著者
山中 英生 亀井 壌史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_623-I_628, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
15

国土交通省・警察庁が2012年発出した自転車ガイドラインでは自転車走行空間のネットワーク整備を推進するため,多くの街路において,車道部の活用を基本方針としており,自転車専用通行帯に加えて,自動車速度が低く,交通量の少ない道路では,車道部でのマーキングや指導帯等を用いて,車道混在形態の整備を進めることが示されている.しかし,我が国の自転車の利用者にとってこうした車道走行の安全感確保の視点からの評価に関して十分な研究はない.本研究では,走行中の自転車から,追越していく自動車の速度,離隔を計測することができるプローブバイシクルを開発し,安全感のプロトコル調査と組み合わせることで,自動車に追い抜かれる時の安全感モデルを開発した.
著者
庄司 吏香 早瀬 須美子 北川 元二 山中 克己 藤木 理代
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Sciences (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.3, pp.53-67, 2017-12-22

【目的】便秘の評価は、一般に主観的に回答する質問票により行われており、客観的な評価法は確立されていない。欧米人について、便秘と呼気中メタン濃度(以下、メタン濃度)との関連が多く報告されている。日本人については、高齢者に関する報告は散見するが、若年女性を対象とした報告はほとんどない。そこで本研究では、女子大学生のメタン濃度と排便習慣、生活習慣、食習慣ならびに食物摂取状況について調査し、メタン濃度が便秘の客観的な指標となりうるかについて検討した。【方法】女子大学生281人を対象に、メタン濃度を、呼気ガス分析機を用いて測定した。排便習慣(11項目)、生活習慣(8項目)、食習慣(5項目)、ならびに食物摂取頻度調査を実施した。解析対象者は記録に不備のなかった235人である。【結果】メタン産生者のカットオフ値は2.73ppm と報告されているが、今回調査した女子大学生の呼気中メタン濃度の平均値は2.40±0.58ppm であった。排便習慣に関する各質問項目について、回答肢ごとに平均メタン濃度を比較したところ、1週間の排便頻度が1日以下、1日あたりの排便量1個以下、便の形状が硬い、ほぼ毎日硬便、おならがよく出る、排便時のいきみが重い、排便時の残便感が重い、腹部不快感・痛み、胃痛、お腹の張りが重い者では平均メタン濃度が有意に高かった。生活習慣については、普段の体調、水分摂取量、生理中であることが呼気中メタン濃度と関連があった。食習慣および栄養摂取状況については関連がなかった。1週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間との呼気中メタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘の症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気中メタン濃度と関連がみられた。呼気中メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標として期待できると考えられた。【結論】対象者は若年者であり、メタン濃度は全般的にかなり低く、分布も狭かった。1 週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間のメタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気メタン濃度と関連がみられた。呼気メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標としては期待できると考えられた。
著者
溝田 智俊 佐々木 みなみ 山中 寿朗
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.115-130, 2007-11-01 (Released:2007-11-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1 7

カワウ,アオサギおよびゴイサギの営巣地下にある2地域の土壌(福島県本宮および福岡県久留米)について,窒素動態を無機態窒素含量と安定同位体比の時系列変動を指標として解析した.顕著に高い無機態窒素含量(8 g/kg乾土)が孵化と雛の成長期に見出された.巣立ちと営巣地から見られなくなった後,無機態窒素含量は急速に低下した.土壌の硝化活性は,やや冷涼な本宮営巣区にくらべて温暖な久留米営巣区で高かった.硝化と連動した脱窒過程が繁殖期後期に顕著であることが特異的に高い硝酸態窒素の同位体比から推察された.カワウは繁殖およびねぐらとして1年を通じて森林を利用するために,土壌に連続的に糞窒素が搬入される.その結果,一時的に利用するサギ類に比較してカワウ営巣区ではアンモニア生成速度が高く維持されると推定された.
著者
川口 真規子 山中 裕佳子 土井 裕司
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39, 2008

