著者
小林 真生子 齊藤 毅 沖津 進
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.632-636, 2011-11-15 (Released:2012-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

埼玉県の松山層群に属する中新世の楊井層は大型植物化石を多く産出する.楊井層の年代を明らかにすることは,同時代の植物化石フロラを比較し,日本の中新世の古植生を復元するうえで重要である.そこで,楊井層の2つの凝灰岩の中に含まれるジルコンでフィッショントラック年代を測定した.その結果,楊井層の最下部凝灰岩(Y-1凝灰岩)のフィッショントラック年代は9.1±0.7 Ma,最上部凝灰岩(Y-9凝灰岩)のフィッショントラック年代は9.6±1.3 Maであった.これらの結果から,楊井層は後期中新世の地層であると考えられる.楊井層の植物化石フロラは群馬県の上部板鼻層の植物化石フロラに年代が近いと考えられる.両植物化石フロラを比較すると,楊井層には山地に生育する植物種の化石は含まれていなかったが,上部板鼻層の植物化石群には山地の植生を構成する種が含まれていた.楊井層の植物化石は板鼻層よりも山地から遠い場所で堆積したと考えられる.
著者
深谷 拓吾 小野 進 水口 実 中島 青哉 林 真彩子 安藤 広志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.1-8, 2011-01-14

電化製品等のマニュアル作成業務において,文章やイラストの校正は必須の作業フローである.従来,校正は紙上で行われていたが,省資源化の観点から,電子メディア上へと移行しつつある.本研究はマニュアル作成業務における電子校正のパファーマンスについて実証的に検証する.マニュアル作成業務従事者 15 名を対象に,紙上と液晶ディスプレイ上で英語文章を他言語文章と照応する校正実験を行った.校正作業ログから,拡大操作など電子校正に特有の機能が校正ミスを誘うことが明らかになった.結果をもとに電子校正での校正率向上へ向け提案を行う.This study examined the performance of proofreading manual presented on a LCD, relative to performance with print on paper, in order to improve electronic proofreading. fifteen professional proofreaders proofread four manuals printed in Spanish, French, Portuguese and Italian, and their performances and errors were investigated in both paper condition and LCD condition. It was found that the zooming action sometimes cause a proofreader's error when the text was presented on the LCD. The implications of this for improving electronic proofreading is discussed.
著者
川崎 賢一 後藤 和子 河島 伸子 佐々木 雅幸 小林 真理 KWOK KianーWo CRANE Diana MARTORELLA R KIAMーWOON Kw CRANE O
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、3年間にわたる共同研究に最終年度にあたり、まとめる方向で研究を行った。初年度は、東京で、まず、芸術文化政策の比較の枠組みについて話し合い、同時に、東京を中心とする日本の文化政策を理解することにつとめた。また、この年度末には、シンガポールで会議を開催し、現地の文化政策関連の人々とも議論を行った。シンガポールは、日本とは異なるアジアの国々のひとつであり、国家を中心として文化政策をここ10年間で積極的に推進してきた社会であり、その歴史、やり方の有効性などをメンバーと共に議論をし、理解を深めた。いづれにしろ、欧米の芸術文化政策を論じる前に、アジアを回ったことは、今までの欧米中心の研究スタイルとは異なるやり方で、メンバーにも好評で、一定の成果をあげることが出来た。2年目は、イギリスのバーミンガムで会議を開き、イギリスの最近の動向について議論をした。その結果として、ロンドンのみならず、多くの都市において、文化を取り入れた都市計画が盛んになり、地方分権や民主化が進み、階級文化の境界がはっきりしなくなるなどの変化が見て取れるようになった。3年目は、仕上げとして、ニューヨークで会議を開催し、アメリカ、特に、ニューヨークの文化政策について学び、また議論することにより、これからの展望をはっきりと描くことが可能になった。それは芸術文化的活動と経済との連携がより深くなるということ、もう一つは、文化政策における、非営利的組織(いわゆるNPO)の重要度が高まり、プライバタイゼーションが進行するということである。しかし、同時に、どの国でも同じことが起こるわけではない。本研究では、さらに、来年度、ファイナルシンポジュウムを東京で開催し、「グローバル化する文化政策」というタイトルで、共同研究の最後を締めくくりたいと考えている。
著者
小林 真
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚障害者ボウリングを楽しむ当事者らのニーズをもとに、「投球フォーム検出と提示」「残ピン状況の読み上げ」「ボール軌跡の読み上げ」を目的とするシステム開発と検証を行った。フォーム検出に関しては、腕に装着した加速度センサから投球タイミングの検出が可能なことが分かった。また残ピン読み上げに関しては画像処理を利用してほぼ完璧な認識が可能であり、実際の練習に役立つシステムを構築できた。ボール軌跡については、深度センサで実現可能なことが分かった。さらにスポーツにおける状況の音声化は,プレーヤー自身だけではなく,応援や観戦をしている視覚障害者にとって重要なエンターテインメント要素になることが分かった.
著者
中林 真幸
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-29, 2000-06-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

