著者
中島 一敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.462-466, 2006-06-01

1996年,西日本を中心に発生した腸管出血性大腸菌O157アウトブレイクが1つのきっかけとなって,1999年に日本の実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program: FETP)が誕生したように,世界中の多くの国や地域で,各々の背景によってFETPが誕生,運営されている.世界中のFETPのネットワークであるTEPHINET(Training Programs in Epidemiology and Public Health Interventions NETwork)には,2006年3月現在32の国や地域で,FETPもしくは同等のプログラム(以下,FETP等)が参加している.各FETPは,すべて2年間のon-the-job trainingであり,実際の感染症集団発生事例の現地疫学調査の実施等を通してトレーニングを行っている.日本以外のプログラムは,研修生に対し給与が支給され,公衆衛生上の疫学サービスの提供が求められている.各々の研修員や修了生の多くは,担当地域の感染症サーベイランス業務やアウトブレイク調査などに従事しているが,必要な場合には,国際的な連携のもとで,国境を越えた疫学調査にあたることも少なくない. SARSなどの集団発生疫学調査における世界のFETP等修了生の役割 SARS(重症急性呼吸器症候群)は2003年突然現れ,世界中を巻き込んだ後,多くの関係者の多岐にわたる献身的な努力の末封じ込められた(現在のところ再流行は起こっていない).ベトナムの原因不明呼吸器感染症の院内発生で初めて認識されたSARSは,当初,以下のような特徴を備えていた.突然の出現,原因不明(あらゆる病原体検索も陰性),有効な治療法なし(様々な抗菌薬・抗ウイルス薬投与に反応しない),医療従事者の発病,重症化・死亡者の発生,複数国でのほぼ同時期の発生,などである.国際的な緊急支援が必要と判断した世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(WPRO)では,GOARN(Global Outbreak Alert and Response Network:世界的な集団発生事例に対する警戒と対応のためのネットワーク)を通じ,参加国やパートナー組織に要請し,緊急支援チームを組織した(GOARNとは,国際的な集団発生支援を行うグローバルなネットワークで,2000年に設立された.ジュネーブのWHO本部内に事務局を持ち,世界各国の様々な分野の組織が参加している).主な支援分野は,臨床マネジメント,感染予防(臨床分野),病原体検索支援(ラボ分野),疫学調査支援(疫学分野)であった.
著者
池内 和彦 福島 一彰 田中 勝 矢嶋 敬史郎 関谷 紀貴 関谷 綾子 柳澤 如樹 味澤 篤 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.358-364, 2018-05-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年,本邦における梅毒患者が急増している.諸外国において梅毒に対する標準治療薬であるベンザチンペニシリンG の筋肉注射は,本邦では使用できない.日本性感染症学会から発行されている「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では,梅毒に対する標準的治療としてアモキシシリン(AMPC)単剤の内服治療が推奨されているが,根拠となるエビデンスは十分とは言えない.今回我々は,経口AMPC 1,500mg/日単剤による治療を行った63 名の梅毒患者(HIV 患者47 例,年齢中央値40 歳)を対象に,その治療効果を後方視的に検討した.治療効果判定についてはRapid plasma reagin 自動化法の値が,診断時から1 年以内に1/4 以下へ低下した場合を治療成功と定義した.治療成功率は,全患者の95.2%(95% Confidence interval(CI),86.7~99.0%),HIV 患者の95.7%(95% CI,85.5~99.5%),非HIV 患者の93.8%(95% CI,69.8~99.8%)であった.梅毒の病期毎の治療成功率は,早期梅毒の97.8%(95% CI,88.5~99.9%),後期梅毒の88.2% (95% CI,63.6~98.5%)であった.今回の検討では,HIV 感染症の有無や,梅毒の病期に関わらず,経口AMPC 1,500mg/日単剤治療は,梅毒に対して高い治療成功率を認めていた.
著者
荻上 裕基 越島 一郎 梅田 富雄
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2001年度春季
巻号頁・発行日
pp.232-236, 2001-03-12 (Released:2017-06-08)

プロジェクトのスケジュール手法としてPERTが多用され, 仕事を達成するための期間の算出する根拠に標準的な工数が使われている. しかしながら, 人間の作業に対する状態が考慮されていないので, 状況に合わせた人員配置とはなっていない. そこで, 本研究ではリソースの配置をより良くするために, 作業者のバイオリズムを考慮したプロジェクトスケジューリングやリソースの配置について新しい手法を提案する.
著者
丸、瑠璃子 谷島 一嘉 白石 信尚 伊藤 雅夫
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

