著者
大友 章司 広瀬 幸雄 大沼 進 杉浦 淳吉 依藤 佳世 加藤 博和
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.772, pp.203-213, 2004-11

本研究の目的は, パーク・アンド・ライド(P&R)を普及させるため, 公共交通選択行動の心理的規定因を調べることである. 本研究の仮説は, 広瀬(1995)の環境配慮行動の2段階モデルを基に作られた. 仮説の検証のため, P&Rの社会実験が行われた地域の住民に対して社会調査を行い, 893人の回答を得た(回収率61%). その結果, a)公共交通選択行動の規定因として, 実行可能性評価, コスト評価, 公共交通利用意図が示された. また, b)態度と主観的規範は, 利用意図を媒介して, 公共交通選択行動を間接的に促進する要因であった. したがって, P&Rの普及のためには, 環境配慮意識にはたらきかけるだけでは不十分であり, 実行可能性評価やコスト評価といった阻害要因を低減させる心理的方略が重要であることが示唆された.
著者
杉浦 一雄
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.78-62, 2006-12-31

光源氏は、スサノヲノミコトをはじめとする「異郷をめざす物語」の主人公として描かれながら、俗世に身を置き、現実の世界に重きを置いている点で、かぐや姫、在原業平、そしてスサノヲノミコトの生き方とは明らかに様相を異にしている。このような光源氏の人物像は、一体何を模範として造型されたのであろうか。私はその最も強固な源泉の一つに聖徳太子があると考える。光源氏と聖徳太子とのかかわりは指摘されて久しいが、実は二人を結ぶ決定的な共通点こそ、「異郷」に深く心を寄せながらも、俗世に身を置き、現実の世界に「異郷」を現出しようと努めた点にあると私は考えたい。すなわち光源氏は、一面で、スサノヲノミコトには見られない現世尊重の精神を聖徳太子から受け継いだ人物であったと言うことができよう。その意味で聖徳太子は、光源氏の数あるモデルの一人というだけでなく、『源氏物語』を支える二本柱の一つとして、スサノヲノミコトに匹敵する重要な存在だったと結論することができるのである。
著者
田尾 龍太郎 難波 梓 山根 久代 冬廣 吉朗 渡邊 毅 羽生 剛 杉浦 明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.237-240, 2003 (Released:2008-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 5 1

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNaseが関与する配偶体型自家不和合性を示す.ウメには,自家和合性品種も存在しており,これらの自家和合性品種は自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(Sf-RNase遺伝子)を持つことが報告されている.本研究では,このSf-RNase遺伝子を特異的にPCR増幅するためのプライマーセットを開発した.‘剣先’からSf-RNase遺伝子の部分配列をPCRクローニングし,その塩基配列を決定した.Sf-RNase遺伝子のイントロン部位の塩基配列よりセンスプライマー(Ken2)およびアンチセンスプライマー(PM-R)を設計し,いくつかのウメ品種を用いてその有効性を検討したところ,Sf-RNase遺伝子をもつ品種でのみ増幅がみられた.今後このプライマーセットをウメの自家和合性品種の育種に利用することによって,育種にかかる時間と労力を大幅に軽減できると思われる.
著者
村山 美穂 中村 美知夫 幸島 司郎 伊谷 原一 井上 英治 田中 正之 杉浦 秀樹 森村 成樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本課題では、絶滅の危機に瀕した野生動物の保全遺伝学を目指して、動物園や国内の野外ステーションとの連携を活用して、非侵襲的な DNA 採取法の開発に取り組むとともに、血縁や亜種判定の基礎となる多様性データを集積し、多数種、多数試料からなる詳細情報つきの DNA Zoo を整備した。またストレスや行動との関連が予想される遺伝子と性格評定などのデータとの比較により、ゲノム情報による野生動物の行動や繁殖の予測システムを構築した。
著者
田中 圭介 杉浦 義典 竹林 由武
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.146-155, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
34
被引用文献数
1 2

マインドフルネスとは,“今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく,能動的に注意を向けること”として定義される自己の体験に対する特殊な注意の向け方である。マインドフルネスの個人差を規定する要因として,注意機能の関連が指摘されている。しかし,注意機能のどの側面が,どのような交互作用でマインドフルネスに関連するのかについては,これまで明らかにされていない。本研究では,大学生を対象にAttention Network Test(Fan et al., 2002)とマインドフルネス傾向(Baer et al., 2006)を測定した。階層的重回帰分析の結果,注意の喚起機能が低い時には,注意の定位機能はマインドフルネスと正の関連を示す一方で,喚起機能が高い場合には,定位機能はマインドフルネスと負の関連を示した。これらの結果は,マインドフルネスの個人差の規定因として,注意機能を交互作用から捉える必要性を示唆する。
著者
宮内 誠 カルロス 杉浦 元亮 蓬田 幸人 秋元 頼孝 月浦 崇 川島 隆太
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

