著者
山本 可奈子 横井 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0305, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】反張膝(Genu Recurvatum)は膝関節の障害リスクを高める要因となる。ACL損傷者は女性に多く反張膝を呈する例が多い。近年,若年女性は反張膝傾向にあるが,反張膝を呈する者の各アライメントの特徴を明記している研究は見当たらない。反張膝の有無による骨盤・下肢のアライメント,及び足底中心の差異を調べることとした。【方法】対象は下肢に整形外科疾患を有さない健常女性54名を,反張膝(GR)群15名(21.1±0.6歳),非反張膝(CR)群を39名(20.8±0.8歳)の2群とした。GR群の取り込み基準は膝関節伸展可動域が0°以上且つGeneral Joint Laxity Test(G Test)の膝関節が陽性と定義し,対象肢は膝関節伸展角が高値を示す方とした。(1)膝関節伸展可動域 被験者は背臥位にて,大腿遠位部を把持し膝関節伸展させ,大転子・外側膝蓋裂隙中央・外果を結ぶ線を測定した。(2)足圧中心計測 重心動揺計(Zebrisインターリハ社製)を使用し,被験者は開眼立位で3m先を注視し,測定時間は10秒を3回施行,10秒間の休息を入れた。X方向動揺平均中心変位(X軸変位),Y軸方向平均中心変位(Y軸変位)を指標に用いた。第2趾と踵中央を結ぶ線を左右方向,踵後縁を前後方向0mmの位置に設定し,内側・前方方向を+と定め,X・Y軸変位の値を計測時の足圧中心の座標とした。(3)G Test 肩・肘・手・股・膝・足関節と脊柱の7箇所の弛緩性を対象とし,陽性となる関節の数を加算した7点満点のG scoreを算出した。(4)骨盤・下肢アライメント計測 立位姿勢を1m先に設置したデジタルカメラ(Canon社製)で前額面及び矢状面から撮影を行った。撮影した画像をImage Jにて骨盤傾斜角(PT)・Q-angleを算出した。Leg Heel Angle(LHA)は下腿1/3・アキレス腱中央・踵骨上縁を結ぶ線のなす角度を腹臥位・座位・立位にて計測した。基準値を±0°とし正の値を踵骨回内とした。統計処理には2群間の各項目の差はスチューデントのt検定,2群の各項目にピアソンの相関係数を用い,有意水準は5%とした。【結果】2群の膝関節伸展角はGR群7.4(5.4),CR群1.1(2.7)であった。GJL scoreはGR群4.6(1.3)CR群2.5(1.1)とGR群はGJL test陽性であった。2群間でY軸変位に有意差を認めGR群81.8(12.4),CR群93.6(13.0)とGR群が後方偏位していた。GR群で膝関節伸展角とG score及びX軸変位で0.3,0.63と正の相関,臥位LHAで-0.3と負の相関を認めた。CR群において膝関節伸展角と相関は認めなかった。また,GR群のY軸変位とPTに0.48と正の相関を認めた。【結論】GR群では距骨下関節可動域が大きく,荷重と関節弛緩性の影響で立位LHAでは踵骨回内位となった。GR群の足圧中心は内側かつ後方へ偏位しており,反張膝を呈する者は内側アーチの減少が示唆された。GR群のY軸変位とPTに正の相関を認め,反張膝による後方重心を骨盤前傾増強させ代償している可能性が考えられる。GR群の特徴から反張膝に伴い膝関節及び足部の変形を及ぼす可能性が示唆された。
著者
堀内 成子 近藤 潤子 小山 真理子 木戸 ひとみ 大久保 功子 山本 卓二 岩澤 和子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.8-17, 1990
被引用文献数
1 5

本研究は, 妊婦および褥婦の睡眠の主観的評価と睡眠ポリグラフ所見との間の関連性を明らかにすること, および妊婦各期と産褥早期の睡眠推移を明らかにすることを目的に終夜睡眠を分析した.<BR>妊婦11週~37週までの正常妊婦7例と, 産褥1週~7週までの正常褥婦4例を対象とし, 終夜睡眠をポリグラフ装置で連続3夜測定した. 睡眠段階はRechtshaffen & Kalesの判定基準を用いた. 対照群として健康な非妊期の女性4例を選び, 測定した.<BR>その結果, 主観的な睡眠深度経過では, 前半単相性パターンと前半多相性パターンとに分かれ, ポリグラフ所見との間に関係が認められた. 睡眠パラメータでは, 妊婦群が非妊婦群に比べて睡眠率が低く, 特に末期群では眠りが浅くなっていた. 産褥早期には, 妊娠末期よりさらに睡眠率が低かったが, 妊婦末期に比べて%S4は増加の傾向が認められた.
著者
吉次 なぎ 阿部 真也 山本 佳世子
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.425-426, 2018-03-13