<BR>【目的】<BR> 民間研究所による昨年のアンケート調査結果では、日本人の9割以上が週に1回以上麺類を食し、麺類が好きだと回答した人は99.3%にものぼる。本研究では、好きな麺類第2位である『うどん』のだしに含まれるうま味などの成分および麺の上に盛られる具材の地域差を調査し、日本の食文化の東西比較を目的とした。<BR>【方法】<BR> 関西地方を中心に、日本各地のうどん屋および食料品店よりうどんだしを収集した。だし中グルタミン酸(Glu)量はヤマサL-Glu測定キットを用いて定量した。核酸系うま味成分であるグアニル酸(GMP)とイノシン酸(IMP)はHPLCにより定量した。塩分濃度は電気伝導度計を用い、糖濃度はフェノール-硫酸法により定量を行った。さらに、文献及びうどん店HPに掲載されている写真をもとにうどんの具材の種類を調査した。<BR>【結果と考察】<BR> だし中Glu量は301~9,510mg/L、GMP+IMP量は33.8~483mg/Lの範囲にあった。うどんだし中のGlu量およびGMP+IMP量は各試料によって大きな差があり、旨味調味料の添加の有無によるものと推察された。糖濃度ならびに塩分濃度には地域による著しい差は認められなかった。具材調査の結果では、京都では京野菜や細かく刻んだ薄あげが、大阪では薄あげ(刻んでいない)や青ねぎが、関東では肉や白ねぎが多く使われていた。また香川ではレモンやすだちといった柑橘類が使用されていた。
著者
山中 勤 三谷 克之輔 小野寺 真一 開發 一郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.113-125, 2005-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
3 4

遊休農林地の放牧地への転換が,瀬戸内海や流域圏地下水の水質環境に及ぼす影響を予測するための基礎資料として,風化花崗岩を母材とした貧栄養土壌から成る牧草地において,年間の水・熱・物質収支を実測値に基づいて評価した.年降水量1,262mmに対して,地下水涵養量はおよそ4割の523mmであったが,その半分近くは1999年9月の豪雨時に生じていた.水の下方移動速度は年平均で約7mm/day,豪雨期を除くとおよそ3mm/dayであった.蒸発散量は年降水量のおよそ6割を占め,それによる消費エネルギーは年間正味放射量(2,712MJ/m2)の約3分の2に相当した.蒸発散量は日射量の季節変化や植生の状態に強く規定されていた.元素ごとにみた溶脱フラックスは,大気降下フラックスのおよそ2倍から9倍程度であり,施肥およびそれに付随する土壌中のイオン交換反応に依存していたが,窒素の溶脱率は7%未満とかなり小さかった.すなわち,硝酸性窒素汚染や水域の富栄養化といった観点からは,牧草地における適度な施肥は大きな問題とならないことが確認された.ただし,植生状態の管理や施肥のスケジューリングなどによって溶脱率が変化する可能性があることには注意を要する.
著者
山中 克郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.12, pp.2454-2459, 2019-12-10 (Released:2020-12-10)
参考文献数
8

救急患者の診察では,症状やバイタルサインから致死的疾患を想起し,red flag signがないか確認することが大切である.患者本人からの症状聴取が困難なときは,同伴者から情報を得るとよい.鑑別診断のヒントとなる重要なキーワードを病歴や所見から見つけることも,鑑別診断の効果的な絞り込みに役立つ.よくある疾患に対しては,典型的な症状があるかどうかを確認する.
著者
山中 浩明
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.97-110, 2013 (Released:2016-04-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

