著者
久保山 昇 林 一郎 山口 忠志
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.3, pp.223-232, 2006-03-01
参考文献数
38
被引用文献数
2 14

ミグリトール(セイブル<sup>®</sup>錠)は糖に類似した化学構造を有し,体内に吸収されることにより類薬と異なる作用特性を示す新規α-グルコシダーゼ阻害薬(以下α-GIと略)である.薬物動態試験において,ミグリトールはラット小腸上部にて吸収され,代謝を受けずにほとんどが尿中に排泄された.また,肝薬物代謝酵素の誘導および阻害作用は認められなかった.薬理試験において,ラットの小腸由来スクラーゼ,イソマルターゼおよびマルターゼ活性を競合的に阻害するが,膵α-アミラーゼ活性を阻害しなかった.正常ラットにスクロースを負荷した際に用量に依存した血糖上昇抑制および糖質吸収遅延作用を示し,高用量においては糖質の吸収を阻害した.α化でんぷん,生でんぷんおよびスクロースを負荷した際の血糖上昇を用量依存的に抑制したが,グルコース負荷に対しては作用を示さなかった.また,GKラットに高スクロース・高脂肪食を8週間与えた慢性モデルに対し,HbA<sub>1C</sub>の上昇を抑制し,膵島の病理組織変性を抑制する傾向を示した.国内の臨床試験では,2型糖尿病患者に対し食後の急峻な血糖上昇を強力に抑制し,血糖上昇ピークを遅延させ,食後の急峻な血糖上昇によるインスリンの過剰な分泌を抑制した.また,12週間の用量反応試験では用量に依存した食後血糖およびHbA<sub>1C</sub>の低下が認められた.スルホニルウレア(以下SUと略)剤との12週間の併用試験においては,空腹時血糖,食後の血糖および血清インスリンの低下,HbA<sub>1C</sub>の低下が認められ,継続して実施された52週間の長期投与においてもこれらの作用が減弱することはなかった.有害事象の大半は過度の薬理作用と考えられる消化器症状であった.また,低血糖は単独投与では発現せず,SU剤との併用においても発現率を増加する傾向はなかった.以上,非臨床および臨床試験の成績から,ミグリトールは2型糖尿病の食後過血糖を改善し,かつ安全な薬剤であると考えられた.<br>
著者
久保田 一雄 田村 耕成 倉林 均 武 仁 白倉 卓夫 田村 遵一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.61-68, 1997 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

To clarify possible involvement of hot spring bathing in the occurrence of acute myocardial infarction and cerebral infarction at Kusatsu, its effects on blood pressure, heart rate, plasma cortisol and hematocrit were examined in 9 healthy young men. Abrupt increase in systolic blood pressure was observed immediately after starting a 3-minute 47°C or a 10-minute 42°C hot-spring bath. Both systolic and diastolic blood pressure were abruptly decreased one minute after completing either 47°C or 42°C bathing. The heart rate was increased gradually after the start of either 47°C or 42°C bathing and was decreased gradually after the completion of either 47°C or 42°C bathing. It was considered that the plasma Cortisol level was increased 15 minutes after starting 47°C bathing and the hematocrit was increased 15 minutes after starting 42°C bathing. We have already reported that fibrinolytic activity was decreased and platelet function was activated by 47°C bathing. Taken together, it is suggested that the mechanism of the occurrence of thrombotic diseases after hot spring bathing may be explained by considering transient changes in blood pressure, heart rate, blood viscosity, fibrinolytic activity and platelet function induced by hyperthermal stress.
著者
小林 省蔵 大河原 敏文 斉藤 渉 中村 ゆり 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.453-458, 1997-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
2 20

