著者
杉浦 徹 櫻井 宏明 杉浦 令人 岩田 研二 木村 圭佑 坂本 己津恵 松本 隆史 金田 嘉清
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.623-626, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
19
被引用文献数
5 3

〔目的〕回復期リハビリテーション病棟における超高齢脳卒中患者の自宅退院に必要なADL条件を検討すること.〔対象〕85歳以上の脳卒中患者で,転帰先が自宅もしくは施設または療養病床である71名とした.〔方法〕自宅群(41名)と施設群(30名)の2群に分類し,これらの間で患者の基本的特性,退院時FIM得点を比較した.また,有意差の認められたFIM各合計点では,ロジスティック回帰分析とROC曲線からカットオフ値を算出した.〔結果〕自宅群と施設群の間で,年齢,発症から回復期入院までの期間,移動手段に有意な差が認められ,カットオフ値はFIM運動項目合計点で39点となった.〔結語〕新たなADL条件として,退院時FIM運動項目合計点が39点以下の場合,超高齢脳卒中患者の自宅退院は困難となる可能性がある.
著者
町田 昌彦 山田 進 岩田 亜矢子 乙坂 重嘉 小林 卓也 渡辺 将久 船坂 英之 森田 貴己
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.226-236, 2019 (Released:2019-11-20)
参考文献数
34
被引用文献数
9

After direct discharges of highly contaminated water from Units 2 and 3 of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (1F) from April to May 2011, Kanda suggested that relatively small amounts of run-off of radionuclides from the 1F port into the Fukushima coastal region subsequently continued, on the basis of his estimation method. However, the estimation period was limited to up to September 2012, and there has been no report on the issue since that work. Therefore, this paper focuses on the discharge inventory from the 1F port up to June 2018. In the missing period, the Japanese government and Tokyo Electric Power Company Holdings have continued efforts to stop the discharge, and consequently, the radionuclide concentration in seawater inside the 1F port has gradually diminished. We show the monthly discharge inventory of 137Cs up to June 2018 by two methods, i.e., Kanda’s method partially improved by the authors and a more sophisticated method using Voronoi tessellation reflecting the increase in the number of monitoring points inside the 1F port. The results show that the former always yields overestimated results compared with the latter, but the ratio of the former to the latter is less than one order of magnitnde. Using these results, we evaluate the impact of the discharge inventory from the 1F port into the coastal area and the radiation dose upon fish digestion.
著者
岩田 学 近藤 和泉 福田 道隆 橋本 賀乃子 相馬 正始 八戸 善直
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.372-377, 1998-10-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
5

片麻痺患者に見られる緊張性足指屈曲反射 (TTFR) に対する inhibitor bar の効果について検討した. 対象は慢性期の片麻痺患者で, 短下肢装具を着用し, 独歩可能な患者16名とした. この16名をTTFRが認められるTTFR群8名とTTFRが認められないCONTROL群8名に分け, 短下肢装具への inhibitor bar 装着前後で, 最大歩行速度が変化するかどうかについて比較検討した. その結果TTFR群では inhibitor bar 装着により, 最大歩行速度が14.5%向上し, stride length で6.75%, cadence で6.8%の増加が認められた. CONTROL群では, いずれも有意な増加を認めなかった. TTFRが認められる片麻痺患者では, inhibitor bar の装着により歩行能力の向上が期待できることから, その積極的な活用が望まれる.
著者
岩田 千亜紀
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.44-57, 2015-11-30 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
5

高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されている母親およびASDが疑われる母親14名についてインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)による質的研究を実施した.その結果,対象者は,子どもの頃から親からの身体的・心理的虐待や,学校でのいじめなど,さまざまな外傷体験を有しており,結婚前から精神疾患を発症していたことが明らかにされた.さらに,妊娠・出産後は,妊娠・出産の不安,自身の特性に起因する悩み,子どもや夫,周囲との関係についてなどさまざまな悩みを抱え,思うようにいかない子育てから,ひどい抑うつや育児ノイローゼなどに至ったことがわかった.そして,母親がストレスや不安の軽減につながるか否かは,自身や子どもへの支援,夫からの理解,自身の特性の理解によって規定された.分析結果から,グレーゾーンの母親も含めた包括的な早期支援および,「子育て世代包括支援センター」を活用した多職種間連携による支援の必要性が示唆された.
著者
山本 健 田野 俊一 橋山 智訓 岩田 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.16-19, 2015 (Released:2016-02-26)