微動探査における位相速度の逆解析では,最小2乗法だけでなく,遺伝的アルゴリズムなどのヒューリスティック探索法も使われている。しかし,ヒューリスティック探索法は,最小2乗法などに比べてパラメータの感度が直接的にはわかりにくいという短所もある。本研究では,マルコフ連鎖モンテカルロ法を位相速度の逆解析に適用することを試み,その適用性を検討した。まず,大規模な平野の深部地盤を模擬した地盤モデルを仮定して数値実験を行った。周波数0.1~2Hzの基本モードのレイリー波の位相速度を計算し,擬似観測データを作成した。逆解析では,Metropolis-Hastings法を用いて,モデルのサンプリングを行い,それらのモデルのS波速度と厚さの平均値と標準偏差を求めことにより逆解析結果を得ると。尤度関数で与えた位相速度の観測誤差によらず,得られた解は正解値に近いものであった。一方,モデルパラメータの推定精度は観測値の標準偏差に依存し,観測値の標準偏差が大きいほど,モデルパラメータの推定誤差も大きくなった。さらに,位相速度の周波数範囲を限定して逆解析を行った。低周波数の位相速度の欠如によって深い部分の地層のパラメータの標準偏差が大きくなり,分解能が低下することを定量的に示した。また,高周波数の位相速度の欠如の影響が浅部のパラメータの不確かさに影響を及ぼすことを示した。つぎに,サンプルされたモデル群に対するS波の1次元増幅特性を計算し,位相速度の観測誤差が増幅特性の変動に与える影響を検討した。その結果,卓越周期やその倍率ではばらつきが少なかったが,短周期になるほど増幅特性のばらつきが大きくなることがわかった。最後に,関東平野での既往の微動探査による位相速度にも適用し,他の手法と同程度の地盤モデルを推定した。さらに,モデルの精度および増幅特性のばらつきも評価することができた。以上の検討から,マルコフ連鎖モンテカルロ法による位相速度の逆解析では,パラメータの推定精度を定量的に評価することが可能であり,微動探査で有効な方法であると考えられる。
著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 56

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
近藤 雪絵 木村 修平 山中 司 山下 美朋 井之上 浩一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-011, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
10

立命館大学薬学部ではディプロマ・ポリシーにおける教育目標の一つである「国際社会でも活躍できる英語での情報収集・発信能力」を涵養するため,「プロジェクト発信型英語プログラム」(Project-based English Program: PEP)を導入し,専門英語を含む英語科目を系統的に配置している.本稿では,専門性の高い領域での英語発信力を育成するために,専門教員と英語教員がどのようにコラボレーションできるかを,専門教員,専門知識を持たない英語母語話者,社会人による学生のプレゼンテーションの評価分析を元に論じた.専門教員はテーマの絞り込みや深め方,英語教員は成果を広く発信する際にどう社会に関連させ伝えるかという点でアドバイスを行い,学生自身がその中で自分の意見をさらに深めるという協同が実現することにより,発信力を “I(自身)”,“Me(客観的に捉えた自身)”,“Connection(自身と他者あるいは社会とのつながり)” の観点から涵養できるという示唆が得られた.
著者
山中 すみへ 田中 界治 田中 久雄 西村 正雄
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.307-313, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
31

歯科診療においてアマルガムは重要な充填材料であるが, アマルガム使用による水銀の環境汚染が新たな問題となってきた。とくに最近, 河川や魚介類の水銀汚染が社会問題になり, 排水基準も5ppb以下に規制されるようになった。そこで, 歯科診療における各ステップの排水や排水口のスラッジ, 周辺の土壌などの水銀濃度を分析して, 歯科診療による水銀の排出, 環境への汚染の実態を調べた。バキューム管で吸引され。汚物水, うがい水, ユニット直下の排水, そして歯科診療所の最終排水と大量の流水に希釈されるに従って排水中水銀濃度が減少しているが, 排水を通じての水銀の放出は決して少なくはないことが明らかとなった。とくに最終排水中水銀濃度は平均値で11.3ppbであり, ほとんどの歯科診療所は現在の排水基準値の5ppbを上まわっていた。また歯科診療所周辺の土壌中にも比較的高い水銀濃度を認め, さらに排水口のスラッジでは10600ppmと非常に高く排水中の水銀を濃縮していることを示した。以上のことから歯科診療から排出された無機水銀は, メチル水銀に変換する危険性が余りないとはいえ, 排水を通じて環境への水銀汚染は, 土壌やスラッジヘの蓄積によりかなり高濃度となっていることが明らかとなったので, 対策の必要性を改めて確認した。
著者
岩本 宗昭 山中 英明 阿部 宏喜 渡部 終五 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.93-99, 1990-01-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
30 32

