著者
岩田 明久
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.133-141, 2006-12-05
参考文献数
11
被引用文献数
4

現在、アユモドキLeptobotia curtaの天然個体群は岡山県の二カ所と京都府の亀岡のみにしかなく、日本の淡水魚で最も絶滅の危険性が高い種の一つとされる。本種は、水田に取水するために灌漑用ゴム布引製起伏堰が稼働した後に、水位の急激な上昇で水没する陸生植物の繁茂した堰上流部のうち、緩傾斜が続く泥底止水城浅所のごく狭い範囲に産卵する。しかも、産卵日は水位の上昇が止まった直後の一日から二日間のみという集中的な産卵習性を持つ。仔魚には3-4週間浮遊しながらミジンコ類を専食するための安定した一時的水域が必要である。一方、稚魚から成魚の環境要求性は狭くない。従って、本種の存続はひとえに産卵場と仔魚の育成場所の存在にかかっている。このような場所はモンスーン地域の雨季に、河川水位の急激な上昇で水没する氾濫原や河跡湖の岸辺といった、水田生態系が作出される以前の始源的状態を保持しているといえる。現在、この条件を満たす箇所は用排兼用型灌漑のもとに在来水田農業が営まれる、用水路に続く遊水地や灌漑堰のある河川支流にごく僅かに残されているにすぎない。そして、このような場所は水田農地・河川改修で最初に消失する部分である。アユモドキのような在来水田農業に依存した生物を存続させるには、水田周辺の用排水路・小溝・河川支流等といった場所に残存するモンスーン気候遣存環境の維持と再創出を強く目指さなければならない。
著者
岩田 博 磯谷 敦子 宇都宮 仁 西尾 尚道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.534-538, 2004-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
3

口噛み酒製造工程への米α-グルコシダーゼの働きを検討するため, 生米と炊飯米で口噛み試験を行い, 糖組成, α-グルコシダーゼ活性, pH及び有機酸組成の各変化を調べた。<BR>糖組成について, 24時間後で, 生米はグルコースが5%, マルトースが0%であったのに対し, 炊飯米ではマルトースが5%, グルコースが0.8%で両者は全く異なっていた。この理由は, 糖組成とα-グルコシダーゼ活性の測定結果から, 唾液アミラーゼにより生成されたマルトースが, 生米のα-グルコシダーゼによりグルコースに分解されたためと推定された。また, 有機酸組成の検討から, 微生物が生成した乳酸などによるpH低下と酵素抽出促進効果がおこり, α-グルコシダーゼが有効に機能する環境条件下で口噛み試験の反応が起こっていることが分かった。<BR>以上から, 口噛み酒は生米のα-グルコシダーゼを巧みに利用した酒造りであると推定された。
著者
岩田 弘三
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.147-166, 1994-06-10 (Released:2011-03-18)
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
坂口 一夫 岩田 由美 堀内 暢子 市川 秀一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.326-329, 2004-05-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
14

Iron is known to interact with various foods and drugs taken at the same time and since ascorbic acid generally seems to promote the intestinal absorption of iron, we performed a retrospective medical survey using medical charts to establish the effect of ascorbic acid on patients with iron deficiency anemia taking sodium ferrous citrate. The hemoglobin levels and hematocrits of patients with iron deficiency anemia were markedly improved after taking sodium ferrous citrate containing 50 mg of elemental iron alone for 4 to 8 weeks. However, there was no difference between the hemoglobin and hematocrit results for this group of patients and another group who took ascorbic acid (200mg) in addition to sodium ferrous citrate. These results suggest that ascorbic acid does not influence the efficacy of sodium ferrous citrate when these agents are administered together for the treatment of iron deficiency anemia.
著者
岩田 功吉
出版者
法政大学
雑誌
沖縄文化研究
巻号頁・発行日
vol.27, pp.345-403, 2001-03-31
著者
岡本 晶子 岩田 岳
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

視覚は生活の質の維持に重要な要素であり、視機能の再生・維持を目的として、iPS細胞を用いた細胞移植、チャネルロドプシンを用いた機能回復、人工網膜などの研究が進んでいる。一方で、網膜の内在性幹細胞を利用した神経細胞の再生源として、ミュラーグリア細胞が注目されてきた。本研究ではアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子導入により、傷害時のミュラーグリア細胞の増殖とその後の神経細胞への分化を促進することを目的とし、候補因子の比較、網膜へのAAV導入効率を検討した。
著者
岩田 正明
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.163-167, 2018 (Released:2019-11-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

うつ病の病態仮説は,これまでのモノアミン仮説から,モノアミンの活動の基盤となるシナプスやスパインの異常といった神経可塑性仮説に軸足を移しつつある。ケタミンやその類似薬が可塑性にフォーカスした即効性の抗うつ効果において注目されている一方,うつ病において神経が病的な可塑的変化をきたすメカニズムについては十分に解明されていない。うつ病発症の大きな要因であるストレスは神経の萎縮やスパインの減少を引き起こすが,この過程にうつ病の病態の大きな謎が隠されている。我々はストレスが生体の「免疫機構」によって感知され,その結果脳内で炎症反応が引き起こされることを見いだした。放出された炎症性サイトカインは神経障害を引き起こすことから,過剰な免疫応答の抑制をターゲットとした治療法が,うつ病治療の新しい切り口となる可能性がある。本稿ではその取り組みについて報告する。
著者
岩田 誠
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.297-304, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
27

