著者
小林 浩 佐倉 東武 水谷 栄彦
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.p47-52, 1983-01

婦人科領域悪性腫瘍における血清フェリチン測定の診断的意義を検討する目的で,血清フュリチン濃度,正常組織および癌組織,さらに異所性絨毛癌培養細胞(SCH)内フェリチン濃度を比較検討し,以下の結果を得た. 1)血清フェリチン値は,成人男性120.4±80.3ng/mlに対し,成人女性70.3±29.8ng/mlと有意差を認めた(p<0.01). 2)良性疾患では,鉄欠乏性貧血14.3±2.8ng/ml,子宮筋腫16.0±3.8ng/m1と有意に低値を示し(p<0.01),急性肝炎280.O±25.3ng/mlは有意に高値を示した(p<0.01). 3)悪性腫瘍では,卵巣腺癌335.3±328.1ng/ml,胃癌原発Krukenberg腫瘍839.1±358.2ng/ml,子宮頚部扁平上皮癌725.4±310.4ng/ml,急性骨髄性白血病1090.0±485,1ng/mlおよび原発性肝癌416.2±93.3ng/mlにおいて有意に高値を示した(p<0.01). 4)同時に測定した腫瘍マーカー,α-fetoprotein(AFP),carcinoembryonic antigen(CEA)およびplacental-leucine aminopeptidase(P-LAP)との相関係数はそれぞれ,0.213,0.465および0.263であり,相関関係は認められなかった. 5)正常ヒト成人におけるフェリチンの臓器分布に関しては,脾および腎臓に高濃度含まれ,脳・膵や肝臓など多数の臓器にほぼ均等な濃度で存在し,最も低い臓器は胎盤と心臓であった. 6)7ヵ月胎児各臓器フェリチン濃度は,腎・肺や腸に高く,心臓・胃に低いが,すべてその濃度は胎盤の1/2以下の低濃度であった. 7)卵巣癌組織(原発性,転移性)フェリチン濃度は,正常卵巣組織の約1/3の濃度を示し,また培養細胞SCHではさらにその濃度は低く,癌組織フェリチン濃度の1/3~1/4の値を示した.卵巣癌組織と胎盤組織のフェリチン濃度はほぼ一致した.
著者
岡田 和悟 小林 祥泰 青木 耕 須山 信夫 山口 修平
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.318-323, 1998-06-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
25
被引用文献数
41 62

脳卒中患者135名を対象として,意欲低下の評価をApathy Scale(Starkstein)邦訳版である「やる気スコア」を用いて行い,その信頼性,妥当性について検討し,客観的評価法と比較検討した.スコアの信頼性は,ρ=0.963,p<0.0001(n=20)と良好であり,問診方式と自己記入式との相関も良好であった.意欲低下の有無の判定とスコアの得点の検討から,カットオフ値を16点とした場合,最も良好な感度(81.3%)および特異度(85.3%)が得られた.客観的評価法(SKETCH)と比較して,スコアの識別能は,意欲低下,感情障害とも80.0%程度を示し,障害程度に比例して有意に高値であった.結語:「やる気スコア」による意欲低下の評価は,臨床評価として使用しうると考えられた.また軽度以上の障害を示す例において有用であると考えられた.
著者
竹島 伸生 小林 章雄 田中 喜代次 新畑 茂充 渡辺 丈真 鷲見 勝博 鈴木 雅裕 小村 堯 宮原 満男 上田 一博 加藤 孝之
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.197-207, 1989-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

