著者
林 勉
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.91-96, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

わが国の自然エネルギー発電はどれだけ有効かについて,導入目標,導入可能ポテンシャル等から評価したが,最大導入可能量は総発電量の15%ぐらいが限度であることを示した。現実にはこれを達成するためには高いハードルがあることおよび自然エネルギーを導入する上での様々な問題点やドイツの例も踏まえた政策上の問題点についても考察した。電源別構成は当面,原子力,火力,水力が主体であり続けるというのが結論である。
著者
福見 秀雄 林 薫 三舟 求真人 七条 明久 松尾 幸子 大森 南三郎 和田 義人 小田 何 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p97-110, 1975-12

長崎地方における日本脳炎(日脳)ウイルスの生態学的研究のうち1964年から1973年に至る10年長間の調査成績を総括し解析を加えた.日脳ウイルスの主媒介蚊であるコガタアカイエカのウイルス感染の拡がりは媒介蚊の密度が最高に達する以前か或いはその時間に一致しているのが例年の様相である.また,人の日脳流行は主に豚の日脳感染が始まる頃の媒介蚊の密度によって影響されるようである.過去10年,相当の大量の越年コガタアカイイカ雌成虫から日脳ウイルスの分離を試みたが,いずれも不成功に終った.このことは蚊体内におけるウイルスの越年の可能性は南方諸地域とは異ることが推察される.
著者
鈴木 富士夫 麻生 久 小林 弘行 大西 勉 石田 名香雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.488-494, 1986-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
30

Carboxyethylgemanium sesquioxide (Ge-132) のウイルス感染症に対する影響をマウスのインフルエンザ感染モデルを用いて検討した。10LD50量のインフルエンザを感染させたマウスに100mg/kg量のGe-132を経口的に頻回投与すると, 生理食塩水投与の対照群に比べ, 1) 生存率の上昇, 2) 肺内ウイルスの増殖抑制, 3) 肺内コンソリデーションの出現抑制, 4) HAI抗体価の上昇抑制などが認められ, 本化合物の感染防御効果が明らかとなった。この有効性は予防的投与では発現されず, ウイルス感染前後および直後からの予防・治療的あるいは治療的投与で顕著であった。また100mg/kgのip, sc, およびimなどの投与で, あるいは33~300mg/kgの経口投与でGe-132の抗ウイルス効果が確認されたが, 経口的に100mg/kg量を頻回投与するのが最も有効であった。Ge-132はin vitroでウイルス粒子やその感染細胞に直接的な影響を及ぼさないので, in vivoにおけるこのような効果は, 宿主の防御機能を介して発現されるものと思われる。因みにGe-132がinterferon-γを誘起したり, natural killer細胞の活性を亢進させることはすでに確かめられている。
著者
林 翔太 山本 雄平 中村 健二 田中 成典
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.781-782, 2015-03-17

過去の交際相手の写真等のコンテンツを嫌がらせ目的でSNSや画像投稿サイトに公開するリベンジポルノが問題視されている.これらのコンテンツは,削除申請があった場合,法律にしたがって削除されるが,適切に削除されたかの確認は申請者側で行う必要がある.しかし,これらのWebサイトでは,新しい投稿によりページの表示内容が更新されるため,削除申請したコンテンツが別のページへ移動している場合があり確認が困難である.そこで,本研究では,Webサイト中の動的な変化に着目し,削除対象と同一のコンテンツ探索手法を提案する.実証実験では,動的なWebサイトと同様の環境を再現し,コンテンツの探索可否を検証する.
著者
佐川 元保 中山 富雄 芦澤 和人 負門 克典 小林 健 櫻田 晃 佐藤 雅美 澁谷 潔 祖父江 友孝 竹中 大祐 西井 研治 原田 眞雄 前田 寿美子 丸山 雄一郎 三浦 弘之 三友 英紀 村田 喜代史 室田 真希子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.929-935, 2020-12-20 (Released:2020-12-28)
参考文献数
2
被引用文献数
1

