著者
沢田 正実 山田 等 古川 喜朗 張 中 福田 房子 田中 高紀 高井 嘉雄 花房 昭静 三角 荘一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.4, pp.560-568, 1986-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
52
被引用文献数
2

4-キノロンや4-キナゾリノン類1分子と種々の第一級および第二級アルキルイソシアナート2分子とからなるトリアジンジオン系環状化合物(TADO)類のEI質量スペクトルを低分解能, 高分解能, およびリンクドスキャン測定で検討した。その結果, フラグメンテーション初期段階のトリアジンジオン環開裂反応, すなわちアルキルイソシアナート脱離過程におよぼす特徴的なアザ置換の効果, アルキル置換基の効果, および脱水素による構造変化の効果が見いだされた。それぞれの置換基の導入などにより, 基準型の環状化合物[1]では重要でなかった分解様式が重要になり, EI質量スペクトルに変化を与えると結論された。TADO類のFAB質量スペクトルではプロトン化分子イオンピークが明瞭に観測された。また, FAB質量スペクトル定量測定法を用いて熱不安定化合物[8]のDMF溶液中の熱分解反応が追跡され, 一次反応速度定数が求められた。
著者
小寺 祐貴 横尾 慶紀 矢部 勇人 小橋 沙也香 田中 康正 山田 玄 高橋 弘毅
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.301-305, 2016-07-25 (Released:2016-08-06)
参考文献数
15

背景.先天性食道閉鎖症は多くに気管食道瘻を合併する.多くは新生児期に手術療法を行うが,小児期に食道気管瘻が再開通することがある.症例.35歳女性.新生児期にGross C型先天性食道閉鎖症の手術を受けた.しかし,高校生の頃から肺炎を繰り返すようになった.近医で気管支拡張症と診断されていたが,肺炎を反復するために当科に精査入院となった.胸部X線では左下肺野に浸潤影を認め,胸部CTでは左下葉に限局する囊胞状の気管支拡張症と内腔の液面形成を認めた.また周囲には肺炎像も伴っていた.気管支鏡では気管膜様部に瘻孔を認めたため,気管食道瘻の再発を疑い上部消化管の精査を行った.上部消化管内視鏡では上部食道の前壁に瘻孔を認め,食道造影検査では造影剤が食道瘻孔を通じて気管から左下葉気管支へ流入する所見を認めた.以上から気管食道瘻の再開通と診断し,食道瘻孔部直接縫合閉鎖術を行った.気管支拡張症は長期間の感染の反復により形成されたと考えた.結論.先天性食道閉鎖症の手術歴のある患者が呼吸器感染症を繰り返す場合は,気管食道瘻の再開通の可能性がある.
著者
山田 恭子 堀 匡 國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.37-51, 2009

近年, 生きる力の育成の観点から, 自己調整学習(Zimmerman, 1986, 1989)に関心が集まっている。自己調整学習では, 学習方略をプランニングする過程が重要とされる。そこで, 本研究では, 達成動機と自己効力感が学習方略の使用とどのような関係にあるかを調べた。具体的には, 達成動機と自己効力感を測定し, それらの高低の組み合わせで学習者を4つの群に区分して, それぞれの群の学習方略使用を比較した。調査の結果, (1)自己充実的達成動機の高い学習者は, 低い学習者よりも, 抽象的学習方略(例: 授業中先生の話をよく聞く), 基礎的学習方略(例: 覚えたい内容に線を引く), 自己調整的学習方略(例: 自分で自分の成果をほめる)を使用すること, (2)競争的達成動機の高低のみでは, 学習方略の使用について説明が困難であること, (3)自己効力感が高い学習者は, 低い学習者よりも抽象的学習方略, 基礎的学習方略, 自己調整的学習方略を使用するのに対し, 自己効力感の低い学習者は不適応的学習方略(例: 一夜漬け)を使用することが示唆された。これらの結果を考慮することによって, 学習者の適性に応じた学習指導が可能になり, 自ら学ぶ力の向上に貢献できることを考察した。
著者
山田 正俊 鄭 建
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.31, 2007

日本海海水中の<SUP>239+240</SUP>Pu濃度と<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比の鉛直分布の測定から、その主要な起源を解明することを目的とした。陰イオン交換樹脂カラム法によりPuを分離・精製し、アルファ線測定後、SF-ICP-MSを用いて、<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比を測定した。海水中の<SUP>239+240</SUP>Pu濃度は、表層で8から9 mBq/m<SUP>3</SUP>であり、中層で37から39 mBq/m<SUP>3</SUP>と極大となり、底層で26から33 mBq/m<SUP>3</SUP>となる鉛直分布を示した。また、海水柱中の<SUP>239+240</SUP>Puのインベントリーは、85から87 Bq/m<SUP>2</SUP>であり、グローバルフォールアウトから推定される値(42 Bq/m<SUP>2</SUP>)の約2倍であった。<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比の鉛直分布は、表層から底層までほぼ一定の値を示し、ビキニ核実験起源のプルトニウムの存在を示唆していた。
著者
山田 節子 今野 祐子 三森 一司 出雲 悦子 大久 長範
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.173, 2006

