著者
恵美 洋彦 湯浅 通史 熊野 厚 山本 規雄 有馬 俊朗 海野 昌俊
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.174, pp.735-744, 1993 (Released:2009-09-04)
参考文献数
7
被引用文献数
9 9

Protections of corrosion in main hull structures and offshore structures have a great influence on their life. The authors have studied on protective means of the corrosions with investigation of actual conditions of aging effects to coatings in water ballast tanks for 22 ships aged 4 to 20 years.In the report, is described, i) a tendency of secular deterioration of the coatings, ii) primary factor of infulence to the deterioration, iii) forecast method of the coating conditions with aging effects, and iv) a proposal of the best specification and a maintenance for a long life service of ships.
著者
山本 耕平 赤堀 三郎
出版者
東京女子大学現代教養学部国際社会学科社会学専攻紀要編集委員会
雑誌
東京女子大学社会学年報 = Tokyo Woman's Christian University annals of sociology (ISSN:21876401)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-14, 2023-03-02

本研究は,プライバシー不安のジェンダー差がいかなる要因によって生じるのかを量的データの分析から検討することを通じて,情報技術が高度化する現代社会におけるプライバシー不安の性質を理解するための手がかりを得ようとするものである.科学技術のリスク認知に見られるジェンダー差の説明として先行研究において論じられてきたメカニズムを 4 つの仮説として整理し,2020 年に実施されたインターネット調査のデータ(n=5,961)を用いた線形回帰モデルの推定によって検証した.推定の結果,プライバシー不安は女性のほうが有意に高いこと,その差は知識量のジェンダー差や公的機関にたいする信頼のジェンダー差によっては説明できないこと,子どもの有無によってジェンダー差の度合いに違いがないことが確認され,女性が相対的にケア役割を内面化しやすいというジェンダー化された社会化の過程によってプライバシー不安のジェンダー差が生じる,という仮説が棄却されずに残った.ジェンダー化された社会化の過程にはケア役割の取得のほかにもさまざまな過程がありえ,それらの各々の過程が及ぼす影響を弁別することが課題として残るものの,科学技術にたいして疎遠な存在として社会化された集団が当該の科学技術にたいする不安を抱きやすいとすれば,現代のプライバシー不安は知識の提供などの短期的な対応によっては解消しづらいものである,という含意を得た. This study attempts to understand the nature of privacy concerns in contemporary society, where information technology is becoming increasingly advanced, by examining the factors contributing to gender differences. Four hypotheses were developed, drawing on the literature on gender differences in science and technology risk perception. They were tested by estimating linear regression models using data from the Internet survey conducted in 2020 (n=5,961). The estimation results confirmed that privacy concerns are significantly higher among women. Gender differences in knowledge or trust in public institutions cannot explain this discrepancy. Moreover, no difference in the degree of gender difference due to the presence or absence of children was detected. These results suggest that the gendered differences in privacy concerns are caused by the gendered socialization process, in which women are relatively more likely to internalize care roles. Considering other aspects of the socialization process as possible determinants of these gender differences is required. However, the findings imply that people who are socialized to be alienated from science and technology are likely to be anxious. Contemporary privacy concerns are difficult to resolve through short-term measures such as education.
著者
津田 尭哉 山本 真一郎 相河 聡 畠山 賢一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.4, pp.260-263, 2023-04-01

近年,大電力機器用電磁遮へい材の要求が増している.本研究では,一面を開口面とした金属きょう体内に送信コイルを配置し,きょう体から漏洩する近傍磁界について検討した.また,電磁遮へい効果を向上できる穴あき金属板について検討した.
著者
馬場 卓也 肥満 智紀 梅枝 覚 山本 隆行 湯澤 浩之 中山 茂樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.608-612, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
12

