著者
今井 美香 平井 真理 桑原 裕子 岩瀬 敏 西村 直記 清水 祐樹 菅屋 潤壹 藤井 徹也
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.111-120, 2011-04-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
13

目的 : 本研究では,仰臥位と座位で排便時の怒責圧の強さの差異が循環系に及ぼす影響を検討した. 方法 : 健康な成人男女 21人 (平均年齢 32.7 ± 10.1歳) を対象に,室温 27℃,湿度 50%に設定した人工気候室で実験を行った.被験者は仰臥位および座位姿勢をとり,1回 15秒の怒責をかけた.怒責圧は10,20および 30mmHgとし,その時の血圧と心拍数を測定した. 結果 : 仰臥位と座位ともに,怒責圧が高いほど血圧 ・ 心拍数の変化は大きかった.血圧や心拍数の変化は怒責中のみならず,怒責解除後も怒責圧が高いほど大きかった.また怒責圧 30mmHgの場合では,Ⅰ相から Ⅱ a期の収縮期血圧の変化量が座位 41.43 ±13.30,仰臥位 26.86 ± 19.59mmHg (p<0.001) と,座位のほうが大きかった.怒責圧10 ・ 20mmHgでも同様であった.また,Ⅰから Ⅱ a期,Ⅲから Ⅳ相の心拍数で座位のほうが有意に大きな変化量を示した (p<0.01) 結論 : 排便時に強く怒責をかけるほど循環系へ与える影響は大きく,また同一怒責圧時における循環系の影響は座位のほうが大きいことが明らかになった.
著者
増間 弘祥 南⾥ 佑太 河端 将司 野﨑 康平 澁⾕ 真⾹ 前⽥ 拓也 代⽥ 武⼤ ⼆瓶 愛実 相川 淳 岩瀬 ⼤ ⾼野 昇太郎 福⽥ 倫也
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
pp.202213, (Released:2023-06-12)
参考文献数
26

【⽬的】⼈⼯膝関節全置換術(以下,TKA)後の患者における術後14 ⽇以内の⾃宅退院可否と術前歩⾏速度の関連を明らかにすること。【⽅法】対象は2016 年4 ⽉〜2021 年3 ⽉までにTKA を施⾏された294 例とした。対象者を術後14 ⽇の⾃宅退院を基準に早期退院群と遅延転院群の2 群に分類した。対象者に対して術前歩⾏速度を調査し,2 群間で⽐較を⾏った。さらにロジスティック回帰分析により術前歩⾏速度が術後14 ⽇以内の⾃宅退院を困難とするリスク因⼦となるか検討を⾏った。【結果】遅延転院群の術前歩⾏速度は早期退院群と⽐較して有意に低下していた。さらに,術前歩⾏速度は術後14 ⽇以内の⾃宅退院を困難とするリスク因⼦となることが分かった(オッズ⽐:0.09,95%CI:0.03–0.32)。【結論】TKA 後の患者において,術前歩⾏速度の評価は術後14 ⽇以内の⾃宅退院可否を予測する上で有⽤であることが⽰唆された。
著者
大隅 智之 清水 博之 小室 治孝 川田 智子 井上 明子 喜古 康博 岩瀬 滋 西川 正憲
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.125-131, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
22

病院職員の集団接種において,mRNAワクチンであるBNT162b2接種後の副反応とIgG抗体価の関連について調査した.副反応は自己申告形式の調査票を用いて2回目接種の副反応の程度を,抗体価は2回目接種の9週間後のスパイク蛋白に対するIgG抗体価の変動を用いて検討した.調査対象者は228名であり,発熱,倦怠感,頭痛の程度とIgG抗体価の上昇に関連が認められた.対象者の年齢を45歳未満と45歳以上に群別すると,45歳未満群では倦怠感,45歳以上群では発熱とIgG抗体価の上昇が関連していた.IgG抗体価と接種後の一部の副反応の程度には関連がある可能性が示唆された.
著者
増間 弘祥 南⾥ 佑太 河端 将司 野﨑 康平 澁⾕ 真⾹ 前⽥ 拓也 代⽥ 武⼤ ⼆瓶 愛実 相川 淳 岩瀬 ⼤ ⾼野 昇太郎 福⽥ 倫也
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.7-13, 2023 (Released:2023-09-30)
参考文献数
26

