著者
吉村 仁志 大場 誠悟 松田 慎平 小林 淳一 石丸 京子 佐野 和生
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.186-191, 2012 (Released:2013-01-21)
参考文献数
14

線維筋痛症は,全身の慢性疼痛を主徴とする原因不明の疾患で,疲労や筋肉痛などさまざまな症状のため,生活の質(QOL)が著明に損なわれる。口腔顔面領域では,顎関節症,口腔乾燥症,味覚障害などを生じるとされる。今回われわれは開口障害などの症状を呈した患者で,線維筋痛症の診断にいたり,薬物療法にて症状改善を得た1例を経験したので報告する。患者は62歳女性。家族関係に強いストレスを感じていたが,5年前に夫に殴打され左顔面のしびれが出現。3年前より開口障害,左眼瞼・口唇の運動障害を自覚。その後,口腔乾燥や味覚障害も出現したため当科受診となった。全身所見として倦怠感と食欲不振を認めた。局所所見として両側の側頭筋・顎二腹筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋・内側翼突筋に圧痛を認め,また開口量31 mmと開口障害を認めた。全身疾患が疑われたため,感染症・膠原病内科を対診した。長期の慢性疼痛と全身18か所中17か所での圧痛から,米国リウマチ学会の診断基準に基づき,線維筋痛症と診断された。全身の慢性疼痛はPregabalin(リリカ®)の内服により半減した。咀嚼筋や頸部の筋圧痛部位も減少し,開口量は42 mmまで増加した。治療開始後1年経過し症状は安定している。本疾患は日常診療でよく遭遇する口腔症状を合併するが,その認知度は低い。本疾患を念頭におき,必要であればすみやかに専門医との連携を取り,症状の改善を目指すことが重要である。
著者
竹中 賢治 小林 淳 金澤 綾子 足立 佐知 小田 奨 佐々木 眞悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.41-46, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
3

特許情報の分析結果から、商品開発戦略や知財戦略立案に役立つ情報を抽出する際に、「SWOT分析」は、複雑な作業を必要とせず実用性は高い。一方、これら戦略立案事例は、企業内で閉じられて紹介される機会は少なく、筆者らは、具体的な題材を扱い、SWOT分析の実践事例を重ね、その実用性を確認してきた。 そして、近年着目される技術の中から機能性塗料の分野で遮熱塗料について焦点をあて、遮熱塗料に関連して出願された特許情報をもとにSWOT分析を行い、商品開発戦略の創出作業を試みた。戦略創出の検証作業は「塗料」業界大手事業者のK社にあてはめて行った。 特許情報を分析し、「SWOT」情報を得ようとする際、「S(強み)」情報の抽出過程において難しさがあることがわかり、この点の打開策を思考し考察した。強み把握に対する提言をまとめるに至ったので報告する。
著者
田辺 茂 小林 淳男
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.1024-1031, 1997-06-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
10

We have been developing thyristor valves for high-voltage dc transmission systems for more than 20 years. During this period, the size, power loss and reliability are dramatically improved and one of the technical advancements which support the improvements is to increase the voltage and current rating of thyristors. However when thyristor voltage rating becomes higher than 6kV, increasing the voltage rating does not lead size and power loss reduction of the valve because of turn-off characteristic deteriorations. This paper describes the method which can optimize the thyristor characteristics in such a way that the size and power loss of valves are minimized. Two different approaches for HVDC and back-to-back systems are presented.
著者
片川 久美子 小林 淳子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.5-12, 2005-09-15
被引用文献数
1

本研究の目的は,Donabedianによる質の評価とサービス・マネジメント論の枠組みに基づいて乳幼児健診に対する母親の満足感に関連する要因を検討することである.対象は,Y県内7市で乳幼児健診を利用した母親1,812名で,質問紙調査を実施した.調査項目は,基本属性,健診結果の評価(総合的な満足感,健診への期待に対する満足感と期待の差(S-E),健診への推薦度),健診過程の評価(肯定的な関わり,否定的な関わり),健診構造の評価(全体的な会場の環境,診察・相談の環境,健診の設定)である.「健診結果の評価」を従属変数としてパス解析を行った結果,母親の「総合的な満足感」が高まる要因は,母親の体調が良いこと,「健診結果の評価」に含まれる「S-E」得点が高いこと,「健診構造の評価」に含まれる「健診の設定」,「診察・相談の環境」の評価が良いこと,「健診過程の評価」に含まれる「肯定的な関わり」があること,「否定的な関わり」がないことであった.「S-E」得点が高まる要因は,第2子以降の健診であることや「全体的な会場の環境」の評価が良いこと,「否定的な関わり」がないことであった.「健診への推薦度」に影響する要因は,「総合的な満足感」であり,「S-E」は影響していなかった.「総合的な満足感」を軸として,母親それぞれの健診への目的が達成されたかどうかということや,健診構造,健診過程の側面から評価していくことが,健診利用後の満足感を評価する指標となる可能性が示唆された.
著者
小林 淳
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-66, 2000-02-20

