著者
髙岡 良成 森本 直樹 三浦 光一 野本 弘章 渡邊 俊司 津久井 舞未子 前田 浩史 五家 里栄 礒田 憲夫 室井 一男 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-17, 2020-01-01 (Released:2019-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

症例は74歳男性.2018年X月に大動脈弁置換術の際に輸血を施行した.術後2カ月頃から肝機能障害を認め,HEV-IgA抗体およびHEV-RNA陽性(genotype 3b)でE型肝炎と診断した.その後の解析で輸血前のHEV-IgG抗体陽性,HEV-RNA陰性であったことからE型肝炎既感染例と考えられた.また輸血に使用した凍結新鮮血漿からHEV-RNAが検出され,解析できた遺伝子配列が患者由来HEVとほぼ一致したため,輸血によるE型肝炎と判断した.本邦では2017年までに本例を含めると,少なくとも26例の輸血後E型肝炎が発症し,その報告数は増加しつつある.北海道地区では輸血製剤において核酸増幅検査によるHEVスクリーニング検査が行われているが,それ以外の地区では施行されていない.よって全国での核酸増幅検査によるHEVスクリーニングの早期導入が望まれる.
著者
高橋 均 荒 このみ 山本 博之 増田 一夫 遠藤 泰生 足立 信彦 村田 雄二郎 外村 大 森山 工
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

戦後、欧米先進諸国に向けて、開発途上国出身の多くの移民が流入し、かれらを文化的に同化することは困難であったため、同化ではなく統合を通じてホスト社会に適応させようとする≪多文化主義≫の実験が各地で行われた。本研究課題はこのような≪多文化主義≫が国際標準となるような≪包摂レジーム≫に近い将来制度化されるかを問うものである。結論として、(1)≪多文化主義≫の背景である移民のエンパワーメントは交通・通信技術の発達とともになお進行中であり、いまだバックラッシュを引き起こす危険を含む。(2)第一世代はトランスナショナル化し、送出国社会と切れず、ホスト社会への適応のニーズを感じない者が増えている。(3)その反面、第二世代はホスト社会の公立学校での社会化により急速に同化し、親子の役割逆転により移民家族は不安定化する。このために、近い将来国際標準的な≪包摂レジーム≫の制度化が起こる可能性は低い。
著者
山本 博之 田中 篤 北川 諭 鈴木 高祐 藤田 善幸 丸山 正隆
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.579-585, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

症例は35歳男性. 入院10カ月前から防風通聖散を服用していた. 入院3カ月前にはじめて肝機能異常が出現. 入院6週間前に近医受診, この時点で肝機能障害は増悪していたが, 5種の薬剤を新たに投与され, 防風通聖散はそのまま服用していた. 入院1週間前から黄疸・皮膚掻痒感が出現したため当院へ入院となった. 防風通聖散, および併用薬は入院前日まで服用していた. 入院時ALT 2996IU/l, AST 7174IU/l, T. Bil 15.1mg/dl, PT 30.6%であり, 第2病日肝性昏睡2度となったため劇症肝炎急性型と診断, 血漿交換および血液濾過透析とステロイドパルス療法を開始した. この結果意識清明となり肝機能も急速に改善したが, その後黄疸が遷延し, 肝機能は薬剤中止後4カ月に正常化した. 本症例ではもともと防風通聖散による薬物性肝障害が存在し, そこへ併用薬の影響が加わって最終的に劇症化に至ったものと考えられた.
著者
中串 孝志 古川 邦之 山本 博基 大西 将徳 飯澤 功 酒井 敏
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-112, 2007-06-20 (Released:2007-06-20)
参考文献数
3

Planetary aerosol laboratory experiments for science education were carried out in a curriculum of Kyoto University. Our goal is to reproduce “the blue sunset” on Mars which are reported from NASA's Mars Pathfinder. In reproducing the rays scattered by Martian atmosphere (dust storm) in a laboratory, the number density of scattering particles has to be as large as possible. Three experiments were conducted in the air and water. Although we were not able to reproduce Martian blue sunset, we elucidated its spectrum. Converting this spectrum to a color in the RGB system, we obtained R = 114, G = 122, B = 192. Though the experiment, we proved that planetary aerosol laboratory experiments are significantly fruitful for science education as well as for science studies. We propose that researchers and lecturers should make active use of planetary aerosol laboratory experiments for science education.
著者
山本 博樹 深谷 達史 高垣 マユミ 比留間 太白 小野瀬 雅人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.209-230, 2020-03-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
70

