著者
上田 篤志 山本 暁彦 加藤 大輔 岸 義人
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> ハリコンドリン類は上村、平田らによってクロイソカイメンから単離および構造決定されたポリエーテル系マクロリドである。<sup>2)</sup>その複雑な構造もさることながら、強力な抗腫瘍活性を示すことから創薬研究のシード化合物としての利用も試みられ、ハリコンドリンの右側部分をモチーフとした誘導体であるハラヴェンが2011年に乳ガンの治療薬として上市されている。構造的にハリコンドリン類は、C12およびC13位の酸化度の違いによりA、B、およびCシリーズに分類され、他方側鎖の構造によってノルハリコンドリン、ハリコンドリン、およびホモハリコンドリンに分類される (Figure 1)。これらの組み合わせからなる9種の亜種のうち、ハリコンドリンAを除いた8種類が現在までに単離報告されている。今回、未だ自然界からは単離されていないハリコンドリンAの初の全合成を達成したので報告する。合成のハイライトとしては、(1)Cr触媒によるC13/C14位でのカップリングとビニロガスエステルの面選択的エポキシ化を鍵とするC1–C19フラグメントの合成、(2)不斉Ni/Cr触媒反応<sup>3)</sup>に続くフラン環形成反応及び椎名マクロラクトン化による右側マクロラクトン環の構築、(3)C1–C38とC39–C54フラグメントのNi/Cr試薬による連結、(4)TMSOTfを用いた新規高立体選択的異性化反応によるC38-epi-ハリコンドリンAからハリコンドリンAへの異性化の4点があげられる。さらに合成したハリコンドリンAの構造の正しさを証明するため以下の実験を行った。第一にハリコンドリンAの合成に用いたC1–C38フラグメントから、既知の天然物ノルハリコンドリンA(2)およびホモハリコンドリンA(3)を合成した。第二にハリコンドリンAとその他のハリコンドリン類とのNMRデータの比較を行った。<sup>4)</sup></p><p>Figure 1.Structure of the halichondrin class of natural product.</p><p>(1)Cr触媒的カップリングと選択的エポキシ化によるC1−C19部位の合成</p><p> C1−C19フラグメントはヨウ化アルキン4と臭化ビニル5から合成した(Scheme 1)。これら二つの原料はいずれもNi/Crカップリング反応の良好な基質であるが、Ni触媒の量を低容量に抑えることでヨウ化アルキンのみを選択的に活性化させ、アルデヒドとのカップリング体を91%の高収率で得ることに成功した。生じた水酸基を酸化した後に得られたイノン6を、過剰のピリジン存在下HF・ピリジンで処理することで、三つのTBS基のうち、C9位とC11位のTBS基を選択的に脱保護することに成功した。この過程においてC9位の水酸基はイノン部位にオキシマイケル付加し、C11位の水酸基との水素結合による安定化でE体のビニロガスエステル7が選択的に得られた。ビニロガスエステル7のエポキシ化はジメチルジオキシランを用いることでコンベックス面から選択的に進行し、続く酸によるエポキシドの開環とHFによるTBS基の脱保護を伴うC14位でのケタール化までの3工程をワンポットで行うことで、収率92%でC12、C13位に水酸基を有するハリコンドリンA骨格の構築に成功した。最後にC12/C13位ジオールをp-アニシリデンで保護することにより、C19位でのカップリングの基質8へと導いた。Scheme 1において</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
山本 融
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

精神神経疾患は誰もが罹患しうるコモンディジーズであり、その克服は重要な課題である。我々は膜タンパク質MDGAの欠失が、各種精神神経疾患に通底する分子病態であるシナプス形成バランス異常を引き起こすことを明らかにしている。本研究ではMDGAの高次脳機能統御における役割を明らかにするするとともに、こうした異常を改善する薬剤を探索することにより、精神神経疾患の新たな創薬シーズを獲得することを目的とする。
著者
糀屋 絵理子 樺山 舞 山本 真理子 樋上 容子 小玉 伽那 向井 咲乃 矢野 朋子 奈古 由美子 中村 俊紀 廣谷 淳 福田 俊夫 玉谷 実智夫 奥田 好成 生島 雅士 馬場 義親 長野 正広 樂木 宏実 神出 計
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.602-609, 2021-10-25 (Released:2021-12-08)
参考文献数
21

