著者
林 大樹 Daiki Hayashi
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 = Jinbun (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.20, pp.375-408, 2022-03

刀剣研究家福永酔剣によれば、将軍徳川家斉は尊号一件で関係のこじれた朝廷の「機嫌取り」のため、『享保名物帳』記載の名物刀剣、早川正宗・小池正宗を献上したという。関連する朝廷・幕府史料を調査した結果、この通説は訂正を要することがわかった。家斉は寛政四年(一七九二)一二月五日、上使前田長禧を参内・参院させ、光格天皇に「正宗の野太刀」(早川正宗)、後桜町上皇に「御太刀」(小池正宗)などを贈ることを目録と口上で伝え、装飾(拵え)の希望を聴取した。その結果、早川正宗は螺鈿造に、小池正宗は朱銘・白鞘入りに改め、同六年十一月一〇日に京都へ送付した。進献物は家斉の意向を汲み選択されており、光格もまた返礼品に関与していた。名目としては、尊号一件で尊号宣下を断念した光格天皇への挨拶と、その説得にあたった後桜町上皇への御礼である。一件の中心人物である武家伝奏正親町公明・議奏中山愛親の下向を要求する圧力としての側面も推定される。
著者
小林 大輔 小山 侑 清水 博之 杉山 健太郎
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.19-25, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
22
被引用文献数
1

目的:三叉神経痛の治療法はカルバマゼピン(以下CBZ)の投与である程度確立されているが,副作用で服用の中断を余儀なくされる症例や,抵抗性を示す症例に遭遇することがある.そのような症例の臨床的特徴が明らかになれば治療の一助となると考え,三叉神経痛患者の臨床的検討を行った.方法:2010年4月から2015年3月に東京都立多摩総合医療センター歯科口腔外科を受診した三叉神経痛患者48例について年齢,性別,罹患部位,頭部MRI所見,治療法,副作用について調査を行った.結果:初診時年齢は29~96歳で平均年齢は67.9歳であった.性別は男性が11例(22.9%),女性が37例(77.1%)であった.罹患部位は第Ⅱ枝が25例(52.1%)と半数以上を占めた.頭部MRI撮影を行った44例において18例(40.9%)で原因血管の同定が可能であり,うち上小脳動脈が9例(50.0%)と最も多かった.3例(6.8%)に脳腫瘍を認め,3例の内訳は聴神経腫瘍および髄膜腫,類上皮腫であった.CBZを投与した45例のうち,34例(75.6%)で症状が寛解したが,11例(24.4%)についてはCBZの内服のみでは症状は寛解せず,追加の治療を必要とした.CBZの奏効量は200mgが19例(55.9%)と最も多かった.副作用は14例(31.1%)に認め,最も多い副作用はふらつきで6例であった.結語:今回われわれは三叉神経痛患者48例について臨床的検討を行った.しかしCBZに副作用,抵抗性を示す症例に明らかな臨床的特徴は見出すことができなかった.
著者
小栁 香織 窪田 敏夫 小林 大介 木原 太郎 吉田 武夫 三井所 尊正 斎藤 友亮 打越 英恵 髙木 淳一 瀬尾 隆 島添 隆雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.11, pp.1215-1221, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6 17

Pharmacists, being compensated through the new dispensing fee, are required to educate patients on their adhesion to the use of prescribed drugs, and to inventory the levels of leftover drugs in outpatients. Recently, Fukuoka City Pharmaceutical Association started a campaign for regulating leftover drugs (Setsuyaku Bag Campaign). Thirty-one pharmacies joined the campaign. Pharmacists distributed convenience bags, called ‘SETSUYAKU-BAG.’ The patients put their leftover drugs in the bags and brought them to community pharmacies. The pharmacists inventoried the returned drugs and reported their results to the doctors. The doctors adjusted the prescriptions accordingly. We counted and analyzed old and new inventories. The number of leftover drugs was 252, for a total value was ¥839655. Cost of leftover drug prescriptions could be reduced by ¥702695, and the value of drugs thrown away was ¥94801. In total, we could reduce the amount of leftover drugs by 83.7%. The cost of leftover drug for one dose package (ODP) is higher than that for non-ODP. However, there were no significant differences in results per age, sex, number and kinds of drugs, prescription days and premium contribution rate. These results suggest that prescription regulation by inventory of leftover drugs in community pharmacies could significantly reduce overall medical expenses. Further studies are necessary in order to account for patients’ health, and to establish more efficient patient education to raise outpatients’ adherence to the new programs.
著者
小林 大高 坂巻 弘之 小松 涼 飯島 伴典 飯島 康典 大津賀 博之 斉藤 克也 関 徹也 中村 英俊 山浦 知之 横林 邦明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.14-00013, (Released:2014-04-25)
参考文献数
4
被引用文献数
2

