著者
福田 航 横山 茂樹 山田 英司 片岡 悠介 濱野 由夏 池野 祐太郎 五味 徳之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-31, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,ACL 再建術前後における片脚スクワットの運動学・運動力学データの変化と健患差を把握することである。【方法】対象はACL 再建術後患者11 名(年齢24.9 ± 6.9 歳,男性8名,女性3名)であった。方法は,床反力計と3 次元動作解析装置を用いて術前と術後9 週時の片脚スクワット下降相の膝屈伸モーメント変化量と体幹および下肢の関節角度変化量を測定し,健側と患側,術前と術後で比較した。【結果】ACL 再建術前後ともに患側は膝屈曲変化量が小さく,体幹前屈変化量は大きく,膝屈伸モーメント変化量は伸展方向に小さかった。患側の骨盤前傾変化量は術後に増加した。【結論】術後に膝屈伸モーメント変化量が小さかったことは膝伸展機能の回復が不十分であると示唆される。術後の膝屈伸モーメント変化量に関連する因子は体幹前屈変化量,膝屈曲変化量,骨盤前傾変化量が考えられ,スクワット動作を観察する視点になると示唆される。
著者
山田 哲久 名取 良弘 今本 尚之
出版者
日本神経救急学会
雑誌
日本神経救急学会雑誌 (ISSN:16193067)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.32-37, 2014-07-11 (Released:2015-05-02)
参考文献数
11

Sudden intense headache commonly develops in subarachnoid hemorrhage. Subarachnoid hemorrhage can be easily diagnosed using head computed tomography (CT) or head magnetic resonance imaging (MRI). We treated two patients with subarachnoid hemorrhage who could not be diagnosed on the basis of imaging findings. We diagnosed them with subarachnoid hemorrhage after performing lumbar puncture. Here, we report the case findings.Case 1: An 82-year-old manHe developed sudden intense headache while going to eat at home. Head CT did not reveal a clear subarachnoid hemorrhage. The iso-intensity mass was seen in basal cistern by head MRI. However, head magnetic resonance angiography (MRA) revealed an aneurysm in the anterior communicating artery. Cerebrospinal fluid extracted after lumbar puncture was clear. We considered the patient to have an unruptured cerebral aneurysm.Case 2: A 38-year-old womanShe developed sudden intense headache and vomited twice while relaxing at home. The iso-intensity mass was seen in basal cistern by head MRI. However, head MRA revealed an aneurysm in the right internal posterior communication artery. Cerebrospinal fluid extracted after lumbar puncture had a light red color. We considered the patient to have subarachnoid hemorrhage due to a ruptured cerebral aneurysm, and performed emergency clipping and craniotomy.Consideration and conclusionWe think that performing an imaging examination in all patients with headache is unnecessary. We performed an imaging examination only when we suspected subarachnoid hemorrhage after analyzing a patient’s medical history. If subarachnoid hemorrhage is suspected in a case with no abnormal imaging findings, lumbar puncture should be considered.
著者
石森 洋行 遠藤 和人 山田 正人 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-49, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

放射性物質に汚染された廃棄物の焼却灰はその濃度によって埋立方法が異なるものの,放射性物質の拡散防止対策として土壌吸着層の設置は義務付けられており,その性能評価は重要である。本研究では,放射性セシウムに対する土壌や廃棄物,吸着材等の吸着特性を把握するために,放射能汚染飛灰から作製した4 種類の飛灰溶出液を溶媒として,22種類の試料を対象に吸着試験を行った。その結果より分配係数を評価し,その影響因子を検討した。また試料に吸着した放射性セシウムの脱着特性を調べるために,純水,1 mol/L 酢酸アンモニウム,人工海水,飛灰溶出液を溶媒とした溶出試験を行い溶出率を評価した。
著者
山田 真司 井村 和孝 新井 裕子 小田 満理子 西村 英樹
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.46(1995-MUS-010), pp.21-28, 1995-05-19

音楽演奏者は自らの音楽的表現を行うために、正確に身体運動を制御する能力を有すると考えられる。音楽演奏者の基礎的な時間的制御能力を測定するため、中程度のピアノ演奏能力を有する音楽専攻学生に等間隔タッピングを行わせ、その時間間隔ゆらぎを分析した。その結果、等間隔タッピングの時間的制御に、過去約20 tapの時間間隔を保持する記憶機構が介在することが示唆された。また、様々なレベルのピアノ奏者、打楽器奏者および非音楽奏者に等間隔タッピングを行わせた結果、熟練したピアノ奏者は、非熟練者や非音楽奏者よりもゆらぎが小さかった。また、打楽器奏者は熟練したピアノ奏者よりも時間的制御が優れてはいなかった。
著者
山田 奨治
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.103-128, 2009-11

