国を治坐す万の事の中に、神祇を祭賜ふが最重事なる故に、其余の事等をも括て祭事と云 とは、誰も思ふことにて、誠に然ることなれども、猶熟思に、言の本は其ノ由には非で 奉仕事なるべし、そは天下の臣連八十伴緒の天皇の大命を奉はりて、各其職を奉仕る、是天下の政なればなり、さて奉仕るを麻都理と云由は、麻都流を延て麻都呂布とも云ば、即君に服従て、其事を承はり行ふをいふなり 即ち「政」は「奉仕事なるべし」とのべ支配を形成する命令と服従の二つの要素のうち、被治者における服従の側面から政治を基礎づけたのであった。命令と服従あるいは治者と被治者との関係は「身分制的」社会における「上と下」の関係に外ならないのだが、本節ではこの問題に関して宣長学における「世間の風儀」の意義を中心に考察していくことにする。
著者
山地 久美子 室崎 益輝 陳 來幸 近藤 民代 相川 康子 松岡 悦子 田間 泰子 山中 茂樹 磯辺 康子 小針 進 小林 郁雄 長 志珠絵 アンベッケン エルスマリー 金 千秋 垂水 英司 津久井 進 野呂 雅之 林 勲男 山崎 栄一 白 〓浩 韓 栄恵 陳 亮全 邵 珮君 LAURIE Johnson
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は日本、韓国、台湾、米国の自然災害被災地(阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災、江原道、ソウル市、台中市、高雄市、台北市、ニューオーリンズ市、サンフランシスコ市等)において主に被災者と支援者、行政、メディアを対象としたインタビュー及び資料収集調査を実施し、災害復興・防災体制におけるジェンダー課題を国際比較調査から明らかにした。さらに、研究成果を基に東日本大震災直後から政策提言・意見書を提出し、法制度・政策の改善につなげた。調査概要はジェンダーと災害復興ホームページ(http://genderdisaster.net/)において確認できる。
著者
加瀬 進 荒川 智 真城 知己 新井 英靖 米田 宏樹 星野 常夫 山中 冴子 渡邉 健治
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

欧米8カ国(アメリカ・イギリス・オーストラリア・ロシア・ドイツ・フランス・デンマーク・スウェーデン)のインクルーシヴ教育は、単に障害児と非障害児を同一空間・同一教材で教授することを施行するのではなく、「学習への完全参加」をすべての子どもに保障しつつ、共に生きる市民として育ち会える環境をどのように構築するか、という大きな教育的チャレンジであり、合理的配慮のあり方も障害者差別禁止法体制との関連で探求されつつある。
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2118-2129, 2013-10-01

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,並列度の爆発に抗する技術の導入,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
西村 公伸 山中 雅喜 吉村 彦一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.454, pp.31-36, 2004-11-18
被引用文献数
4

オーディオ再生音による音像表現や音質は、再生装置を構成する種々の音響機器・コード類さらに信号源となるCDやD/A変換などで生じるジッタの影響など種種雑多な要因により、高度な音響情報・感性情報が失われ、録音時の音源や周囲状況の再現力が大き変化することが報告されている。本報告は、こうした報告の再確認となる面もあるが、部屋の吸音状況、スピーカの振動処理方法、信号伝送ケーブルの差異など、音響システムの改善に用いられている手法のいくつかに焦点を当て、物理的特性の変化と聴取実験との比較により、音像表現の変化や音質の変化の傾向について、実験的に調べている。特に、標準ステレオ再生において、3次元的な音像定位に影響する要因について実験的に確認している。
著者
鈴木 慎一 中川 孝之 池田 哲臣 杉之下 文康 山中 徳唯 小木曽 圭一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.482, pp.61-66, 2009-03-06
参考文献数
10

筆者らは、ミリ波帯を用いたスタジオ用のハイビジョンワイヤレスカメラ「ミリ波モバイルカメラ」の開発を進めている。このカメラには、高い回線信頼性を有した、高画質・低遅延でのハイビジョン映像の無線伝送が要求されている。今回、1フレーム以下の低遅延でハイビジョン映像を伝送することが可能な42GHz帯を用いたミリ波モバイルカメラを試作した。そして、2008年12月31日にNHKホールで開催された「第59回NHK紅白歌合戦」の番組撮影において、初めて使用したので報告する。
著者
足立 大 山中 健太朗 春原 政浩 降旗 建治 柳沢 武三郎 湯浅 昌謙
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.398, pp.81-86, 2002-10-18
参考文献数
4

本報では,日本の伝統建築物の一つである寺院(長野県信州新町 興禅寺)の音響特性と鳴らしものについて音響工学的観点から解析・検討した.寺院の残響特性を解析するとともに,施食会という儀式を録音・分析することによって,儀式に使われる鳴らしものについて周波数分析した.その結果から,本堂の残響時間は人の存在によって0.8秒前後(無)から0.7秒前後(有)へ変化すること,代表的な鐘の各共振周波数比が1:2.7:5であること等を明らかにした.そのような鳴らしものの中で,木魚は前報で検討し,等価回路に基づく合成木魚音が有効であることを明らかにした.この合成木魚音をバーチャル木魚音と呼び,引き続き,ばちによる力関数との畳み込みによる合成方式を提案し,バーチャル木魚と本物の木魚との合奏効果を検討した.その結果から,バーチャル木魚は本物の木魚と同様に使用できることが分かり,一人で何役もこなすことができる点でその有効性が検証されたと言える.