著者
村田 伸 甲斐 義浩 安彦 鉄平 中野 英樹 岩瀬 弘明 松尾 大 川口 道生 松本 武士 吉浦 勇次 角 典洋
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.195-198, 2018-01-31 (Released:2018-02-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は,開発した膝関節内反動揺を軽減させる構造の靴(膝内反軽減シューズ)を紹介するとともに,変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす影響を検討した。変形性膝関節症患者21名(すべて女性:平均年齢63.4±8.0歳)を対象に,膝内反軽減シューズと一般靴を履いた際の歩行パラメータを比較した。その結果,膝内反軽減シューズを履いて歩くと,足角が有意(p<0.001)に減少し,ストライド長と歩幅は有意(p<0.001)に広がり,歩行速度が有意(p<0.001)に速まった。一方,歩隔,歩行角,立脚時間,両脚支持時間の4項目には有意差は認められなかった。有意差が認められた足角,ストライド長,歩幅,歩行速度の効果量はΔ=-0.34~0.47の範囲にあり,膝内反軽減シューズが変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす一定の効果が示唆された。
著者
美和 千尋 杉村 公也 川村 陽一 出口 晃 岩瀬 敏
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.187-193, 2002 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

The purpose of this study was to eliminate factors of accidents during Japanese style bathing of the elderly.We investigated the age-related changes in cardiovascular and thermoregulatory function in response to the bathing at 40°C. We measured the blood pressure and the heart rate using an automatic spygmomanometer, the skin blood flow at the forearm using laser Doppler flowmetry, the tympanic temperature using a thermistor, and the sweat rate at dorsum manus using the ventilated capsule method during bathing at 40°C for 20min in 10 aged (73.5±8.4, mean±SD) and 10 young subjects (19.8±1.8).Aged subjects failed to maintain a stable blood pressure during the immersion in the bathtub. While the heart rate during the bathing significantly changed in the young subjects, no change was observed in the aged subjects. Skin blood flow, tympanic temperature, and sweat rate increased during the bathing for both in the aged and the young subjects, though with smaller changes among aged subjects.These findings suggest that the adaptability of cardiovascular and thermoregulatory functions to heating and hydrostatic pressure during Japanese style bathing decreases with age.
著者
岩崎 久夫 金子 憲雄 小野 承行 大久保 薫 磯田 政恵 岩瀬 賢介 安藤 泰正
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.382-385, 1973-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12

Liver cirrhosis was detected at a high rate from among pigs brought to the Omiya Abattoir, Saitama Prefecture, by a swine husbandry man over a period of January to May, 1969. The affected pigs presented no marked gross changes other than liver cirrhosis. Histologically, the liver showed thickening of the stroma and formation of septula, paeudolobules, or pseudo-biliary ducts. Hepatic cells were mostly affected with focal vacuolar degeneration, necrosis, and colliquation. Large nucleated or polynuclear cells appeared. In the kidney, vacuolar degeneration occurred to epithelial cells of some uriniferous tubules, and large nucleated and polynuclear cells appeared. The ovary had follicular cyst.
著者
西村 直記 岩瀬 敏 菅屋 潤壹 河原 ゆう子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.107-115, 2013 (Released:2013-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3

本研究は,身体を擦ることなく 2-ノネナールや皮膚の汚れを除去し,入浴後の加齢臭の発生を効果的に抑制できる入浴様式について,マイクロバブル浴,さら湯浴およびシャワー浴の 3 条件で比較・検討した.8 名の健常男性(40~44 歳)に,10 分間のマイクロバブル浴またはさら湯浴,5 分間のシャワー浴のいずれかをそれぞれ日を変えて行わせ,入浴前後の 2-ノネナール,皮脂量および皮膚の汚れの除去率と入浴後の 2-ノネナールの発生率を比較した.水温はいずれも 38℃に設定した.いずれの入浴様式においても,入浴前と比較して入浴 30 分後の 2-ノネナール濃度は減少したが,それはマイクロバブル浴が最も高かった.また,マイクロバブル浴では,入浴 3 時間後においても 2-ノネナールの発生を防止することができたものの,さら湯浴(P<0.05)とシャワー浴では 2-ノネナールが発生することが明らかとなった.以上の結果から,加齢臭を効果的に除去するとともに,入浴後の加齢臭の発生を長時間に亘って防止できる入浴様式としては,マイクロバブル浴が最も効果的であることが明らかとなった.
著者
須賀 京子 渡邉 順子 岩瀬 敏 西村 直記 清水 祐樹 岩瀬 千尋
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.137-145, 2015-08-20 (Released:2016-04-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,女性高齢者が継続的に実施するフェイスケア (化粧水と乳液を用いるスキンケア, 以下FC) がもたらす生体への影響について, 前頭前野における組織酸素レベルと自律神経反応から明らかにすることである. 65歳以上の健康な女性高齢者18名 (平均年齢68±4歳) が,3週間のFCを継続して実施し,その初日と最終日に近赤外分光法 (NIRS) による前頭前野の脳組織酸素レベルと皮膚血流量, 心拍変動, 皮膚コンダクタンスを用いた自律神経活動を測定した.初日は安静時と比較してFC時に前頭前野における⊿deoxyHbの上昇が認められたが,血液量に変化はなかった.しかし,最終日には安静時と比較して血液量が低下した.また,初日と最終日でともに安静時と比較してFCでは心拍変動のHFの上昇を認め,副交感神経活動の亢進が示された.健康な女性高齢者自身が行うFCは,前頭前野の活動を抑制し,副交感神経活動を亢進させることが示唆された.
著者
森下 昌紀 早川 貴之 菅野 孝史 山岸 正和 岩瀬 順一 川越 謙一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

