著者
卯野木 健 林田 敬 河合 佑亮 對東 俊介 安藤 守秀 飯田 有輝 笠井 史人 川崎 達也 神津 玲 近藤 豊 齊藤 正和 櫻本 秀明 佐々木 信幸 佐浦 隆一 中村 謙介 大内 玲 岡本 菜子 岡村 正嗣 栗原 知己 栗山 明 松石 雄二朗 山本 憲督 吉廣 尚大 矢坂 泰介 安部 諒 飯塚 崇仁 井上 拓保 内山 侑紀 遠藤 聡 大倉 和貴 太田 浩平 大塚 貴久 岡田 大輔 小幡 賢吾 片山 雪子 金田 直樹 北山 未央 喜納 俊介 草葉 隆一 桑原 政成 笹沼 直樹 高橋 正浩 髙山 千尋 田代 尚範 立野 淳子 田村 貴彦 田本 光拡 土谷 飛鳥 堤 悠介 長門 直 成田 知大 名和 智裕 野々山 忠芳 花田 匡利 平川 功太郎 牧野 晃子 正木 宏享 松木 良介 松嶋 真哉 松田 航 宮城島 沙織 諸見里 勝 柳 尚弥 山内 康太 山下 遊平 山本 夏啓 劉 啓文 若林 侑起 渡辺 伸一 米倉 寛 中西 信人 高橋 哲也 西田 修 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement2, pp.S905-S972, 2023 (Released:2023-12-10)

重症患者に対する標準化された質の高いリハビリテーションの提供は,取り組むべき重要課題である。日本集中治療医学会では,2017年に「集中治療における早期リハビリテーション ―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―」を発行したが,系統的にエビデンスを評価したものではなく,あくまでも専門家のコンセンサスに基づくものであった。そこで,日本集中治療医学会では,質が高く,かつ,医療従事者が理解しやすく,その意思決定に資することを目的に,システマティックレビューおよびGRADE(grading of recommendations, assessment, development and evaluation)アプローチを用いた診療ガイドラインを作成した。 重症患者に対するリハビリテーションに特化し,かつ,GRADEアプローチを用いた診療ガイドラインとしては,世界初の試みである。本ガイドラインは日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会を核に,ワーキンググループ,システマティックレビュー班,アカデミックガイドライン推進班から構成された診療ガイドライン作成グループの合計73名からなるメンバーで作成した。リハビリテーションでは多職種連携が非常に重要であることはいうまでもない。本ガイドラインも多職種,かつ多様な専門分野を持つ医師や医療従事者,ICU患者経験者を含む多くのメンバーが作成に寄与した。 本ガイドラインでは,グループメンバーによる議論に基づいて,8領域を注目すべき臨床重要領域とした。その上で,各領域から重要な14の臨床疑問(clinical question, CQ)を作成した。 パブリックコメントの募集を計2回行い,CQに対する回答としては,10のGRADEによる推奨,4つの背景疑問の解説が示された。また,CQごとに情報を視覚的診療フローとして作成し,各CQの位置付けがわかりやすいように配慮した。多職種が関与する重症患者に対するリハビリテーションにおいて,本ガイドラインが活用されることを期待する。
著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008 (Released:2009-01-27)
参考文献数
21
被引用文献数
12 21 4

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM5 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (p<0.01) および 60分後 (p<0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (p<0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
佐藤 真央 井上 裕太 溝脇 一輝 小林 大純 松尾 怜 外山 太一郎 日比野 友亮
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.20-036, (Released:2021-03-22)
参考文献数
14