日本における自然災害の多さや昨今の国際情勢を鑑みるに, 避難経路の導出に適した手法の開発が必要である. しかし, 避難者が経路長や安全性を考慮して最適な避難先と避難経路を直感的に判断することは難しい. さらに, 非常時には避難場所や避難経路の環境が時々刻々と変化するため, 複数の避難先と避難経路を優先度付きで求める必要がある. 既存の経路探索アルゴリズムは始点と終点を結ぶ最短経路を導くが, 粘菌アルゴリズムは始点と終点を複数設定できる点, 複数の経路を同時に計算できる点で, 前者より優れている. 我々は, 地理情報システム(GIS)を用いて地理データを加工し, 粘菌アルゴリズムを用いた避難経路の導出手法を開発した.
著者
石川 紗希 中村 教人 高岡 早紀 山本 裕子 植松 明美 佐久間 貴裕 忍田 純哉
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.323-326, 2017

症例は77歳,女性。呼吸困難を主訴に救急外来に搬送された。来院時,心拍数111 /min,血圧70/52 mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度91%(room air)であった。心電図で右側胸部誘導のST低下を認め,経胸壁心エコーでは右室は著明に拡大し,造影CTで両側肺動脈に広範囲の血栓を認めたため,急性広範囲型肺血栓塞栓症と診断された。抗凝固療法に並行し,肺動脈血栓摘除術の方針とした。急激な循環虚脱に備え,経皮的心肺補助装置を準備の上,肺動脈血栓摘出術を施行した。術後の呼吸循環動態は安定しており,術翌日に人工呼吸器から離脱し,カテコラミン投与を終了した。術後4日目にはICUを退室した。急性広範囲型肺血栓塞栓症では,早期診断と適切な早期治療が大きく死亡率を改善させる。救命するには呼吸循環補助を含め,各部門と連携した集学的治療が必要であり,常に外科的治療を念頭に置き対応する必要がある。
著者
服部 倫弘 村松 渉 山本 尚
出版者
公益社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.382-390, 2021-05-01 (Released:2021-05-11)
参考文献数
78
被引用文献数
3

Peptides, which are elongated of peptides chain of amino acids linked by amide bonds, are elementary components in living systems and regulate many biological processes. Since the solid-phase peptide synthesis was introduced by Merrifield in 1964, chemical synthesis of peptides using solid-phase system has emerged as a valuable method due to its ease of operation and rapid synthesis of desired peptides. However, despite of the effectiveness of the solid-phase approach, typical reaction requires excess amounts of coupling reagents, bases, and amino acids to achieve maximum conversion. And the ease of operation led to accumulate undesired segments together with target peptide because solid-phase system is generally carried out by coupling amino acids with N-terminal amino acid residue of peptides in a stepwise approach without any isolation and characterization at each step. To solve these issues, we focused on the development of catalytic liquid-phase synthesis, which has advantage of isolating the growing peptide chain from reaction solution after each coupling step. Although several liquid-phase methods have been developed, there is a still considerable room for the improvement of racemization, generality, and ligation reaction. In this view, we have developed a mild, practical, and efficient methods based on substrate-control by using boronic acid, niobium, and tantalum as catalysts. Our methods can be applied for a broad variety of amino acids to furnish the desired peptides in excellent yields without significant loss of stereochemical integrity. The developed straightforward approach overcome a lot of problem associated with peptide synthesis. This article describes our recent achievement based on catalytic substrate-controlled peptide synthesis.
著者
山本 郁男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.73-120, 2005-01-01 (Released:2005-01-01)
参考文献数
91
被引用文献数
2 3