【⽬的】⼈⼯膝関節全置換術(以下,TKA)後の患者における術後14 ⽇以内の⾃宅退院可否と術前歩⾏速度の関連を明らかにすること。【⽅法】対象は2016 年4 ⽉〜2021 年3 ⽉までにTKA を施⾏された294 例とした。対象者を術後14 ⽇の⾃宅退院を基準に早期退院群と遅延転院群の2 群に分類した。対象者に対して術前歩⾏速度を調査し,2 群間で⽐較を⾏った。さらにロジスティック回帰分析により術前歩⾏速度が術後14 ⽇以内の⾃宅退院を困難とするリスク因⼦となるか検討を⾏った。【結果】遅延転院群の術前歩⾏速度は早期退院群と⽐較して有意に低下していた。さらに,術前歩⾏速度は術後14 ⽇以内の⾃宅退院を困難とするリスク因⼦となることが分かった(オッズ⽐:0.09,95%CI:0.03–0.32)。【結論】TKA 後の患者において,術前歩⾏速度の評価は術後14 ⽇以内の⾃宅退院可否を予測する上で有⽤であることが⽰唆された。
著者
Yuko Iwase 岩瀬 裕子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.179-231, 2019-07-25

本稿は,スペイン・カタルーニャ州の祭りで220 年以上にわたって行われている人間の塔における計測を主題にして,どのようなデジタル・テクノロジーが用いられ,それに対して人びとがいかに対応しているのかを民族誌的調査を通して明らかにするものである。人間の塔は,人が人の肩の上に上り下りして造られ,その高さや構造の複雑さで競われるものである。筆者が調査する最古参のグループでは,塔造りに必要な参加者を把握するためにテクノロジーを利用する動きはあるが,人間を正確に測り塔の構造に反映させるためにテクノロジーは利用していない。人びとが用いるのは,経験的に獲得,定着させてきた主として身体感覚に依拠したテクノロジーである。こうしてデジタル・テクノロジーの受け入れに伴う領域に差異がみられる背景には,身体ひとつで塔を造る人びとの「人間とは正確には測れないもの」という直観的な感覚と,「測ること」で失われてしまうことを危惧する二者関係があることを考察する。
著者
古川 健司 重松 恭祐 岩瀬 芳江 三上 和歌子 星 博子 山本 淳子 大塚 藍 阿部 宏子
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.1154-1161, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
19

【目的】がんは糖質の取り込みが多いことに注目し、糖質制限の厳しいケトン食を用いて、化学療法併用による臨床での安全性と効果を調べた。【方法】当院の倫理委員会の承認の元、ステージⅣの大腸がん、乳がん患者に対し、ケトン比1.5~1:1の修正MCTケトン食を3カ月摂取し、代謝、栄養状態、QOL、臨床効果を調べた。【結果】9名を対象に検討を行い、非糖尿病患者では、ケトン食によりケトーシスにはなったが、尿中排泄によりアシドーシスは軽度であった。-5.4%の体重の有意な減少を伴ったが、肝・腎機能は保たれ、抗がん剤併用でもQOLを下げず、奏効率67%、病態コントロール率78%で、がんの縮小は、血中総ケトン体値とQOLスコアに相関関係が示唆された。【結論】修正MCTケトン食は、抗がん剤併用でも、3カ月の短期間ではあるが、進行がん患者にも安全な食事療法であり、がんの縮小も血中ケトン体値とQOLスコアに相関が示唆された。
著者
古川 健司 桂川 秀雄 重松 恭祐 岩瀬 芳江 三上 和歌子 亀田 孝子
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.201-206, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
10

がん細胞では,グルコースから乳酸が作られ,好気的呼吸と嫌気的呼吸(解糖)の両方が使われている.さらに,好気的条件でも解糖系の抑制がかからないというWarburg効果は,正常細胞とは大きく異なる性質の1つとされてきた.また,がん細胞が増殖するには,細胞内へのブドウ糖の取り込みを行うグルコース・トランスポーター(GLUT)というタンパク質を増やし,莫大なエネルギー産生と核酸や細胞膜の合成が必要であるため,がんの栄養療法としては,ケトン食(糖質制限)が有効となる可能性がある. 欧米では,ステージ4の進行がん患者に対し,ケトン食の有効性の臨床研究がなされているが,食事療法単独では,時間の経過とともにがんが増悪し,がんのコントロールは不良である.そのため,われわれはケトン食と化学療法の併用療法を1年間行い,その後2年フォローを行った.今回,われわれの研究成果を中心に,進行再発癌に対するケトン食の可能性について報告する.
著者
伊藤 隆 堀 賢 諫早 俊樹 堤 仁美 平須 賀信洋 竹内 瞳 岩瀬 基彦 篠田 文彦 森本 正一 田辺 新一
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.1255-1258, 2010