Twelve specimens (71.5–89.9 mm standard length) of the genus Lutjanus (Lutjanidae), collected from Ishigaki-jima Island, Ryukyu Archipelago, southern Japan, were identified as Lutjanus biguttatus (Valenciennes in Cuvier and Valenciennes, 1830), being characterized by the following combination of characters: dorsal fin XI, 12; anal fin III, 8; pectoral rays 15–16; body depth 3.5–3.8 in standard length; preorbital depth 10.8– 16.3 in head length; tongue smooth, without patch of fine granular teeth; a dark longitudinal band from snout to caudal fin base; and two white spots above the lateral line. Dentition of the premaxilla and dentary, including several canine-like (one being long and curved) and many small conical teeth, is illustrated. The collected specimens were determined to be juveniles, due to their coloration matching that of juveniles previously described, in addition to their small body size. Although the coloration of L. biguttatus is similar to that of L. vitta during the juvenile stage, the latter species is distinguished by greater body and preorbital depths. The specimens of the former had been caught in a significantly localized area (in ca. 4 m depth) over several days, indicating the likelihood of their having been schooling, as observed in previous studies of the species. Lutjanus biguttatus is distributed in the Indo-western Pacific, from the Maldives to the Solomon Islands, but had not previously been recorded from Japanese waters. The new standard Japanese name “Futahoshi-fuedai”, given in reference to the two white spots above the lateral line in the collected specimens, is proposed.
著者
西村 秀一 林 宏行 浦 繁 阪田 総一郎
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.243-249, 2017-09-25 (Released:2018-03-25)
参考文献数
18

低濃度二酸化塩素(ClO2)のウイルス不活化能を種々の湿度条件で検証した.ClO2は高湿度で不安定で,市販のゲルタイプ製剤では閉鎖空間で一定低濃度維持できない.そこで高湿度で低濃度ClO2環境を一定時間維持できる乾式法製剤を用いて実験した.一定室温下で低,中,高の三つの湿度条件下,生活空間でヒトが耐えうる濃度限界とされる20-30 ppbのClO2の,空中浮遊インフルエンザウイルス不活化能を調べた.各湿度,ガス濃度の閉鎖空間でウイルスを空中に放出し,一定時間ガス曝露後,一定量の空気を回収し含まれる活性ウイルス量を調べた.その結果,相対湿度30%環境では,曝露20分後の回収ウイルス量は,対照のガス非存在下と統計学的な有意差はなかった.湿度50,70%では,対照でも回収ウイルス量が放出量の約10%と2%程度まで低下した一方,ガス存在下ではそれぞれ0.3%と0.03%まで低下し,低下は統計学的に有意であった.以上,湿度50-70%環境下であれば,20-30 ppb程度の低濃度ClO2にも抗ウイルス効果はあった.だがそれは,感染管理の視点からは,患者から空間に放出され一定時間経過後残存する活性ウイルスの絶対数から見れば,湿度自体による大幅な感染リスクの減弱にやや上乗せされる程度の効果でしかない.一方湿度30%では,この程度の濃度では感染リスクの低下はほとんど望めないことが,明らかになった.
著者
小林 治
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-30, 2014 (Released:2014-04-01)
参考文献数
54

近年の分子生物学的研究によると,概ね宿主細胞の遺伝子損傷は癌化を誘導することが判明し,ときに感染症の関与も報告されている。発癌機構の基礎研究成果は,癌撲滅ツールとしての抗ウイルス・抗菌療法,ワクチン接種などの価値を期待させる。
著者
松前 ひろみ 神保 宇嗣 仲里 猛留 畠山 剛臣 大林 武
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.88-114, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
118

本稿では、これまで独立に発展を遂げてきた次の3つの領域を組み合わせ、新しい生物学のあり方を模索する:(1)遺伝子を中心としたバイオインフォマティクス解析、(2)生態系における個体や種の情報を扱う生物多様性情報解析、(3)生物たるヒトが生み出した文化情報の解析。従来これらの分野では異なる学術体系に基づいてデータが蓄積されてきたが、近年、分類学におけるDNA情報の利用や、ヒトの文化的形質の起源や進化の研究、人新世における生物多様性の研究から、3つの分野には互いに接点が生じている。しかし、学際的なコミュニティ等を活用してもなお、技術的・概念的な溝を埋めるのは容易ではない。そこで、これら3つの分野の関わりについて、データ連携を中心に、代表的なリソース・研究事例・課題などを俯瞰し、バイオインフォマティクスの研究者を生物多様性情報や文化の情報の世界へと誘いたい。
著者
福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする会 富山大学科学コミュニケーション研究室 本行 忠志 田口 茂 加藤 聡子 山田 耕作 大倉 弘之 林 衛 高橋 博子 藤岡 毅 福島 敦子