Thirty-six allyl substituted oxopyrimidine analogues such as barbituric acid (BA), barbiturates, uracil, thymine, and related derivatives including 13 new compounds were synthesized and their pharmacologic effects ([hypnotic activity, anticonvulsant activity against pentylentetrazol (PTZ)-induced seizures, and LD50]) and interactions with the barbiturates were evaluated in mice and rats. The results are briefly and parially summarized as follows. BA prolonged pentobarbital (PB)-induced sleep and had some central depressant effects. N,5,5-Triallyl-BA exhibited some hypnotic and anticonvulsant activities, although the other 5,N-allyl-compounds did not show any activity except for allobarbital (AlloB). N-Allyl-BA, 5-allyl-BA, N1,N3,5-triallyl-BA, N,5,5-triallyl-BA, and N1,N3,5,5-tetraallyl-BA also prolonged PB-induced sleep. Interestingly, N,5,5-triallyl-BA was the most potent in the interaction with AlloB, phenobarbital (PheB), amobarbital (AB), PB, and thiopental (TP) but not barbital (B). N1,N3,5,5-Tetraallyl-BA prolonged AlloB-, PB-, and AB-induced sleep but not B-, PheB-, and TP-induced sleep. N1,N3,5-Triallyl-B prolonged only PB- and TP-induced sleep. 5,5-Diallyl-BA prolonged PheB- and TP-induced sleep. N,5-Diallyl-BA prolonged only TP-induced sleep. In contrast, BA and N1,N3,5-triallyl-AB tended to antagonize AlloB, AB, and B. N1,N3,5,5-Tetraallyl-BA also slightly antagonized B, PheB, and TP. 5,5-Diallyl-BA antagonized only AB. The prolonging effects of BA, N,5,5-triallyl-BA, and N1,N3,5,5-tetraallyl-BA on PB-induced sleep were dose dependent. These results indicate that the position and number of allyl groups substituted on the structure of BA play an important role in their depressant activities. This review deals with the structure-activity relationship of allyl-substituted oxopyrimidines as part of our search for antagonists and agonists of barbiturates as well as their mechanisms of action.
著者
菅沼 崇 古城 和敬 松崎 学 上野 徳美 山本 義史 田中 宏二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.32-41, 1996
被引用文献数
1

本研究は友人によるサポート供与と評価懸念が生理的, 認知的, および行動的なストレス反応に及ぼす効果を実験的に検討することを目的とした。2 (友人サポートの有無) ×2 (評価懸念の有無) の要因計画で, 被験者は大学生79名。彼らはそれぞれ親しい友人と実験に参加した。サポート供与条件では, 友人は被験者がアナグラム課題を遂行している間, 自発的にそして被験者の要請に応じてサポートを供与した。他方, サポートなしの条件では, 友人はサポートを一切供与しなかった。評価懸念ありの条件では, 友人は被験者が課題を遂行する状況を観察することができた。従属変数としてのストレス反応は, 平均血圧 (MBP), 認知的干渉, および課題正答数で測定された。<BR>その結果, 評価懸念あり条件ではサポート供与の有無の条件間に差はなかったが, 評価懸念なし条件ではサポート供与あり条件の方がなし条件よりMBPが有意に低いことが認められた。したがって, 評価懸念をもたらさない友人のサポート供与はストレスを緩和する効果をもつことが指摘された。
著者
佐藤 義彦 土師 岳 叢 花 潘 儼 上田 恵理子 間瀬 誠子 山本 俊哉 山口 正己 廬 春生
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
植物遺伝資源探索導入調査報告書 = Annual report on exploration and introduction of plant genetic resources (ISSN:24347485)
巻号頁・発行日
no.23, pp.137-151, 2007-11

A survey for the distribution, utilization and conservation of fruit tree genetic resources was conducted in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District of China in cooperation with scientists of Xinjiang Academy of Agricultural Sciences from September 2 to 10, 2006. The abundance and diversity of the pear and stone fruit were observed in the region visited. Local varieties and seedlings of peach (Prunus percica ) and Xinjiang peach (P. ferganensis ) were observed in the region surveyed. Local variety 'Suan Mei', which is thought to be P. domestica , is cultivated in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District. Local varieties of three Pyrus species, P. × bretschneideri, P. armeniacaefolia and P. communis and their interspecific hybrids are distributed mainly in south-western part of Xinjiang Uygur Autonomous District. Besides these three species, P. betulaefolia is used as rootstock for Pyrus. But the diversity of these local varieties is rapidly declining with the spread of commercial cultivars that were introduced from other provinces. Analyses for genetic diversity of pear and stone fruits based on molecular markers were carried out.
著者
山本 奈生
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.120-133, 2007-10-20 (Released:2017-03-30)