六十四種類の「百鬼夜行絵巻」を対象に、その図像の編集過程の復元を試みた。描かれた「鬼」の図像配列の相違に着目し、情報学の編集距離を使って絵巻の系統樹を作成した。その結果、真珠庵本系統の「百鬼夜行絵巻」の祖本に最も近い図像配列を持つのは、日文研B本であるとの推定結果が得られた。また合本系の「百鬼夜行絵巻」についても図像配列を比較し、それらの編集過程の全体像を推定した。
著者
重宗 明子 三浦 清之 上原 泰樹 小林 陽 古賀 義昭 内山田 博士 佐本 四郎 笹原 英樹 後藤 明俊 太田久稔#清水博之#藤田米一#石坂昇助#.中川原捷洋#奥野員敏#山田利昭#小牧有三#堀内久満#福井清美#大槻寛#丸山清明
出版者
農業技術研究機構中央農業総合研究センター
雑誌
中央農業総合研究センター研究報告 (ISSN:18816738)
巻号頁・発行日
no.16, pp.17-37, 2011-03

「華麗舞」は1979年に北陸農業試験場(現中央農業総合研究センター・北陸研究センター)において,超多収品種の育成を目的として,インド型多収品種「密陽23号」を母とし,日本型多収品種「アキヒカリ」を父とする人工交配を行って育成された品種である.1990年から「北陸149号」の系統名で関係各府県における奨励品種決定調査試験およびその他の試験に供試してきたものであり,2006年10月4日に新品種として「水稲農林415号」に命名登録された「華麗舞」の特性の概要は以下のとおりである.1. 出穂期は「コシヒカリ」より4~5日早く,成熟期は「コシヒカリ」より5~9日早く,育成地では"中生の早"である.2. 稈長は「コシヒカリj」より20cm程短く" 短",穂長は「コシヒカリ」より長く" やや長"穂数は「コシヒカリ」より少なく"少",草型は"穂重型" で,脱粒性は"難"である.粒形は"細長"である.千粒重は「コシヒカリ」よりやや軽い. 3.収量は,標肥では「コシヒカリ」より少ないが,多肥では「コシヒカリ」並である.4.炊飯米は, 「コシヒカリ」.「日本晴」よりも粘りが少なく,硬い.表面の粘りが少ないのでとろみのあるカレーソースとのなじみが良く,カレーライスへの嗜好性が高い.5. いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaとPibを併せ持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性は"中",穂いもち圃場抵抗性は不明である.穂発芽性は"やや易",障害型耐冷性は"極弱"である.
著者
山田 耕作
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-19, 2005-10-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
李 偉 尾方 隆幸 山田 奨治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4, pp.1-8, 2009-01-16
参考文献数
11

京都盆地北部に現存する164の日本庭園のリストを作成し,GISを用いて地図化した。庭園築造数を歴史的にみると,江戸時代と大正時代にそのピークが認められる。土木技術が発達した江戸時代には大規模な庭園が数多く築造されたが,池などの地表水を欠く庭園の多くが扇状地扇央に分布しているのに対し,地表水のある庭園は湧水のみられる東山丘陵の山麓に集中している。明治~大正時代に建設された庭園のほとんどは1890年に完成した琵琶湖疏水沿いに位置しており,池・流れ・滝などの水景が重視されている。これらのデータは,京都盆地に分布する庭園が自然的にも人為的にも水文条件の影響を強く受けていることを示している。This study listed 164 Japanese gardens situated in the Kyoto basin, consisting mainly of the Kamogawa alluvial fan and the Katsuragawa flood plain. The listed gardens were mapped with Geographic Information System (GIS). During the Edo era, civil engineering improvements promoted construction of large scale gardens. Gardens lacking surface water are mainly distributed in the center of the Kamogawa alluvial fan with relatively deep groundwater. Gardens with surface water, in contrast, are concentrated along the foot of the Higashiyama hills where hydrological recharge zones produce rich springs. During the Taisho era, Biwako-sosui (canals from the Biwa Lake to the Kyoto basin) contributed to construction of gardens with surface water, such as artificial ponds, flows and falls. Both physically and artificially, hydrological conditions controlled the geographic distribution of Japanese gardens.
著者
山田 泉
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.4-18, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
10