症例は65歳,女性.腹部膨満を主訴に来院.腹部CT・MRIで多量の腹水と下腹部に分葉状軟部腫瘍を認め,PET-CTで同部に高度集積を認めた.血清CA125は高値であった.腹水穿刺細胞診でadenocarcinomaと診断された.消化管・子宮・卵巣に異常を認めなかったため,原発不明癌として試験腹腔鏡を施行した.大網に一塊となった多房充実性腫瘍と腹膜播種を認めた.腫瘍は可及的に切除した.病理組織学的検査は漿液性乳頭状腺癌であった.以上より,腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の診断で術後はpaclitaxel・carboplatin併用による化学療法を施行した.一時は奏効したが次第に腫瘍は増大し,腹水も貯留するようになっていった.腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行うことで全身状態は保持しえたが,術後18カ月で死亡した.稀ではあるが原発不明癌では本症例も念頭に置き,診断・治療にあたるべきと考えられた.
著者
竹原 繭子 山本 泰豊 長谷川 良平
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-21-00042, (Released:2021-11-09)
参考文献数
23

We have been developing a cognitive assessment system based on an electroencephalography-based brain-machine interface (EEG-based BMI) that uses event-related potentials (ERPs) as a virtual “EEG switch.” ERP reflects a temporal change in attention and is also known as a potential biomarker for assessing cognitive functions for older people even with motor decline. We recorded EEG data from 26 healthy adult subjects (18-79 years old) who performed the target-selection task with the EEG switch and compared the result with that of a standard neuropsychological test, the “Trail Making Test” (TMT). We found a correlation between them, and the result showed that this system has the potential for early detection of cognitive decline in order people.
著者
高崎 新一 山本 大輔
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
防食技術 (ISSN:00109355)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.751-757, 1988-12-15 (Released:2009-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The practical treatments of environment conditioning and inhibitors for corrosion controlling are described. It is in principle possible to prevent corrosion by the removal of corrosive agents or by the addition of inhibitive agents. Desicants are used to reduce relative humidity which is the most important factor of corrosion in gas phase. In aqueous systems the environments can be made less aggressive by removal of dissolved oxygen, adjustment of pH, or deionization. Inhibitors are classified as volatile, water soluble, or oil soluble. Environment controls to reduce corrosion in boiler water systems, cooling water systems, and petroleum refining processes are also given.
著者
岩澤 昭一郎 Roberto LOPEZ-GULLIVER 河北 真宏 石川 彰夫 奥井 誠人 山本 健詞
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 39.36 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.27-30, 2015-10-08 (Released:2017-09-22)

筆者らのグループでは多視点映像システムの研究開発に取り組んでいる.本稿では,これまで構築してきた撮影・表示装置に伝送装置を加えた統合システムを開発したので報告する.本システムのパフォーマンス評価の予備実験として実施した主観評価実験の結果についても述べる.
著者
濱田 勇志 武井 圭一 守岡 義紀 野々垣 政志 茂木 恵 石川 由樹 山本 満
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.455-458, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
10

〔目的〕無呼吸発作・周期性呼吸に対する腹臥位の効果を,超低出生体重児の1例の介入結果から検討することである.〔対象と方法〕症例は,超低出生体重児であり,修正37週以降にも周期性呼吸・無呼吸発作を示した.呼吸管理目的に腹臥位によるポジショニングを3週間実施し,経皮的動脈血酸素飽和度(以下,SpO2)を指標に,背臥位へ姿勢変換した後の腹臥位の即時的変化と24時間変化を評価した.また,介入前後3週間での呼吸異常の有無を調査した.〔結果〕SpO2は,5分間変化(即時的変化),24時間変化のどちらでも平均値の上昇,変動幅の減少を示した.呼吸異常の出現頻度は,無呼吸発作で介入前5回,介入後は消失,周期性呼吸で介入前5回,介入後1回であった.〔結語〕腹臥位による呼吸管理は,呼吸異常の頻度を減少できることが示唆された.
著者
松宮 潤 宮崎 慎二郎 飴野 淳 山本 晃義
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.243-246, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
17

