著者
横田 雅也 築地 立家 北川 智博 諸橋 玄武 岩田 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.239-246, 2001-03-01
被引用文献数
4

縦横nマスの盤面上に与えられた詰将棋で, 攻方が勝てるかどうかを決定する問題を, 一般化詰将棋問題と呼ぶ.本論文では一般化詰将棋問題が指数時間完全であることを証明した.指数時間困難さの証明は, 既に指数時間完全であることが知られている問題G_3(Provably difficult combinatorial games, SIAM J.Comput., vol.8, 1979)から対数領域還元可能であることを示した.
著者
岩田 篤
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.635-640, 1982-05-05

電子ビームを熱源として用いた変態焼入法の可能性の実証及び基礎的特性の解明を実験的に行う.デフォーカスしY方向に三角波形で偏向振動させた電子ビームを, X方向に定速度で移動するS45C板に照射して加熱し, 自己冷却を利用して焼入れを行う.実験の結果, S45C板に幅10mm, Hv600以上の硬化深さ0.6mmの硬化層を得ることができる.その表面粗さは焼入れを施した.ことにより粗くなる.硬化層内の平均硬度は表面溶融がわずかに認められる状態のエネルギー投入時に最大となる.定速度移動半無限体表面の静止長方形熱源による温度分布と, 900℃等温線を熱変質層境界とする仮定による電子ビーム焼入れモデルを用いた計算結果は実験値と良い一致を示す.
著者
浜中 雅俊 種石 慶 岩田 浩明 奥野 恭史
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.46-49, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
13

医薬品となる候補化合物のスクリーニングのための,タンパク質と化合物の相互作用の予測について述べる.膨大な種類の化合物から医薬品になり得るリガンド化合物を見つけ出す工程は,開発にかかる時間とコストを押し上げる主要因となっており,計算により優れた性質の候補化合物を絞り込むインシリコ(in silico)スクリーニングの手法が提案されてきた.我々は,これまでサポートベクターマシン(SVM)を用いた予測手法CGBVS法を提案してきた.しかし,その手法では,学習データが増えるにつれて学習時間が長大になるなど,大規模な相互作用データを学習していく上で検討すべき課題があった.本稿では, Deep Learningの一手法である,Deep Belief Networks(DBN)を用いたCGBVS-DBN法を提案し,SVMとの性能を比較する.実験の結果,CGBVS-DBN法がCGBVS法に比べて高い性能であることを確認した.
著者
浅野 良晴 岩田 仁 紀谷 文樹 市川 憲良 有吉 淳 高橋 紀行 樋口 祥明 向野 信男
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.63, no.504, pp.79-86, 1998
被引用文献数
1 1

In this paper the authors investigated the fundamental data which were necessary for estimation of the optimum number of the fixtures in a lavatory of the single-purpose soccer stadium. The sanitary fixture usage of the audience of a pro-soccer game at a stadium-K were surveyed actually by means of the electric methods. The results are as follows. The number of men was same to female in audience. The waiting line of lavatory during the intermission had been left after the second half of the game had started, therefore some of audience had been disturbed to watch the game. Lack of the sanitary fixture in the female lavatory had caused waiting line during this investigation period. But the occupated period on each fixture was similar to the result of the previous investigation.
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 辻尾 芳子 木元 宏弥 方山 揚誠 西村 正治 秋沢 宏次 保嶋 実 葛西 猛 木村 正彦 松田 啓子 林 右 三木 誠 中野渡 進 富永 眞琴 賀来 満夫 金光 敬二 國島 広之 中川 卓夫 櫻井 雅紀 塩谷 譲司 豊嶋 俊光 岡田 淳 杉田 暁大 伊藤 辰美 米山 彰子 諏訪部 章 山端 久美子 熊坂 一成 貝森 光大 中村 敏彦 川村 千鶴子 小池 和彦 木南 英紀 山田 俊幸 小栗 豊子 伊東 紘一 渡邊 清明 小林 芳夫 大竹 皓子 内田 幹 戸塚 恭一 村上 正巳 四方田 幸恵 高橋 綾子 岡本 英行 犬塚 和久 山崎 堅一郎 権田 秀雄 山下 峻徳 山口 育男 岡田 基 五十里 博美 黒澤 直美 藤本 佳則 石郷 潮美 浅野 裕子 森 三樹雄 叶 一乃 永野 栄子 影山 二三男 釋 悦子 菅野 治重 相原 雅典 源馬 均 上村 桂一 前崎 繁文 橋北 義一 堀井 俊伸 宮島 栄治 吉村 平 平岡 稔 住友 みどり 和田 英夫 山根 伸夫 馬場 尚志 家入 蒼生夫 一山 智 藤田 信一 岡 三喜男 二木 芳人 岡部 英俊 立脇 憲一 茂龍 邦彦 草野 展周 三原 栄一郎 能勢 資子 吉田 治義 山下 政宣 桑原 正雄 藤上 良寛 伏脇 猛司 日野田 裕治 田中 伸明 清水 章 田窪 孝行 日下部 正 岡崎 俊朗 高橋 伯夫 平城 均 益田 順一 浅井 浩次 河原 邦光 田港 朝彦 根ケ山 清 佐野 麗子 杉浦 哲朗 松尾 収二 小松 方 村瀬 光春 湯月 洋介 池田 紀男 山根 誠久 仲宗根 勇 相馬 正幸 山本 剛 相澤 久道 本田 順一 木下 承晧 河野 誠司 岡山 昭彦 影岡 武士 本郷 俊治 青木 洋介 宮之原 弘晃 濱崎 直孝 平松 和史 小野 順子 平潟 洋一 河野 茂 岡田 薫
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.428-451, 2006-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
37
著者
岩田 修一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.543-551, 2012-11-01 (Released:2012-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4