Until the beginning of the 1880s, most Japanese silk exports were to France. The French silk market, however, shrank after the French Panic of 1882, while the U.S. market expanded during the 1880s. In the United States, power looms were widely used in the silk industry, so the demand for even-quality silk was rising. Japanese manufacturers had to produce uniform filatures (machine-reeled silk) for export to the United States. Kaimeisha, which was the leading association of silk manufacturers in Suwa district, Nagano prefecture, had been producing silk for the French market and had relied on wholesale merchants in Yokohama for quality control. After the French Panic, Kaimeisha introduced the production system which offered incentives for the re-reeling and inspection of silk, thus succeeding in the production of uniform filatures, which it labeled with its own Kaimeisha trademark. In order to expand business, Kaimeisha obtained financing from wholesale merchants and local banks, which were relatively modern financial institutions.Another silk manufacturers association, Kairyosha, followed suit and introduced a production system similar to Kaimeisha's. This second organization, however, was financed by traditional financial institutions and was managed by a rural moneylender. The moneylender's participation in management was detrimental to meeting the rising level of quality control required in the U.S. market. The moneylender demanded an increase in deliveries of silk by hiring new association members as he profited by lending them money to purchase cocoons and receiving discounts on members' deliveries. The situation was particularly disfavorable to quality control because membership to the association was not steady.
著者
藤林 真理子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.138-147, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
23

Recent studies have elucidated the pathophysiology of the common placental disorders. It is believed that gestational hypertension, also known as preeclampsia, is a two-stage disease. Inadequate migration of the trophoblasts induces defective remodeling of the uterine spiral arteries. The poorly perfused and re-perfused placenta (Stage 1) produces antiangiogenic factors that cause maternal endothelial dysfunction (Stage 2). It has been hypothesized that a luck of fetomaternal immune tolerance leads to insufficient trophoblastic differentiation.Another placental disorder is chronic villitis or villitis of unknown etiology. The diagnosis of severe chronic villitis is important to the clinician because it causes intrauterine growth restriction, fetal death, and neonatal neurological impairment. These lesions could be of immune origin. It has been reported that the pathogenesis of chronic placentitis is the maternal anti-fetal cellular and antibody-mediated rejection.Disorders of gestational immune tolerance underlie these two placental diorders.
著者
大林 真也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-11, 2015 (Released:2016-07-10)
参考文献数
22