今年3月22日時点で、福島県民健康調査で発見された甲状腺がん患者は302名、検査外で見つかっている43名と合わせて福島県で350人近くの小児・若年性甲状腺がんの発生が明らかになっている。通常、年間100万人に1~2人とされている小児甲状腺がんの数10倍の発見率だといえる。これほどの甲状腺がん多発の原因は福島原発事故による甲状腺被ばく以外に考えられないにも関わらず、福島県民健康調査検討委員会および甲状腺検査評価部会は放射線の影響とは考えにくいなどと結論づけている。これら見解を盾に政府及び福島県政は原発事故がもたらした放射線被ばくによる健康被害を認めず、被害拡大を防ぐ措置も取らず、原発事故被害者への補償も放棄している。 小児甲状腺がん発見率の異常な増大は事実として認めているにも関わらず、放射線の影響を否定するための論理として、「過剰診断論」や「超高感度超音波スクリーニングによる効果論」「肥満論」など様々な異説が福島県立医科大学の研究者や検討委員会主流派の「専門家」らによってあたかも強い根拠があるかのように主張された。 放射線被害を否定するこうした見解に対し、委員会外部の専門家たちが厳しい科学的批判を加えたが、それらを一挙に封じるため、日本政府(外務省)は国連科学委員会(UNSCEAR)に多額の資金を提供し報告書作成を画策した。放射線起因説につながる諸文を排除し、それを否定する日本の研究者が自分たちの結論に沿うよう恣意的にデータや文献を提供し、彼らの主導の下、創作されたのがUNSCEAR2020/21 報告書である。それは甲状腺被ばく線量を低く見積もり、甲状腺がん多発が放射線の影響ではないという主張である。同報告は被ばくによる健康影響否定の根拠として、東京電力や国・行政機関、それらを支える専門家の最大の拠り所として用いられている。 日本のマスコミや国民は、国際機関の報告には疑問を持たず権威を感じる傾向がある。原発事故被害者や支援者の中にすら、小児甲状腺がん多発問題を科学論争として正面から闘えないという動揺が一部に存在する。しかし、UNSCEAR 報告書は科学的文献とよぶには極めてお粗末である。そのお粗末さを暴いたのが「明らかにする会」ブックレット第3号である。 今回の出版記念講演では、一見難解と思われるこれらの論争の本質的内容を、専門知識を持たない普通の人たちが理解できるように、執筆者全員が工夫して講演を試みる。
著者
徳田 和宏 竹林 崇 海瀬 一也 小山 隆 藤田 敏晃
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11643, (Released:2020-01-16)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】BAD の運動機能予後の予測について検討した。【方法】BAD101 例を退院時良好群と不良群に分類し年齢,性別,麻痺側,入院時National Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),病変部位,梗塞面積,リハ開始日,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA),Mini-mental State Examination(以下,MMSE),在院日数,OT・PT 単位を調査し,単変量解析(χ2 検定,対応のないt検定)と退院時FMA を目的変数としたロジスティック回帰分析を行い有意差のあった因子からカットオフ値を算出した。【結果】良好群は不良群と比較し年齢,NIHSS,梗塞面積,在院日数は低くFMA とMMSE は高かった(p<0.05)。また,リハ開始時FMA のカットオフ値は上肢18 点,下肢19 点であった。【結論】BAD の運動機能予後の予測にはリハ開始時FMA が関連していた。
著者
小林 裕章 金子 剛 西本 紘嗣郎 内田 厚
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-65, 2010-01

Penile strangulation is one of the emergent urologic disorders, because immediate release is the critical treatment to prevent penile necrosis, urethral injury, erectile disorder, and other unfavorable events. A 66- year-old man was transferred to the emergency room of our hospital for the penile swelling and pain, occurring by penile insertion to the beverage bottle for masturbation. The penis was completely relieved using an electric plaster cutter without any injury. The strangulation time was four hours and a half, and there were no complications. We recommend an electric plaster cutter as a useful tool for this incident.
著者
秋葉 拓哉 林 孝紀 則 のぞみ 岩田 陽一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.B-F71_1-12, 2016-03-01 (Released:2016-02-18)
参考文献数
39

