著者
岩崎 和代 齋藤 益子 木村 好秀
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.225-233, 2013-11-30 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
2

20歳女子大生,小学生保護者,勤労女性の3群62名を対象に子宮頸がん検診行動の影響要因をフォーカス・インタビューで明らかにした.過去2年以内の子宮頸がん検診率は,保護者群90.5%,勤労女性群66.7%,女子大生群0%で,住民検診の利用が多く,きっかけは年齢的な動機や自治体からの案内であった.検診行動への影響要因として8カテゴリーが集約され,「必要性に対する情報不足・知識不足」「検診方法のためらい」「受診行動の相互影響」「受診アクセスの不便」「受診環境への不満」「きっかけ不足」「皆で受ける安心感」「教育不足」であった.このうち,検診行動を高める要因は「皆が受ける安心感」に集約され,連帯意識や待ち時間が少ない巡回検診車の利用,集団検診が支持された.保護者群や勤労女性群でも検診目的の理解は不十分で,検診環境への不満や検診時に痛みや出血を経験し,医師への技術不信を抱いていた.大学生群は子宮頸がん予防行動への教育機会の不足が伺われた.物理的な検診促進の要件として夜間・土日の検診を求めていた.
著者
金丸 眞一 福島 英行 中村 一 木村 裕毅 玉木 久信
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.171-176, 1994-02-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The severe type of idiopathic sudden sensorineural hearing loss (ISSHL) was treated with genetic recombination interferon alpha-2a (alpha-IFN) (3 million IU/day for 10 days) plus cortico-steroid, and the results were significantly better than those obtained by conventional treatment with cortico-steroid, vitamins, and vasodilators. Assays for 2'-5' oligoadenylate synthetase (2-5 AS), one of the indices of circulating anti-viral activity were performed patients before and on the third day of IFN therapy, and the levels were found to correlate well with the degree of their hearing improvement. These results suggest that viral infections may be related to the etiology of the severe type of ISSHL and that alpha-Interferon is useful in its treatment.
著者
関口 秀夫 木村 昭一 井上 誠章
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-11, 2009-02-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
24

Specimens of scyllarine species (Decapoda: Scyllaridae: Scyllarinae) were collected using commercial bottom trawl nets from several sites with 50-100 m depths in the shelf water region of the Enshu-nada sea and Tosa Bay along the Pacific coast of Honshu, central Japan. Of these, Bathyarctus chani Hoithuis, 2002 and B. formosasus (Chan and Yu, 1992) are recorded for the first time from Japan while Eduarctus martensii (Preffer, 1881) and Galearctus timidus (Hoithuis, 1960) are poorly known from Japanese waters previously.
著者
大島 千尋 佐藤 史奈 高橋 肇 久田 孝 木村 凡
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.168-175, 2019-12-25 (Released:2020-01-23)
参考文献数
15

ヒスタミンが多量に蓄積した食物を喫食すると,潮紅,頭痛,蕁麻疹などの症状を示すヒスタミン食中毒を発症する.本食中毒の防止および原因究明には,原因菌の特定が必須であるが,塩基配列決定による同定は操作が煩雑で解析に時間がかかるため,より簡便な手法が求められている.本研究では,ヒスタミン脱炭酸酵素をコードするhdcA遺伝子を対象として,高度融解曲線解析(High-Resolution Melting Analysis; HRMA)を用いた主要ヒスタミン生成菌の迅速同定法を開発した.はじめに,グラム陰性ヒスタミン生成菌のhdc遺伝子の配列から,種ごとに多様性が確認された配列部分にHRMA用のプライマーを設計し,HRMAを行った.まずTm Callingと呼ばれるPCR産物のTm値を測定するモードにより,Tm値の差からヒスタミン生成菌はA,B,Cの3グループに分類された.Aには陸生細菌であるMorganellaやEnterobacter, Raoutellaが属し,BおよびCには海洋性細菌であるVibrio属細菌やPhotobacterium属の細菌が属した.次に,グループAに分類された菌株についてのHRMAにより得られた融解プロファイルから,グループAに属するRaoultella属,M. morganiiおよびE. aerogenesは識別された.このことから,HRMAにより主要なグラム陰性のヒスタミン生成菌を簡易に同定することが可能であると示された.本法は,従来の塩基配列決定法と比べ,迅速かつ簡易にヒスタミン生成菌の種判別が可能である.
著者
磯貝 恵美子 木村 浩一 磯貝 浩
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.863-869, 1996-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
著者
宮下 達哉 木村 敦 岡 隆
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.561-566, 2018 (Released:2018-12-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1