Yellowtail, bartailed flathead and Japanese striped knifejaw were spiked at the brain, and stored at O°and 10°C. Yellowtail set in rigor-mortis after 2h, irrespective of storage temperature, attaining the full-rigor state after 7h at O°C and 15h at 10°C. Rigor-mortis of bartailed flathead started after 10h at O°C and 13h at 10°C. This species reached the full-rigor state after 20h at O°C and 40h at 10°C. In the case of Japanese striped knifejaw, rigor-mortis began to appear immediately after killing at O°C whereas after 4h at 10°C. The full-rigor state was attained with this fish after 13 and 20h, respectively, in the above order of storage temperature. Therefore, rigor-mortis proceeded roughly two times slower at 10°C than at O°C, regardless of fish species. In accordance with rigor-mortis progress, the muscle of each species showed a 2-3 times slower decrease of ATP concentration when stored at 10°C than when stored at O°C. Disappearance of creatine phosphate preceded that of ATP while lactate accumulation was nearly maximal when ATP disappeared, irrespective of fish species and storage temperature. No marked differences in initial ATP concentration were observed among the fish species examined. The highest lactate level was encountered in yellowtail which exhibited the fastest progress of rigor-mortis at either storage temperature. Japanese striped knifejaw showed a much lower accumulation of lactate than yellowtail, the accumulation of which was even lower than that in bartailed flathead. On the other hand, rigormortis progress of Japanese striped knifejaw was comparable to that of yellowtail and somewhat faster than that of bartailed flathead.
著者
山中 信夫
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.31-53, 1996