G・ケリングらの「割れ窓理論」は,これまで国内外の警察政策に対し一定の影響力を発揮してきたが,そこに見られるコミュニタリアン的色彩の強さから,賛否を巡る多くの議論の的ともなってきた.しかし,そうした議論とは裏腹に,政策決定の現場やマスメディアにおいては,ほとんどの場合,「治安の悪化」に対する特効薬として肯定的に評価されてきたと言ってよい.本稿では,「割れ窓理論」に基づく取締り政策の事例として,京都市における「祇園・木屋町特別警察隊」の試みを取り上げ,質的な分析を加えることによって,ここでの取り組みが指示する「無秩序」がどのような立場から定められているのかを問題とする.この調査が照準するところは,(1)京都市の取り組みで,「安全・安心」を希求する主体はどの位概に在るのか,そして何が「無秩序」として分割線の外部に引き出されているのか.(2)バーテンダーなど街で働く人々は,この警察政策をどのように捉えているか,の二点であり,これらの考察を通して,「割れ窓理論」が持つ理論的な問題点を描写する.

1 0 0 0 OA 夢とうつつ

著者
山本 信
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.11, pp.45-61, 1961-03-31 (Released:2009-07-23)

私がここで夢をとりあつかうのは、意識に関する一連の問題のうちの一環としてである。それも、たとえばフロイドの理論におけるように、内容的な側面からする夢の成立機構や意味についての問題ではなくて、夢における意識のあり方一般についての問題、もつと限定していえば、夢と知覚との区別の問題である。直接の機縁となつたのは、いわゆるデカルトの方法的懐疑であつて、それが成りたたないということを、私としては示したいのである。これは一つの小さな特殊問題にすぎない。しかし夢そのものに私の哲学的興味が向けられているわけではなく、目差すところはやはり正常な意識にある。その「正常さ」ということの意味や、意識存在の特性といつたことを考えるにあたつて、夢体験をどう性格づけるかが、少くとも一つの論点になると思われる。従つてこの考察は、知覚や想像や普遍概念などに関する認識論的な諸問題にも、また世界と人間とのかかわり方に関する存在論的な問題にも、直接間接に結びついてくるであろう、多少なりともそのことを示すため、最初に一節をついやし、哲学史を借りてこの問題の由来をのべ、また最後に、ここでえられた結論と関連のある幾つかの私見を附記しておく。

1 0 0 0 IR トピックス

著者
須藤 靖 山本 智 上田 正仁 田近 英一
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース (ISSN:21873070)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.18-19, 2019-01-20

物理学専攻 佐藤勝彦名誉教授が瑞宝重光章を受章/物理学専攻の大小田結貴さんが,英BBC「ことしの女性100 人」に選ばれました/物理学と人工知能を融合-知の物理学研究センター始動!/駒場1 年生向け理学部ガイダンス報告
著者
山本 真也 田中 正之
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第22回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2006 (Released:2007-02-14)

社会的な場面では、働き手と利益の受け手が必ずしも同一個体であるとは限らない。このような場面でヒトは互恵的に協力しあうことができるが、ヒト以外の動物種でこのような行動を実証的に調べた研究は少ない。本研究では、実験的に操作した社会的場面におけるチンパンジー2個体の利己行動・利他行動を調べた。群れで生活する飼育下のチンパンジー、母子3組とおとなのペア2組を対象とした。隣接する2つのブースに自動販売機を1台ずつ設置した。この自動販売機にコインを投入すると隣のブースにリンゴ片が出た。ブースに1組のチンパンジーを入れ、2つのブースにコインを1枚ずつ実験者が交互に供給した。間仕切りが開いていてブース間を行き来できる条件(母子のみ)と閉まっていて各ブースに1個体ずつ入っている条件でおこなった。間仕切りを開けた条件では、母子は利他的なコイン投入行動を交互に継続させず、最終的にコイン投入も報酬も子どもが独占した。その過程で、相手のいる側のブースでコインを投入し、素早く移動して報酬を獲得する行動や、相手にコインを渡して投入させ、自分が報酬を得るといった利己的な行動がみられた。間仕切りを閉じた条件でも、母子では利他的なコイン投入行動は交互に継続しなかった。子どもが先にコインを投入しなくなった。一方おとなのペアは、1個体統制場面に比べて投入までの潜時が伸びたり投入拒否がみられたりしたが、利他的なコイン投入行動を交互に継続させた。働き手と利益の受け手が異なる場面で、互恵的な協力関係が母子間では成立せず、おとな2個体間では成立した。自分が働いて相手が利益を得るという一時的に不公平な状況への寛容さが個体間関係や発達段階で異なることが示唆された。おとな2個体での結果は、チンパンジーもヒト同様、自分の行為が相手の利益になることを理解したうえで互恵的に協力しあう可能性を示している。