著者
吉田 洋 林 進 堀内 みどり 坪田 敏男 村瀬 哲磨 岡野 司 佐藤 美穂 山本 かおり
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-43, 2002-06-30
参考文献数
28
被引用文献数
3

本研究は,ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus,以下ツキノワグマと略す)による針葉樹幹の摂食量と,他の食物の摂食量との関係ならびにツキノワグマの栄養状態の年次変動を把握することにより,クマハギ被害の発生原因を食物環境面から解明し,さらに被害防除に向けた施策を提案することを目的とした.ツキノワグマの糞内容物分析の結果,クマハギ被害の指標となる針葉樹幹の重量割合は,1998年より1999年および2000年の方が有意に高く(p<0.05),逆にツキノワグマの重要な食物種の一つであるウワミズザクラ(Prunus grayana)の果実の重量割合は,1999年および2000年より1998年の方が有意に高かった(p<0.05).また,ツキノワグマの血液学的検査の結果,1999年および2000年より1998年の方が,血中尿素濃度は低い傾向にあり,血中ヘモグロビン濃度は有意に高かった(p<0.05)ことより,1998年はツキノワグマの栄養状態がよかったと考えられる.以上のことから,クマハギ被害は,ツキノワグマの食物量が少なく低栄養の年に発生しやすく,ウワミズザクラの果実の豊凶が被害の発生の指標となる可能性が示唆された.したがって,クマハギ被害は,被害発生時期にツキノワグマの食物量を十分に確保する食物環境を整えることにより,その発生を抑えられる可能性があると考えられた.
著者
小池 伸介 羽澄 俊裕 古林 賢恒
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-30, 2003
参考文献数
44
被引用文献数
9

The authors studied the likelihood that seeds were being dispersed by the Japanese black bear (<i>Ursus thibetanus japonicus</i>) in a deciduous forest near Ashikawa Village, Yamanashi Prefecture. The forest was composed of 113 tree species. Japanese black bear ate fruits and seeds belonging to 37 species (including 7 unidentified). About 86.7 to 99.7% of seeds identified in 360 samples of bear feces were in good condition for 17 species (10 drupes, 5 berries, 1 multiple fruit of droplets and 1 pome). However, no intact seeds were found for 5 nut species. The germination rate of Yamasakura (<i>Prunus jamasakura</i>) seeds taken from feces was the same as for uneaten seeds. The results of this investigation suggest a high likelihood of seed dispersal by the Japanese black bear.
著者
饗庭 貢 松枝 章 元林 進 坂谷 一夫
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.162, 2005

平成8年より人工照明の連続照射によるアメヤ科植物の植木槽の影響を、自然光のみの植木槽と比較して調べた。照度は2㏓、10㏓、50㏓の場合、人工照明は白熱電球、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプである。人工照明については、赤みの色、黄味の色、青味の色、白いランプを調べた。ところが、いずれの場合でも2㏓以上のものは(10㏓、50㏓の値の場合)花が咲かなくなった。 植物にも、人間と同様なメラトニンの働きがあると考え、(たとえば明るくて眠らない状態)平成12年より、メラトニンを与える治療方法を行ってみた。与えた量としては1_mg_、2_mg_、4_mg_の3種類を夫々の照度、夫々の人工照明の所に与えてみた。ところが平成16年度になっても回復の兆しが見られなかった。 今後は人工照明を止めて、自然回復をさせるのに何年かかるかを試みたい。
著者
笹子 三津留 石川 勉 松江 寛人 山田 達哉 木下 平 丸山 圭一 岡林 謙蔵 田尻 久雄 吉田 茂昭 山口 肇 斉藤 大三 小黒 八七郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.2191-2195, 1990
被引用文献数
2