This study aimed to determine how much time can be saved with the use of unit-of-use packaging for prescription drugs as compared with bulk packaging in community pharmacies as well as to determine the number of errors. In a simulation, mock prescriptions were dispensed either in unit-of-use packages or by transferring medication from a bulk container, and a time study was conducted to measure the time spent on dispensing and prescription auditing by pharmacists. Pharmacists' and patients' degree of satisfaction was also surveyed. The time saved with unit-of-use packaging was 66.25 seconds per prescription. The sole dispensing error that was found in the study occurred with bulk dispensing. Among both pharmacists and patients, many were of the opinion that dispensing with unit-of-use packaging was preferable to bulk dispensing. Unit-of-use packaging shortens the time that pharmacists spend on dispensing activities and increases the efficiency of their work. Unit-of-use packaging is also thought to reduce the number of counting errors.
著者
小栁 香織 窪田 敏夫 小林 大介 木原 太郎 吉田 武雄 三井所 尊正 斎藤 友亮 打越 英恵 高木 淳一 瀬尾 隆 島添 隆雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.13-00181, (Released:2013-08-23)
参考文献数
16
被引用文献数
6 17

Pharmacists, being compensated through the new dispensing fee, are required to educate patients on their adhesion to the use of prescribed drugs, and to inventory the levels of leftover drugs in outpatients. Recently, Fukuoka City Pharmaceutical Association started a campaign for regulating leftover drugs (Setsuyaku Bag Campaign). Thirty-one pharmacies joined the campaign. Pharmacists distributed convenience bags, called ‘SETSUYAKU-BAG.’ The patients put their leftover drugs in the bags and brought them to community pharmacies. The pharmacists inventoried the returned drugs and reported their results to the doctors. The doctors adjusted the prescriptions accordingly. We counted and analyzed old and new inventories. The number of leftover drugs was 252, for a total value was &yen839,655. Cost of leftover drug prescriptions could be reduced by &yen702,695, and the value of drugs thrown away was &yen94,801. In total, we could reduce the amount of leftover drugs by 83.7%. The cost of leftover drug for one dose package (ODP) is higher than that for non-ODP. However, there were no significant differences in results per age, sex, number and kinds of drugs, prescription days and premium contribution rate. These results suggest that prescription regulation by inventory of leftover drugs in community pharmacies could significantly reduce overall medical expenses. Further studies are necessary in order to account for patients' health, and to establish more efficient patient education to raise outpatients' adherence to the new programs.
著者
乾 彰夫 中村 高康 藤田 武志 横井 敏郎 新谷 周平 小林 大祐 本田 由紀 長谷川 裕 佐野 正彦 藤田 武志 横井 敏郎 藤田 英典 長谷川 裕 佐野 正彦 佐藤 一子 本田 由紀 平塚 眞樹 大串 隆吉 関口 昌秀 上間 陽子 芳澤 拓也 木戸口 正宏 杉田 真衣 樋口 明彦 新谷 周平 安宅 仁人 小林 大祐 竹石 聖子 西村 貴之 片山 悠樹 児島 功和 有海 拓巳 相良 武紀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、変容する若者の学校から仕事への移行実態を把握するため、調査開始時点で20歳の若者の18歳時点から24歳までの間の就学・就労等をめぐる状態変化と、その過程での諸経験・意識等を、同一対象者を継続的に追跡するパネル方式で調査したものである。このような調査では対象者からの毎回の回答率を維持し続けることが最も重要であるが、本研究では中間段階で予定を上回る回答率を達成できていたため、調査期間を5年間に延長する計画変更をおこない、最終年度を待たず次課題繰り上げ申請を行った。調査は次課題期間にわたって継続する予定である。収集されたデータの中間的分析はおこなっているが、本格的分析は今後の課題である。
著者
川井 謙太朗 舟崎 裕記 林 大輝 加藤 晴康 沼澤 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-43, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23
被引用文献数
5 2