バキュロウイルスは, 標的害虫を効果的かつ選択的に防除できるので, 化学殺虫剤の魅力的な代替物である.しかしながら, 遅効性などの制限要因により, バキュロウイルス殺虫剤の使用はあまり普及しなかった.即効性改善のための遺伝子操作法がいくつか考案された.遺伝子操作されたバキュロウイルス殺虫剤は, エクダイステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(egt)を欠失させたウイルスと外来遺伝子(昆虫ホルモン遺伝子, ホルモン関連遺伝子, 昆虫特異的毒素遺伝子など)を挿入したウイルスの2種類に分類される.これまで試された中で, 昆虫特異的毒素を発現する即効性バキュロウイルスが化学殺虫剤と対抗しうる効果を示した.昆虫特異的サソリ毒(AaITやLqhIT2)を発現する組換えAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)の欧米における野外試験は, 野外での殺虫即効性と作物の食害の減少を立証した.現在までに蓄積したデータは, 昆虫特異的サソリ毒の挿入がバキュロウイルスの安全性を損なわないことを示している.組換えバキュロウイルス殺虫剤の実用化にとって重要な問題点についても考察した.
著者
中野 俊 高田 亮 石塚 吉浩 鈴木 雄介 千葉 達朗 荒井 健一 小林 淳 田島 靖久
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11-12, pp.387-407, 2007-03-31 (Released:2014-06-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

富士火山噴出物の噴火年代決定を目的として産総研が実施したトレンチ調査のうち,北東山麓で行ったトレンチ調査結果及びそれに関連した露頭観察の結果をまとめ,そこから得られた放射性炭素年代測定値を合わせて報告する.トレンチ調査の対象は,新富士旧期の大臼,小臼などの火砕丘群及び新富士新期の檜丸尾,鷹丸尾,中ノ茶屋,雁ノ穴丸尾,土丸尾などの溶岩流群である.
著者
浜田 明美 林 淳一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1073-1081, 1989

来聘と参向という幕府の公式行事の饗応に用いられた膳組について, 膳組の格式と客の身分・役職との関係を中心に検討し, 格式を重視した江戸幕府の饗応の形態を構成していく過程と膳組の格式を区別している要素を明らかにすることができた.<BR>1) 江戸幕府の身分と格式を重視し, 上下の関係を規定した封建制は, 料理面においては饗応の膳組の格式の細かい区別という形であらわれていた。<BR>2) 膳組の格式を区別する要素として, 膳と菜の数, それに続く膳と菜の数, 材料の差, 菓子の種類と出し方, 膳と器の種類, 膳と器の組み方の六つの要素があることを明らかにした.<BR>3) 膳組の格式は, 饗応の種類と客の身分・役職で決定される.この二つに六つの要素を対応させて客にふさわしい膳組を構成していく過程を明らかにすることができた.
著者
宮崎 晃亘 小林 淳一 山本 崇 道振 義貴 佐々木 敬則 仲盛 健治 廣橋 良彦 鳥越 俊彦 佐藤 昇志 平塚 博義
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.117-122, 2011-12-15 (Released:2012-01-24)
参考文献数
7

