著者
後藤 康文 野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.65-78, 2015

社会福祉基礎構造改革で,地域福祉の推進が社会福祉の目的となっている今日,基礎自治体には,自助・共助・公助による地域福祉システムの構築を政策的に進める責務がある。同時に社会福祉サービスの提供主体として,地域福祉システムの一翼を担う社会福祉法人を規定する制度改革が行われたのである。社会福祉法人に関する制度改革は,基礎自治体の福祉政策にいかなる影響を及ぼすのかは重要な論点といえよう。本論文は,基礎自治体と社会福祉法人の役割を軸に,地域福祉政策を考察するものである。
著者
後藤 悌
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.12-18, 2010 (Released:2010-04-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

インターネットの普及によって手に入れることができる情報は増えた。医療の情報を得ることも容易となったが,インターネットにおける,がん医療の情報は必ずしも正しくない。調査では,国内で「肺癌」と検索し,上位50に表示されたサイトの中で,正しい治療方法を提示していたサイトは5割に満たなかった。このような状況を改善するために,私たちのグループはWebサイトを主体的に評価し,医療関係者の立場から,患者やその家族に勧めることのできるサイトを抽出し,Webサイト(http://www.がん情報.net)に掲載する試みを始めた。
著者
土井啓成 戸田智基 中野倫靖 後藤真孝 中村哲
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.5, pp.1-9, 2012-08-02

歌声の声質には,歌手の個人性が反映されており,他者の声質に自在に切り替えて歌うことは難しい.そこで我々は,歌声の声質を他者の歌声の声質へと自動変換することで,任意の声質での歌唱を実現する手法を提案し,歌唱という音楽表現の可能性を広げることを目指す.従来,統計的声質変換に基づく歌声声質変換が実現されていたが,提案手法では様々な声質に少ない負担で変換可能にするため,多対多固有声変換を導入する.これにより変換時に数秒程度の少量の無伴奏歌声さえあれば,任意の歌手の歌声から別の任意の歌手の歌声への声質変換が実現できる.しかし,その声質変換モデルの事前学習データとして,ある参照歌手の歌声と多くの事前収録目標歌手の歌声とのペアから構成されるパラレルデータセットが必要で,その歌声収録は困難であった.そこで提案手法では,歌唱表現を模倣できる歌声合成システム VocaListener を用いて目標歌手の歌声から参照歌手の歌声を生成することで,その学習データ構築を容易にする.実験結果から提案手法の有効性を確認した.
著者
後藤 晶
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.143-148, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15

本研究では,実際には監視されていなくても監視されていると思い込む「被監視感」に着目して,その被監視感が主観的幸福度および社会的価値指向性・認知内省テストに与える影響について検討する.本研究では,クラウドソーシングを用いておおよそ1500名を対象として,主観的幸福度および被監視感に関する調査を行った.利他性や競争性などを示す社会的価値指向性,並びに情報処理スタイル(合理性‐直観性)尺度についても調査を行っており,これらを包括的に報告する. さらに,本研究を支えるための基盤としてのクラウドソーシングサービスおよびクラウドソーシングを用いた大規模経済ゲーム実験の可能性について,計算社会科学の文脈から議論をしたい.
著者
松本 靖 後藤 幸弘
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.89-103, 2007