素数と結び目の類似性に基づき,数論と3次元トポロジーの関連について,研究し,学術論文5篇,論説2篇を著した。具体的な研究成果の概要は以下に述べる通りである。1)絡み目群と分岐条件付き,Galois群の類似に基づき,結び目と素数の類似性を論じた。特に,Alexander加群とMilnor不変量の数論的類似物を求めた。2)絡み目の巡回分岐被覆について,数体の種の理論の類似を求めた。3)3次元多様体の被覆について,数体の単項化定理の類似を求めた。4)素数たちに対するMilnor不変量の類似物のGaloisコホモロジーのMassey積による解釈を与えた。またMilnor不変量の巡回不変性らの性質を示した。5)岩澤主予想と、Alexander多項式の力学系のゼータ関数による解釈の類似性,Langlcends対応と場の量子論の類似について考察した。上記の研究に関して、次の国際,シンポジウム,学会で研究発表を行った。・数論の国際シンポジウム(2001年,9月,都立大),・代数学シンポジウム(2002年,8月,室蘭工大),・米国数学会年会(2003年1月,ボルチモア),・日韓結び目理論シンポジウム(2003年2月東大),・日米数学研究所コンファレンス(2003年3月,ジョンズホプキンス大,ボルチモア),日米数学研究所のコンファレンスでは,組織委員も務めた。
著者
橋本 慎太郎 仁井田 浩二 松田 規宏 岩元 洋介 岩瀬 広 佐藤 達彦 野田 秀作 小川 達彦 中島 宏 深堀 智生 古田 琢哉 千葉 敏
出版者
公益社団法人 日本医学物理学会
雑誌
医学物理 (ISSN:13455354)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.88-95, 2013 (Released:2014-10-21)
参考文献数
32

PHITS is a general purpose Monte Carlo particle transport simulation code to analyze the transport in three-dimensional phase space and collisions of nearly all particles, including heavy ions, over wide energy range up to 100 GeV/u. Various quantities, such as particle fluence and deposition energies in materials, can be deduced using estimator functions “tally”. Recently, a microdosimetric tally function was also developed to apply PHITS to medical physics. Owing to these features, PHITS has been used for medical applications, such as radiation therapy and protection.
著者
谷亀 高広 吹春 俊光 鈴木 彰 大和 政秀 岩瀬 剛二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.259, 2005 (Released:2005-03-17)

ラン科植物はリゾクトニア属に属する不完全菌類が菌根菌となることが広く知られているが、近年それ以外の担子菌が菌根共生する場合のあることが明らかにされている。〈BR〉 そこで本研究ではラン科植物の菌根共生に関する知見の集積を目的としてサイハイラン属のサイハイランとモイワランについて菌根菌の同定を行った。サイハイランは日本各地の丘陵地帯の湿った林内に自生する緑色葉を持つ地生ランである。一方、同属のモイワランは深山の沢筋に自生する無葉緑ランである。サイハイランは神奈川県藤野町のコナラ林において、モイワランは青森県佐井村のオヒョウ、カツラ林において、それぞれ1個体を採取した。菌根菌分離は、リゾーム内に形成された菌根菌の菌毬を分離培地(Czapec・Dox+酵母エキス寒天培地)上へ取り出し、そこから伸張した菌糸を単離培養するという方法(Warcup&Talbot 1967)を適用した。その結果、サイハイランより5菌株、モイワランより2菌株の菌根菌が分離された。それぞれ1菌株についてオガクズ培地で前培養し、これを赤玉土に埋没させることで子実体形成を誘導し、その形態的特徴から菌根菌の同定を試みた。両種から分離された菌株は、子実体の観察の結果、いずれもヒトヨタケ科ヒトヨタケ属キララタケ節に属することが明らかとなった。また、野外から採取したそれぞれのランのリゾームを子実体形成を誘導した菌の培養菌株と共に赤玉土に植え込み、菌根菌を感染させたところ、それぞれのランでリゾームの成長および塊茎の形成を確認した。〈BR〉ヒトヨタケ科の菌がランの菌根菌として同定された例は無葉緑種のタシロランがあるが(大和2005)、他は報告例がない。本研究によって、新たにサイハイラン属について、緑色葉を持つ種と無葉緑の種がともにヒトヨタケ属の菌を菌根菌とすることが明らかとなった。
著者
岩瀬 弘明 東 智里 村上 貴士 中井 良哉 窓場 勝之 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.185-190, 2018-01-31 (Released:2018-02-23)
参考文献数
24

