著者
森田 美琴 木村 昭夫 畑岸 悦子 宮島 衛 佐野 哲孝 宮内 雅人 冨岡 譲二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.103-106, 2004-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

A 68-year-old man was carried by an ambulance presenting with partial traumatic amputation of both legs as a result of a railway accident. The hypovolemic shocked patient arrived at the hospital, with potential right tension pneumothorax. Immediate decompression by tube thoracotomy was performed, however the shock state did not improve. Repeated focused assessment with sonography for trauma (FAST) and careful physical examination of the patient revealed no abdominal injuries. Pelvic fracture was not identified with the pelvic X-ray. The partially amputated legs were removed in the emergency department. In spite of these procedures, the hypovolemic shock persisted. However, a wound in the region of the right humerus, which was not bleeding during the initial examination, developed hemorrhage upon later investigation. The circulatory status of the patient stabilized after the wound was packed with gauze packing for hemostasis. Polytetrafluoroethylene (PTFE) graft inter-position of the injured artery and fasciotomy of the right forearm were subsequently performed. The postoperative course was uneventful, and rehabilitation was begun on the 15th post-operative day. Thus, even in a patient with blunt trauma, arterial injuries of the extremities should never be underestimated during the initial assessment.
著者
木村 千里 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-30, 1995

分娩期に助産婦が産婦と共に過ごす共有率, 産婦への助産婦の発語回数, 夫以外の家族の立ち会いと産婦の主観的体験との関係を明らかにする目的で, 初産婦16名に分娩時ビデオ録画, 産褥3日に自己記入式質問紙法を行った。<BR>その結果, 娩出期の共有率の平均値は極期よりも有意に高かった (P<0.05)。さらに, 娩出期の共有率と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めたが (r=0.51, P<0.05), 極期の共有率との間には有意な相関関係を認めなかった。また, 極期から娩出期にかけての単位時間当たりの助産婦の発語回数と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めた (r=0.68, P<0.01)。また, 夫以外の家族の立ち会いがあった群は, なかった群に比較して有意に陣痛・出産時の対処・達成感の自己評価得点が低かった (P<0.01)。<BR>これらの結果から, 極期における助産婦の選択的存在, 極期・娩出期における夫以外の家族の存在について検討し, さらに分娩時, 出産に集中する産婦を妨害しないように, 産婦が必要とするときに効果的に言葉かけを行う必要性が示唆された。
著者
山田 直人 加藤 幸恵 木村 丘 松井 秀明
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-49, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
9

難治性の疾患である間質性膀胱炎の下腹部痛に上下腹神経叢ブロックが有効であった3症例を経験した.3症例はいずれも薬物療法,膀胱水圧拡張療法などでは鎮痛困難であった.最初の症例に硬膜外ブロックが有効であったため,より効果期間の長いアルコールを用いた上下腹神経叢ブロックを行った.合併症がなく,痛みは著明に改善した.その経験より連続した他の2症例にも行い,同様に痛みが改善した.今回の経験から間質性膀胱炎に対して上下腹神経叢ブロックの有効性が示唆された.
著者
横田 裕行 中沢 省三 志村 俊郎 木村 昭男 山本 保博 大塚 敏文
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.31, no.13, pp.881-886, 1991 (Released:2006-07-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4 6

Hypothalamic and pituitary hormone levels were measured in 56 patients meeting the criteria of brain death proposed by the Japanese Ministry of Welfare. Pituitary hormone releasing tests were carried out in 39 patients. In addition, cerebral angiography and transcranial Doppler (TCD) were performed in 13 and six patients, respectively, just after hormone measurements. Serum hypothalamic and pituitary hormone levels were inconsistently high based on the half life time in the presumed absence of cerebral blood flow shown by angiography. The responses to releasing hormones were normal in 16 patients. TCD detected cerebral blood flow in the middle cerebral artery or ophthalmic artery in three patients who showed non-filling on angiography. Postmortem microscopic examination of the hypothalamus and anterior pituitary lobe revealed normal structure and cells intermingled with lytic changes and necrosis. This series suggests that some part of the hypothalamus and hypophysis may still be alive after brain death, although the function of these regions may be clinically insignificant.
著者
中西 利典 木村 治夫 松山 尚典 ホン ワン 堀川 義之 越後 智雄 北田 奈緒子 竹村 恵二
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.163-173, 2019-04-01 (Released:2019-06-04)
参考文献数
29

