著者
酒井 和也 宇多 高明 足利 由紀子 清野 聡子 山本 真哉 三原 博起 沖 靖弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1075-I_1080, 2011

大分県中津干潟の三百間地区の砂州においては、隣接する蛎瀬川の河口閉塞が著しいことから、対策として河口前面の堆積土砂を除去する一方、その砂を三百間砂州の西部へ運んで養浜するというサンドリサイクルの計画が立てられた。養浜砂は、三百間砂州の頂部から3600m<sup>3</sup>浚渫され、西端の斜路前に投入された。その際、投入砂が先端部へと急速に戻るのを防止するために、砂州の中央部に袋詰め石製の長さ24mの突堤が設置された。本研究では、この間、2007年から2010年までに4回の空中写真撮影と縦断形測量を行って海浜状況の変化を調べ、サンドリサイクルの効果と沿岸漂砂の制御を目的とした袋詰め石突堤の効果を調べた。この結果、袋詰め石突堤は延長が短く天端高も低いことから、既存の突堤と比較して、緩やかな汀線変化をおこすことがわかった。
著者
阪野 朋子 小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子 成田 公子 山本 淳子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-153, 2015

本研究では,東海三県に居住する人々を対象に,子・母・祖母の三世代別に通過儀礼の認知と喫食状況を調べ,東海地方の特徴と伝承に影響する要因について検討した。<br> 認知率では,経験の有無が値に影響し,子世代の百日祝いと初誕生および結納と婚礼の認知率が母と祖母世代より有意(<i>p</i><0.05)に低かった。経験率では,経験時の経済的・社会的状況の厳しさと,儀礼の意義の希薄化が経験率を減少させた。しかし,母と祖母世代の長寿に見るように高齢者が同居する条件は経験率を向上させた。また,儀礼における地域活動や人々の意識の高さが認知率と経験率を向上させた。東海三県の特徴として製造量の多い外郎と漁獲量の多いアサリが儀礼食に利用されていた。
著者
野田 航 石塚 祐香 石川 菜津美 宮崎 優 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-019, (Released:2021-06-21)
参考文献数
17

本研究の目的は、発達障害のある児童2名の漢字の読みに対して刺激ペアリング手続きによる遠隔地学習支援を実施し、その効果と社会的妥当性について検討することであった。事例Iにおいてはタブレット端末による刺激ペアリング手続きの教材を用いた自律的な学習をビデオ通話およびメールで遠隔地学習支援を行い、事例IIにおいてはビデオ通話を用いて教材提示から評価までをすべて遠隔で実施した。両事例とも、課題間多層プローブデザインを用いて介入効果を検証した結果、漢字単語の読みの正答率が向上した。また、対象児と保護者を対象に実施した社会的妥当性のインタビューから、本研究の遠隔地学習支援は高く評価されていた。一方で、事例Iにおいては介入効果の維持に一部課題が残った。介入効果を維持させるための介入手続きの改善、介入効果の般化の検討、介入実行度の検討など、今後の課題について考察した。
著者
山本 善丈 梅田 政裕 森重 清利 西川 泰治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.421-425, 1988-08-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

チオニンの蛍光特性について検討し,その発光機構を明らかにした.チオニンの蛍光はキノイド構造に起因し,同じチアジン環色素であるメチレンブルーの蛍光より強い.この蛍光を利用してチオニン生成反応により,(0.1~2)×10-5mol dm-3(吸光光度法),(0.2~10)×10-7mol dm-3(蛍光法)の硫化物イオンが誤差2%以内で迅速,簡便に定量できることを明らかにした.
著者
山本 奈美 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.341-344, 1990-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

ノーズ・クリップ法でワインの官能評価をおこない, 赤ワインは味と香りの両方に白やロゼと判別される特徴を持つこと, ワインのブドウ品種の判別や熟度の評価には味よりも香りの方が重量な要因であることが示され, ワインの官能評価における香りの重要性が確認された。終わりに, 審査にご協力いただいたパネリスト各位に, 深謝致します。
著者
古城 隆雄 尾島 俊之 中俣 和幸 家保 英隆 田中 剛 牧野 伸子 鈴木 孝太 平山 朋 山本 光昭 鶴田 憲一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.385-392, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)

目的 公衆衛生の進歩発展および向上のためには,科学的な根拠に基づく政策の展開が求められ,学術と行政の連携が重要である。そこで,日本公衆衛生学会を活用しながら,学術と行政のさらなる連携の推進方策を検討することを目的に,日本公衆衛生学会学術行政連携検討委員会(委員長:鶴田憲一)の活動を行った。方法 学術行政連携検討委員会を2018年度~2019年度の2年間に3回開催し,さらにメールによる意見交換を行った。また,2019年10月24日に第78回日本公衆衛生学会総会において「根拠に基づく公衆衛生政策(EBPM)の具体的事例とノウハウ(学術行政連携検討委員会)」と題したシンポジウムを開催し,学術と行政の両者から,これまでの連携の具体的事例とノウハウについて発表し,参加者との質疑を通じて今後の課題についても議論した。活動報告 学術行政連携検討委員会の検討では,日本公衆衛生学会の運営における連携,行政業務データの精度に関する共通認識,行政におけるデータ活用の推進,人材確保と育成による連携の重要性があげられた。シンポジウムでは,委員長から学術行政連携検討委員会の設立経緯と趣旨を説明した後,データの活用に関する行政と学術のギャップについて,目的,研究の位置づけ,データ形式,人材,データ提供への課題の5点について整理した。続いて,行政の観点から,都道府県行政と公衆衛生学会の連携,地方行政職員の演題発表の変化,災害対応における学術への期待について,学術から,大学による行政の調査研究の支援,行政と連携したエビデンスづくりについての報告と質疑が行われた。結論 学術と行政の連携により,行政にとっては,根拠に基づく政策形成の深化とそのための人材育成が推進できる。また,日本公衆衛生学会総会開催は,公衆衛生従事者の資質の向上と経済効果につながる。学術にとっては,求められる研究内容の把握やデータ活用が推進できる。
著者
山本 隆志
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.157, pp.83-105, 2010-03

