著者
成田 一衛 瀬賀 弘行 下条 文武 荒川 正昭
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.1317-1321, 1990

著しい高ナトリウム (Na) 血症によるrhabdomyolysisから急性腎不全を発症し, 血液透析により改善した1例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.<br>症例は58歳男性. 2度の脳出血の既往がある. 昭和63年8月中旬頃から食欲不振を訴え, 肺炎と消化管出血を合併し, 9月17日無尿となって入院した. 血清Naが191mEq/<i>l</i>と著しい高値を示し, CPK, LDH, GOT, アルドラーゼ, ミオグロビン等の骨格筋由来の酵素および蛋白も上昇し, また血漿浸透圧は461mOsm/kgH<sub>2</sub>O, 尿浸透圧も462mOsm/kgH<sub>2</sub>Oと上昇していた. 高張性脱水による高Na血症とrhabdomyolysisによるミオグロビン尿性急性腎不全と診断し, 高Na透析を連日短時間行った. 入院4日日, 3回の透析後から血清Na濃度は正常化し, 計12回の透析治療の後, 離脱し, 11月1日退院した.<br>高Na血症によるミオグロビン尿性急性腎不全の報告は稀で, 本例は7例目である. これらの報告例の基礎疾患をみると, 明らかな内分泌異常を有していたのは尿崩症の1例のみで, 他は高度の高張性脱水が持続したことが高Na血症の原因と考えられた. いずれも血清Na 180mEq/<i>l</i>以上の著しい高Na血症を呈していたが, 予後は全例良好であった. 一般に, 急性の高Na血症の予後は不良で, 165mEq/<i>l</i>を超える場合の致死率は75%といわれており, 骨格筋の壊死を起こすほどの高度の高Na血症は, 徐々に進行する高張性脱水が原因であることが多いと考えられた.<br>治療については, 血液透析が有効であるが, 急激な血漿浸透圧の低下による脳浮腫を防ぐために短時間の高Na透析を頻回に行うことが必要であると考えられた.
著者
丹下 佑芙子 木下 真孝 成田 尚史 張 勁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.237, 2011

富士山は, 静岡県と山梨県の県境に位置する標高 3776 mの活火山である. 富士山の総降水量は年間22億トンであり(山本, 1971),富士山は, それらを起源とした豊かな地下水資源を有しており,山麓には, 北部の富士五湖や忍野八海,東部の平山水源湧水,南部の柿田川湧水群や西部の白糸の滝やなど数多くの湧水群が点在している. しかし, 三島市では, 高度成長期以降地下水位の低下や湧水を集め流れる河川水の水質悪化等が報告され, 湧水を取り巻く状況も大きく変化しつつある. そこで本研究では, 富士山麓の湧水の水質測定を通して, 人類活動の影響に着目して考察を行なった.
著者
池上 大悟 五十嵐 勝秀 大塚 まき 葛巻 直子 成田 年
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.4, pp.225-229, 2016 (Released:2016-04-09)
参考文献数
46

生物は生きていく上で,外界から絶えず様々なストレスに曝されている.こうした外界からのストレスに対して生体は適切に反応し,外界の変化に適応していく.これは生体レベルだけでなく,細胞レベルでも同様に起こる生命現象であり,後生的な遺伝子修飾機構であるエピジェネティクスの関与が考えられる.エピジェネティクスは,その効果を発揮するための遺伝子配列の変化を必要とせず,膨大なゲノム情報の各所を修飾することにより,転写装置が効率よくアクセスできるようにゲノム情報を制御している.このような制御機構は,外界からの様々なストレスを受けた細胞が,その変化を記憶・保持するために,なくてはならないものである.一方,痛みは急性痛と慢性痛に大別される.急性的な痛み反応は,危害から生体を防御するシグナルであり,『生体防御』に関与する重要なバイタルサインである.それに対し,慢性疼痛は,その病変部位が治癒あるいは修復に向かっている状態にも関わらず断続的に疼痛が認められる症状を示す.慢性的な痛みという不必要な強いストレスに曝されることにより,細胞が誤った変化を記憶し,末梢ならびに中枢神経の各所で不可逆的な神経可塑的変化が生じてしまうのである.これが,いわゆる「難治性」の疾患として認識される状態である.本稿では,慢性的な痛みストレスによる中枢のエピジェネティクス異常について概説することにより,エピジェネティクスの特徴,難治性の疾患に対する関与の可能性について論じる.
著者
堀向 健太 津村 由紀 山本 貴和子 正田 哲雄 二村 昌樹 野村 伊知郎 成田 雅美 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1543-1549, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