本研究は, 中高年ランナーに対して自転車エルゴメーター作業を負荷することにより, LTおよびall-out時でのVo2, HR, SBP, DBPを測定し, これらの加齢変化やトレーニング内容などとの関係について検討した.その結果は, 次のように要約できる.1.身長, 体重, %fat, 体格指数は, 年代間で有意な差は認められず, すべての年代のランナーは類似の痩身体型であった.週当りの走行距離時間, 頻度などは個人差が大きいが, 平均値でみると年代間に有意な差は認められなかった.ランナーとしての経験年数も年代間に有意な差は認めちれなかった.しかし, 加齢に伴い走パフォーマンスは著明に低下した.2.年齢とVo2@LTとの間には有意な相関 (r=-0.686) がみられた.しかし, %Vo2max@LTは, 各年代でほぼ同値であり, 年齢との間に一定の関係は認められなかった.3.年齢とHR@LTとの間には有意な相関がみられたが, %HRmax@LTは%Vo2max@LTと同様に年齢とは無関係であった.4.SBP@LT, DBP@LTについては年代間に有意な差は認められず, 年齢との関係は明らかでなかった.5.加齢による変化は, Vo2@LT (0.5ml/kg/min/yr) よりもVo2max (0.7ml/kg/min/yr) の方が大きかった.6.Vo2maxの加齢による変化は, 既報の一般人やランナーと比べて大きかった.しかし, 各年代でのVo2maxは, 一般人に比べ平均で50~60%高く, 例えば70歳代ランナーのVo2maxは一般人の40歳代に相当した.7.Vo2maxとトレーニングの経験年数との間には有意な関係はみられなかったが, ランナーとしてのトレーニング開始年齢とVo2maxとの間には, 有意な相関が認められた.8.HRmaxは, Vo2maxと同様に加齢による低下を示し, 同性同年代の一般人と比べて有意差はみられなかった.9.推定HRmaxと実測したHRmaxとの間には, 有意な相関 (r=0.600) がみられたものの, 個人差が大きく±10拍/分以上の誤差を生じた者が約32%いた.10.SBPmax, DBPmaxは, 年代間で有意な差はみられず, 中高年ランナーにおいては年齢と血圧の関係は明らかでなかった.
著者
末永 和也 大林 由美子
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.142, pp.45-55, 2020-03-31

本研究は,消滅可能性都市として指摘されている南知多町の人口流出を防ぐための方策や人口を増やすことを検討するために,住民意識調査や専門職の意識調査を分析し,現在,計画内容が検討されている地域福祉計画の策定に寄与できることを目指している. 分析結果より,30 歳代および50 歳代以上の住民には「南知多町に住み続けたい」と考える人の割合が高いことに比べ,40 歳代の住民は,「南知多町に住み続けたい」と考える人の割合は低い傾向にあり,その理由として仕事,医療・福祉の面での課題がみられた. また,住民と専門職の間には学校統廃合の意識に差があった.住民は,学校統廃合には現状維持を求める意見が約5 割であることに対し,専門職は,現状維持したほうがよいと考える意見は約3 割であった.先行研究では,人口を減少させない方策として,小中高校の存続に力を注ぐことであると述べられている.このまま学校統廃合を進めていった場合,さらに人口流出が加速する可能性がある。 これらの分析をふまえ,地域福祉計画を策定していくためには,「専門職参加」「行政職員参加」だけでなく「住民参加」が必須であり,住民をいかに巻き込むことができるか鍵となることが考察された.
著者
若林 大志 稲木 杏吏 廣正 智 森 博史 渡辺 悟 山瀬 喬史 赤谷 憲一 萱野 大樹 絹谷 清剛
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.255-258, 2018 (Released:2019-02-15)
参考文献数
19

手術不可能あるいは遠隔転移や局所再発を繰り返す悪性褐色細胞腫の治療として,131I-metaiodobenzylguanidine (MIBG)による内照射療法が行われる。131I-MIBGの腫瘍集積は極めて選択的かつ特異的であり,欧米では30年近い治療経験が蓄積されている。一方で,国内では放射線管理にかかる諸問題があり利用は限られていた。近年,悪性褐色細胞腫・パラガングリオーマに対する低用量131I-MIBG治療の多施設共同研究が先進医療Bとして実施され,2017年度には131I-MIBG治療の薬事承認取得を目的とした企業治験が国内で開始されるなど,131I-MIBG治療が我が国でも広がりつつある。本稿では131I-MIBG治療の現況と展望を紹介し,内照射療法の普及がよりいっそう進むことを期待する。
著者
田林 雄 山室 真澄
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.3, pp.411-420, 2012-06-25 (Released:2012-07-09)
参考文献数
40
被引用文献数
4