Estimating the relevance or proximity between vertices in a network is a fundamental building block of network analysis and is useful in a wide range of important applications such as network-aware searches and network structure prediction. In this paper, we (1) propose to use top-k shortest-path distance as a relevance measure, and (2) design an efficient indexing scheme for answering top-k distance queries. Although many indexing methods have been developed for standard (top-1) distance queries, no methods can be directly applied to top-k distance. Therefore, we develop a new framework for top-k distance queries based on 2-hop cover and then present an efficient indexing algorithm based on the recently proposed pruned landmark labeling scheme. The scalability, efficiency and robustness of our method are demonstrated in extensive experimental results. It can construct indices from large graphs comprising millions of vertices and tens of millions of edges within a reasonable running time. Having obtained the indices, we can compute the top-k distances within a few microseconds, six orders of magnitude faster than existing methods, which require a few seconds to compute these distances. Moreover, we demonstrate the usefulness of top-k distance as a relevance measure by applying them to link prediction, the most fundamental problem in graph data mining. We emphasize that the proposed indexing method enables the first use of top-k distance for such tasks.
著者
林 信太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

ブラタモリとはどういう番組か?「ブラタモリ」は NHK総合テレビで2008年から放送されているエンターテインメント・教養番組で,その視聴率は時として15%を超える。タレントのタモリ(以下タモリさん)がNHKの若手アナウンサーとともに各地を“ブラブラ”歩きながら謎解きをし,様々な発見をする。また,「案内人」という解説者の問いかけにより番組が進行する。謎解きの「お題」には,しばしば地質学や地理学に関連したものが登場し,地球科学のアウトリーチに大きな効果を発揮している。講演者は「#81 十和田湖・奥入瀬~十和田湖は なぜ“神秘の湖”に?~」メインの案内人として登場した。「ブラタモリ」:私の印象と案内人の責任 私の印象:番組中で見せるタモリさんの地球科学に関する広い知識は本物と強く感じた。また,タモリさんの発見能力,対象をじっくりと思考する真摯な態度は,たいへん印象に残った。また,案内人の私にコンタクトを取る以前に,担当ディレクター(地球科学の非専門家)は,文献から得られる情報はほとんど調べつくしていた。 案内人の責任:案内人には番組の科学的妥当性を担保するという社会的責任がある。「ブラタモリ」は地球科学者の視聴率も高く,常に誤りがチェックされている。実際,「ブラタモリ」と同時進行で,ツイッターで批判的意見をつぶやく地球科学関係者は多いし,自分でもたいへんそれを楽しんでいる。しかし,自分が案内人の場合はそのプレッシャーがことごとく自分にかかってくるのである。 番組の正確性の担保のため,案内人は調査に多大な時間をかける。講演者の場合,十和田湖や奥入瀬に関連した書籍や論文を100編以上参照した。また,案内人はこの他にロケハンやリハーサルの作業にも付き合い,番組の正確性を担保する。現場の確認(ロケハン)のために合計4日間,現地での(タモリさん抜きでの)リハーサルや最終確認のために3日を要した。実験とブラタモリブラタモリの番組内ではしばしば実験が解説の手段として用いられる。「#81 十和田湖・奥入瀬~十和田湖は なぜ“神秘の湖”に?~」では,カルデラ湖のでき方をココアとコンデンスミルクを用いて説明した。ココアの山の中にコンデンスミルクで見立てたマグマを置き,それを下から抜き取ることでカルデラ陥没を起こすという実験である。この実験は小中学生を対象に何度も試行したことがある。これまでの授業経験から,言葉での説明や図解でカルデラのでき方を理解させることが難しいことはわかっていた。そのため,番組にこの実験は必須だった。視聴者やタモリさんに,カルデラのでき方について納得させるだけではなく,ココアでできたカルデラの形状の観察も番組のその後の部分に繋がった。ブラタモリで実験が採用されるための必要条件? じつは提案はしてみたが,番組に採用されなかった実験も多い。その1例として「パリパリ溶岩実験」がある。先端を溶融したガラス棒を水につけ水冷破砕させるという実験である。ブラタモリの他の回の番組で2度提案したが,どちらも不採用だった。 「パリパリ溶岩実験」不採用の理由として考えられることは,「パリパリ溶岩実験」は1)ビジュアル的に地味である,2)ガラスと水という素材はあまり印象的ではない,の2点が挙げられる。もちろん,単に番組の編集作業の過程で提示する時間がないため削られただけという可能性もある。ブラタモリとアウトリーチ地球科学分野におけるアウトリーチ活動は, 1)研究資金の獲得;2:後継者の育成;3:一般社会に認知してもらうことの3点で重要である(鎌田,2004)。そのために地球科学で得られた成果を科学者の側からわかりやすく発信していく必要がある。ブラタモリのアウトリーチ効果は2つある。第1にブラタモリは多くの国民が視聴し,科学者の努力では到達し得ない多くの国民へのアウトリーチが可能である。第2に科学者に対する教育効果が大きいことがあげられる。ディレクターは番組をわかりやすくするために徹底的に努力し,科学者の側はそこに啓発される。また,担当ディレクターとのやり取りの中で,わかりやすさと正確さを両立させる方法を体験的に学ぶことができる。 ブラタモリの案内人になることは,多大なエネルギーと時間を使うことである。しかしながら,その大きなアウトリーチ効果を考えると(声がかかった)研究者は積極的に応じるべきであろう。
著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-92, 2010-02-15 (Released:2010-03-31)
参考文献数
1