【背景と目的】重症アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の治療を行っている最中,特にステロイド外用剤(以下ス剤)の連日塗布から間欠塗布へと移行する寛解導入期の終わりから寛解維持期の始めに相当する時期に,全身の皮疹や掻痒は改善しているにも関わらず,患者の掌蹠に汗疱様の水疱・丘疹が出現することがある.我々はこの病態を「AD寛解前汗疱様発疹」と称している.AD寛解前汗疱様発疹はス剤抵抗性の皮疹やアトピー性皮膚炎の再燃と誤解し治療が頓挫する危険性がある.そこで,発症率や患者の特徴について,後方視的に検討し,重症患者の治療上留意すべき現象として本邦初の症例集積研究として報告する.【対象と方法】2007年4月から2009年3月までに当科にADの治療目的に入院した89例を対象とし,発症年齢,AD治療開始後の発症病日,治療後の寛解までの日数,季節性,治療経過,AD重症度との関連,検査所見との関連を後方視的に調査した.【結果】AD寛解前汗疱様発疹は13例(14.6%)に発症しており,治療後の発症病日は16.7±10.4日(4〜32日),平均年齢は6.2±6.1歳(3カ月〜23歳)だった.入院時のSCORADは平均50.8±17.9(16〜91)であり,1歳未満を除いてSCORADを検討すると発症者が無発症者に比べ有意に高値であり,重症患者がより発症しやすいと考えられた.ス剤の局所的な強化により全例が軽快したが,治療後の軽快まで18.5±12.0日(4〜50日)を要し,概して難治であった.なお,汗疱は一般に夏に悪化するといわれているが,季節性は認められなかった.【結論】AD寛解前汗疱様発疹の病態に関しては不明な点が多く,皮疹が改善してきている時期に発症するために,患者が不安に感じる.標準治療の普及の障害になりうるため,その周知と検討が必要と考えられた.
著者
小山内 筆子 成田 智
出版者
弘前医療福祉大学内紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-36, 2018-03-30

本研究の目的は青森県言語聴覚士会会員所属施設における吃音臨床実施の有無を把握し、吃音児・者とその家族に吃音臨床施設の情報を提供することである。青森県言語聴覚士会会員が所属する72施設を対象にアンケート調査を行い、吃音臨床実施施設の情報を青森県言語聴覚士会ホームページに掲載し、発信した。その結果、吃音臨床を実施している施設は有効回答を得た63施設中16施設(25.4%)にとどまり、地区別では青森地区において成人吃音を対象とする吃音臨床施設が不在であることが明らかとなった。また、青森県言語聴覚士会ホームページ掲載後、青森県言語聴覚士会事務局や会員所属施設への吃音に関する問い合わせが頻発したことから、吃音児・者とその家族が吃音臨床施設の情報を必要としていることが示唆された。 今後の課題として、現在、医療・福祉・教育分野へと繋がる受診率の高い乳幼児健康診査を担当する保健分野に所属する言語聴覚士はみられないことから、各自治体が担う保健分野と医療・福祉・教育分野における連携・支援体制作りが挙げられる。
著者
神林 翔太 張 勁 柴沼 成一郎 成田 尚史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.181, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所事故により飛散し,陸上に沈着した放射性セシウム(Cs)は水・物質循環に伴う移動で海洋へ移行するため,今後は海洋への移行予測が重要になる。水・物質循環の経路において,汽水域は河川水と海水の混合領域であり,塩分の急激な変化に伴う吸着・溶脱等により化学物質の濃度が大きく変化するため,海洋への移行を考える上で汽水域での放射性Csの動態把握は重要である。しかし,先行研究では大河川や沿岸域での動態把握に留まり,汽水域での挙動は明らかにされていない。本研究では,汽水域での放射性Csの動態を把握し,「河川-汽水-海洋」の系における移行挙動を明らかにするため,幅広い塩分変動をもつ海跡湖「松川浦」において現場観測を行った。
著者
成田 紀子 鈴木 明子 菊池 裕 一戸 正勝 池渕 秀治 田中 東一 沢田 純一
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.36, pp.39-44, 1992-12-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