人は一生を通じて自己実現の過程を歩むと言えよう。自己実現とは完全に自分らしく生きていると自らが実感できる状態のことである。そのために「自分とは何か」を追求し,今,現在の自己認識から,目指すべき生き方形成 (キャリア形成) の方向性を得,それに向かって人生の設計 (キャリアデザイン) を行う必要がある。自己認識とは,過去から現在の自分,未来へと続く身近な人々の人生とのかかわり及び同時代に生きる身近な人々とのかかわり,関係性から「他者の他者としての自分」 (鷲田 1996:105-25) として反転的に得られるものである。タイトルを「多言語・多文化背景の年少者のキャリア形成」としているが,外国につながる子どもたちの多くが十全に「多言語・多文化背景」があるかどうかは疑わしい。彼・彼女らのキャリア形成において,「多言語・多文化」であることは,社会参加のためのスキルとしてのエンプロイアビリティ (労働市場においてプラスに評価されうる就業能力) だけでなく,自己実現の過程を歩む上で必要な自己認識にとっても重要なものである。外国につながる子どもたちに母語・母文化 (継承語・継承文化) を保障することは日本社会の責務である。
著者
井川 雅子 山田 和男
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.17-22, 2017 (Released:2019-04-24)
参考文献数
32

身体の様々な部位の異常感を奇妙な表現で訴える症例を,一般にセネストパチー(cenesthopathy)と呼ぶ.歯科を受診する本疾患の患者のほとんどは高齢者で,口腔内の異常感を単一症状的に訴える狭義のセネストパチーである.セネストパチーは従来より難治と考えられてきたが,その半数は治療で改善するという報告もある.本報告では向精神薬が著効した3例を供覧し,その病態生理と治療法について考察する.症例の概要:①65歳,男性.歯肉から糸やコイル状の金属が出ると訴えていた.アリピプラゾール6mg/日で9か月半後に症状はほぼ消失した.②60歳,男性.上顎左側側切歯から左胸部にかけて“神経の糸”のようなものがつながっており,ぐるぐる回ると訴えていた.うつ病治療のために服用していたアミトリプチリン50mg/日に,新たにリスペリドン1mg/日を加えたところ1年後に症状はほぼ消失した.③45歳,女性.下顎左側臼歯部に痛みの電流が流れ円を描いて回っていると訴えていたが,アミトリプチリン75mg/日で3か月後に症状はほぼ消失した.考察:高齢者に多い口腔内セネストパチーには,統合失調症圏またはうつ病圏の病態に加え,加齢に伴う脳器質的変化が体感異常に関与している可能性がある.結論:治療の第一選択として向精神薬療法を用いること,また治療薬としては,抗精神病薬のみではなく,抗うつ薬も選択肢に入れることを検討すべきであろう.
著者
山田 博
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.618-621, 1973-11-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
1

私は1970年にアメリカからStrength of Biological Materials(生物強弱学)という本を出版したが, これに対して多数の書評が外国雑誌に掲載された. たとえば, アメリカのMichigan大学のV.L.Roberts博士は生物力学の文献としてはなはだ貴重なものであり, これの利用性は非常に大きいといい, カナダのMcGill大学のS. B. La ng博士は生物材料を取り扱う科学者には研究の発想の泉となるといい, スコットランドのStrathclyde大学のJ. H. Evans博士は合成生物材料の研究者には非常に貴重な指針になるといい, オーストリアのGraz医科大学のW. Rosenkranz博士は器官組織の研究者には非常な興味をそそるといい,チェコスロバキアのZ.Bohdanecky博士は代用器官の研究者には貴重なデータを提供するといっている.今回は,この本から人の各種器官組織の機械的特性について摘録してみることにした.
著者
畑山 大地 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.5, pp.1-11, 2023-05-09

ECC-uncorrectable メモリエラーはコンピュータシステムの信頼性に大きく影響するが,近年では発生頻度が増加している.オペレーティングシステム(OS)がこうしたメモリエラーに遭遇すると,OS カーネル内のデータが破壊されることで OS は継続稼働が不可能となり,それまでに処理をしていたメモリ上のデータを損失してしまう.この ECC-uncorrectable メモリエラーによる影響を特に受けるのがファイルシステムである.なぜなら,ファイルシステムはバッキングストアへのアクセスによる性能劣化を避けるために,ダーティなデータをバッキングストアに逐次書き出さずに,メモリをキャッシュとして用いて,ある程度纏めてから書き出す手法を採用しているからである.ファイルシステムにはジャーナリング機能を有する場合もあるが,これはファイルシステムとしての整合性を保つことが目的である.アプリケーションからすると,ファイル内容の整合性が保たれていない.そのため,ECC-uncorrectable メモリエラーが検知されるタイミングによってはメモリ上のダーティなデータは同期される前に消失してしまう.本論文では,OS カーネル領域において ECC-uncorrectable メモリエラーが発生した場合でもダーティなデータを失わないファイルシステムを提案する.ECC-uncorrectable メモリエラーの発生箇所がファイルシステムが使用するオブジェクト内ならば修復処理を行い,メモリ上のダーティなデータを同期させる.提案手法を Linux 5.15.54 上に実装を行い,ECC-uncorrectable メモリエラーを模したフォールト下で実験を行った.実験結果として,低いオーバヘッドでダーティなデータを書き出すことを確認した.
著者
關口 奈緒子 池永 雅一 池上 真理子 家出 清継 上田 正射 津田 雄二郎 中島 慎介 谷田 司 松山 仁 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.830-835, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
21