本研究は,脳血管障害患者に対する長下肢装具導入までの日数と麻痺側運動機能およびFunctional Independence Measure(FIM)変化率との関係について明らかにすることである。対象はA病院に入院治療を受けた脳血管障害患者のうち,長下肢装具を作成したものとした。調査項目は年齢と性別,疾患名,発症から長下肢装具導入までの日数,および長下肢装具完成時とリハビリテーション終了時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)とFIM とした。統計解析は,発症から長下肢装具導入までの日数とSIAS(麻痺側運動機能)の変化率,およびFIM 中項目の変化率との関係について偏相関分析を用いて検討した。その結果,発症から長下肢装具完成までの日数と有意な相関が認められたのは,SIAS の体幹機能とFIM の排泄コントロール,移乗・移動の4項目であり,発症から早期に長下肢装具を導入してリハビリテーションを行うことで,体幹機能および移乗,移動能力,排泄コントロールの改善に繋がる可能性が示された。
著者
岡山 将也 谷亀 高広 大和 政秀 岩瀬 剛二
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第52回大会
巻号頁・発行日
pp.90, 2008 (Released:2008-07-21)

ラン科植物の多くが美しい独特の花を咲かせ、多くの人々を魅了してきた。しかし近年、乱獲や開発時の生育地の破壊等により絶滅の危惧に瀕している種が増加しており、生態の解明と保全方法の開発が早急に求められている。ラン科植物の種子は非常に小さく、貯蔵養分をほとんど蓄えていないため、発芽や初期の生育のための栄養分は完全に菌根菌に依存している。本研究は身近な野生ランであるシュンラン(Cymbidium goerinngii)とネジバナ(Spiranthes sinensis)を対象とし、根に共生する菌根菌の多様性を明らかにし、保全のための基礎的データの取得を目的としたものである。シュンランについては栽培品種も実験に用いた。顕微鏡で観察しラン科植物の根にコイル状菌糸(ペロトン)の感染を確認した。根を表面殺菌してガラス棒で潰し、遊離したペロトンを培地上に播き、伸長してきた菌糸をとり菌株を得、rDNAのITS領域の塩基配列解析により菌根菌の種を同定した。その結果、シュンランの菌根菌としてPeniophora sp.が、ネジバナはSistotrema sp.、Epulorhiza sp.、Bjerkandera sp.および Peniophora sp.が同定された。栽培品のシュンランからはTulasnella sp.が同定された。ラン科植物の菌根菌としてPeniophora属菌の報告は本研究が初めてである。これまでネジバナの菌根菌はThanatephorus cucumeris、Ceratobasidium cornigerum、Tulasnella calosporaであると報告されていたが、Peniophora属菌とSistotrema属菌の報告は本研究が初めてである。本研究の結果はシュンランとネジバナにはかなり多様な木材腐朽菌や土壌菌が共生していることを示し、これまで考えられていたようないわゆる’’Rhizoctonia’’に限られたものではないということが明らかになった。また、これらの菌根菌は木材や落葉を分解して得た栄養をランに供給していることを示唆しており、このようなラン科植物の保全のためには、むやみに落葉や倒木を除去しないことが重要であると考えられる。
著者
黒沢 顕三 内田 直樹 岩瀬 万里子 保田 国伸 江花 莉華 平嶋 勇人 石垣 征一郎 松田 和弘 矢野 怜 佐久間 大 安原 一
出版者
The Japanese Society of Clinical Pharmacology and Therapeutics
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.283-290, 2006-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