昭和59、60、61年度科学研究助成により作成した空気置換式人体体積計の精度向上を図りの体学学生を中心に、男性175名、女性22名の被検者について体容積および諸形態を計測した。計測データから、各種階層 (性別、身長別、体重別、年令別) の被検者郡について、体比重と体型との関連性について検討した。また、女性6名について、CT横断面像から大腿部および腹部3部位の皮下脂肪面積を求め、体比重との関連性について検討した。1) 高精度人体容積計の精度 (信頼測定範囲、最低50ml) に見合った体重測定を可能にするために、読取限度1gの高精度電子秤量計 (Sartorius F150g) を購入し測定精度の向上を図った。2) 男性170名、女性22名のを対象に実測した体比重は、男子1.0592±0.0157女性1.048±0.033であり男性において高値を示す。この時の皮脂厚 (腹部、背部、上腕部の合計) は、男子44.2±23.4、女性44.6±16.5であり、いずれも体比重との間に高い正の相関が認められた。3) 男子大学生170名の体比重を体重別に集計すると、体重の平均-1.5σ以下で1.0704±0.0041、- (0.5〜1.5) σで1.0692±0.0065、±0.5σで1.0593±0.0104+ (0.5〜1.5) σで1.0508±0.0196、+1.5σ以上で1.0381±0.0179となり、明らかに過体重群において低い値を示している。4) 中年 (45〜55才) 女性6名におけるの体比重は (1.0106 1.056) 、1.0379±0.0179であり、女子大学生の1.048±0.033に比べて、明らかに低い値を示している。また、皮脂厚も61.4mmと、女子大学生に比べて有意に厚くなっている。他の形態計測値からも、中年女性の肥満傾向は明らかである。5) CT画像から求めた皮下脂肪面積と体比重との相関係数は、大腿部及び下腹部 (臍点下部5cm) で高値を示した。
著者
山本 洋介 山田 信一 有川 貴子 永田 環 中川 景子 大石 羊子 澤田 麻衣子 福重 哲志 牛島 一男
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.488-490, 2010-09-25 (Released:2010-10-06)
参考文献数
10

膝蓋下脂肪体炎で下肢痛を生じ,歩行困難となった症例を報告する.症例は 81歳の男性で,当科を受診する 1カ月半前に,右大腿前面から膝に及ぶ痛みが起こった. MRI検査により L3/4外側ヘルニアと判断され,仙骨硬膜外ブロックや L3の神経根ブロックを数回受けたが,痛みは軽減しなかった.膝の MRI検査で外側半月板変性も疑われ,膝関節内に局所麻酔薬の注入を受けたが,痛みは軽減せず,歩行困難となったので当科を紹介された.痛みは視覚アナログスケールで 83 mmであり,大腿四頭筋は萎縮し,筋の両側辺縁に沿った部位と膝関節周囲に強い圧痛があった.右大腿部の感覚障害はなかった.痛みが膝から始まり,膝蓋下に強い圧痛があったので,膝蓋下脂肪体炎を疑い,診断的ブロックとして,膝蓋下脂肪体に 1%メピバカイン 3.5 mlとベタメタゾン 2.5 mgを局所注入した.ブロック直後から痛みは軽減し,歩行が可能となった.その後,局所麻酔薬の注入を計 3回行い,1カ月後からは鎮痛薬内服だけで,膝の違和感が残っただけであった.大腿四頭筋の萎縮は,朝,夜に坐位からの起立運動を行うことで改善し,2カ月後に違和感も消失した.
著者
才田 祐人 高島 一昭 山根 剛 西川 和男 西尾 達也 Hiroaki OKANO 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.125-130, 2011-12-31 (Released:2012-12-18)
参考文献数
10

プラズマクラスターイオン®(PCI)は,種々の細菌およびウイルスに対して有効性が認められている。しかしながら,臭気および動物飼育環境中の細菌に対する有効性に関しては不明であるため,実験ボックス内においてアンモニア付着臭に対するPCIの効果を検証し,さらにビーグル犬を用いて動物飼育環境におけるPCIのアンモニアおよび細菌に対する有効性を検討した。その結果,実験ボックス内においてPCI 25,000個/cm3ではPCI発生後から45分で発生前と比較して有意にアンモニア濃度の抑制を示した(p<0.01)。また,動物飼育環境におけるアンモニア濃度は,PCI発生後2週で発生前の50%以下に軽減され,その後も時間経過とともに減少がみられた。さらに,浮遊菌のコロニー数は,PCI発生後に軽減し,停止後には増加するという変化を示した。以上より,PCIは動物飼育環境中を衛生的に保つ上で有用であることが示唆された。
著者
瀧口 隆一 望月 英輔 鈴木 豊 中島 一郎 辮野 義己
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-17, 1997 (Released:2010-06-28)
参考文献数
18