[目的]近年、ペットボトル飲料を日頃から水分補給のために利用する人が増えている。缶入り飲料に比べて、いつでも手軽に飲みたい分だけ飲め、そのうえキャップを閉めればどこへでも持ち運べるという利便性がある。また、消費者の健康志向も伴って、さまざまなペットボトル飲料の中でも、茶系飲料の売れ行きが好調である。しかし開栓後、直接口をつけて飲み、それを持ち運ぶことで様々な細菌に汚染されることが予測される。そこでペットボトル飲料に口内細菌と大腸菌を植え、どのくらい増殖および変化がみられるかを実験したので報告する。<BR>[方法]茶系飲料、スポーツドリンクおよびミネラルウォーターのペットボトル飲料に、自身の唾液より採取した口内細菌と、大腸菌をそれぞれ添加し、25℃で24_から_48時間保存したあと、菌数の変化をペトリフィルムで測定した。<BR>[結果]口内細菌を接種したところ、24時間後では、ブレンド茶は約、3.6倍、ミネラルウォーターは約、1.5倍と大きく増加する傾向が認められ、48時間後には無限大となった。ウーロン茶は、48時間後ではほぼ一定を保ち、緑茶は減少傾向を示した。PHが3.7と低いスポーツドリンクは口内細菌が減少する傾向にあった。大腸菌接種では、ウーロン茶、緑茶、ブレンド茶、スポーツドリンクは24時間で検出限界にまで減少し、ミネラルウォーターは一時的に減少したが、48時間後にも接種菌数の約、1/6が検出された。ペットボトル飲料が一般細菌に汚染された場合には、pHが中性に近づくに従い汚染が進行しやすく、pHが3付近では進行し難かった。
著者
櫻井 梓 岩崎 聡 古舘 佐起子 岡 晋一郎 小山田 匠吾 久保田 江里 植草 智子 高橋 優宏
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.321-327, 2021 (Released:2021-10-12)
参考文献数
17

人工内耳(以下,CI)装用者に対し,楽器を使用した集団的音楽トレーニングを実施し,方向感および語音聴取への効果について検討した.20歳以上のCI装用者で,かつ装用下での57-S語表での単音節の聴取成績が60%以上で,音楽トレーニング参加希望者18名のうち,検査等が実施できた14名を対象とした.全12回(1回60分×月2回)のグループレッスンで,1グループ当たり9名の2グループで実施した.音楽トレーニング前後で単音節,単語,日常会話文のいずれにおいても有意差は見られなかった.方向感検査のd値の平均も,トレーニング前後で有意差は見られなかった.また,音楽経験ありと経験なしとの2群間での検討においても,両検査ともに有意差は見られなかった.ただ,有効な症例もあったことから,詳細な評価方法,より効果的な音楽トレーニング法の構築が必要と考えられた.
著者
石井 志昂 山田 剛史 中原 敬広 村井 潤一郎 杉澤 武俊 寺尾 敦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45033, (Released:2021-09-27)
参考文献数
1

本研究は,ベイズ統計学に基づくデータ分析を学習可能な,統計ソフトR を用いた心理統計の自習用Web 教材の試作,及び評価を行った.教材評価は,(1)学習者の教材学習状況,(2)R,及びベイズ統計学に対するイメージの変化,(3)学習後のインタビュー調査から行った.結果より,本研究で試作したWeb 教材の学習によりR を身近に感じるようになるとともに,コードを書きながら学習可能な点に対し肯定的な意見が得られた.一方,学習を行った参加者の約半数が教材の最後まで学習を終えることができず,教材の導入部分や章ごとの問題量について課題が示唆された.
著者
山田 晃司
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.224-232, 2020-03-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
4
被引用文献数
2
著者
山田 祐子 廣田 伸之 新原 俊樹
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.1-10, 2021

<p>In a small area off the eastern coast of Osumi Peninsula, eight events have been observed from January 2001 to March 2019, in which <i>M</i>3 to <i>M</i>4 earthquakes occurred successively in a short time, from several seconds to several minutes. Based on the waveform correlation and cluster analysis, we found three seismic patches (asperities) which generate small repeating earthquakes in this area. The arrival time differences between P and S waves of the three patches' earthquakes observed at NARU station suggested that these patches were close to each other. Furthermore, we confirmed that many earthquakes originated from these patches were included in the successive occurrences of earthquakes in this area. These results suggest that the earthquake from one of these patches affects another patch in the immediate vicinity and triggers successive occurrences of earthquakes.</p>
著者
山田 成臣 岩本 千鶴 中村 真梨枝 添田 美里 坪井 洋 狩野 宏 浅見 幸夫
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-31, 2016 (Released:2016-04-12)
参考文献数
20