「肺がん検診の手引き」は2020年に大幅な改訂を行った.この稿では特に重要と思われる「胸部X線検診の読影医の条件」と「症例検討会の実施」に関して背景とねらいを解説する.2017年版の読影医の基準はわかりにくいという批判が多くの自治体職員から寄せられており,改訂が必要であった.2020年版では,「症例検討会等におおむね年に1回以上参加すること」を条件とするとともに,上級医には読影経験も条件とした.「症例検討会」を実施する場合の留意点に関しても併せて述べた.本稿が今後の肺がん検診の精度管理に役立つことを望みたい.
著者
高山 林太郎
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.e1-e118, 2014-09-30

筆者の修士論文を修正して本稿とした。本稿の目的は、日本語の八丈方言の非短母音(長母音・二重母音)を、各地区方言間で比較して、八丈祖語における非短母音の祖体系を再構し、更に古文献『八丈実記』などの状態とも比較して、通時的変化を描くことである。上代東国方言に由来する八丈方言は、上代中央方言に由来する標準語などと、単純に同じ出発点であったとは言えず、また標準語などの辿った変化と、単純に同じような変化を辿ったとは言えないが、一旦はそのように仮定した上で、通時的変化の議論を実施してみることは、決して無益ではない。最終的に非短母音は、それほど古くない、1800年前後から各地区方言へと分岐し、多様化したと分かる。論文 Articles
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.
著者
赤羽 優夏 丸山 麻希 小林 修司 小松 俊雄 唐澤 忠宏 小松 修 矢澤 正信 井上 憲昭
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.310, 2008 (Released:2009-02-04)

<はじめに> 亜鉛は必須微量金属のひとつであり、その欠乏症として味覚・臭覚障害が広く知られているが、この他に褥瘡等の皮膚障害、成長発育障害などにも関与している。これまでの測定方法は原子吸光法が主流であり、その特殊性から、入院患者の一般検査項目に入れられることは少なかった。しかし自動分析用試薬が開発され、当院内においても簡便に測定することが可能となった。今回、入院患者の褥瘡発生と亜鉛濃度との関連性について検討したので報告する。 <対象> 当院に入院中の寝たきり患者33名を対象とした。このうち、褥瘡のある患者(以下、褥瘡(+))は18名(年齢47~109歳 平均83.5歳 男10名 女8名)、褥瘡のない患者(以下、褥瘡(-))は15名(年齢57~102歳 平均86.7歳 男4名 女11名)であった。比較対照として、非寝たきり患者16名(年齢60~89歳 平均79.1歳 男9名 女7名)についても調査した。 <方法> 1.栄養摂取状況の調査 2.血清中亜鉛、総蛋白、アルブミンの測定 測定機器:日立7170S形自動分析装置 使用試薬:アキュラスオートZn(シノテスト社) 自動分析用試薬「生研」 TP (Biuret法) (デンカ生研) エクディアXL‘栄研’ALB-BCG (栄研化学) <結果> 血清亜鉛平均値は褥瘡(+)患者47.0μg/dl、褥瘡(-)患者55.8μg/dlで、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間に有意差(t検定)を認めた。総蛋白平均値は褥瘡(+)患者6.21g/dl、褥瘡(-)患者5.97g/dlで、有意差は認めなかった。アルブミン平均値は褥瘡(+)患者2.99g/dl、褥瘡(-)患者平均3.22g/dlで、有意差は認めなかった。なお非寝たきり患者の平均値は、亜鉛61.0μg/dl、総蛋白6.89g/dl、アルブミン3.78g/dlであった。 <考察> 今回、血清亜鉛、総蛋白、アルブミンのうち、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間において有意差が観察されたのは、血清亜鉛のみであった。また、褥瘡(+)患者の亜鉛平均値は基準値(65~110μg/dl)を大きく下回っていた。以上のことから、寝たきり患者においては、血清亜鉛濃度を測定することにより褥瘡発生を予測できる可能性があると考えられた。 褥瘡の予防において栄養状態の良否は大きく影響する。通常、栄養状態を評価する検査項目として総蛋白、アルブミン値が利用されているが、本研究結果によれば両者の値から褥瘡の発生を予測することは困難であると考えられた。 亜鉛濃度が院内で簡便・迅速に測定できるようになったことで、亜鉛の褥瘡マーカーとしての有用性が今後高まっていくであろうと思われる。
著者
三冨 敬太 小林 延至 赤木 真由 高野 研一
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.59-78, 2021 (Released:2021-04-15)