目的:多病を抱える高齢者の疾患管理において,季節変動に伴う血圧の変化が,臨床上,問題であると指摘されている.本研究では,在宅医療を受療中の在宅療養高齢者において,季節変動に伴う血圧変動の実態を把握するとともに,療養中イベントとの関連,変動に関連する要因を検討した.方法:包括的在宅医療確立を目指したレジストリー研究(OHCARE研究)の協力機関にて在宅訪問診療を受療している,65歳以上の患者,かつ初回調査と追跡調査(平均追跡日数368日)で,夏季(6/1~8/31),冬季(12/1~2/28)に調査を行った57名を対象とした.診療記録より,患者の基本属性,血圧値,療養中イベントを含む情報を収集し,季節変動に伴う血圧値を把握した.また,収縮期血圧における季節間血圧変動について,中央値を基準に,季節変動大・小の2群に分け,対象の特性を比較するとともに,療養中イベント(入院,転倒,死亡)との関連の有無を検討した.結果:対象の約60%は要介護3以上と虚弱状態であった.患者の血圧平均値は,夏季120.5±12/66.9±8 mmHg,冬季124.7±11/69.5±7 mmHgと冬季の方が有意に高値であった(P<0.01).また血圧変動レベル大小2群で特性を比較すると,変動レベルが大きい群の方が小さい群より,夏季血圧が有意に低かった.また,血圧変動レベルが大きい群の方が「療養中の入院」の発生割合が有意に高かった(P=0.03).結論:在宅医療を受ける高齢療養者において,季節間で血圧は変動し,特に夏季の血圧低下が変動に影響する可能性が考えられた.また,血圧変動性の大きさが療養中の入院イベントリスクと関連する可能性が示唆された.これらの変動を把握した上で,医療者は臨床的な諸問題を考慮し,患者個々に最適な治療,ケアを検討する必要がある.
著者
山本 有造
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1993

博士論文
著者
鬼頭 幸三 大島 伸行 山本 誠 セベン シモネ
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-25, 2009

基礎検討として単純な車体外形形状と平坦床下形状をもつASMO車体について, LESと標準k-εモデルによる解析解を比較し, 車両の空力開発におけるLESの有用性を示した.実験による直接検証が困難な実用的な問題において, 標準スマゴリンスキーモデルによるLES解析解の実用的な評価方法を提案した.この評価方法によって複雑な車体外形形状と床下形状をもつV50車体の流れ場に関するLES解析解を評価した.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
兵頭 健治 浅野 誠 山本 栄一 菊池 寛
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.402-410, 2017-11-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

がん化学療法においては、がん組織ではなく、正常組織へ分布した薬物により惹起される副作用が抗がん剤の使用上の大きな問題となってくる。この問題を解決すべく、抗がん剤をDDS製剤化することで非選択的な生体内分布の抑制が期待される。特にナノ粒子化によるDDS製剤は正常組織に比して、がん組織への集積が向上するというEnhanced Permeability and Retention(EPR)効果が起こるといわれている。このEPR効果により副作用の軽減と薬効の増強が期待されている。医薬品の製剤設計においては、ヒトで最良の薬理効果を発揮できるように設計すべきであるが、臨床のがん治療における薬効と担がんマウスモデルでの薬効の間には乖離があることがしばしば問題となる。そのため、担がんマウスモデルの結果からのみではヒトで最適な処方を見出すことが難しい。実験動物から得られる薬理効果は、臨床における実態を反映できるのだろうか?本稿ではDDS製剤、特にリポソーム製剤の処方設計における留意点について紹介する。
著者
大西 健太 山本 周平 五味 成美 石原 隆史 中込 俊太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】</p><p></p><p>近年,介護老人保健施設(以下老健)は,在宅復帰への取り組みが強化されている。また医療機関で習得した身体機能から移動方法の確立や,在宅の環境調節等を行い在宅生活を支援している。今回は,Gait Solution Design(以下GSD)とT-Support(以下TS)を併用した機能訓練を実施したことによって歩行の安定性が向上し,在宅復帰に至った症例を経験したので報告する。</p><p></p><p></p><p>【症例紹介】</p><p></p><p>症例は脳梗塞により左片麻痺を呈された70歳代の男性。既往に脳出血による右片麻痺がある。主訴は既往にある右足の感覚鈍麻による歩行不安定性であり,歩行時の不安感を軽減させ,自宅で一人暮らしをしたいというHOPEがあった。他病院で6ヶ月間リハビリテーションを実施され,当施設入所となった。入所時より歩行はT杖で可能であったが,疲労感や不安感の訴えがあり歩行車と車椅子を併用していた。歩行は右下肢立脚期の股関節伸展相が少なく,右足関節は常に背屈,足趾過伸展の状態であった。また,表在感覚は脱失しており,歩行時の不安感から全身的に筋緊張が高い状態であった。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>介入期間は2ヶ月間とし,週3~5回(1回20分)の頻度で実施した。訓練時GSDとTSを使用した歩行訓練を実施した。GSDは右下肢踵接地時からの前脛骨筋の遠心性コントロール,TSは右下肢遊脚期の不随意な股関節屈曲を保証する事で,立脚期における股関節伸展相の誘発を目的とした。評価項目として,10m最大歩行速度およびTime Up and Go test(以下TUG)を計測した。また,川村義肢社製Gait Judge System(以下GJS)を用いて歩行周期における右足関節底屈モーメントのモニタリングを行った。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>歩行速度は初回時0.69m/sec,1ヵ月後1.00m/sec,2ヵ月後1.14m/secに改善を認めた。TUGでは,初回時18.4秒,1ヵ月後14.3秒,2ヵ月後14.7秒と共に改善が見られた。背臥位より見られていた右足関節背屈位および足趾過伸展位は消失した。それに伴い,GJSにおける評価では,歩行時右側下肢荷重量の増加に伴い,右立脚期での底屈モーメントの増大が認められた。</p><p></p><p></p><p>【考察】</p><p></p><p>今回,在宅復帰を目的として歩行に着目した介入を実施し,退院時はT杖歩行自立となり退所された。GSDとTSを併用した機能訓練によって,歩行速度は生活の自立に必要な1.00m/secを超え,さらにTUGも転倒リスクのカットオフ値である13.5秒に近い数値まで改善が認められた。GJSの結果から,この歩行速度の改善には過剰な筋緊張が抑制され,立脚後期における下腿三頭筋が効率的に働いたことが影響していると考えられた。以上のことから,介護老人保健施設においても機能回復に着目した歩行訓練を積極的に実施していく必要性があると考えられた。</p>
著者
山本 久美
出版者
日経BP
雑誌
日経トップリーダー = Nikkei top leader
巻号頁・発行日
no.424, pp.3-5, 2020-01