プリン体を多く含む食品の過剰摂取は高尿酸血症の原因となる。腸管におけるプリン体の吸収を低減することで,血清尿酸値の上昇や高尿酸血症の悪化を抑制できる可能性がある。我々は乳酸菌によるプリン体の吸収低減の可能性を検証した。初めにプリン塩基がプリンヌクレオシドよりも吸収されにくいことから,プリン塩基への分解能が高い菌株として Lactobacillus gasseri PA-3(以下 L. gasseri PA-3)を選抜した。また,L. gasseri PA-3 が少なくともアデノシンと AMP を取り込むことを確認した。更に in vivo における L. gasseri PA-3 とプリン体(アデノシンまたは AMP)の同時投与試験で L. gasseri PA-3 のプリン体吸収低減効果を明らかにした。最後に血清尿酸値が 6~8 mg/dL の被験者を対象に L. gasseri PA-3 含有ヨーグルトの摂取試験を行った結果,L. gasseri PA-3 摂取時の血清尿酸値の変化量が対照群よりも有意に低く,ヒトでの有効性も確認された。これらの結果より,L. gasseri PA-3 は腸管においてプリン体の吸収を低減させ,適切な血清尿酸値の維持の一助になると考えられた。
著者
山田 冨美雄 百々 尚美 大野 太郎 服部 祥子
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.23-28, 1999
参考文献数
11

The purpose of this study is to investigate the effect of seismic intensity (SI) and sex difference upon schoolaged children's stress reactions induced by the Great Hanshin-Awaji Earthquake and to suggest some guidelines for stress management education. Know Yourself Questionnaire (KYQ) was used to assess children's stress reactions after disaster. The stress scores of Anxiety, Depression, Distraction, and Humanity were compared between Nishinomiya (SI=7;566 boys and 491 girls), Osaka (SI=4;462 boys and 445 girls), and children in protective institutions (SI=7;244 boys and 153 girls). KYQ was applied at 2 months, 6 months, and 1 year after the earthquake for Nishinomiya and Osaka, and at 9 months after the earthquake for protective institutions as a stress management education program. Results show that (1) the effect of seismic intensity was significant in all stress reactions, (2) significant sex difference was found in all scores, i.e., Anxiety, Depression, and Humanity scores were higher in females, but Distraction was higher in males, (3) the effect of seismic intensity interacted with sex in Depression and Distraction,and (4) children in protective institutions showed more severe stress reactions than those in Nishinomiya. These results suggest that early intervention such as our stress management education is needed for children,not only after the earthquake but also before the earthquake.
著者
山田 知代
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.58-76, 2019 (Released:2020-10-02)
参考文献数
15

Against a backdrop of the diversification of values in Japanese society, this paper aims to evaluate the increasing popularity of public schools' attempts to guarantee publicness by implementing new procedures and justifying their outcomes. The paper makes the following two arguments:Firstly, revision of the processes and procedures of school education, especially in student guidance, has the potential to promote publicness. For example, based on the relationship between publicness and the establishment of the Act for the Promotion of Measures to Prevent Bullying, this paper reveals:1. increased official participation as a result of legal involvement in resolving issues related to bullying,2. increased commonality as a result of recognizing the need for lawor guideline-based responses, and3. increased openness as a result of bullying response procedures becoming transparent to the public.It is argued that implementing such procedures is linked to increased publicness at a micro level in student guidance. In other words, it can be said that “procedure” occupies an important position as a condition in ensuring publicness.Secondly, although there has been a noted rise in procedural justice theories in the field, some aspects of the procedures and operations regarding disciplining high school students lack transparency. Thus the guarantee of publicness remains questionable. More specifically, while official involvement is guaranteed, it is difficult to claim that commonality and openness are also sufficiently guaranteed. Today, procedural justice is viewed as important in educational settings; yet, the appropriateness of disciplinary results cannot be judged collectively. Therefore, establishing transparent disciplinary procedures that can be traced later is an important perspective in the guidance of students, and may well be useful in increasing trust in educational administration.
著者
山田 博之 濱田 穣 國松 豊
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.133-143, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
50
被引用文献数
1

小型類人猿シロテテナガザル(Hylobates lar)について犬歯形態の詳細な記載と大きさの性的二型性を明らかにすることを目的に研究を行った。テナガザルの犬歯は従来いわれているように性的二型性が小さく,雌雄間で形態が非常によく似ている。歯冠頬側面の概形は上顎犬歯でサーベル形,下顎犬歯は不正四辺形を呈する。オスに較べてメスの形態特徴を挙げると,1)サイズが小さい,2)歯冠浮彫像の発達が弱く,全体に丸みを帯びている,3)下顎犬歯の近心shoulderの位置が歯冠高の約1/2にある,4)歯頚隆線がよく発達していることである。歯冠サイズによる犬歯の性差では,上・下顎の歯冠基底部のサイズや歯冠高でオスの方が有意に大きい。一方,下顎犬歯では歯冠近遠心径に対する歯頚部エナメル質の膨らみはメスの方が大きく,有意に強い性差を示す。歯冠の高径,とくに下顎犬歯の尖頭から近心shoulderまでの距離が最も強い性差を示す。犬歯の形態やサイズに性的二型がみられることはペア社会を構成するテナガザルでもある程度雌雄の違いが大きさや形にも存在することを示す。