Platypnea orthodeoxia syndrome(POS)は,直立位によって強調され,臥位によって緩和する低酸素血症および呼吸困難を特徴とする.そのため,離床の妨げとなる可能性があるが,POSに対する理学療法の報告はされていない.今回,間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)に伴うPOSの理学療法を経験した.症例は,84歳の女性.抗ARS抗体症候群に伴うIPにより,座位での低酸素血症や呼吸困難が持続したため,POSが疑われた.心内および肺内シャントを認めず,IPの改善に伴い直立位での呼吸状態が改善したため,IPに伴うPOSと診断した.POSは直立位で症状を呈するため,臥位での運動療法にて身体機能の維持・改善を図り,病状に応じて離床を開始することで,ADLの再獲得に繋げられる可能性がある.
著者
桂樹 哲雄 森 翔太郎 十一 浩典 石川(高野) 祐子 小林 暁雄 伊藤 研悟 山本(前田) 万里 川村 隆浩
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.13, pp.47-61, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

農研機構では,2012-2015 年度に実施した機能性農林水産物・食品開発プロジェクトの成果物を元に,農林水産物が持つ機能性成分について文献情報と共に整理し,「機能性成分・評価情報データベース」として2018 年より公開している.一方,2019 年から,農研機構は島津製作所と共同で「食品機能性成分解析共同研究ラボ(NARO 島津ラボ)」を設置し,機能性農林水産物に関する様々な分析を実施してきた.また,農研機構内には戦略的イノベーション創造プログラム第2 期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」(SIP2)の分析データも存在する.このたび農研機構では,機構内で得られた食品機能性成分データを一か所に集める狙いから,「機能性成分・評価情報データベース」,「NARO 島津ラボ」のデータ,SIP2 の成果等を集約し,「農研機構食品機能性成分統合データベース」を開発した.収録するデータには,公開情報だけでなく閲覧者を制限すべきクローズドデータが含まれるため,柔軟なユーザ認証機能を導入し,適切なアクセス管理を行えるようにした点に特徴がある.本データベースでは,データの属性に応じて検索結果をグループ化して表示するファセット検索機能やグラフ表示機能などを実装した.
著者
寺下 智美 立原 素子 堂國 良太 吉崎 飛鳥 関谷 怜奈 田村 大介 山本 正嗣 上領 博 小林 和幸 西村 善博
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.163-167, 2018-03-25 (Released:2018-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景.炎症性筋線維芽細胞腫inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)は稀な低悪性度の軟部腫瘍であり,術前診断しえた例は非常に少ない.症例.39歳,男性.健診での胸部異常陰影の精査目的で当院を紹介受診された.胸部CTでは造影効果を伴う左B8をほぼ閉塞するような境界明瞭な4 cm大の腫瘤影を認めるも,血液検査では炎症反応の亢進や腫瘍マーカー値の上昇を認めなかった.気管支鏡検査では左B8に発赤を伴う腫瘤の露頭を認めた.経気管支針生検transbronchial needle aspiration(TBNA)にてリンパ球などの炎症細胞の浸潤を伴った細胞密度の高い紡錘形細胞の増生を認め,α-smooth muscle actin(αSMA)とanaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性であったためIMTと診断した.結論.本症例のように若年者の孤発結節影を認めた場合,IMTを鑑別にあげる必要がある.TBNAとALKの免疫染色は,術前診断に有用な手法であると考えられた.
