著者
眞壁 良 上山 哲郎 坂井 秀之 谷岡 明彦
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.177-182, 2022 (Released:2023-03-16)
参考文献数
9

浸透圧発電(PRO)は,塩分濃度差によって得られる浸透水を使用する再生可能エネルギーである.メガトンスケールの海水淡水化施設に濃縮海水と下水処理水を使用したPRO 設備を導入した場合,造水の消費電力を10 %削減する能力がある.機器の汎用化によって,発電コストは10.6 円/kWh と試算した.また海水と下水処理水を利用したPRO システムの実現が重要であり,このためには新たなPRO 膜モジュールの開発が必要となる.開発するPRO 膜モジュールのA 値・B 値は,2.05×10-6 m/s/MPa・5.5×10-9 m/s の性能が求められ,このPRO 膜モジュールを使用した発電コストは,22 円/kWh と試算した.優れたPRO 膜モジュールを開発することで,世界のエネルギー供給に大きな影響を与えると期待している.
著者
日置 和昭 藤原 照幸 本郷 隆夫 山本 剛一 中岡 明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.15-22, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
8

本研究では,廃棄物資源循環という観点から,廃ガラスカレット (GC) を圧密促進工法の一つであるサンドドレーン (SD) 工法の中詰め材料として有効利用するため,GC や SD 材として適用実績のある海砂,さらには SD 材としては不適応な山砂 (まさ土) に GC を混ぜた GC 混合砂を対象に,1/10 モデルの圧密土槽試験を考案・実施し,GC の SD 材としての適用性について実験的考察を行なった。その結果,① GC を用いた SD と海砂を用いた SD の圧密促進効果 (圧密速度) は,ほぼ同等と評価できること,② 山砂 (まさ土) も GC と混合させ粒度改良を施すことにより,海砂とほぼ同等の圧密促進効果 (圧密速度) を期待できること,③ 透水係数 ks が 5.5 × 10−5 ~ 1.7 × 10− 3 m/s の範囲にある SD 材では,圧密促進効果 (圧密速度) に大きな差異は現れないことが明らかとなった。
著者
藤岡 明房
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.163-188, 2013-03-29

平成21 年9 月政権についた民主党は,かねてからマニフェストで取り上げていた高速道路の無料化を実施する前に,限定した路線だけで高速道路の無料化を実施するという社会実験を平成22 年6 月から平成23 年3 月末までの期間に行った.その社会実験は37 路線50 区間において行われ,全車種が対象となった.社会実験が終わった後,政府から社会実験の結果が発表されたが,社会実験により,高速道路の交通量が増加することや,平行する一般道の交通量が減少することが予想されたにもかかわらず,必ずしも交通量の増加や減少は明らかではなかった.その理由として,社会実験として選ばれた区間は,当初からあまり影響が出ないような区間が選ばれていたことが考えられる.そこで,社会実験の効果を統計的に確認するため,統計的手法の一種である一元配置分散分析と二元配置分散分析を社会実験の結果に適用してみた.また,社会実験の効果が地域的に異なっているのか否かを確認するため,全国を6 つの地域に区分して分析を行ってみた.その結果,関東地域,中部・近畿地域で社会実験による交通量の増加が有意ではなかったことは予想できたが,北海道も交通量の増加は有意ではなかった.影響があったのは,東北地域と中国・四国地域であり,限定された影響といえる.並行一般道路の交通量はある程度減少するものと予想されていたが,実際にはすべての地域において有意な差は見いだせなかった.したがって,今回の高速道路無料化の社会実験の結果からは,無料化した高速道路の交通量は大幅に増加するとか,平行する一般道の交通量は著しく減少するとかは必ずしも言えないことになった.
著者
山岡 明奈 湯川 進太郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.104-113, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
50

Previous research has shown that mind wandering improves creativity while it may simultaneously lead to mental illness. However, it has also been shown that some kinds of mind wandering are not related to negative mood or mental illness, and such mind wandering seems to improve creativity while maintaining good mental health. Therefore, our study examined what kinds of mind wandering are generated in highly creative people with a high level of mental health, focusing on daily life. Seventy-eight undergraduate and graduate students participated in the study. We measured indicators of creativity and mental health in the experiment room and measured the situation and features of mind wandering using an experience sampling method over three days. Results showed that highly creative people with a high level of mental health do not think much about social-related and future-related thought. In the future, we need to examine whether evoking MW that does not include things about others actually enhances creativity without inhibiting mental health.
著者
谷岡 明彦
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.P_3-P_7, 2003 (Released:2003-12-31)
被引用文献数
1 1
著者
山口 博明 野木 滉一郎 米澤 直晃 冨岡 明弘
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.574-587, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
28