Publications relating to Soseki are now enjoying another boom in Japan. Of course, this is owing partly to the effective publicity campaign of Iwanamishoten, one of the publishers of Soseki's works, on publishing once again a new complete edtion of his works, but there seem to be deeper, underlying reasons for his recent revival. Those reasons are so complicated and many-faceted, as well as so deeply hidden and elusive, that for the present there is no way but to try and inquire along some tentative lines, depending upon intuitive inferences. In this connection, firstly, Soseki's peculiarly free and flexible mind should be mentioned. He has a penetrating intellect and was capable of thinking for himself, among and against the overwhelming influences of European culture in the Japan of the Meiji era. Many critics are interested in Soseki's free, unprejudiced and radical way of thinking. Karatani, one of the leading critics of Soseki, has said in a symposium on Soseki that perhaps Soseki was the first and only theoretical thinker in Japan, or rather the first and only Japanese who could think theoretically in the true sense of the word; 'to think theoretically' indicates, in this case, a radical, independent way of thinking with a view to reaching an objective theory, the model of which is that of natural science. In the same symposium, Hasumi, another leading Soseki critic, stated a similar view, adding that Soseki always thought and wrote without losing his amateurish naivety. Hasumi insists that the problem is what makes such an amateurish naivety go such a long way in his thinking as well as in his writing. This amateurish naivety of Soseki's may derive from his above-mentioned uniquely free and flexble mind. "A man who inaugurates an enterprise must be an amateur in the true sense of the word, and that is the case with a great artist." Those are Soseki's own words. An expert depends on his surpassingly rich experiences and can never be free from them, but there are some cases in life when experiences will never do, or, rather, will be a hindrance, as in the case of an artist who has to venture into an unexplored region. From another point of view, there is a particular time in history, an age of transition, when one cannnot depend upon experiences; changes are then so drastic and sweeping that the old paradigm is still half-alive, while a new one can not yet replace it; therefore, one is faced with brand-new circumstances. Here no one can help being an amateur in a sense. The Meiji era was such an age, and so is ours. Hence Soseki's peculiar popularity and importance at present. His Bungakuron (A theory of Literature) is unique in many points. It is a very early attempt to theorise about literature in general with a view to giving it the objectivity of natural science. At the same time, it is an desperate attempt by Soseki to regain self-confidence in the face of the overwhelming Western influences. The abundant quotations from English literature and their penetrating elucidations in the book are worthy of note even now, for we are still confronted with that problem of crosscultural relations; indeed its underlying difficulty will never diminish. Much instruction can still be drawn from Soseki's own way of tackling the cross-cultural problem of interpretaion. This essay is nothing but a preliminary study aimed at reading this Bungakuron. Firstly, it will refute Komori's interpretation of Soseki's definition of the subject matter of literature , especially the interpretation of the words "focal impressions and ideas," represented by F in the famous formula of literature(F+f). Komori is one of the most influential introducers of Soseki, and his view of Soseki seems to be constructed on the basis of this interpretation. Komori says he is surprised by the expression, "focal impressions and ideas," because 'impressions' and 'ideas' are diametrically opposite to each other, so that, from a commonsense point of view, the two words cannot be paralleled by means of the co-ordination 'and.' Apart from the word 'focal,' the expression "impressions and ideas" comes from Hume's A Treatise of Human Nature: "All the perceptions of the human mind resolve