リンバ節転移の無い早期胃癌を特定化し局所切除をすればリンパ節郭清をともなった手術と同等の治療成績を挙げることが期待される.1962年から1985年までに国立がんセンター病院で切除された単発早期胃癌1,440例のリンパ節転移についての検討より, リンパ節転移を否定しうる病変は, IIb, 2.0cm以下の潰瘍性変化の無いIIc, 2.0cm以下のIIa, 腺腫内癌であった.そこで安全誤差をいれて,(1) 1.5cm以下のIIa,(2) 1.5cm以下の胃炎類似型IIcまたはIIb,(3) 腺腫内癌の3つを局所治療の適応とした.切除標本の組織学的検索結果により完全切除は厳重な経過観察, 粘膜内断端陽性は外科的局所切除, 粘膜下層浸潤もしくは脈管浸潤例はR1以上の胃切除を行うという治療体系を作った.現在までの11例中8例は局所切除のみで, 3例では外科的切除が追加された.この治療体系は癌が根治する可能性を下げることなく局所切除を行える優れた治療体系である.
著者
岡田 東彦 太田 素良 木村 優樹 高木 龍太 林 美穂 松倉 未侑 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.375-378, 2020-12

2020年9月上旬に道内S公園で発見されたハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)とハシボソガラス(Corvus corone)計12個体の死体について、剖検および病原体保有状況の検査を実施した。鳥インフルエンザウイルスおよびウエストナイル熱ウイルスの簡易検査を実施したところ、いずれも陰性を確認したが、数種の内外寄生虫を得た。多くの個体で黄褐色に染まった消化管内容物・粘液・吐瀉物等が認められ、頭蓋内出血、気管・腸管の黒変等が認められたことから、薬物中毒が疑われた。吐瀉物等を科学捜査研究所に化学成分の検査を委託したところ、有機リン剤シアノホス(CYAP)の成分が検出された。国内での先行事例と比較して、本事案はCYAP中毒の所見と類似したことから、この物質の急性中毒であることが示唆された。
著者
田島 千裕 Cookson Simon Simon Cookson 桜美林大学基盤教育院 桜美林大学ビジネスマネジメント学群
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.79-97, 2011-01-01

Second language (L2) learners try to make language gain through authentic interactions in study abroad (SA) contexts. However, entering into the home of strangers and building a relationship in L2 is a challenging task. As a consequence, there is a possibility that language anxiety, one of the affective factors, may interfere more with the amount of interactions L2 learners have while abroad.This paper fi rst examines the experiences of 26 Japanese university students during a 15-week SA in Canada, comparing pre-departure anxiety and while-abroad anxiety to see the changes in learners' language anxiety level, and then focuses on the interview responses of learners with high anxiety. By analyzing the interview responses, some experiences related to language anxiety were highlighted. This study indicates that anxiety generally decreased after four weeks of SA in most cases. However, some exceptions were observed. First, learners who identifi ed themselves as shy with high pre-departure anxiety continued to have hgh anxiety.Second, learners with limited English profi ciency with high pre-departure anxiety continued to have high anxiety.
著者
山本 則子 石垣 和子 国吉 緑 川原(前川) 宣子 長谷川 喜代美 林 邦彦 杉下 知子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.660-671, 2002-07-15
参考文献数
23
被引用文献数
10

<b>目的</b> 「介護に関する肯定的認識」が,介護者の心身の生活の質(QOL)や生きがい感および介護継続意思に与える影響を,続柄毎に検討することを目的とした。<br/><b>方法</b> 東京・神奈川・静岡・三重・沖縄の全21機関において訪問看護を利用している322人の高齢者の家族介護者に質問紙調査を実施した。介護負担感が続柄により異なるという過去の報告に鑑み,分析は続柄別に行った。分析には QOL,生きがい感,介護継続意思を従属変数に,属性および介護に関する肯定的認識・否定的認識を独立変数とした重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いた。<br/><b>結果</b> 1) 身体的 QOL に「肯定的認識」は関連しない。<br/> 2) 心理的 QOL と「肯定的認識」の関連は続柄により異なる。介護者が夫および息子の場合は「肯定的認識」のみが,妻の場合は「肯定的認識」,「否定的認識」の両者が心理的 QOL に関連する。娘の場合は「否定的認識」のみが心理的 QOL に関連する。嫁の場合はどちらも心理的 QOL に関連しない。<br/> 3) いずれの続柄でも生きがい感には「肯定的認識」が強く関連する。夫および息子では「否定的認識」は生きがい感に関連しない。<br/> 4) 介護継続意思には,夫および息子では「肯定的認識」,「否定的認識」の双方が関連するが,妻・嫁では「肯定的認識」のみが関連する。娘では「否定的認識」が介護継続意思に関連する。しかし,続柄別の違いはわずかと思われる。<br/><b>結論</b> 介護者の心理的 QOL や生きがい感を高める支援を考えるため,介護の継続を予測するためには,介護の肯定的認識を把握することが重要と考えられる。介護の肯定的認識の影響は続柄別に異なるため,支援に際しては続柄別に検討を行うことが必要である。
著者
上村 直人 藤戸 良子 樫林 哲雄
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.310-316, 2020-09-30 (Released:2021-10-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