小学校5年生児童を対象に、戦術の系統に基づいて考案した7つの「課題ゲーム」を中心とする学習過程を適応した実験群 (TG群) と、「5対5のミニゲーム」とゲームで発見した課題を練習する学習過程を適応した対照群 (NG群) を設定し、両群の学習成果を比較した。結果は以下の通りである。<br>1) 個人的技能 (8の字ドリブルの得点、ボールリフティング回数、トラップ回数、ならびにパスの正確性) は、両群ともに向上が認められた。<br>2) 集団的技能 (攻撃完了率、仲間との関わり率、連係シュート率) は、両群ともに向上した。しかし、TG群では単元後半に顕著な向上を示し、NG群との間に有意差がみられるようになった。<br>3) シュートに至るプレーパターン (8種類) の出現種類には、両群間に差はみられなかった。しかし、スルーパス、ワンツー、ポスト、およびオーバーラップからのシュートの出現頻度は、TG群では増加したが、NG群には増加はみられなかった。また、相手クリアーミスとドリブルからのシュートの出現頻度は、TG群では減少したが、NG群では前者は増加し、後者には変化はみられなかった。<br>4) 単元終了時における戦術行動の出現頻度は、いずれもTG群の方が多く、スルーパス、ポストにおいて顕著な差がみられた。<br>5) 授業の自己評価は、TG群の方がNG群よりも有意に高値を示した。さらに、記述内容においても、「技や力の伸び」では、TG群はパスの正確性に関することが多く、NG群は個人技能に関することの多いことが認められた。また「新しい発見」では、TG群はボール非保持者の動きに関することが多く、NG群は守備の仕方に関することが多く認められた。さらに、「楽しさ」では、TG群は、集団技能に関するものが多いのに対して、NG群は、精一杯の運動、勝敗に関するものが多かった。<br>6) 態度測定の「価値」ならびに「評価」尺度の得点は、TG群の方が高いことが認められた。<br>7) 戦術行動の認識度は、両群ともに有意に向上したが、単元終了時の成績は、攻撃に関わる成績の差によってTG群の方が高値を示した。<br>8) 学習ノートにみる作戦は、TG群では 『スローガン的作戦』 から 『パスパス作戦』 『状況把握攻撃作戦』 に変化した。これに対し、NG群では 『スローガン的作戦』、『役割分担守備作戦』 から 『守備を固めて速攻作戦』 に変化し、守備に焦点化された作戦に終始していた。<br>9) サッカーの学習が楽しかったと答えた児童は、両群ともに増加した。また、その増加は、TG群の女子において顕著に認められた。<br>10) 戦術行動認識度テストと授業の楽しさ得点の間には、有意な相関関係が得られ、戦術に関わる認識が高まり、それをゲームで発揮できるようになれば、児童はサッカーの授業を楽しめるようになることが示唆された。<br>以上のことから、戦術行動の系統を基に考案した「課題ゲーム」を中心とする学習過程は、児童に戦術行動を認識させることによって、個人技能や集団技能を高め、楽しさを感じさせ得ることができ、体育授業に対する愛好的態度をも高め得ることが認められた。<br>ところで、本研究で用いた「課題ゲーム」は、攻撃に焦点をあてて作成し、攻撃の認識の高まりとともに守備の認識の高まりを期待した。しかし、攻撃に関する認識は高め得たが、守備に関する認識度をNG群以上に向上させ得なかったという問題が認められた。これには、守備は受動的になるためゲーム状況を記憶できにくいことに加え、攻撃側に数的優位を保障した本研究の「課題ゲーム」では、完全な防御が不可能であったことの影響が考えられた。この点については、今後さらに検討する必要がある。
著者
山城 大 相原 正男 小野 智佳子 金村 英秋 青柳 閣郎 後藤 裕介 岩垂 喜貴 中澤 眞平
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:18847668)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.372-377, 2004

交感神経皮膚反応 (sympathetic skin response; SSR) は情動表出反応として出現することが報告されている.情動機能を評価する画像をオリジナルに作製し, これらを視覚刺激として呈示した際に出現するSSRについて健常小児と健常成人で比較検討した.小児では成人に比し高いSSR出現率を認めた.さらに, 不快な画像におけるSSR出現率は, 成人では生理的に不快な画像に比し暴力行為などの非社会的画像で有意に高かったが, 小児においては両者に明らかな差異を認めなかった.このことから, 小児期から成人にいたる情動的評価・意義の相違と変化は, 情動発達に伴う推移を示すものと思われる.情動の客観的評価に視覚刺激によるSSRが有用であると考えられる.
著者
城野 靖朋 金井 秀作 後藤 拓也 原田 亮 藤高 祐太 谷出 康士 長谷川 正哉 大塚 彰
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.533-537, 2013-08-20