Several studies have reported the factors which determine individual differences in aesthetic evaluations of visual arts. Our previous studies suggested that the aesthetic dimension of value (ADV) was a crucial factor relating to the individual differences in aesthetic evaluations. However, the paintings used in our previous studies were selected from the masterpieces painted by famous artists. The present study explored whether the ADV would relate to aesthetic evaluations for both good and bad arts. Undergraduates (N = 166) were asked to rate 14 paintings (including seven good arts and seven bad arts selected from the Museum of Bad Art) on four scales of aesthetic evaluation and to complete a questionnaire assessing their degree of the ADV. The results demonstrated that the ADV related to aesthetic evaluations for both good and bad arts. These results suggest that the ADV related to the subjective value of the paintings regardless of their reputation.
著者
木村 圭佑 作 慎一郎 高取 克彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101144, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】日常生活における,歩行や階段昇降は運動学的には片脚立位からのバランス損失と回復の繰り返しといえる.よって片脚立位時の姿勢制御能力の向上は転倒予防のために重要と考えられる.先行研究では片脚立位における前後方向の重心動揺制御への母趾外転筋強化の有効性が報告されている.しかし,その有効性は無作為割り付けの行われた対照群がない設定で実施されていることから,より精度の高い手法での検討が必要と考えられる.また,重心の側方動揺制御には,小趾外転筋の活動が有効だと考えられているが,両者の関係については,十分な調査が行われていない.本研究の目的は,小趾外転筋の筋力強化が片脚立位時における姿勢制御能力に及ぼす影響について明らかにすること,母趾外転筋強化による重心動揺制御効果を無作為化比較試験にて追試することである.【方法】健常成人70名から参加の同意を得られた30名(男性15名,女性15名,平均年齢21.4±1.0歳)の両下肢を対象とした.母趾外転筋のみをトレーニングする群(以下:コントロール群)15名と母趾および小趾外転筋をトレーニングする群(以下:実験群)15名に無作為に振り分けた.両群の参加者特性(年齢・性別・身長・体重・足長・足幅)には有意な差は認められなかった.母趾外転筋トレーニングは第2~5趾を固定させ,最大可動域までの母趾外転運動を行う事とし,小趾外転筋トレーニングは第1~4趾を固定させ,最大可動域までの小趾外転運動を行う事とした.両トレーニングともに左右実施し,1分間できるだけ多く課題を反復させるよう指示した.実験群では両トレーニングを実施させ,コントロール群は母趾外転トレーニングのみを行わせた.トレーニングは両群とも週7日,3週間行った.評価項目は筋力の指標として自動母趾および小趾外転距離の変化と片脚立位バランスおよび安定性限界の変化とした.母趾外転距離の測定では,最大自動外転時の母趾・示趾間の距離を測定した.小趾外転距離の測定においても,小趾・環趾間の距離を測定した.母趾および小趾外転距離は足幅で除して標準化した.足幅は第一中足骨頭内側,第五中足骨頭外側の距離を測定した.片脚立位バランスおよび安定性限界の評価には重心動揺計(アニマ社製)を用いて左右片脚立位30秒間の重心動揺面積および重心最大偏位距離(前後・側方)を測定した.また,両脚支持での立位安定性限界(前後左右への随意的な重心最大移動距離)についても測定を行った.重心動揺の前後距離は足長で,左右距離は足幅で除することで標準化した.足長は踵から足尖間距離を金尺にて測定した.データ解析は,両群におけるトレーニング前後の変化率を対応のないt検定を用いて実施し,有意水準を5%未満に設定した. 【倫理的配慮、説明と同意】被検者には研究の趣旨を説明し,自由意志にて参加の同意を得た.【結果】小趾外転距離はコントロール群に比較して実験群で増加傾向が認められた.片脚立位時の重心動揺面積は右脚において実験群に有意な減少が認められた(p<0.05,効果量 =0.84).また最大重心偏位距離は前後方向で両脚ともに実験群において有意な減少が認められた(p<0.05,右効果量 =1.06)(p<0.05,左効果量=0.87).左右方向では,群間差は認められなかった.立位安定性限界における重心最大距離変化では,両群間に有意差は認められなかったが,全方向において実験群に重心最大移動距離の増加傾向が認められた.【考察】片脚立位時の前後重心動揺が実験群で減少した要因としては,母趾による偏位した重心位置での支持作用と,小趾による偏位した重心を中心に戻す作用に改善が認められたためと考えられる.また,足部は前後方向の動きで重心を安定させており,母趾外転筋には母趾屈曲作用,小趾外転筋には小趾屈曲作用がある.これらの事から,実験群での重心動揺面積の減少は,主に前後最大距離の減少によるものと考えられる.左右最大距離に変化が認められなかった要因として,側方バランス維持には足部内外反を制御する外在筋の役割が重要とされている.従って,側方動揺制御に対し,内在筋の強化のみでは姿勢制御能力の改善には不十分であった可能性が考えられる.立位安定性限界には群間差は認められなかったが,全方向において実験群がコントロール群よりも増加傾向が認められた事から,母趾および小趾外転トレーニングは足趾把持筋力を強化し,動的姿勢制御能の向上を示す可能性があると考えられる.【理学療法学研究としての意義】本研究では,小趾外転筋の筋力強化によって姿勢制御能力の向上が認められた.よって,臨床においてよく用いられる足趾把持トレーニングに加え,外転トレーニングを行うことで,転倒リスクの更なる減少に有用だと考えられる.