2020年度より順次実施の学習指導要領からは「主体的・対話的で深い学び」が目指されることになる。これに対して,教師や生徒同士の説明実践に期待が寄せられるが,説明とは説き手の「説く」と受け手の「明らかになる」から成る言語活動だったはずである。ところが,一方的に「説く」だけで決して受け手自身が「明らかに」ならない言語活動が授業に紛れ込むことがある。説明という言語活動の特徴や構造を取り違えたり,短絡的に「深い学び」に直結すると誤解する場面に出会ったりもする。実は,説明活動は受け手の「明」に関わる認識論上の難題を含むのであり,これに対する教育心理学サイドの貢献を時に振り返る機会があってもよい。ここから児童生徒の「深い学び」を実現する説明実践が耕されていくからである。そこで,本論文では,説明の原義に由来する難題に研究者がいかに立ち向かってきたかを振り返り,説明実践に対する教育心理学の貢献を議論したい。想定した論点は以下の3点である。(1)説き手である教師や児童生徒は受け手の理解不振を把握できているか(論点1),(2)同じく受け手の理解不振を本当に改善できているか(論点2),また受け手の理解不振の把握・改善を基点とした説明力の育成は進んでいるか(論点3),である。
著者
山本 博子
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
no.29, pp.9-25, 2021-02-15

本稿では、『古今和歌集』における過去表現について検討した。本稿において、過去表現とは、過去の助動詞「き」、完了の助動詞「ぬ」と過去の助動詞「き」の複合形式「にき」、完了の助動詞「つ」と過去の助動詞「き」の複合形式「てき」を指す。 平安時代の時間表現についてはすでに様々な議論が重ねられてきたが、資料や用例の扱い方においては各研究によって様々であった。したがって、本稿では、平安時代の言葉の実態をさらに詳細に解明していくための試みとして、用例を『古今和歌集』の和歌のみに限定して検討を行なった。 その結果、動詞の分布状況やアスペクト的意味・空間的意味において、平安時代の物語作品の会話文における用法と大きな違いがないことがわかった。したがって、アスペクト的意味や空間的意味について検討する場合は、基本的には、同時代の物語の会話文と和歌の例を同等に扱ってもよいということを示すことができた。 しかし、一人称移動動詞の例については、物語の会話文と和歌において同様の傾向が見られなかった。このことから、動詞によっては、自分の気持ちや状況を表すことが多い和歌と、自分の行動について取り上げることも多い物語の会話文とで、用法の違いが見られることを示唆することができた。
著者
福田 健二 朽名 夏麿 寺田 徹 マンスーニャ モハマド レザ ウディン モハマド ニザム 神保 克明 渋谷 園実 藤枝 樹里 山本 博一 横張 真
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.83-98, 2013-12-25 (Released:2017-04-03)
被引用文献数
2

千葉県柏市の都市近郊林において,福島第一原子力発電所の事故による放射性セシウム汚染の実態を調べた。2011年8月〜12月の地上1 mの空間線量率は0.3〜0.4 μSv/h程度であった。2011年秋〜2012年秋に採集された植物体の放射性セシウム濃度は, 2011年受けた枝や常緑樹の旧葉では1.2〜8.8 kBq/kg,事故時に展葉していなかった常緑広葉樹の当年葉や落葉広葉樹の葉では0〜2.8 kBq/kgであった。2011年夏〜秋に採集された地表徘徊性甲虫ではほとんどが5 kBq/kg以下であったが,キノコでは高い値のものが多く,最大61 kBq/kgを示した。2012年春に伐採された間伐木の放射性セシウム濃度は,ヒノキでは外樹皮,次いで旧葉で高く,落葉樹では外樹皮で最も高かった。いずれも辺材,心材へのセシウムの浸透がみられた。これらは,里山活動における薪や堆肥の利用に支障をきたす汚染レベルであった。大青田の樹木地上部への放射性セシウム沈着量の推定値は,ヒノキの枝葉への大量の沈着を反映して,ヒノキ・イヌシデ林の地上部で5.7 kBq/m^2と,コナラ・クヌギ林の地上部の3.7 kBq/m^2の約1.5倍であった。コナラ・クヌギ林の地下部5 cmまでの沈着量合計は85 kBq/m^2であり,地上部と地下部を合わせた林分全体の放射性セシウム沈着量は約90 kBq/m^2と見積もられた。2013年1月のコナラ林の土壌では,放射性セシウムはリター層よりもA層に多く分布しており,落葉の除去による除染効果はほとんど期待できないと考えられた。
著者
栗原 一貴 笹尾 和宏 山本 光穂 田中 秀樹 奈良部 隆行 國吉 雅人 会田 寅次郎 岡田 裕子 高須 正和 関 治之 飯田 哲 山本 博之 生島 高裕
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.223-224, 2014-09-12