Lactobacillus acidophilus SBT2062およびBifidobacterium longum SBT2928の人工消化液耐性試験, および腸内有害細菌 (Escherichia coliおよびClostridium perfringens) との混合培養試験を実施した.人工胃液耐性試験では, pH4, 37℃3時間保持においてB.longum SBT2928の菌数は1/10に低下したが, L.acidophilus SBT2062は初期の菌数を維持した.しかし, 人工腸液耐性試験では両菌とも高い耐性が認められた.また, 腸内有害細菌との混合培養では, L.acidophilus SBT2062およびB.longum SBT2928の初発培養菌数が105cfu/gにおいて有害細菌は完全に抑制され, さらに104cfu/gに低下しても強い抑制効果が認められた.よって, L.acidophilus SBT2062およびB.longum SBT2928は, 摂取後も生菌の状態で腸内に到達し, そこで腸内有害細菌を抑制する可能性が認められた.
著者
朝井 政治 神津 玲 俵 祐一 宮崎 哲哉 中村 美加栄 藤島 一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.424, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】 高齢者に対する呼吸管理を行う機会が増加する中,気管内挿管下に人工呼吸管理を行った症例のうち,抜管後新たに嚥下障害や排痰困難をきたすことを経験する。このような症例では,誤嚥や分泌物の自己喀出に難渋し,離床やADLの改善に支障をきたす場合が少なくなく,臨床上大きな問題となる。 今回,人工呼吸管理後に新たに嚥下障害を呈した症例の臨床的特徴について報告する。【対象・方法】 対象は1999年4月から2002年3月までに当院にて気管内挿管,人工呼吸管理となり,理学療法が処方された187症例のうち,脳血管障害,精神科疾患,重度の痴呆,神経筋疾患および頚髄損傷,一度も抜管に至らず気管切開となったもの,を除いて,抜管ができた55例(平均年齢72.2±12.3歳,男性43例,女性12例)とした。方法は,カルテから,嚥下障害の有無を調査し,嚥下障害を呈した症例の1)患者背景,2)人工呼吸管理,3)気道分泌物貯留,4)嚥下機能評価結果,について調査した。なお,嚥下障害の有無については,問診と身体所見,および主治医や担当看護婦からの情報,嚥下機能評価の結果より判定した。【結果】 嚥下障害を認めた症例は55例のうち4例(7%)であった。以下に各症例の臨床的特徴を示す。症例1:77歳,男性。肺炎,肺結核後遺症。挿管2日。予定外抜管あり,鎮静なし。分泌物貯留中等度。症例2:84歳,男性。急性肺水腫,心不全,肺炎,腎不全。挿管5日。予定外抜管なし,鎮静5日。分泌物貯留多量。症例3:84歳,男性。塵肺,COPD,喘息。挿管8日。予定外抜管あり,鎮静7日。分泌物貯留多量。症例4:73歳,男性。肺炎,間質性肺炎。挿管24日。予定外抜管あり,鎮静22日。分泌物貯留多量。 上記症例では,後期高齢者,予定外抜管の経験,鎮静が行われていた症例がそれぞれ3例で,いずれの症例でも分泌物の貯留を認め,抜管後の経口のみによる栄養摂取困難と診断された。残る51例の平均年齢は71.6歳,挿管期間平均6.9日,鎮静28例,予定外抜管5例であった。【考察】 今回,人工呼吸管理後に新たに生じた嚥下障害の頻度と臨床的特徴を調査した。その結果,中枢神経疾患や神経筋疾患,精神科疾患など嚥下障害のリスクを有さない症例で,抜管後に嚥下障害を呈した症例は7%と必ずしも多くなかった。しかし,嚥下障害を認めた4例はいずれも経口からの摂食は困難であった。人工呼吸管理に至るような重症の急性呼吸障害を呈した症例では,critical illness neuropathyやmyopathyを呈する場合があると報告されている。上記4症例を細かく比較してみても,一定の傾向は認められず,特に原因と考えられるものがなかったことから,この状態にあったことも予想された。これは回復に長い期間を必要とするため,人工呼吸器離脱直後だけでなく,継続的,かつ注意深いサポートが必要と考えられた。
著者
濱田 佑希 越島 一郎 渡辺 研司
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2015 春季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.347-356, 2015 (Released:2017-07-01)