他者の身体に危害を加えるという過去の出来事に関して加害行為を実行することと被害者を目撃することが脳内で別々に表象されている可能性がある。本実験では参加者に顔写真を提示し、仮想の加害行為として顔写真の目に画鋲を刺す行為を含む課題を行わせた。その行為の想起時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて測定した。本研究では加害行為の有無を識別することが可能かどうかを機械学習的手法を用いて検討した。
著者
野田悠介 阿原正弥 杉浦稜介 横井優斗 濱川礼
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.927-929, 2012-03-06

本システムはTwitterのつぶやきを解析し,ユーザにバッジを付与する.それを元にデータベースを作成し利用する.バッジとは,特定の単語ごとに用意され,ユーザがそれに合致するつぶやきを行った際に付与する機能である。これは,自作の言語解析エンジンとサーバによるデータベース操作で行う.現在Twitterは1億人を超えるユーザが利用している.その中で自分が求めるユーザを探すことが困難である.そこで,バッジを利用することで効率よく条件に合致するユーザを見つけることを目的とする.また,ユーザ間のコミュニケーションの円滑化に繋がると想定する.
著者
杉浦 ミドリ 松本 昭子 渡辺 一功 根来 民子 高江洲 悦子 岩瀬 勝彦
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.226-230, 1985 (Released:2011-09-13)
参考文献数
12

歳以降の予後の明らかとなった1歳未満発症の熱性けいれん33例と無熱性けいれん133例を以下の4群に分類して, 成因, 臨床像, 発作像, 脳波, 長期予後について比較検討を行った.A群, 38℃ 以上の有熱時のみのけいれん, B群, 有熱けいれんで初発したが経過中無熱けいれんに移行したもの, C群, 無熱けいれんのうち, 3歳未満で発作消失し精神運動発達正常のもの, D群, 無熱けいれんのうちC群を除いたもの.熱性けいれんの48.5%で無熱けいれんが発症した.A, D群はそれぞれ特異的な特徴を示し, B群は両群の中間的な特徴を示した.C群はA群とは明らかに異なり, D群の予後良好なものと同一の範疇に位置づけられるであろうと考えられた.
著者
杉浦 宏樹 山口 晃 柴崎 浩一
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.108-112, 2006-03-10 (Released:2011-01-31)
参考文献数
31

Introduction: Helicobacter pylori (H. pylori) DNA has been detected at a high prevalence in saliva. The aim of this study was to clarify the prevalence and the risk of intrafamilial transmission of H. pylori infection by detecting H. pylori DNA in saliva of Japanese children and their parents.Materials & Methods: Saliva was collected from 92 children and their parents, and nested PCR and PCRRFLP were used to detect and analyze H. pylori DNA. Subtyping by PCR-RFLP is considered to be useful in order to clarify the mode of transmission.Results: The detection rate of H. pylori DNA in saliva was 12.0%(11/92) in Japanese children, however, all of the children aged less than 6 years old were negative. All of the H.pylori infected children had H.pylori positive parents (both or only one), and in 7 out of 11 cases, children and their parents were infected with the sam e strain. Especially, in 6 cases, the subtype of both the child and the mother was the same.Conclusion: H. pylori DNA in saliva was detected in 12.0%, and parents-to-child, especially mother-to-child, transmission is the most likely route of intrafamilial infection of H. pylori.
著者
丸岡 弘和 杉浦 敏文 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.26, pp.203-208, 2006-03-17

近年,内部不正者による情報漏洩が社会問題となっている.我々は,ユーザが不正を行う際に不審な挙動が現れることに着目し,内部不正者のリアルタイム検知を実現する方式を検討している.これまでに「横目で周囲を確認する(チラ見)」という行動の検出による内部犯検知の可能性を探ったところ,被験者は実験を重ねる内に徐々に自分の体の制御の仕方を覚え,チラ見を発生させずに不正を行うことができるようになることが判明した.そこで本稿では,不正を行う際のユーザの心理状態の変化をダイレクトに検出できる心拍数の変化を内部犯検知に利用する手法を導入する.心拍数を自分で制御することは基本的には難しいため,訓練を重ねた内部不正者であっても不正の検知を回避することはより困難になると考えられる.本手法について,新たに基礎実験を行うことによりその有効性を確かめる.We proposed a real-time detection of internal fraud by sensing insider's suspicious behavior in our previous work, but in which we found that experimented insiders could be able to control their behavior and avoid detection of their fraud. Therefore, in this paper, we introduce to detect heartbeat interval of insiders. It is well known that when human being gets nervous, his/her heartbeat interval will immediately change. Since it is impossible for human being to control heartbeat, it is expected that using heartbeat interval as a suspicious behavior makes it more difficult for even experienced insiders to avoid detection. By conducting some experiments, we evaluate its effectiveness.
著者
杉浦 香織
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本人英語学習者が効果的に語強勢を習得する有効な方法として, 聴覚性プライミング効果の原理を利用した発音学習(音声刺激語の復唱)が可能かどうか,また,その効果に影響する要因を検討した.その結果, ①復唱が5回以上で効果あり,②刺激語の親密度に関係なく効果あり(BNC頻度上位3000語),③音節への注意は効果的,④刺激語を数回復唱した後の文字情報が効果的,⑤復唱のみでは効果は1週間持続しない,ことがわかった.発音向上(音韻表象の変化)に必要な音韻情報への注意,文字情報を得る時期の重要性,更に学習効果を持続させるため,音韻情報の内在化を促進させる手だての必要性が示唆された.
著者
杉浦 隆
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2003-01-31