多様な品質のデータが構造化されないまま大量に流通する時代である。そうしたビッグデータの時代における学術データの流通の新たな様相と課題を説明した。多様なデータを時間,空間,意味から整理した例として,ビッグヒストリー,ビッグマップ,データサイエンスの事例を紹介し,ビッグデータの整理法について論述した。特に3.11東日本大震災以降,明らかになった重要なデータに関する課題は,結果が示された後の事後的な説明ではなく,利用可能なデータを活用した先見的な予測と対策,危機管理である。この小稿の結論としてデータの意味を基にした数理とデータ科学の根本的な課題を列挙し,今後の本格的な課題解決のための準備とした。
著者
佐々木 勇介 田野 俊一 橋山 智訓 岩田 満
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.744, pp.7-12, 2004-03-19
被引用文献数
2

近年情報技術の発展に伴い,計算機によってアートやデザイン活動を支援できるようになり,様々なツールを使うことで複雑で綺麗な絵を容易に作成できるようになってきた.しかし,それゆえ逆に人間の創造性や感性を阻害しているという場合も存在する.そこで本研究では,デザイナの創造性,感性を阻害せず,逆に創造性,発想性を高めるデザイン支援システムとして,「発散型思考」と「収束型思考」を活性化させるスケッチ支援システムの構築を目標とした.
著者
丹保 亜希仁 岩田 周耕
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.16-18, 2018-04-01 (Released:2018-04-28)
参考文献数
6

成人の心肺蘇生教育は2000年の心肺蘇生ガイドラインが発表されて以降急速に普及しており,質の高い心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation,以下CPRと略す)の重要性がうたわれている。CPRは胸骨圧迫と人工呼吸によって成り立つが,自己心拍再開のためには冠動脈血流量を保つ必要があり,心肺蘇生ガイドラインでも適切な胸骨圧迫の施行が重要とされている。また,脳血流の維持は神経学的予後に影響する。胸骨圧迫は,適切な深さ,テンポ,リコイル,中断時間の短縮が重要であり1, 2),様々なトレーニングコースでも強調されている。自動心肺蘇生器Clover3000TM(コーケンメディカル,東京;図1)は,胸骨圧迫機能に加えて人工呼吸機能を有する日本初の自動心肺蘇生器である。人工呼吸機能は,胸骨圧迫に対して同期および非同期モードを有しており一回換気量(200~600mL)を設定することができる。胸部の厚さは12~28cmに対応しており,圧迫の深さも調節可能である。本稿では,Clover3000の使用経験を報告する。
著者
町田 昌彦 岩田 亜矢子 山田 進 乙坂 重嘉 小林 卓也 船坂 英之 森田 貴己
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.J20.036, (Released:2022-01-26)
参考文献数
53
被引用文献数
4