This paper presents a novel dynamical path following feedback control method for a snake-like robot. The snake-like robot is an undulatory locomotor transforming its periodic changes in shape into its displacement. To achieve work involving movement, e.g., an inspection task, in its working environment, it is necessary to specify its motion quantitatively. Since each of the links of the locomotor has passive wheels at its midpoint, it is not simple to design a feedback control system which enables the locomotor to follow desired paths (or to track desired trajectories) compared with wheel drive vehicles. Especially, the locomotor has singular attitudes in which the driving of its joints cannot be transformed into its movement. In this control method, a virtual link with a virtual steering system at its tip and a virtual axle at its midpoint connected to a top link through a virtual joint at its tip is caused to follow winding paths, which makes it possible to transform the driving torque of its joints into its propulsion force. The kinematical equations of the locomotor are formulated in a curvilinear coordinate system in which a winding path is one coordinate axis. A part of the kinematical equations describing the motion of the virtual mechanical elements only are converted into a chained form which facilitates to design a kinematical path following feedback control system. By a backstepping method, the acceleration required to realize the desired velocity in the kinematical control system is calculated. Based on the dynamical equations of the locomotor derived in Lagrangian mechanics, the torque of the joints of the locomotor is designed so as to realize the acceleration calculated by the backstepping method. The validity of this dynamical control method is verified by simulations in which the locomotor climbs a slope while following a serpenoid curve path.
著者
渡邊 雅恵 須永 康代 石渡 睦子 荒木 智子 伯耆田 聡子 井上 和久 柳田 千絵 吉岡 明美 清宮 清美
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.112, 2009

【目的】 近年女性の理学療法士(以下、PT)が増えており、埼玉県理学療法士会(以下、県士会)でも会員の約半数が女性である。その中で出産・育児の関係で離職するPTが多いのが現状である。また、女性に限らず労働条件等で転職・離職するPTも少なくない。<BR> 復職支援システム検討委員会は、離職率の低減および離職をした会員が復職できるようシステムを検討していくことを目的にアンケート調査を実施した。<BR>【対象と方法】 2008年10月における、県士会に登録されている会員2168名を対象に郵送調査法アンケートを実施した。内容は基本属性(経験年数、年齢、家庭環境、就労状況)、職場環境(職場形態、人数、収入、残業、制度利用状況)等を多選択方式および自由記載での回答とした。<BR> なお、対象者には、依頼文書にアンケートの目的を提示した上で、無記名調査、データの統計的処理、個人情報の保護等の説明を記載し、調査に同意していただける方のみアンケートを返送していただいた。 【結果】 回答数は960名、回収率は44.3%であった。男女比はほぼ同数。平均年齢は30.5歳で58%が30歳以下であった。就業しているPTは943名(98.2%)、離職中は17名(男1、女16、1.8%)であり、離職中の女性に注目した。16名の平均年齢は30歳でそのうち子ども有りは11名であった。離職の理由は、転居が多く次に結婚・出産・育児・健康上の理由であった。復職希望は、有りが8名、条件付きが4名であった。復職が困難な理由として、託児所の問題が最も多く70%をしめていた。その他に、労働条件、育児の問題、通勤条件があった。託児所に関しては、職場に職員専用託児所はあるがPTは利用できないという回答もあった。県士会に対するアンケートの自由記載として、保育施設の確保、パート・非常勤の求人情報の提供、出産育児に理解のある職場環境づくりがあった。また、それ以外にも職場を長期間休むことにより最新の情報入手困難、次々に変わるシステムを理解するのが困難、知識や技術の低下などがあり、それらに対するフォロー体制を作ってほしいという要望が見受けられた。<BR>【考察】 今回アンケートに回答して下さった離職者PTが少なく実態は把握できていない。しかし、就業を継続することや復職するために出産・育児、特に託児所の有無に関する影響が大きいことが再確認できた。<BR> 今回のアンケートの結果を基に、今後県士会としてフォロー体制を作るための研修会など復職支援の検討をすすめていく。
著者
山岡 明子 小田島 安平
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.295-302, 2009-08-01
参考文献数
42