広い表面積で外界と接する腸管では,免疫細胞の配備が必須である.一般に,リンパ球の組織への配備は一定のルールに則って行われる.ナイーブT細胞は,リンパ節などの二次リンパ系器官には移入できるものの,非リンパ系組織には移入できない.二次リンパ系器官で抗原刺激を受けてエフェクター/メモリーT細胞となると,その二次リンパ系器官が所属する組織に選択的に移入(ホーミング)できるようになる.例えば,腸の二次リンパ系器官であるパイエル板や腸間膜リンパ節で抗原刺激を受けたT細胞は,小腸特異的ホーミング受容体(インテグリンα4β7とケモカイン受容体CCR9)を発現し,小腸に移入できるようになる.我々は,腸の二次リンパ系器官の樹状細胞がT細胞に抗原提示をすると同時にビタミンAからレチノイン酸を生成し与えることで,小腸特異的ホーミング受容体を発現させていることを見出した.同様に,ナイーブB細胞が抗原刺激を受け,小腸へのホーミング特異性を獲得するためにも,また,さらにIgA抗体産生細胞へと分化するためにもレチノイン酸が必須であることを明らかにした.
著者
工藤 浩 井出 浩希 中林 玄一 後藤 貴宏 若栗 良 岩田 尚宏 黒木 嘉人
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.59-66, 2019-01-25 (Released:2019-02-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:重度嚥下機能障害を有する高齢者診療における完全側臥位法の有用性について検討した.方法:2015年2月から2017年10月に当院に入院し,嚥下機能障害が疑われNSTが介入した142例(全例嚥下内視鏡検査(VE)施行)中,従来の誤嚥予防対策では安全な経口摂取は困難な重度嚥下機能障害と診断された65歳以上の高齢者47例に完全側臥位法を導入した.完全側臥位法導入が安全な経口摂取と転帰に及ぼす影響について,完全側臥位法未実施群(対照群)と比較検討した.結果:平均年齢は85±8.3歳,男女比は32:15,初回VEで全例に重度の嚥下機能障害(兵頭スコア8.16±2.0点)を認めた.完全側臥位法導入後,栄養療法,リハビリテーションの併用により,血中Alb値,Barthel indexの改善も認め,対照群と比較し,経口栄養での退院が有意に増加(26.5→53.2%)した.退院症例25例中13例は再び座位姿勢でも安全に食事摂取が可能となった.死亡退院21例の死因病名は老衰10例が最も多かった.完全側臥位群では老衰による終末期の症例でも安全な経口摂取が可能となり,対照群と比較し死亡までの平均欠食期間が有意に短縮(17.3→7.3日)した.退院後に在宅でも完全側臥位法を継続し,再入院することなく1年後に自宅で穏やかな最期を迎えられた症例も経験した.結論:完全側臥位法は重度嚥下機能障害をもつ高齢者の安全な経口摂取に高い効果を認めた.安全な食事摂取が栄養状態の改善,リハビリによる機能強化にもつながり,経口栄養での退院増加に寄与した.完全側臥位法は特別な器具,手技を必要とせず簡便で負担の少ない手法であり,言語聴覚士が不在の市中病院や在宅,重症患者でも容易に継続できることが確認された.本手技が嚥下機能障害を有する高齢者診療におけるブレイクスルーとなり得る可能性が示唆された.
著者
岩田 建
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.22, pp.35-42, 2015-03-31

市販の500mL ペットボトル入りミルクティー ( 6 社 8 種) を用いて、 官能評価の結果を、 商品解析に用いられているプロダクト・マッピングの手法に応用し、 味の特徴について系統的に分類することを試みた。 さらに、 商品の販売数と商品の味の特徴とに関連性が見いだせるかどうかを検討した。 この結果、 商品の味を、 「甘さ」 が強いか 「苦さ」 が強いかの軸と、 「紅茶風味」 が強いか 「ミルク風味」 が強いかの軸の 2 軸で考えることで、 系統的に配列できる可能性が示唆された。 また、 販売数と商品の味との関連は低く、 広い味の範囲で好まれていると考えられた。
著者
岩田和雄
雑誌
日眼会誌
巻号頁・発行日
vol.96, pp.1501-1531, 1992
被引用文献数
69
著者
二宮 由樹 岩田 知之 寺井 仁 三輪 和久
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.217-231, 2023-09-01 (Released:2023-09-15)
参考文献数
57

Why do humans try to discover better alternatives to solve a problem even when they already have a solution? Such flexibility to reject the familiar solution and to search for and discover better alternatives supports creative problem solving. Previous research has shown that participants who found alternatives are less likely to bias their attention toward the fixation-related areas, even when they are fixated on the trained procedure, compared to non-finder. The present study examined whether an intentional search for information irrelevant to the trained procedure under the successful situation is related to finding alternatives. Experimental results indicated that finders intentionally searched for a greater amount of information irrelevant to fixation, even when solving a problem with the trained procedure. In addition, it was shown that the difference in the intentional search might be caused by the strength of reinforcement of fixation on the trained procedure.
著者
岩田 勝哉
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.324-334, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
63

TMAO (trimethylamine oxide) and urea are stable end products and cannot be metabolized further to provide skeletons for biosynthesis. These substances are widely utilized in various marine fishes. Particularly, in cartilaginous fishes, a large amount of urea and methylamines including TMAO are accumulated as osmolytes in their tissues. In marine teleostean fishes, a considerable amount of TMAO also maintain in their bodies, although the levels are far less than those of cartilaginous fishes. However, urea levels in teleostean tissues are generally low, and only a few species utilize urea as a device for ammonia detoxification. In this paper multiple functions of TMAO and urea on marine fishes are discussed.