Nitrogen compound deposition as a result of human activities on the terrestrial surface has increased sharply during the last one hundred years, causing ecological problems. One problem is nitrogen saturation in forest ecosystems, which results in the forest ecosystem receiving more nitrogen than required. In recent years, nitrogen oxide emissions have been decreasing in Japan; however, the total deposition of nitrogen is not decreasing because of cross-boundary emissions from other countries. As depositions in forest ecosystems increase, the likelihood of nitrogen saturation increases. At the same time, certain species of trees, geological conditions, and climate will affect nitrogen saturation. In Japan, there is heavy precipitation in summer; therefore, decreases in nitrate concentrations of stream water cannot be observed. Stable isotope analysis is the key to elucidating nitrogen dynamics between the atmosphere and rivers. From the atmosphere to stream water, nitrogen compounds have many chemical and biological reactions. Because a stable isotope is an indicator of the progress of these reactions, frequent analyses of stable isotope compositions reveals how nitrogen moves from the atmosphere to stream water.
著者
上林 貞治郎
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-29,i, 1967-09-30 (Released:2009-11-11)

Die Geschichte des Leuna-Werks in Deutschland besteht aus zwei verschiedenen Abschnitte. Der erste Abschnitt von 1916 bis 1945 ist die Geschichte des Leuna-Werks als ein grosses Werk des I G-Monopolkapitals, und der zweite von 1945 bis heute ist die Geschichte als ein volkseigener Betrieb der DDR. Dieses Referat spricht hauptsachlich uber den ersten Abschnitt.Die Geschichte des Leuna-Werks als ein kapitalistisches Werk des I G-Konzerns ist in zwei Bestandteile zu teilen, also, erstens die Geschichte der Entstehung und Entwicklung des I G-Monopolkapitals, zweitens die der Grundung und Entwicklung des Leuna-Werks selbst. Die Entstehung des I G-Trusts in 1925 war ein Erfolg des langen Entwicklungsprozesses der acht groBen Chemiegesellschaften, die in 1904 zwei Interessengemeinschaften und dann in 1916 ein groBe Interessengemeinschaft bildeten. In 1925 wurden diese acht Gesellschaften in einem Trust, “I G Farbenindustrie AG”, fusioniert. Das Leuna-Werk selbst wurde in 1916 als ein Werk von “Die Badische Anilin-und Sodafabik” begrundet, dann in 1920 als ihre Tochtergesellschaft, “Ammoniakwerke Merseburg GmbH, ” reorganisiert, und nach 1925 als das grosste Werk des I G-Monopolkapitals entwickelt. Aber die Niederlage des deutschen Imperiolismus in dem zweiten Weltkrieg war zugleich die Ende des Leuna-Werks als Werk des Monopolkapitals. Heute ist es “VEB Leuna-Werke Walter Ulbricht” in der DDR.
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.492-496, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

研究者の成果公開メディアとして数百年にわたって重要な役割を果たしてきた学術ジャーナルは,電子化,オープンアクセス化を経て,本格的にデジタルトランスフォーメーションする時代に突入した。過渡期にある現在において,日本の各学会と学術ジャーナルは,プレプリントサーバー,オープンアクセスとそれに伴う著作権やライセンスの対応,およびデータポリシーの制定を早急に行う必要がある。また,はじめに学術ジャーナルや査読の枠組み自体が変容することを前提とした長期的展望を踏まえた準備が必要であり,学会・出版機能のデジタルトランスフォーメーションに主体的に取り組むことになる。
著者
安藤 聡 坂口(横山) 林香
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.417-421, 2015-08-15 (Released:2015-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

グアニル酸等の呈味性ヌクレオチドは,グルタミン酸との相乗効果により,少量でうま味を増強する.調理用9品種と生食用2品種のトマトについて,加熱調理前後のグアニル酸含量を比較したところ,全品種において有意にグアニル酸が加熱により増加していた.加熱条件がトマトのグアニル酸の増減に及ぼす影響を調べることを目的に,25∼100°Cでトマト果実を加熱したときのグアニル酸およびその分解物であるグアノシンの含有量を定量した.これら2成分の挙動から,50∼60°Cにおいてグアニル酸の生成と分解の差が最大となった結果,最大のグアニル酸蓄積が起こったと考えられる.
著者
苅部 智恵子 佐藤 啓造 丸茂 瑠佳 丸茂 明美 藤城 雅也 若林 紋 入戸野 晋 米山 裕子 岡部 万喜 黒瀬 直樹 島田 直樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.349-358, 2012 (Released:2013-03-14)
参考文献数
19
被引用文献数
2