食品にガンマ線や電子線などの放射線を照射すると,脂質が分解して炭化水素など種の放射線分解生成物が生成する.放射線照射によりトリグリセリドのアシル基-酸素結合が開裂すると,元の脂肪酸と同じ炭素原子数の2-アルキルシクロブタノン(2-ACB)が生成する(図1).この物質の存在が知られる以前には,放射線照射によって食品中に生成する分解生成物として,非照射食品中にも含まれる成分か,他の調理加工などによっても生成が誘発される既知の物質しか検出されなかった.ところが,2-ACBは加熱,マイクロ波照射,紫外線照射,超高圧処理,超音波処理などによって生成することはなく,放射線照射によってのみ生成する化合物である.すなわち,この物質は,現在知られている唯一の放射線特異分解生成物(Unique Radiolytic Product)である.前駆体となるトリグリセリドの脂肪酸組成に対応して異なるシクロブタノンが生成し,パルミチン酸から2-Dodecylcyclobutanone,パルミトレイン酸から2-Dodec-5′-enylcyclobutanone,ステアリン酸から2-Tetradecylcyclobutanone,オレイン酸から2-Tetradec-5′-enylcyclobutanone,リノール酸から2-Tetradecadienylcyclobutanoneが生成する.2-ACBは放射線照射により特異的に生成し,かつその生成量は線量に依存して増加するので,照射食品の検知に利用できる.2-ACB分析は,鶏肉,畜肉,液体卵,カマンベールチーズ,サケを対象とした検知技術として,ヨーロッパ標準法及びコーデックス標準法となっており,国際的に認知された照射食品検知技術である.照射食品の安全性を判断するには,放射線特異分解生成物である2-ACBの毒性を評価する必要がある.ドイツの研究者がコメットアッセイにより2-ACBには細胞のDNA損傷を誘発することを見出して,その安全性が問題となった.しかしエームス試験や復帰突然変異原性試験では,このような2-ACBの毒性は観察されなかった.また,非常に高濃度の2-ACBをラットに投与しても,それ自身が発ガン物質として働くことはなかった.しかし,ラットに発がん物質であるアゾキシメタンとともに2-ACBを投与したところ,3ケ月後の観察ではアゾキシメタンと水を投与したコントロールと比べて異常はなかったが,6ケ月後に2-ACB投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ,2-ACBには発がん促進作用活性のあることが確認された.この投与実験で使われた1日当たりの2-ACBの用量は3.2mg/kg体重であり,ヒトが照射食品から摂取する2-ACBの最大量と想定される1日あたりの値の5-10μg/kg体重のよりもはるかに多く,約500倍であり,本実験結果が実際の食生活における照射食品の危険性に直接結びつくものではないと考えられている.また,米国で行われた100トン以上の照射鶏肉を用いたマウスや犬を対象とした大規模な長期動物飼育試験では,59kGyという高線量照射したにもかかわらず毒性は認められなかった.なお,この時に使用された照射鶏肉には2-ACBの存在が確認されている.これらの結果を総合的に考慮して,WHOや米国FDAなどの機関は,照射食品中のアルキルシクロブタノンの毒性が実際に問題になることはないと判断している.
著者
長谷川 剛 小林 研介 村上 修一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.228-231, 2020-04-05 (Released:2020-09-14)
参考文献数
7