プログラムミッションは組織の事業戦略を分割して設定される。プログラムでは複数のプロジェ クトを同時並行で進めるため、各プロジェクトにおける価値創出活動の結果を伝播する構造を持 つ。価値創出活動の計画は不確定な要因が多い状況で作成されることもあり、進行に伴って状況 変化が引き起こる。既報では、状況マネジメントするために想定と異なる要因を特定し、戦略を 柔軟に変更する方策としてSWOT構造とIDEF0を利用した動的対応シナリオ生成手法を報告 した。本論では、価値創出活動を実施する組織とインタフェースを持つ組織との関係性を分析す ることで、影響を受ける要因と範囲の特定を行うことで状況マネジメントを行う方法を議論する。
著者
濱田 佑希 越島 一郎 渡辺 研司
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.37-51, 2015

大規模なミッションを達成することで事業継続を図るには、複数のプロジェクトを同時並行で進めることが重要である。P2Mでは、プログラム組織の下に複数のプロジェクト組織を置き、有機的に管理する方法が提示されてきた。現在、グローバル化や事業の大型化と複雑化に伴い、リスク分散の観点から組織文化やマネジメント方法が異なる組織と共同でプロジェクトを進める体制が増加している。この環境下で互いの組織の価値を最大限に発揮するには、各社の強みや弱みを考慮した戦略を立案して、マネジメントスキームが構築される必要がある。既報では、想定と異なる要因を特定し、戦略を柔軟に変更する方法として SWOT 構造とIDEF0を利用した動的対応シナリオ生成手法を報告した。本論では、P2Mのリスクマネジメントの概念を拡張して、他の組織と共同で行うプロジェクトが内在する場合の状況マネジメントの方法を議論する。
著者
中山 陽平 喜多 一馬 小島 一範
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D-39, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】日本は2040 年までに医療福祉職の人材が200 万人超の増加が必要と経済財政諮問会議で発表された。その中で,数だけでなく質の確保が急務とされている。そして,質の確保のためには思いやりを持つ重要性が示唆されており(福間2012),これからの医療福祉職には思いやりを育む教育や環境の整備が課題になる。これは在宅分野の理学療法士でも同様である。しかし,思いやりの育み方については,教育関連における報告は多いが(山村2012,三浦2013),医療福祉職における報告は見当たらない。他方,思いやりは様々な人間関係の中で育まれるものであり(植村1999),職員と上司の関係性はその一つとして重要と考えられる。本研究の目的は,職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりとの関係性を明らかにすることである。【方法】対象は,本法人のうちデイサービス(3 施設)と老人ホーム,居宅介護支援事業所のいずれかに所属する職員33 名(男性7 名,女性26 名,年齢47+12.4 歳)とした。なお,職員の職種は,ヘルパー,介護福祉士,看護師,柔道整復師,理学療法士であった。対象者には,紙面によるアンケート調査を実施した。アンケート項目は,上司から感じている思いやりについて「上司はあなたが困っている状況を話すと理解してくれる」など4 つの設問を設定した。利用者に意識している思いやりについては「あなたは利用者が困っている状況を理解しようと意識している」など4 つの設問を設定した。各設問に対し,①そう思う(1 点)から,⑤そう思わない(5 点)の5 件法にて回答を得ることとした。分析方法は,回答を点数化し,上司からの思いやりの合計点と利用者への思いやりの合計点との関連を,スピアマンの順位相関係数を用いて検討した。【倫理】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の趣旨,目的,内容,方法などの説明を行い,対象者の同意を得た上で実施した。なお,対象者の個人情報が特定されぬよう,アンケートの回答は無記名にする等の配慮を行った。【結果】上司からの思いやりの合計点の中央値は6(5 ‒ 8),利用者への思いやりの合計点の中央値は6(5 ‒ 7)であった。スピアマンの相関係数が中等度の正の相関(r = 0.478, p < 0.05)を認めた。【考察】結果より,職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりには,関係性があることが示唆された。これは,思いやりを感じる力と思いやりを持つ力は共感する能力に起因して生じた可能性がある。上司からの思いやりを感じるには,前提条件として,上司が思いやりを持っていることに対する共感が必要となる。また,他者への思いやりは共感から生じるものであり(満野ら2010),利用者への思いやりも共感をもつことが前提となる。つまり,2 つの質問の性質は両方とも他者への共感に基づくものであったといえる。よって,思いやりを感じる力を育むことは,他者に思いやりを持つ力を育むことと同意となる。思いやりは後天的な遺伝的要因以外の部分のほうが影響するといった報告がある(Varun Warrier 2018)。また,米グーグル社は2012 年から始めた研究(プロジェクトアリストテレス)でも思いやりに近似する心理的安全性がサービスの質を向上させると結論づけ,その形成に効果が証明されているマインドフルネスなど内観的プログラムを開始している。このような報告を応用し,在宅分野の理学療法士を含む医療福祉職における思いやりを育む教育を実践し,その効果を検証することが今後の課題である。【結論】職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりには,関係性を認めた。
著者
宮田 幹夫 奥 英弘 福島 一哉 堀内 浩史 難波 龍人
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