人間が知的創造的活動を行う上で記憶は重要である。しかし、高度化した情報メディアとのインタラクションは複雑化し、複雑なインタラクションを用いることで記憶に悪影響を与えることが問題とされている。記憶には短期記憶と長期記憶の二種類あり、両側面から問題について検討する必要がある。短期記憶の問題として、短期記憶の容量は限定的であるにもかかわらず、インタラクションに短期記憶の容量を使用してしまいアイディアの忘却が生じる。長期記憶の問題として、外部記憶装置に頼った記憶に関するメタ記憶の欠如により、記憶にアクセスできず記憶の死蔵が発生する。本研究では、情報メディアとのインタラクションに関して問題を指摘し、解決方法の提案を行う。
著者
川井 智理 嶋 大樹 柳原 茉美佳 齋藤 順一 岩田 彩香 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.399-411, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
25

本研究は、Acceptance and Commitment Therapy(ACT)が注目する脱フュージョンという行動的プロセスを測定する尺度の作成、その信頼性と妥当性の検討、脱フュージョンに含まれるさまざまな行動の機能の重なりや相違点に基づいた妥当性の高い行動クラスを見いだすことを目的とした。40項目からなる尺度の原案を作成し、首都圏の学生を対象に横断調査を行った。探索的因子分析の結果、本尺度は【自分の自覚】・【選択と行動】・【現在との接触】の3因子18項目から構成されることが示され、脱フュージョンは三つの“機能”を含む可能性が明らかになった。また、それぞれを下位尺度とした場合、十分な内的整合性、収束的妥当性が確認された。今後は、本尺度を用いてACTが介入対象とするほかの行動的プロセスや臨床症状との関連性を検討し、精神的苦痛を緩和する脱フュージョンについての理解をより深めていく必要がある。
著者
岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.115-118, 2022-07-25 (Released:2023-01-25)
参考文献数
15

新型コロナウイルス感染症のパンデミックの時代に,従来のような抗菌薬適正使用プログラムの施行は困難である.なぜ,それが困難なのか,その構造を理解する必要がある.しかし,コロナの時代であっても,あるいはコロナの時代だからこそ抗菌薬適正使用は重要である.抗菌薬適正使用は適切な診断が前提であり,正しい診断が正しい治療をもたらし,正しい治療こそが抗菌薬適正使用である.「正しい治療」の吟味には科学的,臨床医学的吟味が必要で,これを欠いたままで悪い意味での「現場の肌感覚」をそのまま診療現場に持ち込んではならない.
著者
岩田 恵輔 原田 靖彦 吉岡 知輝 倉田 久嗣 平賀 潤二 鏡味 良豊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.8, pp.1633-1640, 2021-08-10 (Released:2022-08-10)
参考文献数
8

64歳,女性.急性肝・腎不全の精査目的で入院した後,心室細動を繰り返した.尿中M蛋白を認め,骨髄穿刺にて多発性骨髄腫を確認し,組織生検にて糸球体,肝実質,心筋にκ鎖型軽鎖沈着を認め,軽鎖沈着症(light chain deposition disease:LCDD)と診断した.血液透析,除細動器植込み,ボルテゾミブを含む化学療法を実施したが,原疾患増悪のため死亡した.LCDDはALアミロイドーシスと共に鑑別すべき病態であり,各種組織生検と集学的治療が重要である.
著者
岩田 耕司 服部 裕一郎
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.153-166, 2008 (Released:2019-01-17)
参考文献数
36

The purpose of this paper is to examine the possibility of the teaching via problem solving in high school mathematics. In this paper, we focused on the learning of the "addition theorems of trigonometric functions" in MAHTEMATICS II, and following was examined. 1) Through quantitative and qualitative investigations, the actual conditions of the activities of the students who worked on the theorems for the first time. 2) Through teaching practice, the effect and validity of the hypothetical ways of support based on the investigations. As a result, it has been understood that the hypothetical ways of support set in this paper worked effectively in the following three points: to understand the problem, to devise the plan for solving in the classroom, and to understand the proof method or meanings of the addition theorems of trigonometric functions. In a word, it is the main result of this paper to have suggested the possibility and the effectiveness of the teaching via problem solving in high school mathematics.
著者
中司 敦子 神崎 資子 高木 章乃夫 岩田 康義 池田 弘 福島 正樹
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.163-168, 2004-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