〔目的〕投球障害肩症例における肩関節機能を投球側と非投球側の間で比較した.〔対象と方法〕対象は野球投手の男性44例とした.肩甲上腕関節ならびに肩甲胸郭関節に対する肩関節機能(可動域7項目,筋力13項目)を投球側と非投球側の間で比較した.〔結果〕投球側は非投球側に比べ,上腕骨頭後捻角度,補正外旋角度は有意に大きく,一方,補正内旋角度,Horizontal Flexion Test,Scapular Retraction Test,inner muscle筋力,僧帽筋下部線維筋力は,有意に低い,あるいは小さかった.〔結語〕投球障害肩症例にみられた, 投球側と非投球側間での可動域や筋力に関する肩関節機能の特徴的な相違は,これと投球動作時の肩関節痛との深い関連性を示唆する.
著者
上林 大志 森 寿仁
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.256-266, 2022 (Released:2022-11-03)
参考文献数
11

本研究では,ペップ・グアルディオラ監督が体系化した5 レーン理論に基づいたハーフスペースを利用したサッカー戦術の特徴を明らかにすることを目的とした.対象試合はイングランドプレミアリーグおよびヨーロッパチャンピオンズリーグなどの18 試合とし,ペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティFC の対戦試合11 試合およびその他のチーム同士の代表的な試合7 試合とした.そして,ハーフスペースを利用した戦術に関わると考えられる13 項目を試合映像から分析した.その結果,マンチェスター・シティFC はペナルティエリア(PA)内への侵入回数が多く,PA 内のハーフスペース(ポケット)でボールを受ける動きが多いことが明らかとなった.一方で,ポゼッションによる攻撃戦術であるため,PA 侵入前の守備選手が多いことも明らかとなった.これらのことから,ハーフスペースを利用した戦術を取ることでPA 内に多く侵入でき,シュート機会にも恵まれやすいが,守備選手が多いために難易度の高いシュート状況となり,シュートを打つ選手(フィニッシャー)のシュート能力が重要となる戦術であることが明らかとなった.
著者
林 大介 川崎 繁男
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-15, 2019 (Released:2019-02-05)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The re-entry capsule tracking system is proposed as a shared/dual-use technology with commercial products. This system has portability, and is not affected by the condition of installed equipment in the capsule. In this paper, the detection performance is described about the tracking area assumed from Hayabusa's achievement. By the experiment using the prototype radar, this system was confirmed to be able to detect more than 90% of the area.
著者
川井 謙太朗 舟崎 裕記 林 大輝 加藤 晴康 沼澤 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-17, 2016 (Released:2016-03-05)
参考文献数
23

〔目的〕投球障害肩における肩関節2nd内旋制限に対する3種類のセルフストレッチ方法の有効性を比較検討した.〔対象〕投球障害肩を有する男性の野球選手48例とした.〔方法〕APS法,CB法,IRS法における疼痛によるストレッチ不可率を比較した.次に,全てのストレッチが可能であった症例28名を3群に分け,ストレッチ前後において,後捻角の影響を除いた2nd補正内旋角度を計測し,各群間で比較した.〔結果〕ストレッチ不可率はAPS法が最も有意に低かった.2nd補正内旋角度はストレッチ前では3群間において有意差はなかったが,ストレッチ後では,APS法,CB法がIRS法に比べて有意に増大していた.〔結語〕APS法は投球障害肩に対する最も効果的なセルフストレッチ方法である可能性が示唆された.
著者
林 大輔 青木 健 柴田 瑠美子 市川 邦男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1628-1633, 2010-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
10

症例は6歳男児.現在までにアサリ以外は貝類を含む食物のアレルギーはない.2歳よりアサリ摂取後に嘔吐を繰り返しているため近医を受診したが,アサリ特異的IgEが陰性であり,精査のため当院に紹介された.アサリ特異的IgEは1.04UA/mlでスキンプリックテストは膨疹径4mmであった.生アサリによるパッチテストは陽性,リンパ球刺激試験も陽性(5305cpm,SI=1211%)であった.ゆでたアサリによる経口負荷試験では摂取2時間後に腹痛と嘔吐が出現,末梢血好中球数も負荷前の2924/μlから負荷6時間後に16082/μlまで増加した.これらの検査所見よりアサリによるFood protein enterocolitis syndrome(FPEIS)と診断した.現在まで貝類によるFPIESの報告はなく,本報告が初となる.
著者
林 大介 柴山 秀雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.333, pp.1-6, 2008-11-27
参考文献数
6