スギ花粉症の増加が近年種々話題になってきている。今回実験スギ花粉症におよぼす生活環境因子の検討を試みた。その結果身近な環境汚染物質りある、有機燐殺虫剤、有機燐除草剤、トリハロメタン、パラジクロロベンゼン、タバコ煙、食品色素としてタートラジン、および赤色3号、食品酸化防止剤などがスギ花粉によるモルモットのアレルギー性結膜炎を増悪させることが判明した。しかもそれらの増悪を引き起こす濃度はppmまたはppbレベルという極めて微量な濃度であった。むしろ高濃度ではその増悪作用はやや弱い傾向があった。これらの結果は従来の古典的な中毒学の細胞の変性、死を目標とする濃度とはまったく異なり、免疫系への毒性は極めて低濃度でその毒性が発揮されているのが分かる。いまだそれらの混合負荷、すなわちtotal body burdenに関する実験は行っていないが、今後の研究課題も残ったままである。なお実験経過中に化学的環境のみでなく、物理学的環境にも眼を向ける必要性があるかと思われ、VDT作業で問題となるCRT画面曝露の影響を観察したが、機械的は角膜上皮障害のみでなく、CRT曝露によるアレルギー性結膜炎の著しい増悪作用が認められた。CRT画面からは低周波の電磁波が放射されており、各波長による電磁波の影響が今後の研究課題としてのこった。近年の花粉症の増加の原因をスギ花粉の増加に求めようとするのは余りにも非科学的な発想であり、むしろ生活環境の変化に求めるべきである、今回の実験から免疫系に及ぼす環境因子の重要性を明らかになし得た。
著者
黒木 英充 鈴木 茂 眞島 一郎 飯塚 正人 飯島 みどり 鵜戸 聡 池田 昭光 大場 樹精 山本 薫
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1世紀以上に及ぶレバノン・シリア移民の顕著な世界的活躍を支えるのは、異文化の社会に対する適応力とネットワーク形成力・拡張力の高さである。移動する自己と親族・友人等との間で、常に複数の社会における財の価値の違い等に関する情報が交換され、様々なビジネスが展開し、時には出身国と現住国の政治にすら大きな影響を及ぼす。そこでは自己の構成要素の複数性(たとえば言語など)、他者との関係構築ツール(帰属する宗教組織のネットワークから信用再強化のためのカネの貸借といった財の交換関係にいたるまで)が意識的に維持・展開される。その歴史的起源はレバノン・シリア地域の非ムスリム商人や通訳といった類型に求められる。
著者
小島 一晃
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2007

identifier:http://hdl.handle.net/2237/8249
著者
居島 一平
出版者
ワック
雑誌
Will : マンスリーウイル
巻号頁・発行日
no.165, pp.322-325, 2018-09
著者
濱島 一樹 兼岩 淳平 工藤 慎太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.177-180, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
2

〔目的〕静止立位(立位)と,下腿最大前傾位(前傾位)の内側縦アーチ(MLA)の測定の差から,動作時におけるMLAの形態の変化を求める方法の再現性を検討すること.〔対象〕下肢疾患の既往のない健常成人8名8足(男女各4名)とした.〔方法〕測定項目は,アーチ高率(AR)と踵部角(CA)とした.また,測定肢位は立位と前傾位とし,各項目の信頼性を検討した.〔結果〕ARは両肢位共に高い再現性を示した.一方,CAは両肢位ともに再現性は低値を示した.しかし,測定経験や触診技術により,再現性が改善し得ることが示唆された.〔結語〕同方法は,臨床での使用に十分な再現性が得られることが示唆されたと考える.