慢性腎不全患者の意識障害として尿毒症性脳症が知られているが, 透析療法が普及した昨今ではこの病態を経験することはまれである. 今回われわれは緩下剤の連用中に高マグネシウム (Mg) 血症による意識障害をきたした慢性腎不全の2症例を経験したので報告する.症例1は77歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全で加療中, 食欲不振と意識混濁が出現し入院. 血清Cr 4.31mg/dL, BUN 64mg/dL, 血清Mg 7.3mg/dLと上昇. 血清カルシウム値は5.8mg/dLと低下. 皮膚の潮紅, 肺炎および呼吸抑制による呼吸不全を認めた. 血液透析で血清Mg値は低下したが, 翌日再分布によると考えられる再上昇をきたしたため血液透析を再度行い軽快した.症例2は78歳, 女性. 慢性関節リウマチ, 腎機能低下で加療中に尿路感染症により腎機能が増悪し, 全身倦怠感, 見当識障害が出現したため入院. 血清Cr 6.56mg/dL, BUN 96mg/dL, 血清Mg 7.1mg/dLと上昇. 血液透析を3日間連続して行い軽快した.いずれの症例もMg製剤の服用歴を有し, 高度な高窒素血症が存在しないにもかかわらず意識障害を呈した. 当院で2年間に血液透析導入時に血清Mgを測定した78例中, 中毒域の高Mg血症をきたしたのは今回提示した2例のみであった. その他に, 意識障害をきたした症例は低血糖の1例のみで, 尿毒症性脳症による意識障害はなかった. 今回の症例では緩下剤の連用および感染による慢性腎不全の急性増悪が重篤な高Mg血症の原因と考えられた. 治療として血液透析が有効であったが, 再分布による血清Mg値の再上昇に注意が必要である.
著者
岩田 航季 鈴木 麗璽 有田 隆也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.4C2GS1302, 2020 (Released:2020-06-19)

AIプレイヤーは,囲碁等の二人完全情報ゲームでは,プロの人間に勝つ段階に至っている一方,人狼等の多人数不完全情報コミュニケーションゲームでは未だ大きな課題である.我々は,AIプレイヤー作成を通じて人間の認知特性の理解を目的とし,連想カードゲームDixitを対象に研究を開始している.Dixitはすべて異なった絵柄のカードを用い,手番では選んだカードから連想される言葉を言う.他プレイヤーはそれに関連するカードを1枚出す.そして,手番以外のプレイヤーが投票するが正解者が0か全員だと手番プレイヤーは得点が得られないというゲームである.他プレイヤーの思考や連想が重要となる. 本研究ではGoogle Cloud Vision APIを用いた絵柄からのラベル抽出,MeCabとword2vecを用いたラベルと言葉間の類似度計算により,AIプレイヤーを実現した.AIプレイヤーを交えたゲームを行った結果,人間はAIの投票先の傾向を感じ取り,手番時にはAIには連想困難で,人間には連想しやすい言葉を積極的に用いる戦略を取ることが認められた.今後,AIプレイヤーの強化を通じて,人間の認知の特性を明らかにしていく.
著者
吉永 進一 安藤 礼二 岩田 真美 大澤 広嗣 大谷 栄一 岡田 正彦 高橋 原 星野 靖二 守屋 友江 碧海 寿広 江島 尚俊
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、仏教清徒同志会(新仏教徒同志会)とその機関誌『新佛教』に関して、基礎的な伝記資料を収集しつつ、多方面からモノグラフ研究を進めた。それにより、新仏教運動につながる進歩的仏教者の系譜を明らかにし、出版物、ラジオ、演説に依存する宗教運動という性格を分析した。新仏教とその周辺の仏教者によって、仏教の国際化がどう担われていたか、欧米のみならず他のアジア諸国との関係についても論証した。
著者
奥田 知明 梶野 瑞王 深潟 康二 岩田 歩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

有害性が懸念されるエアロゾル粒子の生体や地表面への沈着挙動を議論する上で、粒子の沈着現象に関わる重要なパラメータである粒子の帯電状態については、ほとんど研究が進んでいない。本研究では、生体や地表面へのエアロゾル粒子の沈着現象において、粒子のサイズや粒径分布および幾何学的形状等のパラメータ群と比較して、実環境大気エアロゾルの帯電状態がどの程度の影響を持つか、という問いに対して、観測と実験およびシミュレーションモデルの手法を駆使して明らかにすることを目指す。
著者
岩田 あきほ 川島 寛乃 河野 慎 中澤 仁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.4I4GS7e01, 2021 (Released:2021-06-14)