中央構造線活断層系の西端に位置する別府湾は,およそ5Maから沈降場にある.その南縁の府内断層は同堆積盆を構成する主要な正断層である.その活動性を評価するために,断層を挟んで掘削された7本のボーリングコア試料を用いて,堆積相解析,珪藻化石の群集組成解析,合計17試料の陸源植物片と4試料の海生炭酸塩の放射性炭素年代測定を実施した.それらの解析結果を基にして,デルタフロント相,デルタプレーン相,人工盛土相を認定した.これらの堆積構造と変形構造は地中レーダ探査によって可視化された.これらの結果,デルタプレーン相の最上部の泥層の堆積年代と珪藻化石群集を基にして800~400calBPの最新活動を認定した.デルタフロント相の泥層の上下変位量を基にして2,100calBP頃の活動も認定した.これらからおよそ1,700年の再来間隔が計算できる.
著者
木村 容子
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.55-81, 2003-10-25 (Released:2017-04-05)

In generale la dottnna cnstiana sull' atto sessuale andava trattata durante la confessione in private, nel medioevo Tuttavia, al contrano degli altri predicatori, Bernardino da Siena (1380-1444) un francescano e uno dei predicatori piu popolan dell'Itaha medievale, predicava dettaghatamente gli argomenti sessuali in pubblico In questo saggio vorrei provare a chianre l'originalita di Bernardino da Siena, come predicatore, sull'argomento sessuale Esamino non soltanto le reportationes (le annotazioni di predicazione parlata) di Firenze del 1424 e di Siena del 1425 e 1427, ma anche le model sermons (le prediche scntte dai predicatori come modello) Confrontando questi due tipi di materiali storici, mostro la sua struttura teorica su questo argomento Per quanto riguarda l'atto sessuale, i governi delle vane citta generalmente miravano alla regolamentazione dei rappolti sessuali estranei al matrimonio Per esempio si controllavano i rapporti tra maschi adulti e ragazzi, cioe la sodomia, e si allentavano i regolamenti della prostituzione Bernardino, invece, affrontava sia i rapporti tra coniugi sia i rapporti tra i maschi Quanto alla sodomia, il predicatore parlava a tutti i cittadini e li stimolava all'ostilita verso i sodomiti Le sue prediche, invece, sugli atti sessuali tra coniugi erano rivolte principalmente alle mogli Lui poneva un limite all' atto tra i coniugi con la massima attenzione Perdonava il peccato di commettere l'atto sessuale durante il perinodo mestruale a secondo delle circostanze Ma l'atto sessuale commesso in modo da evitare la gravidanza, cioe vitium contra naturam, era da lui decisamente proibito Influenzate dalla realta, le sue prediche contribuirono a formare, nello stesso tempo, il senso morale dell'uditorio
著者
平川 淳一 木村 和夫 山内 眞義 中山 一 中原 正雄 藤沢 洌 亀田 治男 大畑 充 佐藤 泰雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1726-1730, 1989-12-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
14

約1年の間に5人の覚醒剤乱用者グループの全員にみられた非A非B型急性肝炎例を経験した.これらの症例は注射器を共用し覚醒剤の静脈注射するといういわゆる“回し打ち”を行い,いずれも急性肝炎の発症を認めた.覚醒剤乱用と肝炎発症の関連について検討した結果,通常のB型,非B型急性肝炎に比べ潜伏期の長いことが推察された.回復期に行った肝生検像は,慢性活動性肝炎の所見であった,覚醒剤による弊害は現在大きな社会問題となっており,これによるB型肝炎の報告は散見されるが,非A非B型肝炎の報告は本邦では文献上みあたらず興味ある集団発症例と思われる.