水中や地中など,電波の使用が困難な環境における無線通信の手段として,音波を用いたMIMO通信の実現に向けた研究を行っている.MIMO(Multiple Input Multiple Output)とは,複数の送受信素子を用いることによって,通信速度や信頼性の向上を実現する方式であり,近年電波を用いた無線通信の分野において盛んに研究されている.我々は音波を用いた通信に本方式を応用し,音響通信の通信速度向上を目指したいと考える.本報告では,その実現に向けた基礎的検討として,伝搬状況の異なる5つの環境においてチャネル応答を測定し,その環境においてMIMO通信を行った状態をシミュレーションにより検証した.音波を用いたMIMO通信の特徴や問題点などについて報告する.
著者
林 大樹
雑誌
人文
巻号頁・発行日
no.16, pp.342-311, 2018-03

本稿では、近世の朝廷で、天皇や上皇、女院に仕えた〈御児〉について扱う。〈御児〉についての研究は十分ではない。〈御児〉は元服前の幼い公家の子弟が御所の〈奥〉に出仕した。筆者はまず、一八世紀前半の有職故実書『光台一覧』の記述について検討した。近世初頭に、女中や院に養われていた元服前の公家の子弟は、幕府から役料を与えられ公認され、〈御児〉として把握されるようになった。次に筆者は、〈御児〉の一覧を作成した。〈御児〉は新家、外様小番に属する家から多く選ばれるようになり、出世コースからは外れていった。但し、〈御児〉は近習小番衆やその他の廷臣よりも、天皇にとって身近な存在だった。〈御児〉は天皇・関白・武家伝奏・議奏の合意(朝議)のうえで採用されたが、その人選は奥向のネットワークによっていた。This article examines "Ochigo", who served the emperors, retired emperors, and "Nyoin" in the Early Modern Imperial Court. There is insufficient research on "Ochigo", who were children of Kuge before adults goes to "Oku" of the Imperial place. The author first examined the description in Kodaiichiran which is a book of ancient practices in the first half of the 18th century. At the beginning of the early modern era, children of Kuge who were raised by maids and retired Emperors before adult were given allowance from the Tokugawa Shogunate and were officially recognized, becoming known as "Ochigo". Next, the author created a list of "Ochigo". "Ochigo" became more popular from the house belonging to shinke and tozama-koban, it went off the career course. However, "Ochigo" were more familiar to the Emperor than kinju-koban and other courtiers. "Ochigo" was adopted on "Chogi" meaning the agreement of the Emperor, Kanpaku, Buketenso and Giso, but that personnel selection was based on the network of "Oku".
著者
鎌内 宏光 佐藤 修一 林 大輔 岡部 芳彦 勝山 智憲 福島 慶太郎 吉岡 歩 佐藤 拓哉 徳地 直子 仲岡 雅裕
出版者
京都大学フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門
雑誌
森林研究 = Forest research, Kyoto (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.78, pp.81-87, 2012-09

高緯度域では遡河性魚類によって河川に輸送される海洋由来栄養塩 (Marine derived nutrient : MDN)が河川内および河畔域の生物群集に影響を与えているとされる. 本研究では北海道東部の森林河川上流部において初冬にシロザケ死骸 (ホッチャレ)を約800kg 散布し, ホッチャレの消費者を明らかにした. 散布した死骸は10日間でほとんどすべて消費された. 自動撮影された画像から, 消費者はカラス類が優占しており, トビおよびオオワシを含めて鳥類が96% を占めた. カラス類は近隣の牧場で越冬している個体が移動したと思われた. 自動撮影された画像では, カラス類の摂食は少なくともホッチャレの一部が水面上に露出した場合に限られていたのに対して, オオワシは水面下のホッチャレも摂食した. 集水域の周囲の土地利用や河川の水深および河道形状がホッチャレの消費者組成に影響することが示唆された. 鳥類は, 秋にMDN を輸送するクマとは行動範囲や摂食パターンが異なるため, 初冬にシロザケが遡上する河川では, MDNの散布距離や散布量が秋とは異なることが考えられる.Marine derived nutrient (MDN), which is carried to stream by anadromous animals, affects stream and riparian ecosystems at high latitudes. To clarify the consumer of salmon carcasses during early winter of Eastern Hokkaido, we carried out a field experiment on spreading out carcasses (ca. 800 kg) at a woodland stream. Almost all of carcasses were consumed during 10 days. Crows was dominant, and birds abundance including black kite and Steller's sea eagle occupied 96 % of photo-trapping data. Crows were thought as immigrant from ranches surrounding experimental watershed. From the photo-trapping data, although crows fed only if, at least, a part of carcass was exposed over the water surface, Steller's sea eagle fed carcass even if it submerged. It suggests that land use of surrounding the watershed, channel morphology or depth of stream would affect the composition of carcasses consumer. Because of unique behavior (e.g. migration distance, feeding pattern) by bird, spreading distance and amount of MDN would show different pattern against autumn in streams that salmon runs in early winter.
著者
野中 直之 髙田 智仁 西片 由貴 大澤 一輝 栗原 早紀 小林 大泰 染谷 慶子 李 輝
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-26, 2015-03-31