The objects of this study are to observe the detailed distribution of air velocity and CO_2 (carbon dioxide) concentration which is used as tracer gas of coughed air and to calculate advance conditions concerning droplet dispersion counting on relative humidity and pressure. The full scale chamber where the experiment was conducted was modeled and then the experimental conditions were input. The elaborative mock was achieved. The results of CFD illustrated the high CO_2 concentration area and many tiny droplets were observed near the medical doctor. Hence the infection risk was still high when the medical doctor moves.
著者
平山 英夫 近藤 健次郎 海野 泰裕 松村 宏 岩瀬 広 柚木 彰 佐々木 慎一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.J14.048, (Released:2015-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

A rapid and simple method to measure the concentration of 90Sr in water by measuring β-rays from 90Y was presented. Under the situation that 90Sr/90Y, 134Cs and 137Cs are the main radionuclides included in the water sample, only β-rays from 90Y can transmit through 1.5-mm-thick polyethylene. From this fact, it is possible to measure β-rays from 90Y using a β-ray detector, such as the GM-counter, set beneath the 1.5-mm-thick bottom of the water bottle containing the sample with 90Sr/90Y. The acrylic resin collimator having 0 cm, 1.00 cm, 1.50 cm or 3.00 cm diameter was made to detect β-rays at the fixed region of the GM-counter used. Contributions from bremsstrahlung produced by β-rays and γ-rays from radionuclides such as 134Cs and 137Cs/137mBa are removed by subtracting the count rate measured with a 1.00 cm acrylic resin collimator without a hole as the background count rate. The developed method was studied using the bottle routinely used at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station. It was confirmed that the developed method can be applied to measure the 90Sr concentration in water to the order of several Bq/cm3 if 134Cs and 137Cs concentrations are less than or equal to the 90Sr/90Y concentration.
著者
古川 健司 重松 恭祐 岩瀬 芳江 三上 和歌子 星 博子 西山 孝子 大塚 藍 阿部 宏子
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.1139-1146, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
25

【目的】がんに対する糖質制限食として、medium chain triglyceride(以下、MCTと略)オイルの少ない修正MCTケトン食を導入し有効性を検討した。【方法】ステージⅣ進行再発大腸癌患者10例に、ケトン比が1.4:1の修正MCTケトン食を1年間抗がん剤と併用し、RECIST判定、血中総ケトン体、quality of life(以下、QOLと略)の評価を行い、ステージⅣで抗がん剤治療のみを行った群14例と比較検討を行った。【結果】抗がん剤単独群は、CR0例、PR3例、SD6例、PD5例で、奏効率21%、病勢コントロール率64%で、ケトン食併用群は、CR5例、PR1例、SD1例、PD3例で、奏効率60%、病勢コントロール率70%で、1年継続することで、CR率が50%に上がった。【結論】ケトン食併用の抗がん剤治療は、抗がん剤単独群と比較し、奏効率、病態コントロール率が高く、ステージⅣ大腸癌の支持療法になると思われた。

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著者
岩瀬醒 著
出版者
文溪堂
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
片岡 仁美 野村 恭子 川畑 智子 勅使川原 早苗 岩瀬 敏秀
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.365-375, 2014-10-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:女性医師の離職と復職及び育児休業の取得について現状を明らかにし,離職に影響を及ぼす要因について解析する.方法:岡山大学卒業生および同大学臨床系講座に入局した女性医師1403名に質問票を送付した.結果:回答者(n=420,回収率29.9%)のうち離職経験者は46.6% (n=191),離職時期は卒後10年以内が92.4%(n=171)であった.離職理由は「出産・育児」が51.5%(n=98),「夫の転勤」が21.1% (n=40)であった.初回離職時82%(n=151)が復職を希望していた.考察:柔軟な勤務体制の確立や育児休業の取得できる安定した勤務環境の整備がキャリア構築に重要である.
著者
近藤 健次郎 平山 英夫 平 雅文 松村 宏 岩瀬 広 佐々木 慎一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.J14.034, (Released:2015-06-30)
参考文献数
16