〔目的〕本研究の目的は,運動課題と認知課題の二重課題練習において,注意に関する指示の影響を明らかにすることである.〔対象〕健常成人60名を対象とした.〔方法〕二重課題練習で注意を運動課題に向ける条件,認知課題に向ける条件,注意の指示を与えず自由選択できる条件,練習を実施しない条件を設定し,練習前後の各課題パフォーマンスを評価した.〔結果〕dual-taskの運動課題パフォーマンスおよび高難易度運動課題パフォーマンスは,練習期の注意配分を自由に選択できる条件で向上した.〔結語〕健常成人を対象にした本研究では,注意の指示を与えない二重課題練習が,運動課題パフォーマンス向上に効果的である可能性が示唆された.<br>
著者
浜中 雅俊 後藤 真孝 麻生 英樹 大津展之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.100, pp.71-78, 2002-10-25
被引用文献数
5

本稿では、実在する人間の演奏者固有のフレーズを模倣するためには、ジャムセッションの演奏記録から、フレーズを再利用可能な形で切り出し、フレーズデータベース上に蓄積する必要がある.本研究では、自動でフレーズデータベースを作成するための手法として、(1)確率モデルに基づいた発音時刻のクォンタイズとそのモデルパラメータの教師なし推定法、(2)ボロノイ線図を用いたグルーピング手法によるフレーズ分割、(3)局所自己相関関数を用いたフレーズからの特徴抽出法とフレーズの空間配置法、を提案する.This paper describes a jam session system that enables a human player to interplay with virtual players, each of which imitates musical phrases of a human player. In order to imitate musical phrases of a human player, it is necessary to build a database of phrases extracted from session recording. We propose the following three methods for creating a database automatically:(1) a probabilistic-model-based quantization method for estimating the positions of onset times in a score and an unsupervised estimating method for the model parameters, (2) a phrase dividing method using the Voronoi diagram, and (3) a method of extracting the phrase characteristics by using autocorrelations and a method of locating phrases in a space.
著者
鈴木 香菜美 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 WYDELL Takeo N. 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-11, 2010-01-20
被引用文献数
3 5

本研究の目的は, 発達性読み書き障害児の診断評価の補助的な指標となる書字特徴を明らかにすることである. 対象は専門機関にて診断を受けた1年生から6年生の発達性読み書き障害児45名と, 定型発達児560名である. 小学生の読み書きスクリーニング検査のひらがな, カタカナ1文字と単語の書取課題にて分析した結果, 発達性読み書き障害児の書字特徴は, 特殊音節で誤りやすく, その誤りは学年が上がっても減少しにくい点, 低学年ではひらがなの単語よりも1文字で誤りが多い点, ひらがなに比べてカタカナの習得の遅れが著しい点であると思われた. 一方, 主に1年生から3年生でひらがな単語の心像性効果が両群で認められる可能性が示唆された. したがって, ひらがなやカタカナに関して1文字と単語双方の書取課題を実施し, これらから得られた書字特徴を確認することが発達性読み書き障害児の診断評価における補助的な指標となりうるのではないかと考えられた.
著者
後藤 正英
出版者
同志社大学
雑誌
一神教学際研究 (ISSN:18801072)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.79-100, 2007

現在のEUの移民問題をめぐる研究においては、移民を排除しようとする人々の間で、かつてのような人種主義的・民族主義的な排外主義ではなくて、いわば「啓蒙主義的排外主義」と呼びうる現象が見られることが指摘されている。つまり、現在の移民反対論者たちは、リベラルな価値観を前提にした上で、それゆえに、リベラルな価値観を受容しない人々(男女の平等、政教分離、表現の自由を理解しようとしないイスラーム教徒たち)を排除しようとするのである。リベラリズムによる宗教批判は、かつては、近代ヨーロッパのユダヤ人たちが直面した問題であった。ヨーロッパのリベラルな知識人たちは、ユダヤ人への市民権授与には積極的であったが、そのリベラリズムのゆえに、ユダヤ教については否定的な態度をとったのである。このようなユダヤ教批判に対抗して、近代ユダヤ教の父として知られるモーゼス・メンデルスゾーンは、市民的地位における平等とユダヤ教の伝統を維持することが両立可能であることを主張しようとした。彼は、法的平等を獲得する条件としてユダヤ教の内容上の変更を求めてくるような要求には徹底して反対の立場を取った。
著者
後藤 敏一
出版者
日本珪藻学会
雑誌
Diatom (ISSN:09119310)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.111-114, 1990