themselves into two distinct kinds, which I shall call impressions and ideas. The difference betwixt these consists in the degree of force and liveliness , with which they strike upon the mind, and make their way into our thought or consciousness. " Then, clearly, 'impressions' and 'ideas' are not so extremely opposite to each other from the point of view of British commonsense; the definitions of the word 'idea' given in OED confirm this. The next point concerns some contradictions in Soseki's definition. Beyond these contradictory expressions in the definition of literature, however, Soseki's intention and method can be discerned and reconstructed with a few modifications. Some of these revisions are suggested; for example, what is called 'the attaching emotions' can be understood to be 'those which follow'-that is, the posterior emotions. From this diachronic point of view , some uniformity will be achieved in the overall interpretation. Perhaps the most serious fault in Soseki's methodology is that, in his analysis of literary experience, he introduces the results of general psychology without necessary discrimination. As a result, those emotions peculiar to literature, which can be enjoyed only through reading, through the media of words, are not clearly distinguished from those experienced in everyday life.
著者
桑原 渉 浦辺 幸夫 山中 悠紀 櫻井 友貴 冨山 信次 藤井 絵里
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3259, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】体幹筋は体幹の運動と安定化に寄与し、腰椎部への負担を減少させる働きを担っている。Basmajian(1985)は、安静立位時であっても、脊柱起立筋群と腹筋群の持続的な活動がみられるとし、さらに基本的立位姿勢では脊柱起立筋の活動が優位であると述べている。しかし実際には脊柱起立筋群の活動が優位な人だけではなく、腹筋群を優位に活動させ、立位姿勢の保持をする人もおり、安静立位時の体幹筋活動には個体差が大きいのではないかと考えた。また、三谷ら(2008)は、腰仙椎アライメントと体幹屈曲力/伸展力(F/E)比との間に負の相関があり、腰仙椎アライメントの変化が体幹の筋活動に変化を生じさせ、その結果体幹筋力にも変化が及ぶと報告している。このように立位時における体幹筋活動や、体幹筋力についての報告は行われているが、体幹筋活動と体幹筋力の関係を報告した先行研究は見当たらない。そこで本研究では、安静立位時の脊柱起立筋群および腹筋群の筋活動の違いにより、体幹筋力に差があるかを明らかにすることを目的とした。仮説は、安静時に脊柱起立筋群を優位に活動させている対象はF/E比が小さく、腹筋群を優位に活動させている対象はF/E比が大きいとした。【方法】対象は体幹に整形外科疾患の既往がない健常男性12名とした。年齢(平均±SD)は22.0±1.0歳、身長は171.8±7.0cm、体重は60.9±7.0kgであった。筋活動の測定肢位は安静立位とした。閉脚立位肢位にて骨盤中間位で、両上肢を胸の前で組み、2m前方の視線と同じ高さのものを注視させた。その課題を20秒間保持させ、10秒後から5秒間筋活動の測定を行った。体幹筋力の測定は、等尺性体幹筋力測定装置GT-350(OG技研製)を用いて、股関節、膝関節それぞれ90°屈曲位の椅坐位で最大等尺性収縮の筋力を測定した。数回の練習後、屈曲力、伸展力の測定を各3回ずつ行い、ピーク値を体重比に換算し、屈曲力を伸展力で除すことでF/E比を算出した。筋活動の測定には、表面筋電図Personal-EMG(追坂電子機器製)を用いた。対象筋は右側の腰部脊柱起立筋と腹直筋の2筋とした。電極の貼り付けは下野ら(2004)の方法を参考に行った。各筋の活動量は最大等尺性収縮時(Maximal Voluntary Contruction:MVC)のroot mean square value(RMS)を100%として正規化した。対象12名のうち、安静立位時において腰部脊柱起立筋より腹直筋の筋活動が高い4名を屈筋群、腹直筋より腰部脊柱起立筋の筋活動が高い8名を伸筋群として2群に分類し、それぞれの%MVC、筋力、F/E比を両群間で比較した。両群間の統計学的検定には対応のないt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。【説明と同意】対象には事前に研究の説明を十分に行い、紙面にて同意を得て測定を行った。なお、本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った(承認番号 0949)。【結果】屈筋群の筋活動は腰部脊柱起立筋で14.0±4.5%、腹直筋で18.2±4.5%、伸筋群の筋活動は腰部脊柱起立筋で16.3±5.6%、腹直筋で10.2±4.8%であった。屈筋群の屈曲力は17.1±1.1N/kg、伸展力は12.6±2.3N/kgであり、伸筋群は各々18.0±2.8N/kg、16.1±3.3N/kgとなり屈筋群と伸筋群で筋力において有意差はなかったが、屈筋群のほうが低い伸展力を示す傾向がみられた。F/E比は屈筋群で140.9±25.8%、伸筋群で112.9±11.0%となり、屈筋群のほうが有意にF/E比が大きくなった(p<0.05)。【考察】本研究では、Basmajianの報告と同様に、安静立位時では腹筋群に比して脊柱起立筋群の筋活動が高い対象が12名中8名と多いことが確認できた。屈筋群は伸筋群と比して伸展力が低い傾向にあり、さらにF/E比が大きいことが示された。つまり、安静時の腹直筋の筋活動が高い者は、体幹の伸展力が低いことでF/E比を大きくしていることがわかった。これに対して、伸筋群は屈曲力も伸展力も大きく、F/E比が小さくなっていた。このことから屈筋群は姿勢制御方法が伸筋群と異なることが考えられた。つまり、本研究での屈筋群と伸筋群の違いは日常生活やスポーツを含めた活動のなかでの姿勢制御の結果かもしれない。Klausenら(1968)は、上半身を後方に傾け、重心線が後方に移動すると、脊柱起立筋群の活動は停止し、腹筋群の活動が高くなると述べ、姿勢と体幹筋活動の関連を述べている。本研究では、姿勢についての測定は行っていない。そのため、静的な姿勢、さらには動的な姿勢制御を分析し、屈筋群と伸筋群の違いを明らかにしていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】安静立位時に脊柱起立筋群が優位に活動している者のみでなく、腹筋群が優位に活動する者が存在することを明らかにできたことが本研究の意義である。このような違いが、筋力発揮の面からも特徴を呈していることがわかり、今後の理学療法学の発展に資するものであると考える。
著者
谷 尚樹 後藤 多可志 宇野 彰 内山 俊朗 山中 敏正
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.238-245, 2016
被引用文献数
1

本研究では,発達性ディスレクシア児童23名と典型発達児童36名を対象に,2種類の書体を用いた速読課題を実施し,書体が速読所要時間,誤読数,自己修正数に与える影響を検討した.刺激は,表記(漢字仮名混じりの文章,ひらがなとカタカナで構成された無意味文字列)と書体(丸ゴシック体,明朝体)の2×2の合計4種類である.実験参加者には,4種類の刺激を速読してもらった後,どちらの書体を主観的に読みやすいと感じたか口頭で答えてもらった.その結果,発達性ディスレクシア児童群と典型発達児童群の双方において,書体間の速読所要時間,誤読数,自己修正数に有意差は認められなかった.主観的には,発達性ディスレクシア児童群では丸ゴシック体を読みやすいと感じる児童が多かった.本研究の結果からは,客観的評価と主観的評価は異なり,丸ゴシック体と明朝体の書体の違いによる正確性と流暢性に関する「読みやすさ」の指標は見出せなかった.