著者
佐藤 剛章 山本 昌樹 野田 恭宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0256, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】高齢者の下肢外傷後は,膝関節拘縮を呈することが多く,受傷前の関節可動域(ROM)を獲得できない症例も経験する。今回,大腿骨骨幹部骨折の術後症例において,大腿骨前脂肪体(PFP)と内側広筋(VM),外側広筋(VL)との癒着瘢痕形成によって膝関節伸展拘縮を呈した症例を経験した。超音波検査装置(エコー)を用いた癒着瘢痕部位の同定と,エコーの動態観察による運動療法が奏効した。本症例における理学療法経過と,エコー所見を踏まえた病態について報告する。【方法】症例は70歳代の女性で,受傷前の日常生活活動が自立し,畑仕事も可能で,下肢の機能障害を認めていなかった。自宅敷地内にて転倒受傷し,他院へ救急搬送され,受傷1週間後に髄内釘による観血的骨接合術が施行された。術後3週(受傷4週間後)で当院に転院となり,当院での初期理学療法評価は,ROMが膝関節屈曲100°,伸展-15°,徒手筋力検査(MMT)が膝伸展4,Extension lagが陽性。VMとVL,PFPに圧痛を認め,膝関節屈曲時に大腿内側に伸張痛を呈していた。視診・触診において,膝蓋骨高位と外側偏位が確認され,膝蓋骨の長軸移動が制限されており,膝蓋大腿関節でのROM制限が顕著であった。大腿遠位部をエコーにて観察すると,全体的に高エコー像を呈していた。膝関節屈曲時のエコーによる動態観察では,VM及びVL,PFPの側方移動が低下していた。VMとVL,PFP間での動きが乏しく,これら組織間での癒着瘢痕形成や滑走性低下がうかがわれた。運動療法は,VMとVLの柔軟性改善を目的に,同筋の反復収縮やストレッチングを実施した。VMとVL,PFP間とでの癒着剥離と滑走性改善を目的に,膝蓋骨上部の軟部組織の持ち上げ操作と大腿四頭筋セッティングを実施した。さらに,膝関節屈曲最終域で,大腿遠位部軟部組織の側方グライディング操作を実施した。【結果】当院運動療法開始後2週で,膝関節屈曲が135°まで改善した。伸張痛は,内側から外側に変化し,VLを中心に治療を行ったがROMの改善が得られなかった,大腿骨顆部外側付近のエコーにて,プローブによるコンプレッションテストでは,膝関節屈曲最終域で動きの少ない一部のVLが存在し,同部の癒着瘢痕と柔軟性低下がうかがわれた。運動療法開始後9週の膝関節屈曲が160°,伸展0°,MMT膝伸展5,Extension lag陰性となった。独歩やしゃがみ動作も可能となり退院となった。【結論】本症例の初期エコーではPFPとVM間の癒着によって,膝関節屈曲時のVMの側方移動,屈曲135°以降ではVLの癒着瘢痕と柔軟性低下によるVLの側方移動の低下が観察できた。本症例ではVMとVL,PFP間の癒着瘢痕と柔軟性低下に対して介入することで膝関節屈曲制限の消失に至った。エコーによる動態観察は,癒着瘢痕部位の同定や状態を視覚的に把握でき,理学療法評価の客観性と治療効果の検証に有効な手段であると考える。
著者
山本 裕子 梅田 智広 溝口 幸枝 長尾 匡子 近藤 純子 東瀬戸 久子 Yuko Yamamoto Tomohiro Umeda Yukie Mizoguchi Kyoko Nagao Junko Kondo Hisako Higashiseto 千里金蘭大学 看護学部 奈良医科大学 千里金蘭大学 看護学部 千里金蘭大学 看護学部 千里金蘭大学 看護学部 藤井寺市地域包括支援センター
巻号頁・発行日
vol.13, pp.141-147,