安楽死・尊厳死について国民の意識がどうなっているか調査した報告は少なく,特に大学生の意識を報告した論文はほとんど見当たらない.少数ある報告も限界的医療全般について調査したものであり,安楽死について賛成か否かを表面的に調査したに留まっている.本研究では同じ生物学を中心に学んでいるが将来,安楽死・尊厳死に関わる可能性のある医学生と特にその予定はない理系学生を対象として同じ内容のアンケート調査を行った.アンケートでは家族に対する安楽死・尊厳死,自分に対する安楽死・尊厳死,安楽死・尊厳死の賛成もしくは反対理由,安楽死と尊厳死の法制化,自分が医師であるとすれば,安楽死・尊厳死について,どう対応するかなど共著者間で十分,協議をしたうえで,新しい調査票を作成し,これを用いた.医学生は安楽死・尊厳死について,ひと通りの理解をしているはずの99名から無記名のアンケートを回収した(回収率:87.6%).理系学生は医学生のほぼ同年輩の生物学系の博士前期課程学生に対し,第二著者が安楽死・尊厳死について,ひと通り説明した後,69名から無記名で回収した(回収率:71.9%).前記5つの課題について学部間,性別間の意識差について統計ソフトIBM SPSS Statistics 19を用いてクロス集計,カイ二乗検定を行い,p < 0.05を有意差ありとした.その結果,家族の安楽死については学部間で有意差があり,医学生は理系学生より依頼する学生の比率が低く,依頼しない学生の比率が高いことが示唆された.医学生,理系学生ともに家族の安楽死希望理由で「本人の意思を尊重したい」が過半数を越え,自己決定権重視の一端を示していた.尊厳死では両学部生とも希望しない学生より希望する学生が多く,特に理系学生で希望する比率が高かった.性別では自分の尊厳死を希望する比率で有意差があり,女性の方が多かった.家族の尊厳死でも希望する比率は女性の方が多かった.家族の尊厳死,自分の尊厳死を家族の安楽死,自分の安楽死と比較したところ,安楽死より尊厳死を希望する学生が両学部生とも多かった.家族の尊厳死希望理由で医学生,理系学生ともに「本人の意思を尊重したい」が60%以上を占めた.安楽死・尊厳死について法制化を望むか否かを調べると,学部間では有意差があり,医学生は大多数が安楽死・尊厳死の法制化を望んでいるのに,理系学生は両方とも法制化を望まない学生も26%を示した.性別間では女性で尊厳死だけ法制化を望む人が31%を占めた.自分が医師の立場になった場合,安楽死・尊厳死を実施するか否かを調べると,学部間で有意差があり,要件を満たせば積極的安楽死を実施するとしたのが理系学生で41%を示したのに対し,医学生では16%に留まった.性別間では積極的安楽死を実施するのは男性が10%上回ったのに対し,尊厳死を選択するのは女性が10%上回った.以上の結果から医学生は理系学生に比べ,安楽死・尊厳死の実施に慎重であり,両方とも法令のもとに実施を希望していることが明らかとなった.
著者
林 潤一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.514-521, 2009 (Released:2011-11-03)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

The present study developed and evaluated the Automatic Thoughts List following Dilatory Behavior (ATL-DB) to explore the mediation hypothesis and the content-specificity hypothesis about the automatic thoughts with trait procrastination and emotions. In Study 1, data from 113 Japanese college students were used to choose 22 items to construct the ATL-DB. Two factors were indentified, I. Criticism of Self and Behavior, II. Difficulty in Achievement. These factors had high degrees of internal consistency and had positive correlations to trait procrastination. In Study 2, the relationships among trait procrastination, the automatic thoughts, depression, and anxiety were examined in 261 college students by using Structural Equation Modeling. The results showed that the influence of trait procrastination on depression was mainly mediated through Criticism of Self and Behavior only, while the influence of trait procrastination to anxiety was mediated through Criticism of Self and Behavior and Difficulty in Achievement. Therefore, the mediation hypothesis was supported and the content-specificity hypothesis was partially supported.