We estimate the monthly discharge inventory of tritium from the port of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (1F) from Jun. 2013 to Mar. 2020 using the Voronoi tessellation scheme, following the tritium monitoring inside the port that started in Jun. 2013. As for the missing period from the initial month, Apr. 2011 to May 2013, we calculate the tritium discharge by utilizing the ratio of tritium concentration to 137Cs concentration in stagnant contaminant water during the initial direct run-off period to Jun. 2011 and the discharge inventory correlation between tritium and 137Cs for the next-unknown continuous-discharge period up to May 2013. From all the estimated results over 9 years, we found that the monthly discharge inventory sharply dropped immediately after closing the seaside impermeable wall in Oct. 2015 and subsequently coincided well with the sum of those of drainage and subdrain etc. By comparing the estimated results with those in the normal operation period before the accident, we point out that the discharge inventory from the 1F port after the accident is not very large. Even the estimation for the year 2011 is found to be comparable to the maximum of operating pressurized water reactors releasing relatively large inventories in the number of digits. In the national level, the total domestic release inventory in Japan significantly decreased after the accident owing to the operational shutdown of most plants. Furthermore, 1F and even the total Japanese discharge inventory are found to be minor compared with those of nuclear reprocessing plants and heavy-water reactors on a worldwide level. From the above, we suggest that various scenarios can be openly discussed regarding the management of tritium stored inside 1F with the help of the present estimated data and its comparison with the past discharge inventory.
著者
苅田 香苗 坂本 峰至 吉田 稔 龍田 希 仲井 邦彦 岩井 美幸 岩田 豊人 前田 恵理 柳沼 梢 佐藤 洋 村田 勝敬
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.236-251, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
136
被引用文献数
14

More than sixty years has passed since the outbreak of Minamata disease, and high-level methylmercury contaminations now seem nonexistent in Japan. However, mercury has been continuously discharged from natural sources and industrial activities, and the health effects on children susceptible to methylmercury exposure at low levels, in addition to mercury contamination from mercury or gold mining areas in developing countries, become a worldwide concern. In this article, we provide a recent overview of epidemiological studies regarding methylmercury and mercury. The following findings were obtained. (1) Many papers on exposure assessment of methylmercury/mercury have been published since the Minamata Convention on Mercury was adopted in 2013. (2) The most crucial problem is child developmental neurotoxicity resulting from prenatal exposure to methylmercury, but its precise assessment seems to be difficult because most of such effects are neither severe nor specific. (3) Several problems raised in birth cohort studies (e.g., whether IQ deficits due to prenatal methylmercury exposure remain when the children become adults, or whether the postnatal exposure at low levels also causes such adverse effects in children) remain unsolved. (4) Concurrent exposure models of methylmercury, lead, polychlorinated biphenyls, aresenic, and organochlorine pesticides, as well as possible antagonists such as polyunsaturated fatty acids and selenium, should be considered in the study design because the exposure levels of methylmercury are extremely low in developed countries. (5) Further animal experiments and molecular biological studies, in addition to human studies, are required to clarify the mechanism of methylmercury toxicity.
著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11070, (Released:2015-12-08)
参考文献数
14
被引用文献数
6

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
永井 洋子 原 規子 前田 正 岩田 基秀 土門 薫 石井 孝政 吉澤 定子 秋元 達雄 加藤 博人 瓜田 純久 中西 員茂 杉本 元信
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.45-51, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

成人ヒトパルボウイルスB19 感染症は典型的経過をとる小児と違い,多彩な症状を呈するため診断が困難なことも少なくない.本検討は,2 年間で11,040 例の当科初診患者のうち発熱,皮疹,浮腫,関節痛,筋肉痛などを主訴とする78 例についてヒトパルボB19 ウイルス感染症を疑って抗体価を測定し,血中IgM 抗体陽性(抗体価8.89±7.86 平均±標準偏差,EIA 法)で,同感染症と診断した15 例について,臨床症状および検査所見の詳細な検討を行ったものである.検討結果より「ヒトパルボウイルスB19 抗体価を測定するべき症例の条件(以下条件とする)を次のように作成した.すなわち,1.CRP が低値か陰性,白血球数上昇なし,2.短期間出現する粟粒大の紅斑(顔面は稀),3.上下肢の関節痛や筋肉痛(必ずしも対称性でない),4.四肢とくに指先,足首,足底の浮腫,5.患児との接触,6.倦怠感,頭痛,発熱など感冒様症状,7.補体価が正常か低値,自己抗体陽性.この7 項目のうち1 を必須項目とし,残り6 項目のうち3 項目以上を満たす症例を「条件」を満足する例とした.78 例について後方視的にこの「条件」を用いた場合の感度,特異度,陽性反応的中度,陰性反応的中度は,それぞれ100%(15/15),88.9%(56/63),68.1%/22),100%(56/56)であった.以上より上記の抗体価測定の「条件」は抗体価を測定すべき症例を選択するのに十分有用であると思われた.成人ヒトパルボウイルス感染症では重症例,遷延例があるため見逃すことなく確定診断をつけることが必要である.
著者
三宅 優紀 岩田 美幸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.341-347, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
14