令和元年度科学研究費助成事業(科研費,基盤研究等)審査結果報告
著者
横山 浩之 小林 淳子 富澤 弥生
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

コロナウィルス感染症による影響で、全国的に不登校などの問題が増えることがとりざたされているが、研究協力市町村での様相は大分異なっていた。① すでにさまざまな施策がとられてきたA市・B町では、3歳半健診における就寝時刻が遅れる傾向があった(統計学的有意差なし)のみで、メディア曝露時間は増加しなかった。また、小中学校の不登校も増加しなかった。② 施策を取り始めたばかりのC市・D市・E市・F町・G町では、3歳半健診における就寝時刻が有意に悪化した。2時間を超えるメディア曝露している3歳児が有意に増加しており、C市では、妊産婦と母親に対して、本研究で作成した啓発パンフレットを母子手帳配布時、妊産婦健診、出産時、乳児健診等で繰り返し配布し、1歳半健診における要フォローアップ率で評価する研究を開始した。これらの市町村では、小中学校の不登校率も悪化の一途をたどっていた。③ 教育委員会が本事業に参加するD市では、先進地域のA市・B町を視察していただき、D市の事業展開にあたり、どのような観点が切れ目のない支援にとって大切かを検討し、令和4年度からの事業展開に活かすこととなった。 この視察で明確になったのは、市町村差よりも県域の差による制度面の異なりが大きいことで、D市では令和4年度に文部科学省の特別支援教育調査官経験者による研修会を本研究の協賛で行うことになった。④ 昨々年度に作成した簡易版ペアレントトレーニング手法のパンフレットをA市・H町において1歳6か月健診において配布し、3歳半健診において、手法の有効性を検討する試みを開始した。
著者
岩見 恭子 小林 さやか 柴田 康行 山崎 剛史 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.63-69, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
19

福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による鳥類の巣の汚染状況を把握するため,2011年に繁殖したツバメの巣を日本全国から採集し,巣材に含まれる放射性セシウム(Cs-134およびCs137)を測定した.全国21都道府県から集められた197巣のうち182巣について測定した結果,1都12県の巣から福島第一原子力発電所由来の放射性セシウムが検出された.福島県内のすべての巣から放射性セシウムが検出され,Cs-134とCs-137の合計の濃度が最も高いものでは90,000 Bq/kgで低いものでは33 Bq/kgであった.巣の放射性セシウム濃度は土壌中の放射性セシウム濃度が高い地域ほど高かったが,地域内で巣のセシウム濃度にはばらつきがみられた.
著者
小林 健介 堀井 英雄 石神 努 千葉 猛美
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.56-65, 1985-01-30 (Released:2009-04-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

A sensitivity analysis of thermal hydraulic response in containment during a 'station blackout' (the loss of all AC power) accident at Browns Ferry unit one plant was performed with the computer code MARCH 1.0. In the analysis, the plant station batteries were assumed to be available for 4h after the initiation of the accident. The thermal hydraulic response in the containment was calculated by varying several input data for MARCH 1.0 independently and the deviation among calculated results were investigated.The sensitivity analysis showed that (a) the containment would fail due to the overtemperature without any operator actions for plant recovery, which would be strongly dependent on the model of the debris-concrete interaction and the input parameters for specifying the containment failure modes in MARCH 1.0, (b) a core melting temperature and an amount of water left in a primary system at the end of the meltdown were identified as important parameters which influenced the time of the containment failure, and (c) experimental works regarding the parameters mentioned above could be recommended.