細胞融合により3倍体を作出する目的で, '十万'ウンシュウ, '大三島'ネーブルオレンジおよび'トロビタ'スイートオレンジの珠心起源カルスのプロトプラストとクレメンティンの半数体 (No. 1およびNo. 2)の葉肉起源のプロトプラストを, 3組合せ (ウンシュウ+半数体No. 1, ネーブルオレンジ+半数体No. 2およびスイートオレンジ+半数体No. 1) で電気的に融合させた.得られた植物体の根端細胞の染色体数調査を行ったところ, 2倍体 (2n=18) と3倍体 (2n=27) が混在したが, いずれの組合せにおいても3倍体が存在した. これら植物体についてRAPD法により雑種性を調査したところ, 3倍体はいずれも両親に特異的なバンドの両方を含んでおり, 体細胞雑種個体であることが確認された.
著者
岡本 歩 武山 直治 大沼 俊和 小林 加代子 上木 美智子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.255, 2006

<b>〈緒言〉</B>検診効果を高めるためには、検診及び精検受診率の向上を図り、検診及び精検機関の精度を一定以上に維持する必要がある。そのためには地域の関係機関が連携し取り組む必要がある。旧高山市住民の胃がん検診は、H11より当検診センターで実施しているが、胃がん発見率が徐々に低下傾向にあった。そこで関係機関に胃がん検診検討会への参加を呼びかけ、共にこの地域における胃がん検診の現状を分析したので報告する。<BR><b>〈検討会開催方法〉</B>内容:(1)飛騨地域胃がん登録状況(2)検診と精度管理方法、(3)検診実績、(4)検診・精検受診勧奨の方法、(5)X線写真による症例説明を、各機関が発表し意見交換した。参加機関:飛騨地域保健所、高山市保健センター。精検医療機関(市内のT病院、開業医、当院)。<BR><b>〈結果〉</B>1.胃がん登録状況の分析:表1、2より飛騨地域の胃がん罹患率は全国とほぼ同じであるが、死亡率はやや高く近年上昇している。有効な検診に向けて取り組む必要がある。<BR>2.検診結果の分析:要精検率は年々低下し、消化器集検全国集計(H15)の10.8%と比較しても低い。また胃がん発見率はH14より低下傾向で全国集計の0.15%を下回っていた(表3)。この要因の一つに、初回受診率が低いことが考えられた。検診対象者の拡大に向けて申し込み方法の検討や啓蒙活動が必要である。<BR>3.精検精度の分析:(1)精検方法はほとんどが胃カメラであったがUGIの実施もあった(図1)。精検としてUGIを実施してよいか討論した。その結果、精検の場合は検診よりきれいな写真を撮る必要があるとの意見が出された。この意見を反映し、市で配布する「胃精密検査実施医療機関一覧」は、きちんと精検を行える機関であるか検討する方向性が出された。(2)精検機関の割合は開業医が半数、残り半数が当院とT病院であった(図2)。また胃がん発見割合は、当院が半数以上、開業医3割、T病院1割以下であった(図3)。精検実施数に比例した胃がん発見数が求められ、役割を果たすために、精度を高める努力が必要である。数値より分析することで問題が明確化し方向性を見出すことができた。今回の検討会により、関係機関が胃がん検診の現状を認識し問題点を共有することができた。この会を継続し、有効な胃がん検診の実施に向けて取り組みたい。
著者
林 真輝 田村 康宏 大谷 陽範 森岡 みほ子 笹本 剛生 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.223-228, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
20

魚介類中のトリブチルスズ化合物(TBT)およびトリフェニルスズ化合物(TPT)の高速溶媒抽出装置(ASE)およびLC-MS/MSを用いた分析法を開発した.LC分離は,コアシェル性オクタデシル化シリカゲルカラムを用いて0.1%ギ酸70%メタノール溶液によるアイソクラティック移動相条件で行った.試料を抽出温度125℃,抽出溶媒n-ヘキサンの条件でASE抽出し,フロリジルカートリッジカラムを用いて精製した.これらにより,脂質が多い魚介類に対しても適用可能となった.定量は重水素標識したTBTおよびTPTを用いたサロゲート法により行い,検量線は0.2~250 ng/mLの範囲で直線性が得られた.本法による定量下限値はTBT,TPTともに0.8 ng/gであった.本法を用いて,TBTおよびTPTの認証値が付与されたホタテ貝柱の環境標準物質の分析を行ったところ,分析値は認証値と有意差がない結果が得られた.スズキ,ボラ,アナゴ,カレイ,アサリを対象に2併行,5日間の添加回収試験を行った結果,真度89.3~105.3%,併行精度(RSDr) 1.0~4.5%,室内精度(RSDwr) 1.3~7.6%の良好な結果が得られた.
著者
佐々木 隆宏 田原 正一 豊原 律子 森川 麻里 坂牧 成恵 貞升 友紀 牛山 慶子 山嶋 裕季子 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.229-234, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