「同じ練習をして、同じ努力したら、みんな同じだけ試合に出られないといけない。だけど、レギュラーだけがたくさん試合に出場できる。だからレギュラーはほかのみんなを土台にして出させてもらっているという気持ちを持たないといけない」と、しばしば話し…
著者
山本 晃輔 曽我 千亜紀 Menant Julien
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.187-190, 2021
被引用文献数
1

<p>We developed the Japanese version of the Game Engagement Questionnaire (GEQ). In the survey, 600 participants completed the GEQ, the Buzz-perry Aggression Questionnaire (BAQ) and the Dissociative Experience Scale-II (DES-II). Factor analysis verified the four-factor structure (absorption, immersion, flow, and presence) and demonstrated it to be an acceptable reliability (Cronbach's α=.74–.86). The validity of the questionnaire was also confirmed by significant correlations of the total score between each subscale of the GEQ and the BAQ, or each subscale of the GEQ and the DES-II. The results indicated the acceptable validity and reliability of the questionnaire.</p>
著者
曽我 千亜紀 ムナン ジュリアン 山本 晃輔
出版者
大阪産業大学学会
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 = OSAKA SANGYO UNIVERSITY JOURNAL OF HUMAN ENVIRONMENTAL STUDIES (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
no.20, pp.89-104, 2021-03-31

本論ではインターネットというヴァーチャルな空間の中でも,とりわけ,ゲームの世界に注目し,それがどのような空間なのかを問う。世界中からアクセスすることが可能なオンラインゲームの空間は,グローバル化されたものなのだろうか,それともローカルなものに留まるのだろうか。 ゲームの世界は一般に,共通の趣味と興味を有しているメンバーによって構築されているという理由によって,フラットな空間を維持していると考えられている。しかし,この空間もまた社会や文化の影響を受ける以上,ローカルな発展,あるいは,分断が進んでいる可能性がある。 ゲーム空間はプレイヤーにとってどのような空間なのか。もし,プレイヤーに等しくゲーム空間が開かれている可能性があるならば,それはどのような意味においてなのかを明らかにする。
著者
齊藤 訓英 山本 利春 笠原 政志
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.219-228, 2021-06-01 (Released:2021-05-13)
参考文献数
54