1 0 0 0 名画への旅

著者
木村重信 高階秀爾 樺山紘一監修
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1992
著者
木村 由貴 竹林 崇 徳田 和宏 海瀬 一也 藤田 敏晃
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.423-429, 2017-08-15

要旨:脳卒中患者は脳卒中によって上下肢の麻痺が生じる.特に上肢麻痺は脳卒中患者のQOLを低下させる.複数の研究者は,分枝粥腫病(Branch Atheromatous Desease;以下,BAD)の上肢の機能予後は,通常の脳卒中に比べ,不良と報告している.今回,我々は入院後2日の間に麻痺の悪化を認めた中等度の上肢麻痺を呈したBAD患者を担当した.急性期から,上肢麻痺に対して対象者の意味のある作業を用いた課題指向型アプローチを提供した結果,上肢機能は臨床上意味のある最小変化を超える改善を認めた.本事例報告では,経過と結果について,BADの梗塞の深さ,梗塞層の大きさ,さらには発症当初の身体機能を用いた予後予測に関する考察を加えて報告する.
著者
木村 裕二
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 = The journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.83-100, 2017

貸金業者による保証を付した銀行カードローンの貸付けのあり方が問題とされ,銀行業界は自主規制に乗り出した。単に過剰な広告がなされていることが問題なのではない。与信残高の急激な伸長の内部には,実体的な消費需要を伴わない「返済のための借入れ」が多数含まれている。すなわち返済能力を超える過剰な貸付が,多重債務問題を再燃させかねない状況をもたらしている。早急な対応が必要である。

1 0 0 0 OA [お伽噺]

著者
木村文三郎 編
出版者
木村文三郎
巻号頁・発行日
vol.かち[カチ]山咄し, 1882
著者
宗重 博 生田 義和 木村 浩彰 戸田 克広
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.185-192, 1994-02-25