症例は68歳,男性.自慰目的で肛門から瓜を挿入し,排出困難となり当院を受診した.腹部単純CTで16×7cm大の瓜を直腸RS付近に認め,腸管穿孔所見は認めなかった.摘出の際に腸管損傷の可能性を考え,全身麻酔下での摘出を試みた.全身麻酔下,砕石位で手術を開始した.肛門括約筋の弛緩は得られたが肛門内に異物は確認できず,下腹部圧排で瓜の頂部をわずかに確認できた.ミュゾー鉗子で把持を試みるも困難であり,子宮筋腫用のミオームボーラーを瓜に挿入し,下腹部の圧排と牽引で摘出を試みた.しかし,瓜は脆弱でミオームボーラー挿入部が砕けるため,別角度からもう1本挿入することで力を分散し脆弱性を補うことで腹部圧迫を併用し摘出に成功した.直腸異物は多種多様の異物が報告されており,摘出方法の工夫が必要である.今回直腸異物(瓜)に対して,異物の大きさと摘出器具の特徴を術前に綿密に確認することで安全に摘出しえた症例を経験した.
著者
松原 篤 坂下 雅文 後藤 穣 川島 佳代子 松岡 伴和 近藤 悟 山田 武千代 竹野 幸夫 竹内 万彦 浦島 充佳 藤枝 重治 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.485-490, 2020-06-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
6
被引用文献数
13 35

近年になり, スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎の増加が指摘されている. 馬場らが中心となって1998年と2008年に全国の耳鼻咽喉科医師ならびにその家族を対象としたアンケートによる鼻アレルギー疫学調査が行われ, 有病率の推移が詳細に報告されている. 今回われわれは,前回の調査から11年後の2019年に同様の調査を行い, スギ花粉症, 通年性アレルギー性鼻炎ならびにスギ以外の花粉症の有病率を同定した. アレルギー性鼻炎全体の有病率は49.2%, スギ花粉症単独の有病率は38.8%と前回調査に比べ大きく増加していた. さらに10歳代でスギ花粉症が著明に増加していることも明らかとなった.
著者
山田 壮志郎
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.67-78, 2012-05-31

近年,一部の無料低額宿泊所が,ホームレスを対象とした貧困ビジネスであるとして社会問題化している.本稿の目的は,2010年に厚生労働省が行った調査の個票データを分析することを通じて無料低額宿泊所の現状を明らかにすることである.特に本稿では,無料低額宿泊所の特質である利用料の低廉性と居住の一時性について検討した.その結果,第1に,無料低額宿泊所の宿泊料は近隣の一般住宅の家賃と同程度以上であるが,居室の水準は一般住宅と同程度以上とはいいがたいことが分かった.また第2に,入所期間が1年以上の長期に及んでいる入所者が6割近くに上っており,その背景には入所者の生活保護費に関する地方負担の仕組みが一般住宅への転居を阻害していることがあると推測された.問題解決のためには,ホームレスに対する生活保護行政が無料低額宿泊所に依存することなく運用できる環境を整備することが必要である.
著者
山田 昇 佐野短期大学 Sano Calledge
出版者
佐野短期大学
雑誌
佐野短期大学研究紀要 (ISSN:1347488X)
巻号頁・発行日
no.24, pp.19-30, 2013-03-31

It has become clear that, among the people released from prison and other correctional facilities, thereis a large number of people with mental handicaps who have need of welfare services after release, yet areunable to get the support that they need.Among these people there are many who, because of difficulty in returning to life in society, commitanother crime and are returned to prison. Inmates with mental handicaps especially, because of the natureof their handicap, need welfare support to be able to live in the community. In 2010 the Japanese Ministryof Justice and the Ministry of Health, Labor and Welfare, in order to promote the successful return to societyof people released from correctional facilities, established support centers across the country and providedthem with financial assistance.Tochigi Prefecture has entrusted a nonprofit organization concerned mainly with facilities for the mentallyhandicapped to promote ways to help people to successfully live in the community. This paper looksinto the current situation regarding efforts to help mentally handicapped people caught between the justicesystem and the welfare system to return to life in society, and considers issues still to be addressed.