Seeds of Job's tears (Coix lachryrna jobi var. ma-yuen) are commonly used as herbal drug and health food in Japan, but mycotoxin contamination such as aflatoxin and zearalenone (ZEN) on Job's tears products is often problematic. Thus, a mycological examination on 35 samples of raw seed materials and commercial products of Job's tears was carried out. Aspergillus flavus, Curvularia spp., Bipolaris coicis, Fusarium pallidoroseum (=F. semitecturn), F. equiseti and F. moniliforme were detected as predominant fungi in the samples. Of the Fusarium species isolated, F. pallidoroseurn was most dominant. ZEN producing ability of these Fusariunn isolates on seeds of Job's tears in cultures was measured by HPLC analysis. The isolates of F. pallidoroseum, F. equiseti and F. moniliforme produced ZEN, with maximum yields of 55, 244 ng/g, 137 ng/g and 54 ng/g, respectively. Among tested 12 samples of the commercial Job's tears products, ZEN contamination was found in 3 hulled seeds (21; 25; and 44 ng/g), 2 crucked products (6; 29 ng/g) and 3 powdery products (23; 46 and 116 ng/g).
著者
成田 章
出版者
日本素材物性学会
雑誌
素材物性学雑誌 (ISSN:09199853)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.102-130, 1998-12-30 (Released:2010-10-28)
参考文献数
82

The various methods of the non-empirical atomic structure calculations have been so far extensively developed. Their representatives are the Thomas-Fermi, the Hartree, the Hartree-Fock and the density functional methods. These methods have been also applied to the understandings of the physical and the chemical properties for the molecules and the solids. In this review article, mainly the Hartree-Fock and the density functional theories for the atoms are described, and furthermore the methods for the numerical calculations of the basic equations are given. The fundamental physical pictures in the many electron systems are almost included in the HF theory, and the theory is the most standard one in the many body problems even at the present day. The density functional theory is a newer one and originates from the Thomas-Fermi theory, and has merits that the numerical calculations in this method are very easy compared to the HF method and give the similar accuracy to that of the HF method. The studies to improve and to develop the density functional theory are now still continuing. On the other hand, since the relativistic effects are important for the heavier atoms such as the rare earth and the actinide, the fundamentals for the relativistic atomic structure calculations are also given.
著者
寺澤 幸枝 大島 英揮 成田 裕司 諫田 泰成 藤本 和朗 緒方 藍歌
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

広範囲心筋梗塞では、壊死心筋による激しい炎症の後、線維組織に置換され、時間とともにリモデリングが進行し、心腔拡大や収縮障害、最終的に重症心不全を引き起こす。近年、移植片対宿主病(GvHD)の臨床治験において、RNA や蛋白を含む50-200nm の細胞外微小胞「エクソソーム」の抗炎症作用による治療の有効性が報告されている。申請者らは、これまでに大動脈瘤に対して間葉系幹細胞(MSC)から産生されるエクソソーム投与療法を行い、瘤縮小効果が得られたことを明らかにしてきた。MSCや心筋塊前駆細胞由来のエクソソームによる心筋梗塞治療の有効性はすでに報告されているが、エクソソームの性質(膜表面タンパクや包括するmiRNA, mRNA, prtotein など)はホスト細胞に依存するため、細胞の種類によって治療効果が異なることが予想される。平成29年度では、すでに治療効果が明らかとなっているMSC に着目し、MSC由来エクソソームに含まれるタンパクとmiRNAを、各アレイを用いて網羅的解析を行った。タンパクアレイでは286種のタンパクが同定され、全体のうちサイトカイン20.3%、成長因子21%、ケモカイン14%が占めていた。miRNAアレイでは、526種のmiRNAの存在を確認し、In Silicoにて血管新生因子や炎症抑制に働くmiR-17, miR-24, miR-92, miR-126, miR-210などが同定された。In vivo検討に進むため、心筋梗塞モデル作成に着手した。

1 0 0 0 OA 三都一朝

著者
成田屋留次郎 著
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1854