近年, 高齢者と自動車運転の問題, 特に認知症と自動車運転は社会的にも問題化し, 臨床現場でも様々な対応や試みが行われている。さらに 2017 年 3 月 12 日からは 75 歳以上の高齢ドライバーは 3 年ごとの免許更新時と基準行為と呼ばれる特定の交通違反を犯すと, 更新を待たずに認知機能検査を受検することが必要となった。その結果, 認知症が疑われる第一分類に判定されれば, 医師の診断を受けることが義務化された。現在, わが国では認知症と判定されれば, 現行法でも既に自動車運転が禁止されているが, どのような状態であれば運転を中断すべきか, という医学的基準や評価方法は確立されていない。認知症といっても軽度から重度まで, また認知症の原因疾患によっても事故の危険性には差異がある可能性があり, 今後さらなる医学的検討が必要である。そこで今回, 臨床現場における認知症と運転行動の関連性のほか, 現時点での課題について解説した。
著者
林 陸郎 廣瀬 規代美 奥村 亮子
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.445-451, 2001-06
著者
柘植 盛男 宮林 達也 田中 誠之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1896-1898, 1971-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

フェノール樹脂およびフェノール化合物-テトラヒドロフラン系について, ゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) の分離機構に関連する実験をおこなった。この系においては分子サイズによる分離効果よりも分子内水素結合による分離効果がより大きく働いていると考えられる結果が得られた。すなわち分子内水素結合を形成する分子サイズが大きいハイオルトフェノールノボラック多量体の溶出容量は同じ分子最で分子内水素結合を形成しない且つ分子サイズの小さいランダムノボラック樹脂の溶出容量より大きいことが認められた。この原因としては分子内水素結合により拘束されたフェノール性水酸基とテトラヒドロフランとの相互作用が, ラソダムフェノールノボラック樹脂のそれよりも小さくなり極限粘度 [η] が低下し, その結果 Benoit のパラメーター [η]・M (Mは分子量) が小さくなり溶出容量が大きくなったものと考えられる。同様にレゾール樹脂中のメチロールフェノール異性体についても, メチロール基とフェノール性水酸基との間に分子内水素結合を形成する異性体の溶出容量は分子内水素結合を形成しない異性体のそれよりも, より大きいことが認められた。またこの現象は一般のフェノール化合物についても, またメチルエチルケトンを溶媒として用いた場合にも認められた。
著者
林 裕史 新正 由紀子 朝戸 裕貴 加我 君孝
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.903-907, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
4

In treating congenital microtia and atresia, we conduct simultaneous external canal plasty, tympanoplasty, and auricle elevation with plastic surgeons about 6 months after auricleplasty by only plastic surgeons. The results are good both cosmetically and functionally. We report 13 cases in which hearing did not improve satisfactorily after surgery using postoperative high-resolution computed tomography (HRCT) of the temporal bone. Lateral healing was seen in 9 (69%), new bone proliferation in 3 (23%), malpositioning of a cartilage block in 2 (15%), and both lateral healing and malpositioning of a cartilage block in 1 (7.6%).
著者
李 樹華 林 まゆみ
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.385-390, 2000-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
9

唐代は中国文化・芸術が大発展を遂げた時代であったが, 同時に庭園事業も全盛の時期でもあった。唐の時代は中国庭園史上に極めて重要な位置を占めている。本研究では,「唐詩類苑」,「古今図書集成」草木典など8文献資料を調べ, 唐代における庭園植物や植栽形式について考察を試みたものである。成果としては、当時の庭園に植えられた針葉樹類, 広葉樹類, 花木類, 竹・ヤシ類, 草花類及び果樹類, 薬草類の種類を明らかにした上で, それらの庭園植物の植栽形式と植栽場所も同時に検討し, 更に唐代における中国庭園の伝統的な植栽法の「松竹梅」,「桃紅柳緑」,「玉堂春富貴」及び「梅蘭竹菊」に関しても考察を行った。