本研究の目的は、健康な成人女性6名(平均年齢50.2歳±8.7歳)を対象にストレス値からみたタクティールタッチ(スウェーデン発祥の触れるケアの一種である)の有効性を明らかにすることである。対象者の施術前条件の統一を図る目的で数計算100問の解答を課した。タクティールタッチ施術グループ3名とタクティールタッチ施術を受けない安静臥位グループ3名に分け、各対象者の左胸部にヘルスパッチを貼付し、数計算時およびタクティールタッチ施術時(または安静臥位時)その後の安静10分後、20分後、30分後、飲水時のストレス値、心拍数、体温を測定しFFT(高速フーリエ変換)で算出しHRV解析した。HRV解析図およびストレス値と心拍数・体温のHRV解析結果の平均値比較から、タクティールタッチ施術を受けたグループの方がストレス値は大きく低下し心拍数も低下したのみならず持続も認められた。
著者
三浦 沙織 行田 正晃 山本 格 五十嵐 正徳 平 英彰
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-7, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
23
被引用文献数
8 12

四分子期に異常が発生するスギ雄性不稔4系統 (福島不稔1号, 福島不稔2号, 新大不稔11号, 新大不稔12号) の発現過程を明らかにするため, 光学顕微鏡, 蛍光顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, 透過型電子顕微鏡を用いてそれらの雄花の内部微細構造の観察を行った。小胞子形成過程において, 4系統はすべて正常個体と同様に四分子を形成した。しかし, カロース分解後小胞子に遊離せず, 花粉飛散期には塊状となって花粉は全く飛散しなかった。これらの雄性不稔では, カロースに囲まれている間に形成される外膜の初期外膜内層が発達せず, 小胞子同士が部分的に癒着していた。カロースの分解後, タペート組織からユービッシュ体の放出は認められず, 半透明の無定型物質が放出されそれが増加していった。4系統のスギ雄性不稔性が発現する原因は, 小胞子細胞質とタペート組織が, 花粉壁の外膜を構成する物質を正常に供給せず, 異常な活動を行うためであると考えられた。
著者
海老塚 広子 藤本 智子 潮来 茉里 山本 真衣 三澤 香莉 塩谷 一紗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.166, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】 母乳は乳児に栄養を与える手段として、栄養学的意義はもちろん免疫学的・精神的に優良であるといえる。母親の食事形態により乳児の母乳への吸いつきが悪くなることが観察され、妊娠・授乳期の母親の食事が、乳児の離乳食の嗜好性に影響を与えていることも推察される。本研究では、母親の食事摂取状況や食習慣と、母乳の匂いに着目し、その関連性について明らかにすることを目的とした。個人による母乳の匂いの差異および食事内容による母乳の匂いへの影響について検討した。【方法】 授乳婦7名を対象とし、3日間の食事調査および食事後約2時間経過した母乳の採取を依頼した。母乳の分析には、におい識別装置(FF-2A:(株)島津製作所)を用いた。統計処理はSPSSを用いて多変量解析、Asmell2を用いて臭気指数相当値による類似度解析を行った。【結果および考察】 授乳婦の食事調査の結果、エネルギー・主要栄養素量に大きな差異は認められなかった。母乳の匂いには個人差があること、カレーを摂取することにより、におい成分のバランスに変化が現れることが判明した。また、鯛のあらが母乳の匂いに変化を与えている可能性が高いことが確認された。この結果を、授乳婦への栄養指導に役立てて、健康な乳児の発育に貢献することが期待される。
著者
山本 佳世子 葛西 賢太 打本 弘祐
出版者
学校法人天理よろづ相談所学園 天理医療大学
雑誌
天理医療大学紀要 (ISSN:21876126)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-23, 2021-03-31 (Released:2021-08-16)
参考文献数
27

日本では終末期医療を中心に,スピリチュアルケアの議論と実践の蓄積がされてきたが,それは宗教的ケアとは切り離した形で進められてきた。では,非信者に対して宗教者による宗教的ケアは不要なのか。本稿では,宗教系病院における死亡した非信者患者及びその家族へのケアの一端を明らかにし,病院における宗教者による非信者患者や家族へのケアの意義や可能性,さらには「無宗教」と言われる日本人の死生観や宗教性の一端について示唆を得る。 天理よろづ相談所病院,キリスト教系病院A及びB,あそかビハーラ病院で活動する宗教者計23名に対し半構造化面接を行った。非信者患者の死後の「死者へのケア」としては,天理よろづ相談所病院およびあそかビハーラ病院では宗教者によるお見送りが,キリスト教系病院A・Bでは希望に応じたチャプレンによる葬儀の司式が行われていた。また,その家族へのケアとしては,キリスト教系病院Aでは月1回の遺族の分かち合いの会が,キリスト教系病院Bでは遺族カウンセリングが行われており,あそかビハーラ病院には院内の仏堂への遺族によるお参りの例があった。 これらの実践からは,「無宗教」を自認する多くの日本人とって,死後の世界や故人の魂につながるために必要な存在が「宗教」ではなく「宗教者」であることが示唆される。これまで地域コミュニティにおいてなされてきた宗教者による「死者へのケア」及び悲嘆者である遺族が「死者へのケア」をできるように宗教者が関わる「『悲嘆者の死者へのケア』をケアすること」が,病院付き宗教者に新たに求められるようになっていることが明らかになった。