Drewell ® (diphenhydramine: DPH) is a histamine H1 receptor antagonist and the first OTC sleep aid in Japan. There are few studies which objectively evaluate the sedative effects in elderly subjects. The aim of present study was to evaluate the sedative effects of Drewell ® in healthy elderly and to compare the results with data from young subjects on which we reported previously.A placebo controlled, double-blind, crossover clinical pharmacological study was performed. Eight Japanese healthy elderly male volunteers received 2 tablets of Drewell ®, containing 50mg DPH, or matched placebo orally. Plasma levels of DPH after administration were measured hourly up to 4 hours and every 2 hours up to 8 hours. The sedative effects after the dose were measured by using the saccadic eye movement analyzing system for objective assessment and visual analogue scale (VAS) for subjective assessment.After Drewell ® administration the saccadic peak velocity (SPV) was decreased and saccade inaccuracy (IAC) was increased compared with placebo. There were no significant differences in saccade latency and VAS. The onset of significant decrease of SPV in elderly was delayed compared to young subjects (90 min in elderly vs 30 min in young) although pharmacokinetic parameters were similar in elderly and young subjects. However, the available data of both pharmacokinetic and pharmacodynamic at the same time point until sedation onset was only 60 min. Therefore further investigation is necessary to precisely determine the differences of onset of the sedative effect up to 90 min after Drewell ® administration.
著者
折原 貴道 大藪 崇司 岩瀬 剛二
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会50周年記念大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2006 (Released:2007-06-05)

ユーカリ属Eucalyptus の多くはオーストラリア大陸原産であり、成長が早く、また乾燥や塩害等にも強いことから、世界中の多くの地域で植林が試みられている。近年では更にパルプ材としての利用や葉から抽出・精製したオイルの利用など、幅広い用途可能性を有する樹木として注目されている。ユーカリ属の樹種は外生菌根を形成することが知られており、オーストラリアやブラジルを初めとする多くの地域からその菌根菌相が報告されているが、日本におけるユーカリ外生菌根菌相ついては未解明な点が多い。本研究では、三重県亀山市の王子製紙森林資源研究所ユーカリ試験植林地において、植栽後8-9年が経過したE. globulus 植栽地に2箇所、及びE. camaldulensis 植栽地に1箇所の方形コドラート(10×10 m)を設置し、2004年7月より月1回の間隔で外生菌根菌の子実体発生状況の定点調査を行った。その結果、Laccaria fraterna, Scleroderma cepa, S. sp. 及びPisolithus sp. の計4種の子実体発生が現在までに確認された。また、子実体発生量及び種数は9月から12月にかけて多くなった一方、1月から8月にかけては常に少ない状態であった。主要な原産国であるオーストラリアでは約660種の外生菌根菌が確認されており(Bougher, 1995)、日本におけるユーカリ植栽地の外生菌根菌相の種多様性は著しく低いことが示唆された。本発表では、これら4種の子実体の形態的特徴及び発生状況の季節変動について考察するとともに、現時点までに演者らが観察した、オーストラリアのユーカリ林及び日本国内の他地域で採集された同種標本との比較も行い、日本におけるユーカリ外生菌根菌の種多様性と、ブナ科樹種の菌根菌相との共通性に関しても考察を行った。本研究の主旨に賛同し、試験植林地の利用を快く承諾してくださった、(株)王子製紙 森林資源研究所に心より御礼申し上げます。
著者
石井 良平 池田 俊一郎 青木 保典 畑 真弘 補永 栄子 岩瀬 真生 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.241-245, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
22

自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder ; ASD)患者の運動実行時・運動観察時のβ帯域(15-30Hz)の運動後β帯域リバウンド(Post-movement beta rebound : PMBR)を求め,健常被験者のそれと比較検討することで,ASD患者におけるミラーニューロンに関連した生理学的変化を解明し,ASD患者のMNSに関連する障害について検討した。ASD患者7名と健常被験者10 名を対象とし,右手指の運動観察時と安静時,運動実行時と安静時の脳磁図を測定し,それぞれの課題と安静時の間でのβ帯域(15-30Hz)活動の電流源密度分布をBESAで解析後,BrainVoyager QX にて各群におけるPMBRの平均分布と群間比較(両側T検定,p < 0.05)を行った結果,両群において運動実行時,運動観察時ともに,後頭部(視覚野)やローランド領域にてPMBRの最大値が見られた。運動実行時には両群間で差は認めなかったが,運動観察時には両群間で対側感覚運動野,同側運動前野,中側頭葉,前帯状回(ACC)で PMBRに有意差を認めた。ASD患者群における運動観察時での PMBRの有意な減少は,ASDでは運動観察時に健常被験者とミラーニューロンを中心とした脳活動が異なることが示唆された。