本研究ではフィギュアスケートの動画からステップシークエンスのエレメントの自動判別に取り組む.フィギュアスケートにおいて,全ての演技の採点は一つ一つのエレメントの判定と出来栄えの評価によって構成されており,審判の目視によってすべて行われている.しかし,エレメントの判定と評価を同時に行うことは審判にとって負担となっている.そこでエレメントの判別を自動で行うことで審判の負担が軽減し,審判は出来栄えの判定に注力できる.本研究ではエレメントの判別を動画の分類問題として定式化し取り組む.そのためにデータセットを作成する必要があるが,フィギュアスケートの特性上,望ましくない性質をもってしまう.そこで、この性質を扱う手法を適用した畳み込みニューラルネットワークを用い,エレメント認識を行う.実験では,フィギュアスケートデータセットにおける手法の有効性を検証し,その結果を報告する.
著者
吉田 皓太郎 若松 栄史 岩田 剛治 久保 貴裕
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.87, no.903, pp.21-00201, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
12

A method to design the function of the brassiere cup shape as developable surfaces and its developed shape using Gaussian Process Regression is proposed. A developable surface, which is generated by sweeping a straight line along a three-dimensional curve, can be seen many products such as ships, buildings, clothes, and so on. The shape has not only its aim which can be formulated but also that which cannot be formulated such aesthetics. In this paper, we focus on a brassiere cup. A brassiere cup is composed of several patterns and the cup shape is designed by repeatedly making paper cup model and then checking its three-dimensional shape. For improvement of design efficiency of brassieres, such trial and error must be reduced. The difficulty of the design process is caused by the function of a brassiere cup. Its function, such as to enhance woman’s breast size, et.al., is difficult to formulate and unclearly correlated with its three-dimensional cup shape. In this paper, we propose a method to support the design of the three-dimensional shape of a cup and its developed shape by machine learning when the cup shape and quantitatively evaluated value of its function are given as a set of data. First, we formulate the cup shape as developable surface using differential geometry. Then, we propose the method to extract the attribute from the three-dimensional cup shape based on the differential geometry and a predictor of an output value for its attribute using Gaussian Process Regression. The validity of the method is confirmed by a numerical experiment regarding the evaluated value using its volume and size. Finally, we propose a method to design the cup shape using this predictor. We experimented whether our proposed method can output the approximate cup shape when the evaluated value of the cup is given.
著者
岩田 道子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku Language Studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.138, pp.1-37, 2018-03-31

ギリシャ神話の女神はアジア諸地域の地母神信仰にルーツを持つものが多い。ヴィーナスもその1 人で,ギリシャに移入されると愛を司る女神として神話の中に多くの逸話を残している。イギリス・ルネサンスに至り特にエリザベス1 世治世下で興隆した演劇文化の中に,ヴィーナスは他の神話的人物ともに登場してくる。純潔という美徳を体現する女王がパトロンでもあるエリザベス朝演劇において,御前公演を前提とする宮廷劇に登場するヴィーナスとシェイクスピアの物語詩『ヴィーナスとアドニス』に描かれたヴィーナス像との違いを愛の諸層の中で論ずるものである。愛と結婚の概念の変化と処女女王エリザベス1 世の存在によって,ヴィーナスの姿は愛の実相を映し出す鏡の役割を果たしている。
著者
岩田 祐子 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 井上 博之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.221-231, 2014-03-05 (Released:2014-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

我が国で最も乱用されているmethamphetamineの塩酸塩について,押収されるまでの薬物の起源と履歴(原料,合成ルート,製造方法等)が反映されている薬物プロファイルを明らかにする薬物プロファイリングのこれまでの研究成果を報告する.アルカリ性下で有機溶媒を用いて微量成分を抽出しガスクロマトグラフィーを行う微量成分分析では,微量成分をよく検出・分離する条件を決定し,複数の内部標準物質を添加することにより,保持時間の補正精度を高めた.また,キャピラリー電気泳動法によるキラル分析では,覚醒剤や覚醒剤原料等のアンフェタミン型興奮剤9種を良好に分析する方法を確立し,methamphetamineに微量に含まれる原料ephedrine等もキラル分離して検出することが可能となった.さらに,methamphetamineの安定同位体比質量分析において,資料の関連性の評価基準を設定し,結晶ごとの測定の有効性を示した.各分析により,より詳細なプロファイルが得られ,異同識別や起源と履歴の推定に,より多くの情報が得られるようになっている.