手鑑とは、古人の筆跡(手)である古筆切や短冊、色紙等を鑑賞や手習いの手本(鑑)とするために貼り込んだ帖のことを指す。本手鑑は2004年度に大東文化大学図書館に受け入れられたものである。縦38.8センチ、横25.6センチである本手鑑は、表面66葉・裏面66葉の計134葉を収め、聖武天皇、光明皇后から始まる基本的な手鑑行列の配列に従っているものの、貼り替えの跡が多数見られ、また手鑑行列も乱れている点から、製作当初とは所収内容が変更されていると思われる。しかしながら、伝藤原有家筆「墨流切(多田切)」、伝西行筆「曽丹集切」、伝藤原俊成筆「顕広切」などの固有古筆名を有した名物切も所収する。本解題は表面2回・裏面2回の計4回に分けて掲載を予定し、2回目に当たる本年度は表面のうち、後半の「大覚寺殿義俊」から「徹書記正徹」までの29葉を扱うものである。
著者
小林 大祐
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.19-38, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

階層帰属意識の分布は, 自記式に比べ他記式の調査でより高くなることが報告されているが, その要因については, これまで厳密に検証されてきたわけではなかった. この理由としては, モード間の傾向差のなかに混在するさまざまな要因を弁別できるようなデータセットがなかったことが大きい. 本稿は, 個別面接法と郵送法という異なる調査モードで実施されているが, 同じ階層帰属意識項目をもち, 同一年に実施された2つの調査データを比較することで, 調査モードが階層帰属意識にどのような影響を与えているか検証するものである. 分析の結果, 回答者の属性をコントロールしても, 個別面接法において階層帰属意識を高く回答する傾向が見られ, 調査モードの違いが, 何らかの測定誤差を生み出していることが示唆された. 続いて, 確認された傾向差が, 調査員の存在に由来するものかどうか, そうであれば階層帰属意識を答える際に働くバイアスとはどのようなものなのかを検討した. その結果, 男性サンプルでは中位に, 女性サンプルではより高く偏る傾向が観察された. これらの結果は, どのような階層的位置が「社会的に望ましい」, もしくは調査員に対して抵抗なく回答できるのかという, 価値規範の側面が, 所属階層を測定する際に無視できないことを示すものである.
著者
大嶋 繁 小田 藍 根本 英一 土橋 朗 小林 大介 齋藤 侑也 白幡 晶
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.66-75, 2009

<b>Objective </b>: There are two types of studies on the relationship between adverse events and genetic background and the relationship between constitution and genetic background.  To investigate the relationship between adverse events and constitution retrospectively, we first reviewed the appearance of the constitution responsible for the adverse events in the relevant sources of information.<br><b>Methods </b>: Fifty two pharmaceutical interview sheets, 150 case reports and two manuals; "jyudaina fukusayou kaihi notameno fukuyaku sidou jyouhousyu", "jyutoku fukusayou sikanbetu manual" were selected for review.<br><b>Results </b>: Fourteen items about the constitution were found in the pharmaceutical interview sheets.  No items about the constitution were found in the case reports and manuals.<br><b>Conclusion </b>: Rules for the preparation of pharmaceutical interview sheets and case reports to use the constitution information is necessary for retrospective analysis of this issue.