第2版食品中の食品添加物分析法の方法(2版法)において,チーズでは抽出液が懸濁する場合,固形物が浮遊して定容が困難な場合,夾雑成分によりHPLC-UV分析が困難な場合がある.清酒では,共沈操作が不要と考えた.そこで,チーズについては抽出液の懸濁の原因となる水酸化ナトリウム溶液の添加量を減らし,固形物を除くため吸引ろ過後に定容する方法を確立した.清酒については,希釈後,遠心分離する方法とした.また,カーボンモレキュラーシーブが充てんされたカートリッジによる固相抽出法も開発した.添加回収試験(n=5)では,91.3~99.6%(CV 0.9~4.5%)と平均回収率および併行精度が良好であり,チーズで0.010~0.20 g/kg,乳で0.010~0.20 g/L,清酒で0.010~0.10 g/kgの範囲に適用可能であった.本法は2版法の問題を解消し,操作が効率的である点で有用な分析法と考えられた.
著者
鶴永 陽子 高林 由美 西 万二郎 鈴木 芳孝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.437-444, 2011-07-15 (Released:2013-08-29)
参考文献数
21

We investigated the contents of ascorbic acid, astragalin and polyphenols, and the 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH) radical scavenging activity of 22 commercial persimmon leaf tea products. There were marked differences in the ascorbic acid content among the products (0-1,300 mg/100 g dry weight (DW)).The astragalin content of the products ranged from 0 to 219 mg/100 g DW, the polyphenol content ranged from 900 to 6,070 mg of catechin eq./100 g DW, and the radical scavenging activity ranged from 12 to 41mmol Trolox eq./100g DW. We determined the effects of water content, roasting temperature, and roasting time on the ascorbic acid content, polyphenol content, and DPPH radical scavenging activity to clarify the reasons for the differences among these persimmon leaf tea products. The results suggest that the optimum conditions for retaining the ascorbic acid content, polyphenol content, and DPPH radical scavenging activity were a water content of 5% or less and non-roasting. A low temperature of approximately 150°C was the most suitable for a roasting treatment.
著者
鶴永 陽子 高林 由美 鈴木 芳孝 西 万二郎 松本 真悟
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.309-314, 2009-11-30
参考文献数
22

柿葉茶の浸出方法および浸出液の保存方法が、アスコルビン酸、アストラガリンおよび総ポリフェノール含量に及ぼす影響を検討した。その結果、成分により効率よく浸出するのに適する入れ方は異なった。アスコルビン酸は、5℃の冷水の場合は10〜60分間、60〜100℃の熱水の場合は、3〜10分間程度置く方法が適していた。一方、アストラガリンおよび総ポリフェノールは、半量になるまで煮詰める方法や加圧浸出などの方法を用いることによって浸出効率は高まった。また、浸出液中のアスコルビン酸は5℃程度の低温下で保存する方法が最も含量が保持された。しかし、アストラガリンおよび可溶性ポリフェノールは高温条件下の保存でも安定性に優れ、90℃で24時間保存した場合でも、アストラガリン含量の減少は約10%の減少にとどまり、総ポリフェノール含量はほとんど減少しなかった。
著者
林 慶雲
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.25-36, 1999-03-31 (Released:2019-07-01)