抄録:我々は1970~1992(昭和45年から平成4年)までに,当科を受診した上肢の反射性交感神経性ジストロフィー86症例について,手術治療,内服治療,transcutaneous electric stimulation system,星状神経節ブロック(SGB)の結果について検討した.また我々は,1889年にワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®)が特定のタイプの反射性交感神経性ジストロフィーの早期投与として有効である31)ことを発見したので,投与結果と投与量について述べた.対象は男性38例,女性48例で,年齢は12~87歳で平均51.5歳であった.結果は,以下の通りであった.①ノイロトロピン®は,特にminor traumatic dystrophyに有効であった.②ノイロトロピン®は,1日4~6錠で有効であつた.③ノイロトロピン®の治療効果発現時期は,5週までであった.④手術成績は不良であった.⑤SGBは有効であった.
著者
木村 眞
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-9, 2015 (Released:2015-03-05)
参考文献数
59

Minerals in meteorites give constraints on the formation history of not only meteorites, but the solar system. Here I introduce some characteristic minerals in meteorites. Enstatite chondrites contain abundant unusual sulfide and metallic minerals that were formed under highly reducing conditions. Refractory inclusions were formed in the earliest stage of the solar system. They typically contain Ca-Al-rich minerals. A new mineral, kushiroite, is one of such minerals, and formed under rapid crystallization conditions. Ultrahigh-pressure minerals are commonly encountered both in chondrites and differentiated meteorites, indicative of pervasive impact processes in the early solar system. An eclogitic mineral assemblage encountered in a CR chondrite suggests the possibility that asteroids were primarily larger than previously estimated.
著者
木村 直弘 KIMURA Naohiro
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.9, pp.9-44, 2010

戦後日本を代表する作曲家・武満徹は,世阿弥能《井筒》についてのエッセイで次のように述べている。「井筒」は,穏やかな構成の中に凛とした品位を具えている。作能上の様様な手段(てだて),例えば綴織のように,地に豊かな陰翳をもたらしている縁語や音韻の懸かりことばの眩くまでの多用は,たんに情景や心理の表面的な修辞に留まってはいない。それらの書かれたことばが音(おん)として顕わすものは,限定された意味世界を超えている。~(中略)~音(おん)の多様さが意味の多義性と相俟って,観衆(聴衆)に異常な力で働きかけてくる。外へ拡散(逸脱)する力と,内へ向かう求心的な力,その相互に反する力が作用する場こそ劇的空間と謂うものであろう。~(中略)~「井筒」は無限の読まれ方(観かた,聴きかた,感じかた)を諾(ゆる)している。(1)「無限の読まれ方」を可能にしている一因は,まさに「縁語や音韻の懸かりことばの眩くまでの多用」であることは言を俟たない。まさに綴織のように,幾重にも張りめぐらされたその糸の複雑なテクスチュアから成るテクストは,いわばハイパーテキストであり,音から音へと進行するにつれて,そのハイパーリンクは膨れあがる。ウェブサイトであれば,そうしたリンクは一対一であるが,ここでは音を共有する語が単純であればあるほど,その多義性は増し,多様な読みを可能にする。能楽師(ワキ方)安田登は,こうした途切れず繋がる音の連鎖,すなわち「掛詞による無限連鎖文章作法」を,総合芸術作品としての「楽劇 Musikdrama」を創始した作曲家リヒャルト・ヴァーグナーの作曲技法「無限旋律」に喩えている2。たとえば,《井筒》の「互に影を水鏡」であれば,「水」の「み」が前の語「影」を目的語として受ける述語「見」と,後の語「鏡」と結合して名詞を形成する「水」の掛詞となる。西洋音楽の用語で喩えれば,掛詞は,転調の軸となる和音=ピヴォット・コードpivot chord として機能しているが,能ではカデンツ的「解決」は先延ばしにされ続ける。さらにヴァーグナーの作曲技法に喩えれば,掛詞の作用は「示導動機 Leitmotiv」的機能をも有しているとも謂えよう。ただしヴァーグナーのライトモティーフは,ハイパーリンクと同様「示導」する対象が一対一であるのに対して,掛詞はリンク多様な広がりの可能性を胚胎している。