A few studies have reported that nighttime sleep and daytime napping are significantly associated with sleep disorders, memory, concentration, cognitive ability, and academic performance in children. Moreover, sleep is identified as an important factor that has a profound effect on children’s athletic performance. If a short daytime nap is shown to benefit children involved in sports activities, this evidence could be used to improve children’s athletic performance in the afternoon. In this study, we investigated whether a short daytime nap could reduce the decline in athletic performance observed in the afternoon in children involved in basketball games. We investigated 10 elementary school-age male basketball players. The study was performed under two conditions, with and without a 20-min nap during the lunch break, and evaluation was performed under both conditions for 3 days each. The reaction and 20-m sprint times were measured after morning practice, before afternoon practice, and at the end of practice on all days. At the beginning of afternoon practice, the 20-m sprint time was significantly shorter (p<0.05) in the no-nap group (4.18±0.27 s) than in the nap group (4.24±0.24 s). In conclusion, our results suggest that a short daytime nap in children may reduce the decline in exercise performance observed in the afternoon.
著者
平 智 山本 貴子 丹野 ゆか
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.711-717, 2016-07

一般に果実の食味を左右する主な要因は,糖度(糖または可溶性固形物含量)と酸度(有機酸または滴定酸含量)ならびにそれら両者のバランスであるといわれる。そのバランスの指標としてしばしば糖酸比(糖度/酸含量)が用いられる。人間の味覚は,糖が持つ甘味に対しては寛大で,糖含量が高いほど嗜好度は高まるが,酸味に対しては厳しく,ある濃度を限界にしてそれ以上になると嗜好性が急激に低下するといわれている。ただし,どの程度の糖酸比がよいかは果実の種類や品種によって異なる。一方,1個の果実でもその品質は一様ではなく,果肉の部位によってかなり異なることが知られている。例えば,ニホンナシ'二十世紀'の可溶性固形物含量は,果梗部付近の果肉より果頂部付近の方が,また,果心部より果皮に近い部位で高く,赤道部付近の果皮と果心との中間部位の果肉で果実全体の平均値に最も近いといわれる。モモ'白鳳'では,中心部付近より周縁部付近の,果梗部より果頂部側の果肉の可溶性固形物含量が高い傾向が認められる。さらに赤道部の果肉についてみると,縫合線付近で低く,縫合線から離れるにしたがってしだいに高くなるが,縫合線の反対側では再び低くなるという。リンゴ5品種('つがる','スターキング・デリシャス','ジョナゴールド','陸奥'および'ふじ')の可溶性固形物含量は,果心側から果皮側に向けて,'ジョナゴールド'以外の品種ではこうあ部から果頂部に向けて高まること,また,滴定酸含量は果頂部およびこうあ部で高く,赤道部に向けて低下し,最も低くなる部位は果皮側から果心側に向かうにつれて果頂部側からこうあ部側へ移行するという報告もある。しかし,その他の種類の果実や品種についてはあまり明らかではない。本報告は,数種類の果実を対象にして,果肉の部位の違いが品質に及ぼす影響について調査した結果を取りまとめたものである。
著者
羽場 利博 得田 与夫 一柳 健次 木谷 栄一 森田 信人 山崎 信 中沼 安二 藤原 隆一 浜田 明 木藤 知佳志 山本 誠 藤田 博明 竹下 治生 山崎 義亀與 泉 彪之助
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.615-623, 1982

症例は50歳女性で空腹時の口唇・舌のシビレ感と放心状態を主訴として来院した.空腹時血糖 (FBS) は30~59mg/d<I>l</I>, 血中インスリン値 (IRI) は7~16μU/m<I>l</I>で, Turnerらの"amended"インスリン・血糖比 {IRI/(FBS-30) ×100} が30~ ∞ と高く, 絶食試験陽性より, インスリノーマを疑ったが, インスリン分泌刺激試験は陰性で, 膵血管造影や逆行性膵管造影も異常所見を認めなかった.<BR>腹部CTスキャンにて膵尾部背側にやや突出した径1cmの腫瘍が疑われたが, この所見のみでははっきり確診できなかった.<BR>経皮経肝門脈カテーテル法により門脈および脾静脈各所のIRIを測定したところ, 腹部CTスキャンの腫瘍部位にほぼ一致して脾静脈の途中に58μU/m<I>l</I>と他の部位に比して明らかな上昇を認め, 開腹術にて膵尾部背側に4mm突出した径1cmの良性腺腫と思われるインスリノーマを発見した.<BR>現在までの本邦における経皮経肝門脈カテーテル法についての症例報告を小括して若干の考察を加え, その有用性を強調するとともに今後CTスキャンも有力な検査法になり得ると考えた.