本論文では,月および火星の衛星画像からあたかも知的生命体によって構築されたかのような構造物(擬似不自然構造物,pseudo-artificial structures)を自動検出する試みについて報告する.NASA Jet Propulsion Laboratory から公開されている観測データを対象として近年発展の著しいパターン認識手法である deep learning を採用し,顔認識技術として Deep Convolutional Network Cascade for Facial Point Detection,およびオブジェクト検出技術として 1000 種類の物体を検出可能な DeCAF (A Deep Convolutional Activation Feature for Generic Visual Recognition)を適用することで,興味深い結果を得た.
著者
中串 孝志 古川 邦之 山本 博基 大西 将徳 飯澤 功 酒井 敏
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 = Journal of aerosol research (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-112, 2007-06-20

Planetary aerosol laboratory experiments for science education were carried out in a curriculum of Kyoto University. Our goal is to reproduce "the blue sunset" on Mars which are reported from NASA's Mars Pathfinder. In reproducing the rays scattered by Martian atmosphere (dust storm) in a laboratory, the number density of scattering particles has to be as large as possible. Three experiments were conducted in the air and water. Although we were not able to reproduce Martian blue sunset, we elucidated its spectrum. Converting this spectrum to a color in the RGB system, we obtained R = 114, G = 122, B = 192. Though the experiment, we proved that planetary aerosol laboratory experiments are significantly fruitful for science education as well as for science studies. We propose that researchers and lecturers should make active use of planetary aerosol laboratory experiments for science education.
著者
山本 博樹 織田 涼 島田 英昭
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17015, (Released:2018-05-25)
参考文献数
24

We examined the hypothesis that the effect of signaling on students' prose comprehension is significant only when structure strategies are deficient during production. Participants included first-year high school students (N = 120, mean age 16.0) and university students (N = 120, mean age 20.8). Students' tendencies to use structure strategies were evaluated and classified as lower-structure (LS) or upper-structure (US) strategy using the median (23 high school students and 25 university students). Participants performed sentence arrangement, recall, and reconstruction tasks. Each task consisted of expository sentences with or without signaling. The results indicated the following: (a) Signaling facilitated structure identification in organizational processes in the US strategy group of high school students, which improved their prose comprehension, whereas no effects were evident in the LS strategy group. (b) An identical effect was seen in the LS strategy group of university students, whereas it was not observed in the US strategy group. These results support our hypothesis. The boundary conditions for the effect of signaling on students' prose comprehension are discussed from the perspective of the production deficiency in structure strategy.
著者
三浦 義正 矢野 智則 坂口 美織 井野 裕治 角田 真人 Tsevelnorov Khurelbaatar 小林 泰俊 坂本 博次 林 芳和 砂田 圭二郎 大澤 博之 福嶋 敬宜 山本 博徳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1747-1755, 2018-12-25

要旨●小腸腫瘍の治療前評価における超音波内視鏡(EUS)の役割は,質的診断と腫瘍深度診断であり,内視鏡治療に直結するため重要である.しかし,小腸腫瘍は上皮性腫瘍,非上皮性腫瘍共に発見時に内視鏡治療になる可能性は低いため,臨床でのEUSの使用は限られる.一方,Helicobacter pylori陰性者が増加する中で,十二指腸腫瘍を発見・治療する機会が増えている.特に表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)の治療においては,腫瘍のサイズ,形態,リスク・ベネフィットを考慮して治療法を選択するが,EUSは手技の安全性を確保する上で重要である.本稿では,小腸腫瘍に対する診断・治療について,実臨床で比較的遭遇する疾患を中心に解説する.
著者
塩田好 石水隆 山本博史
雑誌
2013年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013-09-18

「アンパンマンはじめてしょうぎ」において、後退解析を用いたプログラムで完全解析を行った。
著者
山本 博樹 織田 涼 島田 英昭
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.240-250, 2018 (Released:2018-08-28)
参考文献数
24

We examined the hypothesis that the effect of signaling on students' prose comprehension is significant only when structure strategies are deficient during production. Participants included first-year high school students (N = 120, mean age 16.0) and university students (N = 120, mean age 20.8). Students' tendencies to use structure strategies were evaluated and classified as lower-structure (LS) or upper-structure (US) strategy using the median (23 high school students and 25 university students). Participants performed sentence arrangement, recall, and reconstruction tasks. Each task consisted of expository sentences with or without signaling. The results indicated the following: (a) Signaling facilitated structure identification in organizational processes in the US strategy group of high school students, which improved their prose comprehension, whereas no effects were evident in the LS strategy group. (b) An identical effect was seen in the LS strategy group of university students, whereas it was not observed in the US strategy group. These results support our hypothesis. The boundary conditions for the effect of signaling on students' prose comprehension are discussed from the perspective of the production deficiency in structure strategy.