受賞論文では,成員の入れ替えのある流動的な集団において,どのようなメカニズムで助け合いが維持されるのか,というテーマを扱った.具体的には,コミュニティ・ユニオン(個人加盟型労働組合)で行われている助け合いを対象として,このテーマに取り組んだ.方法は経験的調査と数理的研究を組み合わせた分析的物語(analytic narrative)と呼ばれる方法を用いた.まず聞き取りと観察に基づいた経験的調査を行い,次に数理モデルを用いて分析を行い,対象となる助け合いのメカニズムに言及した.受賞論文の意義は,(1)現代的な課題である流動的な社会関係を対象として,協力が達成されるメカニズムに言及したこと,および(2)経験的調査と数理的分析を組合せることにより,社会現象に即した数理モデルを作成し,具体的な社会現象の説明を行ったことにあると考えられる.本稿では,後者の方法論に関して,その重要性を論じ,数理社会学および社会学全体に対して持つ意義を整理する.
著者
升屋 勇人 安藤 裕萌 小林 真生子 河内 文彦 岩澤 勝巳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.866, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

イチョウ(Gingko biloba)は中国原産の裸子植物イチョウ科イチョウ属の落葉高木で、古くから種子食用に栽培されている他、緑化木として公園や街路樹に多く植栽されている。最近、千葉県、愛知県で相次いで原因不明のイチョウの衰退、枯死が確認された。主な症状は、開葉後の葉先の褐変、萎れ、早期落葉により、最終的には枯死に至る。被害は複数本のまとまりで発生しており、隣接木へ被害が移行しているようにみえる事例も見られたことから、葉の感染症と土壌病害の両方の可能性が考えられた。そこで、葉、根圏双方での病原体の探索を行ったところ、葉からはGonatobotryumなどの寄生菌が検出されたが、木全体を枯死させるものとは考えられなかった。土壌釣菌実験を行ったところ、愛知県では1種類。千葉県では2種類のPhytophthora属菌が検出された。形態、およびDNA解析の結果、両県で共通して検出されたのはP. citrophthoraもしくはその近縁種と考えられた。P. cf citrophthoraを用いた土壌混和による接種試験で、イチョウの1年生実生は2か月で萎れ、枯死に至った。成木への影響を明らかにする必要はあるが、イチョウの枯死に本種が関与している可能性があると考えられた。
著者
林 真一郎 和田 圭二
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.136, no.10, pp.791-797, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3 2

This paper discusses the influences of common source inductance in power converter circuits. Common source inductance is the source-side inductance inside a power module, and it shares common circuit parameters with both the gate drive and power circuit. Therefore, common source inductance will influence the switching characteristics of the module. No paper has yet addressed the relationship between common source inductance and switching characteristics such as surge voltage and switching loss. In order to improve the switching characteristics during turn-off operations, this paper presents a design procedure with respect to common source inductance. In addition, experimental results rated at 500V, 40A are shown.
著者
小玉 幸助 大竹 伸治 森谷 就慶 若林 真衣子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-8, 2018-03-31

2017年度に内閣府が公表した『平成29年版子供・若者白書』によると、不登校児童・生徒数は、小中学生で12万5,991人、高校生は₄万9,563人であった。小中学生の不登校は増加傾向にある。不登校児童・生徒の解消には、学校と関係機関との連携が必要不可欠な状況であり、この役割を担うのがスクールソーシャルワーカー(以下、schoolsocial worker:SSW)である。SSWは小中学校および高等学校で導入されており、効果検証も行われてきている。しかしながら、スクールソーシャルワーク活用事業に関しては経済分析が行われておらず、経済効果が明らかにされていない。本研究では不登校児童・生徒解消数を公表する北海道、山形県、東京都、長野県、鳥取県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県(以下、₁都₁道₇県)の不登校児童・生徒を対象にSSWにおける経済効果を算出することを目的に、所得を中心に経済学的視点からシミュレーション分析を試みた。
著者
若林 真美 高橋 麻奈 磯 博康
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.51-68, 2022 (Released:2022-06-16)
参考文献数
51