オノマトペ+つく」という形態を持った複合動詞の統語的および意味的特徴の分析を行う。「つく」には非能格タイプと、非対格があり、それぞれ異なったLCSを持つことを示す。また、オノマトペ表現は「つく」に対する副詞的付加語として機能し、「つく」のタイプによって、状態変化の結果を表すものと、活動の様態を表すものがあることを示す。
著者
廣瀬 雅治 杉浦 裕太 南澤 孝太 稲見 昌彦
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.142-145, 2014-09-12

本論文では,「ブクブカメラ」という,ダイビング中にユーザを三人称視点で記録し振り返ることができるシステムについて述べる.「ブクブカメラ」は,ダイバーに装着した紐の先端に浮きをつけ,この紐に平行になるようにカメラを取り付けることで常にユーザを視野中心に捉え続ける.この手法の特徴として,ダイビングの移動速度に従って視点が自然と前方になり,非制御で興味対象を捉えることができる.また,遊泳方向や潮の流れなどの影響により,環境のコンテキストを伴った映像を取得できる.ユーザの無意識的な行動や観察対象,周囲の環境とのインタラクションを記録ができ,ダイビングの振り返り体験を拡張することを目指した.
著者
伊藤 綾夏 杉浦 絹子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.189-197, 2010-04
被引用文献数
1

本研究では,女子大学生が月経周辺期にどのようなポジティブおよびネガティブな心身の変化を経験しているのか,またそれらの変化と月経に対するイメージとの関連はどうであるのかを明らかにし,月経教育のあり方について考察することを目的に無記名自記式質問紙調査を実施した。看護学を専攻する女子大学2,3年生129名の回答を分析した結果,以下のことが明らかとなった。1.1項目あたりの平均尺度得点の比較では,ポジティブ変化尺度得点はネガティブ変化尺度得点に比べ有意に低かった(p<0.001)。2.ポジティブ変化尺度は,因子分析の結果,「気力因子」と「活動性因子」の2因子で構成されていた。1項目あたりの平均得点の比較では,「活動性因子」が「気力因子」よりも有意に高く(p<0.001),「活動性因子」の項目である「食欲が増す」と「便秘が解消する」は他の項目に比べて高得点であった。3.ネガティブ変化尺度の1項目あたりの平均得点は高いものから「下腹部痛」「腰痛」「いらいら」「疲れやすい」「肌荒れ」「憂うつ」の順であった。4.月経イメージ尺度は,因子分析した結果,「肯定的イメージ因子」と「否定的イメージ因子」の2因子で構成されていた。1項目あたりの平均得点の比較では,「肯定的イメージ因子」が「否定的イメージ因子」よりも有意に高かった(p<0.001)。5.ポジティブ変化尺度得点と肯定的イメージ下位尺度得点間には有意な相関はみられなかったが,ネガティブ変化尺度得点と否定的イメージ下位尺度得点間には有意な強い相関がみられた(p<0.001)。以上より,この年代の女性に月経周辺期におけるポジティブな変化に関する情報を伝え,これらの変化を意識化する働きかけをしていくことの重要性が示唆された。
著者
中島 由紀 高尾 斎昭 前川 理沙 寺田 さとみ 椎尾 康 大谷 道輝 杉浦 宗敏 山村 喜一 内野 克喜
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.323-325, 2011 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

We prepared dried thyroid rectal suppositories for the treatment of thyroid papillary adenocarcinoma in patients with hypothyroidism in response to clinicians’ requests. The suppositories had a content of 50 mg or 100 mg and were prepared using dried thyroid powder and hard fat. The initial daily dose of 100 mg, which was given as a single dose in the morning, could be increased on the basis of thyroid stimulating hormone (TSH) levels, as required. In addition, an oral dose of levothyroxine sodium hydrate 150 μg could be switched to a dose of 300 mg of dried thyroid rectal suppositories in this patient.These results suggested that the dose of dried thyroid rectal suppositories for the treatment of hypothyroidism should be titrated for individual patients based on TSH levels.