Strontium-90/Y-90 are major radionuclides observed in the water samples tested recently at the site of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station of Tokyo Electric Power Company. A simple method of evaluating Sr-90 concentration in these water samples by measuring β rays from Y-90 with a GM-detector setup was developed. By applying the precipitation method, Sr-90 and Y-90 were separated and quantitatively collected with a filter. β rays from Y-90 in the filter were measured two times at appropriate intervals by inserting a polyethylene plate of 2 mm thickness as a β-ray absorber. The contribution of γ rays from Cs-134 and Cs-137 to the Y-90 count rates was quantitatively evaluated using a 10-mm-thick acrylic resin plate. From the parent-daughter relationship between Sr-90 and Y-90, the Sr-90 concentration was evaluated using the conversion coefficient of Y-90 count rate (cps) to Sr-90 concentration (Bq/cm3). It was verified that Sr-90 concentration of below 0.01 Bq/cm3 in water samples can be correctly measured by this simple method.
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 廣瀨 智理 下平 佳代 渡邉 俊行 舩田 雅之 原 由香利 窓場 勝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.709-713, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

〔目的〕臨床実習指導者からみた学生の「好感がもてる行動」を明らかにすることを目的とした.〔方法〕第1次調査では,臨床実習指導者を対象に自由記述式のアンケート調査を行い,学生に求められている148項目の行動を明らかにした.第2次調査では,1次調査で得られた好感がもてる行動の重要度を明らかにした.〔結果〕臨床実習指導者からみた学生の好感がもてる行動は「患者にはっきりと挨拶ができる」など,患者に対する態度に関する項目が上位を占めていた.一方,下位項目は学生の知識や身だしなみ,デイリーノートに関する項目であった.〔結語〕臨床実習指導者は,患者に対する挨拶や態度を重要視しているが,学生の知識や身だしなみ,デイリーノートの記載量は重要視していないことが示唆された.
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 日沖 義治 北尾 沙友里 中村 純子 中井 良哉 村上 貴士 窓場 勝之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-91, 2014-07-01 (Released:2014-09-12)
参考文献数
24

【目的】iPad アプリケーション「Touch the Numbers」の信頼性と妥当性について検討した。【方法】健常成人34名を対象とした。信頼性の検討には級内相関係数ICC(1,1)と最小可検変化量(MDC)を用いた。また,妥当性の検討はTMT-A との関連から求めたピアソンの積率相関係数から検討した。【結果】ICC=0.66(95%CI:0.42‐0.81),MDC95は6.3秒であった。また,Touch the Numbers とTMT‐A との間に有意な相関(r =0.57,p<0.01)が認められた。【結論】これらの知見から,Touch the Numbers の再現性と妥当性が確認され,注意機能検査として使用できる可能性が示された。
著者
川島 夏希 久永 貴之 浜野 淳 前田 一石 今井 堅吾 坂下 明大 松本 禎久 上村 恵一 小田切 拓也 小川 朝生 吉内 一浩 岩瀬 哲
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.237-243, 2019 (Released:2019-09-26)
参考文献数
24

【目的】せん妄を呈した進行がん患者における苦悩の実態の検討.【方法】国内14施設の緩和ケア病棟に入院中または国内10施設の一般病棟に入院し精神腫瘍科が介入中の進行がん患者のうち,せん妄と診断され抗精神病薬の定期投与を受ける患者を前向きに連続サンプリングした.苦悩の有無を緩和ケア専門医が判断し,患者背景,DRS-R-98で評価したせん妄の重症度を比較した.【結果】対象患者818名のうち99名(12.1%)に苦悩を認めた.年齢,39歳以下,認知症の有無に有意差を認めた.治療前のDRS-R-98(15.3±8.1点 vs 17.3±7.8点,p<0.02)は苦悩を伴う群で有意に低く,情動の変容は有意に高かった.【考察】せん妄を呈した進行がん患者で苦悩を伴うものでは年齢が低く,認知症の併存が少なく,せん妄の重症度は低く,情動の変容が強いことが示された.