現状、アイデアの創造から市場投入までの開発プロセスにおいて、プロトタイピングが開発プロセスの進行に与える効果については先行研究も少なく、実際に実施したプロジェクトで調査したものも少ない。したがって、本研究の目的は、プロトタイピングが開発プロセスの進行に対してどのような効果を果たしているのかを、24回のプロトタイピングを実施した製品「Your Pleasure」の開発において、「開発プロセス」と「実施プロトタイピング」をマッピングし考察を行い、開発プロセスの進行を促す効果を提示することである。結果、「プロトタイピングは調整が必要な領域を理解させ、開発プロセスを進行させる」、「プロトタイピングは開発プロセスの停滞から抜け出させ、進行させる」具体的効果が認められた。この2点の効果については、これまでの先行研究で述べられていないことから、新規性があると考えられる。
著者
牧野 理沙 松林 正 大箸 拓 澁谷 温
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.229-233, 2019

<p>本邦では非常に稀な異常ヘモグロビン症(Hb Sabine, Hb Evans, Hb Hazebrouck)を報告する.Hb Sabine,Hb Hazebrouckは本邦初報告である.症例1は幼児期から重症の溶血性貧血を呈し,無形成発作を繰り返したため,脾臓摘出術を施行した.遺伝子検査でHb Sabine [β91(F7)Leu→Pro, CTG→CCG(β)]と診断した.症例2は新生児期に溶血性黄疸を呈し,その後も軽度の溶血性貧血を認めていた.遺伝子検査でHb Evans [α62(E11)Val→Met, GTG→ATG(α2)]と診断した.その母も溶血性貧血(脾臓摘出術後)の既往あり,子の診断を契機にHb Evansと診断した.症例3は呼吸障害がないにもかかわらず経皮的動脈血酸素飽和度(SpO<sub>2</sub>)低値を呈し,動脈血酸素分圧(PaO<sub>2</sub>)との解離を認めたことから異常ヘモグロビン症を疑った.遺伝子検査でHb Hazebrouck [β38(C4)Thr→Pro, ACC→CCC(β)]と診断した.その父もSpO<sub>2</sub>低値を認め精査したところ,Hb Hazebrouckと診断した.全症例共通して程度はさまざまだが貧血を呈し,SpO<sub>2</sub>低値を認めた.「症例1」と「症例2の母」ではEMA染色と赤血球膜band3抗体で封入体は斑状陽性となり,これらの結合物が膜障害をきたし脾臓摘出後も溶血をきたしているものと考えられた.</p>
著者
番場 祐基 茂呂 寛 永野 啓 袴田 真理子 島津 翔 尾方 英至 小泉 健 張 仁美 青木 信将 林 正周 佐藤 瑞穂 坂上 亜希子 小屋 俊之 菊地 利明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.500-506, 2019-07-20 (Released:2020-02-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

[目的]国内3種の(1→3)―β―D―グルカン(以下β―D―グルカン)測定試薬における測定結果と患者の臨床背景を比較し,深在性真菌症の診断における有用性および試薬間での測定結果の乖離,偽陽性の要因について評価する.[方法]新潟大学医歯学総合病院において2017年8月から2017年11月にかけてβ―D―グルカン検査が提出された患者を対象とし,測定残余血漿を用いて以下の3試薬について測定した.(1)ファンギテックGテストMKII「ニッスイ」(以下MKII法),(2)ファンギテックGテストES「ニッスイ」(以下ES法),(3) β―グルカンテストワコー(以下ワコー法).[成績]171患者,245検体が対象となった.深在性真菌症患者は疑診を含め7例であった.β―D―グルカン測定値は,同一検体間の比較でMKII法が最も高く,次いでES法,ワコー法の順であったが,互いに有意に相関していた.感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率などの診断特性は各試薬によって異なっていた.MKII法で偽陽性を比較的多く認めたものの,深在性真菌症(疑診含む)診断におけるROC曲線下面積には有意差はなかった.いずれかの試薬による偽陽性を呈した14例について,階層型クラスター分析を用いて分類したところ,偽陽性のパターンに一定の傾向が認められた.[結論]各測定試薬によるβ―D―グルカン測定の結果は概ね相関しているが,測定値は大きく異なっており,異なる試薬同士の比較は困難である.深在性真菌症診断における差は小さいが,それぞれの試薬の診断特性を理解し使用するべきである.また試薬によって偽陽性の原因が異なる可能性が示唆された.