荘園・村落に居住する百姓の生活は田畠耕作を基本としたが、それだけでない。地域の自然を自然に近い状態で利用し、生活の糧としてきた。このような地域的自然の利用・用益を「生業」と概念化し、そのあり方を歴史的にとらえようとすると、「中世史」という時代区分のなかだけで問題をとらえることは難しい。本稿では、葦と菱を事例にして、平安時代から江戸時代前期の史料に基づいて考察するものである。難波浦では浦の用益の一つとして葦苅取が平安期から盛んであり、都の需要と結びついて増大したが、個別の荘園や村落の排他的独占地域は設定されなかった。琵琶湖周辺では鎌倉期からの用益が認められるが、南北朝期には荘園領域に編入されており、奥嶋庄では百姓等が庄官と対抗しつつ自己の独占的排他的葦場を設定する。これが戦国期になると村の排他的葦場を確保する動きが多くなり、当該地域の舟運・漁業などの多様な用益を否定することになるが、多様的用益を求める郷・村の動きも強く、相論が恒常的となり、調停も日常的となり、場合によっては領主権力に依存することとなった。菱の用益も奈良・平安期から見られるが、平安後期の武蔵大里郡のように水害地に在地側が意図的に栽培することも見られ、農民の救荒的食料として期待された。戦国~江戸期には、尾張や摂津の湿地帯では、菱栽培が都市需要を見込んだ商品的作物として栽培された例が見られるが、菱を独占的排他的に栽培する菱場を設定するにはいたらなかった。葦・菱ともに浦や湖辺の湿地に用益が見られるが、それは湿地の多様な用益の一つとして進展するのであり、葦場として特化した用益地の設定には在地での抵抗が起こり、葦場は設定されても、限定的な方向が在地の相論・調停のなかで展開する。湿地用益は、特定の用益目的に限定される傾向にも向かうことは少なく、多様な主体と用益形態が展開しており、そうした方向が在地での相論・調停のなかで維持されてきた、と考えられる。「湿田」もこのような多様な用益形態の一つであろう。
著者
山本 剛 坂根 裕 竹林 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI, ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.13-20, 2003-09-26
参考文献数
17
被引用文献数
5

カメラ,マイク,モーションセンサを搭載したマルチモーダルヘッドセットを装着することで,話者が会話中に行う非意図的な「うなずき」動作を検出し,会話中の重要箇所をマルチモーダルセンサデータから知識コンテンツとして抽出するシステムを実装した.本稿では,会話の重要箇所を把握する手段としてのうなずきの有効性を実験を通して述べ,状況や個人差を考慮したうなずきの検出方法とその応用について論じる.
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.81-84, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
9

本稿では,疑似科学的言説に対する消費者向け教材開発のガイドラインの作成過程を報告している.疑似科学の問題が深刻化している社会的状況に対して,消費者教育などの関連分野における既存の教材ではその対応が十分でなく,既存の教材では一般消費者が疑似科学の判定を行うには不十分である(ES0.11,95%CI[-0.21, 0.44]).そうした現状を打破するために本研究では,疑似科学に対する消費者向け教材開発のガイドラインの提案を目的として,関連領域における既存のガイドラインおよび筆者らが運営する「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の実践よって生じた課題から,新規ガイドラインの具体的観点を抽出した.作成したガイドラインは試験的なものであるため,より厳密化するための方策を講じる必要がある.
著者
宍戸 常寿 工藤 郁子 クロサカ タツヤ 庄司 昌彦 山本 龍彦
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.201-224, 2020-12-01 (Released:2021-01-07)

日本が目指すべき未来社会の形としてSociety5.0が提唱されてから数年が経ち、デジタル経済社会においてはサイバー空間とフィジカル空間の融合は深化している。そこでは、Society5.0の名の下にイメージされていた創造性の発揮や利便性の向上が見られる一方で、従来の個人情報保護政策や競争政策の枠では捉えきれないデジタル経済社会における「新たな課題」も出現してきている。このような「新たな課題」を適切に捉えるためには、現在起きている地殻変動を、単にサイバー空間の領域が拡張し、フィジカル空間を侵食しているものとイメージするのではなく、むしろ、サイバー空間における活動とフィジカル空間における活動が、データの流通を介して相互に深く影響を与え合うという関係性・循環性を適切に認識することが重要である。そのようなサイバー空間とフィジカル空間の活動がデータの流通を介して相互に深く影響を与え合う相互の関係性・循環性を含む総体としての「ネットワーク空間」における状況と課題について、大きく4つの議題(「ネットワーク空間の環境変化とその背景」、「環境変化に伴う社会経済的な課題」、「課題解決に向けて採るべき政策、目指すべき姿」、「新型コロナウイルス感染症拡大に係る問題意識」)に分け、それぞれについて話題を提起しつつ、有識者による議論を行った。