1 0 0 0 OA 早教育と天才

著者
木村久一 著
出版者
大鐙閣
巻号頁・発行日
1921
著者
尾関 圭子 飯田 博己 岩本 賢 中路 隼人 三浦 祐揮 梶田 幸宏 村松 由崇 木村 伸也 岩堀 裕介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1269, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】近年,野球競技への女性参加が増え,その競技レベルは向上しつつある。野球選手の身体特性については,男性を対象にした報告は多数あるが,学童女子に関する報告は少ない。我々は,2014年から学童女子野球選手を対象にメディカルチェックを行っている。そして,2015年スポーツ傷害フォーラムにおいて,学童女子選手は男子と同等の肩後方タイトネスを有していることを報告した。今回は,学童女子野球選手における肩・肘及び下肢の関節可動域を,男子と比較し報告する。【方 法】対象は,女子は2014~2016年度ガールズベースボールトーナメントに参加した,愛知県代表選手43名(平均年齢11.3±0.5歳)とした。男子は2015年度名古屋市小学生軟式野球選手の野球検診で,当院の検診に参加した67名(平均年齢11.9±0.4歳)とした。方法は,ROM測定を以下の項目について両側行った[肩関節:90°外転位外旋・90°外転位内旋・90°屈曲位内旋・水平屈曲,肘関節:屈曲・伸展,股関節:内旋・伸展・SLR]。90°外転位外旋と内旋の和をTotal Arcとして求めた。各測定項目を,男女間および投球側と非投球側間で比較した。統計処理には,Mann WhitneyのU検定を用いた(p<0.05)。【結 果】1.男女の比較:90°外転位内旋・Total arc・水平屈曲・股関節内旋・股関節伸展・SLRにおいて,投球側・非投球側ともに女子の方が有意に大きかった。また,非投球側の肘関節伸展は,女子の方が有意に大きかった。2.投球側と非投球側の比較:男女ともに投球側の90°外転位内旋・水平屈曲・90°屈曲位内旋・肘屈曲が有意に小さかった。女子では,投球側の肘伸展が有意に小さかった。また,男子では投球側の股関節内旋が有意に小さかった。【結 論】男女ともに投球側の肩関節90°外転位内旋・水平屈曲は減少しているが,女子の方がROMは大きかった。つまり,一見ROMが良好に保たれている女子においても,男子と同等に投球側の肩後方タイトネスを生じており,注意を要すると考える。肘関節伸展可動域について,男女の比較では,女子の方が非投球側が大きかったが,投球側は男子と差がなかった。また,投球側・非投球側の比較では,男子では差がなく,女子では投球側が減少していた。つまり,女子の方が投球側の肘屈筋群にタイトネスを生じていることが示唆された。下肢のROMは,女子の方が男子よりも全て大きかった。また,女子では左右差を認めなかったが,男子の股関節内旋は投球側で小さい,あるいは非投球側で大きかった。総じて,女子で上肢のROM左右差が男子より大きく,下肢では左右差を生じていなかった。以上から,性差の他に,女子の野球動作が上肢に依存している可能性も考えられた。今後は,動作分析を加えてさらに検討していきたい。
著者
森實 俊充 木村 紀之 大森 英樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.134, no.10, pp.NL10_3, 2014 (Released:2014-10-01)

Our research focuses on the power conversion system and the electrical machinery system based on the powerelectronics technology. Our research group consists of three laboratories. Three faculty members, 38 students are with the research group.
著者
鈴木 剛 仲山 慶 前川 文彦 Tue Nguyen Minh 木村 栄輝 道中 智恵子 松神 秀徳 橋本 俊次
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.470-481, 2018-12-31 (Released:2019-12-05)
参考文献数
37

臭素系ダイオキシン類は,POPs 条約の規制対象物質ではないが,対象であるダイオキシン類と同様の特性を示すため,リスク管理の必要性が国際的に共有されている。国内では,環境省による臭素化ダイオキシン類の排出実態調査が実施され,臭素系難燃剤の decaBDE を使用する施設や含有製品を取り扱う施設で,ダイオキシン類の排出基準や作業環境基準を超過する値で検出されることが明らかにされた。臭素化ダイオキシン類の排出は,2017 年に decaBDE が POPs 条約上の廃絶対象物質となったことに伴い,動脈側で減少することが予測されるが,静脈側で含有製品の再資源化や廃棄を通じた排出が当面継続する見込みであり,引き続きその実態把握が必要である。DecaBDE の代替物使用の臭素系ダイオキシン類の排出への影響についても,今後の排出実態調査や関連研究で明らかにされることが期待される。また,臭素化ダイオキシン類の適切なリスク管理には,WHO と UNEP の専門家会合が指摘しているとおり,魚類・哺乳類毒性試験に基づく TEF を補完していく必要がある。
著者
安田 光男 木村 博昭
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.126-133, 2018 (Released:2019-02-01)