14歳,男児.PL顆粒やイブプロフェンとうどんの同時摂取で蕁麻疹やアナフィラキシーの既往がある.2008年2月に学校で給食を摂取した後にサッカーをしていたところアナフィラキシーが出現した.給食は牛乳,おでん(大根・卵・はんぺん・コンニャク・ 人参・ほうれん草・ちくわ),わかめご飯,魚フライであった.小麦,グルテンの血中抗原特異的IgE抗体(ImmunoCAP<SUP>&reg;</SUP>)が陽性であった事や過去の既往等から小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い負荷試験を行ったが,小麦+運動では無症状であった.そこでアスピリンを前投与した後に小麦を摂取させたところ運動とは関係なくアナフィラキシーが誘発された.以上より小麦と同時にサリチル酸含有物質を摂取することにより症状が誘発されると考えられ小麦依存性サリチル酸誘発アナフィラキシーと診断した.
著者
中村 由紀子 島崎 真希子 小松 祐美子 中野 瑛子 松岡 雄一郎 宮田 世羽 岡 明
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.259-264, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
12

【目的】反社会的行動の症状を持つ発達障害の症例の特徴について検討する. 【方法】当院小児神経外来に受診した発達障害のうち, 平成21年10月から平成24年10月までに就学年齢以上であった110例を対象とした. DSM-Ⅳ-TRの素行障害の診断基準の症状が1項目以上あるものを反社会的行動群とし, その症状を持たない群と背景, 行動の特徴, 治療による症状改善の有無について比較した. 【結果】反社会的行動は38例にみられ, そのうち素行障害に該当するものは7例で全体の5.5%であった. 反社会的行動の要因は, 注意欠陥/多動性障害, 虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭であり, 統計学的に有意であった. 投薬や環境改善の指導を行ったところ, 66%の症例で, 反社会的行動について何らかの改善を認めた. 素行障害7例のうち4例が虐待により児童養護施設等に入所しており, 3例が社会性に強い困難さを抱えた広汎性発達障害で, 全例が治療的介入を行っても反社会的行動の改善はみられなかった. 【結語】発達障害児の反社会的行動には主診断が注意欠陥/多動性障害であることや虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭の要因が関与していた. 最も効果的な治療は, 保護者に対する子どもへの関わりの指導であった. 素行障害まで進行している症例は改善が極めて困難であり, 反社会的行動がみられた場合は早期介入する必要がある.
著者
フェルナンドトーレス ボジノ 佐藤 邦忠 岡 明男 菅野 幸夫 保地 真一 小栗 紀彦 ヨアヒム ブラウン
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.225-229, 1995-04-15
参考文献数
22

輓用種牡馬4頭について, 精液性状, 繁殖成績, 及び精液の保存性(液状保存と凍結保存)の関係を検討した. 精液性状については膠質除去後の精液量, 精子の濃度, 正常精子率, 及び精子運動性を調べ, また繁殖成績については過去3年間の累積の妊娠率とした. 精液の液状保存は5℃で行い, 0, 24, 48, 72時間目に精子の運動性を調べた. 精液の凍結保存には2種類の異なる希釈液(ブドウ糖-EDTA-ラクトース・卵黄希釈液, 脱脂粉乳-清澄卵黄希釈液)を用い, 凍結融解後の精子運動性と正常精子率を調べた. 精液性状の各値と繁殖成績は通常の変動範囲内にあったが, 膠質除去後の精液量, 正常精子率, 精子運動性, 及び繁殖成績に種牡馬間で有意差が認められた. しかしこれらのパラメーター間には相関性は認められなかった. 液状精液の保存性には種牡馬間で有意差が認められ, 保存前の精子運動性が最も高い個体で最も良好であった. また凍結精液では使用した希釈液にかかわらず融解後の精子運動性(13.8〜26.3%)と正常精子率(19.5〜38.0%)はともに低い値であった. 個々の種牡馬において精液の液状保存と凍結保存の結果には相関性が認められなかった. 以上の結果から, 精液の保存に対する適性を他のパラメーターから類推することは困難であると思われた. 輓用種牡馬精液の耐凍性を向上させるには,現在の凍結精液作製に関わる標準的手法に改良を加える余地が残されている.
著者
梶山 誠 濱岡 秀樹 濱岡 明子
出版者
千葉県水産総合研究センター
巻号頁・発行日
no.12, pp.81-88, 2018 (Released:2018-07-04)