2020年、世界的な新型コロナウイルス感染拡大に対して、異例のスピードで「新型コロナウイルス感染症のワクチン(以下、新型コロナワクチン)」の開発が進んだ。そして、2021年、高所得国を中心に、高いワクチン接種率を達成した。その一方で、低/中所得国におけるワクチン接種率は、2022年1月時点でも低く、世界のワクチン格差が浮き彫りになっている。  新型コロナワクチンを世界全体に公平に供給する国際的な枠組みであるCOVAXファシリティに関して、本稿ではそのワクチン供給の仕組みを説明するとともに、①COVAXファシリティを通じた供給とワクチン寄付・供与をめぐる課題、②太平洋島嶼国を事例としたワクチン供給、③太平洋島嶼国の脆弱性に焦点を当て、ドナー国からのワクチン支援のあり方に関して論じる。  COVAXファシリティという枠組みによって、2021年2月に低/中所得国でのワクチン供給が開始され、また高所得国が買い占めたワクチンの寄付が実現できた。しかしながら、ワクチン供給の「公平性」は実現できたとは言い難い状況となっている。  太平洋島嶼国14か国の間でもワクチン格差が存在する。太平洋島嶼国は、国土の拡散性・狭隘性・離散性および国際市場からの遠隔性といった共通の課題を抱える。ワクチン接種率が高い国では、2国間援助やワクチン寄付等により、必要十分なワクチンが供給され、ほぼ対象年齢全員にワクチン接種が完了している、もしくは2022年内に完了予定である。しかしながら、キリバス、ソロモン諸島、バヌアツといったワクチン供給が十分であっても、効果的にワクチン接種に結びついていない国では、ワクチン損失が多く起こっている可能性がある。さらに、パプアニューギニアのように、基本的な保健医療水準が低い国では、健康危機における短期的に大規模な保健医療支援が行われたとしても、ワクチン接種向上に結びつかない可能性もある。  新型コロナウイルス感染症が流行して、2年以上が経過しようとしている。今後、ワクチン接種の向上を目指すには、供給支援から、ワクチン接種体制や基本的な保健医療サービス支援等も含めた中長期的な支援にシフトしていく必要がある。
著者
川久保 槙人 菊地 昌弥 北林 真帆 久野 竜之介 松山 玲美
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 = Journal of rural community studies (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.130, pp.25-37, 2020-03

本研究は,農林水産物・食品の輸出において特に苦戦している重点品目の「コメ・コメ加工品」のうち,主要品目となっている日本酒を対象に,第2位の輸出先国・地域である韓国向けの輸出拡大に寄与する清酒製造企業の企業行動を初めて具体的に解明した。課題の解明にあたり,本研究では市場構造と企業行動の枠組みからケーススタディを行なった。統計資料の分析の結果,対象とした韓国市場では低価格戦略が機能する構造にあった。ゆえに,本稿では規模の経済性の観点に主に焦点を当て,企業行動に関する調査および考察を行なった。その結果,規模の不経済を回避するための方策と原料費を低位に安定させるための企業行動(方策)を講じており,これらは低価格化や値下げ等の低価格戦略を成立させるための要素となっていた。なお,本研究は国・地域別の輸出戦略を検討する際に不可欠な市場構造の分析に関する新たな視座を提示した点にも意義を有している。
著者
角野 浩史 ウォリス サイモン 纐纈 佑衣 遠藤 俊祐 水上 知行 吉田 健太 小林 真大 平島 崇男 バージェス レイ バレンティン クリス
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>四国中央部・三波川変成帯に産する変泥質岩、エクロジャイト、蛇紋岩、かんらん岩のハロゲン・希ガス組成は一様に、深海底堆積物中の間隙水と非常によく似た組成を示す。同様の組成は島弧火山岩中のマントルかんらん岩捕獲岩や深海底蛇紋岩でも見られることから、沈み込み前に屈曲したプレートの断層沿いにプレート深部に侵入した間隙水がスラブマントルを蛇紋岩化する際に、ハロゲンと希ガスが組成を保ったまま蛇紋岩に捕獲されて沈み込み、水とともにウェッジマントルへと放出されている過程が示唆される。</p>