Survivinはinhibitor of apoptosis protein(IAP)ファミリーに属する分子で,各種悪性腫瘍において強い発現を認めるが,成人正常臓器ではほとんど発現を認めない。われわれはサバイビンが理想的がん抗原であり,survivin由来のHLA-A24拘束性survivin-2B80-88(AYACNTSTL)がcytotoxic T lymphocyte(CTL)応答を誘導することを以前に報告した。この研究結果をもとに,2003年9月に進行・再発口腔がん患者に対してsurvivin-2Bペプチドを用いた臨床試験を開始し,安全性と抗腫瘍効果を評価した。survivin-2Bペプチドは14日間隔で計6回接種した。その結果,口腔がん患者に対するペプチド単剤投与の安全性が確認されるとともに,その有効性が示唆された。さらに,2006年9月にsurvivin-2Bペプチドに不完全フロイントアジュバント(IFA)とinterferon(IFN)-αを併用した臨床試験を開始した。survivin-2BペプチドとIFAの混合液を14日間隔で計4回接種し,IFN-αは週2回あるいは1回皮下投与した。現在のところ,重篤な有害事象は出現していない。IFAとIFN-αを併用した臨床試験では,単剤投与と比較してペプチド特異的CTLを効率良く誘導し,安全性も容認されることが示唆された。本療法は口腔がん患者に対する新たな治療法の一つとして有用と考えられた。
著者
東 政明 小林 淳 石田 裕幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞内外の水輸送を司る分子が,細胞膜にあるアクアポリン(水チャネル)である。生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能で,昆虫は小さな体でありながら,そのごく少量の体内水分をアクアポリンを介して効率よく循環させ,からだの乾き(渇き)を防いでいる。水を唯一の輸送溶質とするアクアポリンの基本的な性質に加え,細胞膜に対して通過性が高いとされる非電荷溶質(グリセロール・尿素等)をも通過可能な多機能タイプ(アクアグリセロポリン)の同定と特徴付けを,カイコおよび他昆虫を用いて実施した。さらなる分子機能を調査するべく,単純な小胞系やリポソーム系の確立をめざした。
著者
杉浦 徹 成味 純 宮澤 総介 宮田 晴夫 林 淳一郎 香坂 茂美 滝浪 實 原田 幸雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.155-160, 1997-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

症例は53歳の男性で,農作業中に足底に釘を刺し,抜去しないで放置した.約1週間後に39度台に発熱したが,右肩関節炎と診断されて整形外科にて洗浄術を施行,排出された膿からは黄色ブドウ球菌が検出された.胸部X線像で心胸郭比の拡大,心電図で広範囲の誘導におけるST上昇,心エコー図で左室後壁側の心嚢液貯留が認められ,入院となった.発熱後の6日頃より収縮期雑音が聴取され,胸部X線像で肺うっ血が生じ,心エコー図で僧帽弁に逸脱と疣贅と思われる異常エコーが認められた.血液培養では黄色ブドウ球菌が検出され,感染性心内膜炎と診断された.緊急手術では,化膿性心膜炎と膿性心膜液貯留,さらには前後尖上の疣贅を伴う僧帽弁閉鎖不全が認められ,弁置換術が施行された.心嚢液からは黄色ブドウ球菌が検出され,抗生剤による治療を加えたが,術後2週間で多臓器不全(MOF)で死亡した.本例は日常的な外傷を放置したことによって化膿性肩鎖関節炎および化膿性心膜炎をきたし,さらには抗生剤治療法の発達した最近ではまれな感染性心内膜炎を併発した症例であり,報告する.
著者
藤川 遼 小澤 広輝 小林 淳
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.629-634, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
23

完全内臓逆位に合併した肺癌に対してfissureless lobectomyを施行した1例を報告する.症例は完全内臓逆位を指摘されている67歳女性.血液透析のシャント瘤増大を主訴に受診し,CTで偶発的に左上葉結節影を指摘された.気管支鏡検査を含む全身評価でcT1aN0M0,cStageIA1,腺癌と診断し,手術を行った.小開胸によるhybrid VATSアプローチで手術を開始,左肺は3葉に分かれていたが,分葉不良でありfissureless lobectomyを行うこととした.鏡面像であったが術前の3D-CTで解剖を把握していたため,通常の右上葉切除術と同様の手順で左上葉のfissureless lobectomyを完遂した.完全内臓逆位患者においても,術前に3D-CT等で綿密な計画を立てることでfissureless lobectomyは安全に施行可能であった.
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。
著者
藏前 哲郎 石川 真悟 林 淳 津曲 圭太 乙丸 孝之介 帆保 誠二
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.31-36, 2020-01-20 (Released:2020-02-20)
参考文献数
15

本研究では,臨床的に重症慢性肺炎と診断された黒毛和種牛50頭から鼻咽頭スワブ(Swab)及び気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し,細菌分離とともに,その薬剤感受性を調査した.Swab及びBALFからはおもにMycoplasma bovis 及びPasteurella multocida が分離されたが,同一牛において両検体から同一細菌種が分離された割合は比較的低かった.また,BALFから分離されたM. bovis 及びP. multocida は,おもにフルオロキノロン系抗菌薬に感受性であったが,Swabから分離された同2菌種の同系抗菌薬に対する薬剤感受性は低かった.以上より,重症慢性肺炎罹患牛の鼻咽頭領域及び気管支肺胞領域からは,おもにM. bovis 及びP. multocida が分離されるが,同一供試牛から分離された同一菌種の細菌であっても,薬剤感受性が異なる可能性があることから,重症慢性肺炎罹患牛においてSwabによる肺炎原因菌の推定には慎重を要すると思われた.