珪藻はひじょうに美しい形,模様をもっています.研究を離れて,自然の造形美にうっとりとすることもあります.どうしたらもっと美しい顕微鏡写真が撮れるだろうか?そんな思いをされている方も多いと思います.被写体がこれほど美しいわけですから,撮る側の工夫次第で美しい写真が必ず撮れると思います.<BR>私達が撮る写真(モノクロ)は研究用であり,撮影した珪藻の写真から種の同定に必要な形質を抽出したり,自己の資料としての記録用に,あるいは論文中の写真として利用します.このような目的から顕微鏡写真には高い再現性が要求されます.っまり,写真に表現される情報が高品質であり,同時に量が多いことが要求されるのです.高品質で多量の情報を含む写真とはどのようなものでしょうか.それは階調(濃度の最大から最小までの段階)の幡の広い写真といえます.純黒から純白までの間に何段階もの濃淡の差があってはじめて,珪藻の微細な部分の三次元構造が二次元の写真として正しく表現される訳です.それではどのような点に注意すればそのような顕微鏡写真が撮れるのでしょうか.顕微鏡写真ができ上がるまでには次のような過程があり,それぞれに美しい写真を撮るためのちょっとしたコッがあります.以下にその要点をあげてみたいと思います.

2 0 0 0 OA 問題の支那?

著者
後藤朝太郎 著
出版者
立命館出版部
巻号頁・発行日
1933
著者
後藤 牧人
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.276-281, 2006-09-17
被引用文献数
1

生命保険証券の売買Viatical Settlements(以下,VS)は,米国ではAIDSでの死亡者数増加に伴い,すでに大きなビジネスである。日本でも2004年末,保険買取会社が死亡保障2,800万円の生命保険を約850万円で買い取ろうとしたケースが発生した。前職の再保険会社でVSを研究しながら,日本市場への紹介・導入を躊躇したのは,法的・医学的・社会的な整合性・コンセンサスが日本では整っておらず,モラルリスクや犯罪誘発の可能性,最終的に契約者が損害を蒙る可能性が高かったためである。しかし,癌・AIDS・アルツハイマー病・心疾患などの増加,リビングニーズ保険特約の普及などといった社会的状況要件から,日本でも今後重要な保険商品の一種になると考えられる。特に,VSでは査定能力が重要であり,保険医学・臨床医学・保険数理において高度に専門的な知識や経験が求められる。米国での今までの経験から,その適応と限界に触れ,日本におけるVSの意義・ビジネス・契約者保護に関して報告する。
著者
後藤 崇志 楠見 孝
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-136, 2013-03-31 (Released:2017-03-03)

The purpose of this research was to investigate whether a decrement in self-control resources caused burnout among employees with different degrees of autonomy. We conducted a panel survey among 424 employees. The results revealed that 1) autonomy affected the relationship between controlling emotional sensations and burnout. Controlling emotional sensations increased burnout among employees with low autonomy, but not among those with high autonomy. Moreover, the results revealed that 2) autonomy did not affect the relationship between other self-control behaviors and burnout. We discussed why a decrement in self-control resources caused burnout and how autonomy affected it, by referring to the process of self-control based on the Limited Resource Model, cognitive control, and physiological underpinnings.
著者
後藤 和久
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-46, 2014-03-30

白亜紀/古第三紀境界の大量絶滅は、地球史の中でも有数規模であった。絶滅は、特に光合成生物とそれを直接的な基盤とする生食連鎖に属する生物について顕著であるのに対し、いわゆる腐食連鎖に属していたと考えられる生物は大きな被害を受けていない。また、石灰質の殻を持つ海洋生物の絶滅率が突出して高いという特徴がある。絶滅を引き起こした原因として、直径10kmの小惑星の地球への衝突が引き金となり、その後に発生した複合的な環境変動が考えられる。具体的には、太陽光の遮断による光合成の停止と寒冷化、酸性雨や有毒物質による陸上・海洋の汚染、そして輻射熱による地表面の高温化などが、大量絶滅パターンを説明できる環境変動として挙げられる。今後、生態学的研究により、観測されている絶滅パターンを再現するために必要な環境変動の規模や持続時間を解明することが望まれる。