東京湾の富津干潟周辺海域で1998~2016年にアマモ類の分布調査を実施した。同海域にはアマモ,タチアマモ,コアマモが分布し,分布範囲は4km2,そのうちアマモ群落の面積は1.32km2,群落の密度は33%と推定された。群落面積は1999~2001年に低位で推移した後,増加傾向にあった。アマモ場の水温は2010年が顕著に高く,高水温が長期間継続する場合には影響があると推察された。2011年には東日本大震災の津波の影響と考えられるアマモの減少が見られたが翌年には回復した。本海域のアマモ場は,物理的な影響や水温環境を受けて増減するが今後も分布は継続すると考えられ,生物の多様性を維持していくうえで重要である。
著者
谷岡 明彦
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.100-104, 2010 (Released:2015-06-19)

Electrospray method (in some case called as electrospray deposition: ESD) is a versatile method for forming thin films and non-woven fabrics. This method has the following advantages: (i) applicable for various solute and molten molecules, which have a wide range of molecular weights (e.g., inorganic molecules, synthetic polymers, proteins, and DNA), (ii) polymer thin films with nano/micro–scaled structures, which range from spheres to fibers, are deposited. Electrospray-deposited thin films have recently attracted much attention for applications such as antifouling or biocompatible coatings for medical devices, high–performance filter media, drug delivery systems, biomaterial scaffolds for tissue engineering, addition of high functionality on membrane surface for water purification and biosensors and biochips (e.g., protein/DNA–microarrays and microfluidic devices).
著者
明谷 早映子 岡 明
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1_42-1_53, 2021-01-31 (Released:2021-03-15)
参考文献数
28

本研究の目的は,大学内の活動について利益相反発生の構造とリスクを明らかにし,実効的かつ効率的な利益相反のマネジメントに資する知見を提供することにある.米国大学の利益相反ポリシーの分析から,大学で利益相反マネジメントの対象とすべき活動や,産業界からの経済的利益によるバイアスが影響しうる大学・大学研究者の意思決定の対象が明らかになった.また,研究活動の質と関係が深い撤回論文の分析から,論文公表の段階では,利益相反マネジメントがうまく機能しなかったことによるリスクは,データ・画像・研究結果に対する信頼性が失われるという形で顕在化する等,バイアスや利益相反によるリスクの具体化と対応策の策定に資する結果が得られた.
著者
山岡 明奈 湯川 進太郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-86, 2019
被引用文献数
2

<p> 創造性を増進することは社会にとって有用であると考えられるが,しばしば創造性の高い人は精神的に不健康であると指摘されてきた。一方で,近年では創造性が高くても精神的に健康な人の存在も示唆されている。そこで本研究では,創造性と精神的健康の両方と関連深い概念として知られているマインドワンダリングという現象に着目し,創造性の高さや精神的健康さの違いによって,マインドワンダリングの特徴に違いかあるのかを実験的に検討した。まず,62名の参加者の創造性と抑うつ傾向およびワーキングメモリ容量を測定した。その後,思考プローブ法を用いて,映像視聴中のマインドワンダリングの思考内容,自覚の有無,話題数を測定した。分析の結果,創造性が高く精神的に健康な人は,マインドワンダリング中に過去のことを考える頻度が少ないことが示された。本研究の結果は,マインドワンダリングを用いて,精神的健康を維持しつつ創造性を増進するための基礎的知見を示したといえる。</p>
著者
梶川 祥世 井上 純子 佐藤 久美子 兼築 清恵 高岡 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.291, pp.19-24, 2005-09-16

2曲の歌(「ゆりかごの歌」, 「ぞうさん」)について, 4-13ヶ月児の母親が乳児に対して歌いかけた場合と乳児不在で歌った場合とで, 音響的特徴の比較を行った.テンポについては, 対乳児のほうが乳児不在よりもテンポが遅くなる傾向が全般にみられた.母親による曲の印象評価においても, テンポは判断の主要な要素であり, 遅いテンポを乳児が好むと考える母親は、他の母親よりも遅いテンポで歌う傾向が「ぞうさん」にみられた。基本周波数平均値については, 対乳児と乳児不在での変化には個人差があり, 対乳児歌唱音声で一様に高くなるとする従来の見解は支持されなかった.乳児に対する歌唱音声では, テンポは個人、曲によらず一定の傾向がみられる要素であり, 周波数の高さは個人や曲によってばらつきがあると考えられる.