香港は, 1997年7月1日, 約150年にわたるイギリスの植民地の歴史を終え, 中国に返還された.返還後の香港は, 社会主義の国に戻ったが, 確立している資本主義的な経済体制, 自由主義的な社会体制をそのまま維持することになっており, いわゆる「一国二制度」が実施されている.イギリスの植民地時代, 香港の会計制度ならびに会計制度の一部である財務報告制度は, イギリスのそれを範としたものと思われる.しかし, 中国への返還が確実となった1980年ごろからは, 多くの香港企業が返還という現実を見こんだ企業行動をとり始めた.そのなかの1つは, さらなる経営国際化である.企業経営国際化の進展にともない, 資本市場の国際化が一層促進され, そのため, 財務報告制度の国際調和化問題も問わされるようになった.本研究は, 香港における財務報告制度を, 香港の特別な社会状況との関連から考察し, その制度の特殊性や国際会計基準との調和化などについて検討するものである.
著者
大下 優介 八木 敏雄 平林 幸大 石川 紘司 江黒 剛 逸見 範幸
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.752-756, 2020

2013年6月に富士山が世界遺産に登録されて以降訪日観光客が増加しそれに伴い救急受診される症例臨床の現場で経験される.しかし,旅行者がどのような病態で受診されているのかの詳細な報告は無い.本研究の目的は,訪日旅行客の受診内容を調査し,今後の対策を検討する事である.2015,2016,2017年度に当院に受診された訪日旅行客をretrospectiveに調査した.それぞれの年度に受診された患者総数は154人,149人,171人であった.平均年齢は36歳(0-89)であり,男性223人・女性251人であった.受診時間は平日の一般診療時間内が205人(43.2%)であり,269人(56.8%)は夜間や休日祝日の受診であった.受診の原因となった疾患は感冒などの内科系疾患が168例,骨折や脱臼などの外傷が166例,膀胱炎や尿路結石などの泌尿器科系疾患が22例,不正性器出血などの婦人科疾患が21例で,小児科受診が64例であった.また来院時CPAが1例にあった.近隣住民であれば翌日まで経過を見ることも可能な症例も旅程のため,夜間の受診を余儀なくされている状態であった.一般的に入院精査を行っていたと考えられる症例も移動の予定などのため再診予定も立てられず応急処置のみとなっている症例もあった.海外からの訪日外国人の受診状況を調査した.夜間休日であっても,さまざまな疾患で受診されておりGeneralistとしての対応が求められている現状であった.今後さらに外国人旅行者が増えると考えられ,その対策は急務である.
著者
林 宏樹 笹嶋 宗彦 大里 隆也
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.146-150, 2020-12-12

本論文は,全校生を対象とした兵庫県立姫路西高等学校のデータサイエンス教育の3年間のカリ キュラム開発についての概要である.教科「数学」「情報」「課題研究」「総合的な探究の時間」における 横断的なカリキュラムマネジメントにより,データサイエンスを基盤とした研究活動を実施するカリキ ュラム開発を行う.全校生対象の高等学校におけるデータサイエンス教育実践の1つの事例である。 また,「データサイエンス探究・研究」という学校設定科目の客観的な評価基準を作成する.
著者
松本 泰章 中川 晶 小林 剛史 山本 晃輔 岩崎 陽子 真板 昭夫 杉原 百合子
出版者
嵯峨美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、アーティストと美学研究者が精神医学・高齢者看護・心理学各分野の研究者とともに学際的研究体制を構築し、高齢者のための匂いのアートを使った記憶想起と、それに伴う発話行為の効果を計測し、高齢者の感情の活性化、発達課題の達成、さらには認知機能維持・向上に資することを目指す。既に本メンバーは先行する「なつかしさを喚起する匂いのアート研究」で成果を上げており、この研究体制と問題を引き継ぐ形で回想法の構築へと発展させる。匂いのアートを用いた回想法で、現代の超高齢社会の問題解決に資する実践的アート研究を実施する。
著者
鳥井 信一郎 小林 収
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1067, pp.76-78, 2000-11-20

問 バブル崩壊後の長引く消費不況の中で、飲料、ビールなど様々な分野でヒット商品を連発しています。その秘訣は何でしょう。 答 新製品は我々が考えるのではなく、常日頃から市場を回っている若い社員に開発を完全に任せています。「なっちゃん」とか「ダカラ」といった商品が出てくるのも、若い人に任せているからです。ああいうのは我々では絶対思いつかない。