古代ローマ住宅はペリスタイルと呼ばれる中庭が紀元前2世紀ごろから富裕層を中心とする住宅の平面計画に導入され始め、ドムス住宅が形成された。ポンペイのメナンドロスの家もそういったドムス住宅の一つであるが、ペリスタイルを構成する列柱は等ピッチで整然と並ぶイメージとは異なり、一見ランダムに配置されているように見える。本論考では、メナンドロスの家をケーススタディとして、R.リングらの復元図から3Dモデルを作成し、検証・考察を通して、ペリスタイルの柱配置によって、どのような視覚的効果を用いて空間演出を行おうとしていたかを明らかにすることを目的とする。古代ローマ住宅には二つの軸線が存在することが、一般的に知られている。ファウセス(玄関)からペリスタイルへの視覚軸、もう一つはトリクリニウムからペリスタイルへの視覚軸である。メナンドロスの家においても、この二つの軸線に対応するペリスタイルの柱間の間隔は他の柱間より広げられており、軸線が強調されている。ファウセス(玄関)からペリスタイルを見る視覚軸はペリスタイル列柱の柱芯間隔について手前を広く、奥を狭くすることで、初源的な遠近法の効果で実際の距離よりも長く見えるように設えられていると考えられる。その視覚軸の終点に位置するオエクス前の列柱の中心と視覚軸にはズレが生じており、そのズレの要因は対称性と列柱の連続性の双方を維持するということを意図したためと考えられる。また、トリクリニウムからペリスタイルへの視覚軸について、ペリスタイルの東側から西側に向けて柱芯間隔を徐々に減じさせて、初源的な遠近法の効果で庭をより大きくみせるような空間演出を行っていると推測できる。ペリスタイル列柱の配置は主に北側及び東側に存在する饗宴用の部屋から庭へ向かう視線のためのウィンドーフレームとしての機能が色濃く、ペリスタイル西側及び南側の列柱に、その視線の先にある背景としての役割を担わせることで、劇場の舞台装置のような空間演出を行っていたと考えることができる。メナンドロスの家のペリスタイルの列柱は構造的な機能を超えて、柱芯間隔の巧みな操作や初源的な遠近法を用いた視覚操作を通して、空間演出に利用されていたことがわかった。
著者
佐伯 英人 木村 ひろみ
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.231-238, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は, 市販の洗濯用合成洗剤を使って教材研究を行い, また, 授業実践を通して, 水の温まり方を調べる実験の有効性を議論することであった。研究の結果, 明らかになったことは次の①~④の4点である。①多くの児童が実験をして(観察をして), 水の温まり方の正しい概念を身に付けることができた。②多くの児童が授業を受けて「よく分かった」という意識をもつことができた。その要因の1つとして実験があった。③多くの児童が実験をして(観察をして)「よく分かった」という意識をもつことができた。④教員の授業に対する意識は「良好」であった。その要因の1つとして実験があった。
著者
岡 秀郎 岡田 守彦 木村 賛 葉山 杉夫
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.207-220, 1996 (Released:2009-09-07)
参考文献数
16

サル類の樹上運動への最高の適応としての腕渡り動作を取り上げ,喉頭腔を特殊化しなかったヒトの動作時の喉頭動態について,新たに開発された高解像度内視鏡ビデオシステムを用い,直接,喉頭の動態を観察すると共に,動作ならびに筋の作用機序の面から喉頭括約作用の動作への関与について検討した。腕渡り動作時,被験者の経験している運動形態の差異により,喉頭動態ならびに上肢・上肢帯筋群の活動様式に差異が認められた。喉頭動態に関しては,二次元平面運動(柔道・剣道)経験者では喉頭閉鎖が観察されたが,三次元空間運動(体操)経験者では喉頭は終始開放されていた。筋活動様式に関しては,二次元平面運動経験者の場合,右手懸垂スイング時に上腕骨の内転動作に参画していると考えられる,三角筋前部,大胸筋胸肋部に顕著な放電の出現・増大が観察され,これらの放電の増大時に喉頭括約が認められた。二次元平面運動経験者の場合,内転動作時に運動支援として胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられる。一方,三次元空間運動経験者の場合,同時期,三角筋前部,大胸筋胸肋部の顕著な放電の出現は観察されず,喉頭括約は認められなかった。また,二次元平面運動経験者でも右手懸垂スイング時,三角筋前部の放電は減少傾向を示し,大胸筋胸肋部に顕著な放電の減少が認められた場合,喉頭括約は認められなかった。これらのことから,肩関節への負荷状態により,運動支援としての胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられ,ヒトの動作と喉頭括約作用との関係について,肩関節への負荷量の状態に起因する運動支援としての前庭ヒダ・声帯ヒダの関与の存在を強く示唆するものであった。