特別養護老人ホームに入所中で,生活全般において消極的な女性に対し,園芸活動を用い,作業機能障害の種類に焦点を当てた評価および介入を行った.観察を中心にした評価は,作業機能障害の4種類(作業不均衡,作業剥奪,作業疎外および作業周縁化)に対する必要な介入を明確にできた.その結果,症例は,笑顔が増え,外出するようになり,夜間の睡眠が十分とれるようになるなど,作業機能障害の改善に至り,健康な施設生活を送れるようになった.意味のある作業を同定しがたいクライエントに対して,作業機能障害の種類に焦点を当てた評価および介入は,有効であったと考える.
著者
岩田 正美
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.281, pp.73-99, 1997-03-25
被引用文献数
3

ここ数年、目に見える形でのホームレス=路上生活者の存在が目にっくようになってきている。しかしこれを積極的に社会問題化していく方向性が今日のわが国には希薄である。路上生活者の存在を社会問題化させる媒介項として社会調査の意味を検討した上で、新宿の路上生活者を一斉調査によって概観し、あわせてインタビュー調査から路上生活者の多様な姿を路ヒ生活と一般社会との〈距離〉という視点からスケッチする。
著者
西田 幸典 佐藤 啓造 藤城 雅也 根本 紀子 足立 博 岩田 浩子 米山 裕子 李 暁鵬 松山 高明 栗原 竜也 藤宮 龍祥 浅見 昇吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.168-182, 2018 (Released:2018-09-11)
参考文献数
27

今日の在宅看取りは,地域の診療所医師が大部分を担っているが,2040年をピークとする多死社会の看取り体制として,それが適切に機能するかの問題がある.そこで,本研究は,診療所医師の在宅看取りにおける負担軽減策として,看護師による死亡診断および死亡診断書の作成について,多死社会を担う若年層の認識を踏まえて,その是非を法医学的観点から考察するものである.研究方法は,質問紙調査(対象:医学生242名,一般学生402名)と看取り制度に関する文献調査である.質問紙調査の結果は,看護師による死亡診断について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.また看護師による死亡診断書の作成について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断書の作成について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.しかし,死亡診断を是認する割合は,死亡診断書の作成を是認する割合よりも高かった.一方,医療制度改革の潮流には,①医師の働き方の見直しとしてタスク・シフティングの提案,②看護師の特定行為の創設,③地域包括ケアシステムの推進,④欧米における看護師による死亡確認の現状がある.本研究では,上記の調査結果と医療制度改革の潮流を踏まえ,診療所医師の負担軽減策の一つとして,看護師による死亡診断を,①特定行為の一つとする方法と ②保健師助産師看護師法の「診療の補助」とは別の新たな枠組みとする方法を提案する.一方,看護師による死亡診断書の作成については,原則として時期尚早と考える.しかし,診療所医師の負担軽減および死後のエンゼルケアやグリーフケアの実施の観点から,末期がん患者のような特定の患者に限定し,かつ,死亡診断書の作成プロセスの一つである異状死でないとの判断までであれば検討の余地があると考える.ただし,これを実現するためには,異状死の判断を適切に行い得る程度の知識と技術を担保できる教育システムが必要不可欠であると考える.
著者
山室 匡史 岡田 侑己 瀬川 尋貴 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 岩田 祐子
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.73-83, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In Japan, possession of germinable cannabis seeds for cultivation purposes is subject to prosecution. Cannabis seeds are marketed after being treated to prevent germination (heated or crushed). Currently, forensic examination of cannabis seeds is conducted by cultivating the seeds after germination tests for several weeks and then performing morphological observation and chemical analysis on the true leaves. In this study, we attempted to construct a rapid and simple method for the identification of cannabis seeds by combining the color reaction using 2,3,5-Triphenyl-2H-tetrazolium Chloride (TTC), a reagent that discriminates between living and dead cells, and DNA testing using a commercially available simple kit. The color reaction using TTC can determine the viability of peeled embryos within 20 min at 45 ℃ as previously reported. This method is effective for quickly determining whether a seed has been heat-treated or not. However, in the color reaction, a commercial health food seed that claimed to be unheated showed some coloration. This sample had been crushed to prevent germination and was easily identified as non-germinable by morphological examination. After the color reaction, the embryos could be directly used for DNA extraction without washing, and the DNA testing could be carried out in about 2 hours by following the instruction manual of the kit. By following the above procedure, it was possible to identify in one day whether a seed was a germinable cannabis or not, without the need to cultivate the plant. This method is expected to make a significant contribution to improving the efficiency of cannabis seed analysis.