著者
小林 博行
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.53, no.269, pp.85-98, 2014 (Released:2020-12-09)

The Seki Teisyo (関訂書), a manuscript compiled by Seki Takakazu (関孝和) in 1686, is known to consist of 15 treatises which Seki extracted from an early Qing astronomical and astrological corpus, the Tianwen Dacheng Guankui Jiyao (天文大成管窺輯要). Containing a detailed account of the Shoushi Li (授時暦) as well as a comparative study of Chinese and Islamic calendrical systems, these treatises have drawn the attention not only of Seki but of modern historians. In this paper, I show that 14 of the 15 treatises Seki selected had been composed by a late Ming scholar, Zhou Shuxue (周述学), who discussed issues with Tang Shunzhi (唐順之). Their time predates the era in which the mathematical basis of the Shoushi Li was scrutinized and a new Chinese calendrical system was invented incorporating Western astronomical knowledge. I also mention some earlier works that Tang and Zhou could have consulted. Although Seki never knew the author of the treatises nor their background, his concern centered on themes that seem to have derived from one of those earlier works: the Liyuan (暦源).
著者
伊奈 沙織 二村 昭元 若林 良明 中川 照彦 宗田 大
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.1099-1102, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
10

We experienced an extremely rare case of thoracic outlet syndrome (TOS) caused by fatigue fracture of the first rib. Case: A 25-year-old male, semi-professional volleyball player, he complained of numbness and weakness of the left upper extremity. Eden-Test, Morley-Test, and Wright-Test were positive on the left. X-ray showed bilateral first rib fractures (non-union on the left side), which was likely caused by heavy muscle training. 3D-CT suggested that the dynamic movement of the pseudoarthrosis following the fatigue fracture was developing incomplete brachial plexus palsy.We performed a surgical decompression by supraclavicular approach without clavicle osteotomy. Compression of the brachial plexus by the dynamic movement of the non-union site was observed. We resected the rib apporoximately 3cm in total.His symptoms had resolved completely after the operation, and he has no problems in playing volleyball.Only a few cases of TOS due to the first rib fracture that has been treated surgically, have been reported. It usually involves the lower trunk of brachial plexus, as we presented. Roos approach and supraclavicular approach are known for TOS operation. Clavicle osteotomy is usually required in the latter approach; however, the procedure seemed invasive for top athletes. Therefore, we chose a supraclavicular approach without clavicle osteotomy in this case. Through this approach, we could obtain a sufficient surgical field to decompress the brachial plexus. In conclusion, we experienced a rare case of TOS caused by non-union after fatigue fracture of the first rib in a volleyball player. Surgical treatment led to complete resolution of the symptoms.
著者
菊地 紗耶 佐野 ゆり 小澤 千恵 平野 秀人 小林 奈津子 本多 奈美 松岡 洋夫
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.102-113, 2016

周産期におけるメンタルヘルス支援は、妊娠期および産後の母親のメンタルヘルス支援だけでなく、子どもの健全な身体的情緒的発達や、夫婦や親子といった家族関係の問題まで幅広い支援が求められている。地域母子保健や産科医療機関におけるスクリーニングは全国的に浸透してきているが、今後はそのスクリーニングを生かすために、その後のアセスメントと支援の質の向上がより重要になる。母子保健担当者や助産師等によるアセスメント能力の向上、支援技術の充実、更に必要な妊産婦に適切な精神科医療を提供するという一連の流れを全国的に実施できるような体制が必要である。各地域で積極的に取り組んでいる母子のメンタルヘルス支援の実践を生かし、今後は日本の医療保健福祉の資源に見合った、体系だった支援体制の構築という次の段階に進む時期である。
著者
林 芙美 坂口 景子 小岩井 馨 武見 ゆかり
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.245-258, 2020-11-30 (Released:2020-12-08)
参考文献数
34

目的:児童を対象に食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life: SDQOL)を用いて食生活の満足度を総合的に評価し,食行動・食態度や児童の食事中に本人や家族がスマートフォン等(以下,スマホ等とする)を使用することがSDQOLとどう関連するかを検討する.方法:研究デザインは横断研究である.2019年3月,埼玉県S市内の公立小学校3校に在籍する5年生全員を対象に自記式質問紙調査を集合法により実施した.当日欠席者等を除く255名(男子114名,女子141名)を解析対象者とした.食行動・食態度およびスマホ等の使用状況別に対象者を4群に分け,クラスカル・ウォリス検定を用いてSDQOLの合計得点を比較した.結果:食行動・食態度が良好で且つ食事中に児童本人や家族のスマホ等の使用がまったくないと回答した児童でSDQOLは高かった.しかし,食行動・食態度が良好であっても,家族がスマホ等を使用することがある児童のSDQOLは低かった.また,児童本人や家族が食事中にスマホ等を使用していても,夕食時に自発的な会話があるなどの食行動が良好な児童のSDQOLは高かった.結論:SDQOLの向上においては,児童の食事中に家族がスマホ等を使用しないこと,また,スマホ等を使用することがあってもコミュニケーションが活発になる環境を整えることが重要であると示唆された.
著者
川上 優太 原 彩香 川瀬 遵 黒崎 守人 角森 ヨシエ 林 芙海 村上 佳子
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.160-165, 2016-09-30 (Released:2017-01-20)
参考文献数
17

2010年に発生したサルモネラO4群による集団食中毒2事例の患者および元施設従事者由来株について,詳細な解析をしたところ,STのmonophasic variantであるSalmonella serovar 4,[5],12 : i : – であることが判明した.2事例の疫学調査からウズラ卵が原因食品と推定されたため,県内に流通するウズラ卵のサルモネラによる汚染実態を調査した.その結果,ウズラ卵からSalmonella serovar 4,[5],12 : i : – は分離されなかったが,ウズラ卵のサルモネラによる汚染が確認されたことから,ウズラ卵の取扱いは注意する必要がある.
著者
阿藤 みや子 小林 賢 鈴木 洋司 鈴木 由美 金子 朋江 松崎 雄三 石上 園子 福田 安子 玉井 誠一
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-77, 2003 (Released:2017-03-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

血液型検査においてキメラが疑われた症例が見出されたので, HLA-A, B, CとHLA-DRB1のDNAタイピング, マイクロサテライト解析およびフローサイトメトリー解析を用いた確認試験により双生児キメラであることが示唆された. 本症例は, 37歳の男性で, 二卵性双生児の弟がいる. 平成14年9月左橈骨遠位端骨折のため越谷市立病院に入院したが, 輸血歴はない. この症例の末梢血を用いてABO血液型のフローサイトメトリー解析ならびにヨウ化カリウム法で末梢血からDNAを抽出し, マイクロサテライト解析, ABO血液型遺伝子タイピングおよびHLA遺伝子タイピングを実施した. フローサイトメトリー解析の結果, B型血球とAB型血球が90.04%と9.96%の比率で混在していた. すべての遺伝子検査で3種類ないし4種類のアリルが検出された. これらのことから, この症例が双生児キメラであることが示唆された.
著者
内海 慶 小町 守 町永 圭吾 前澤 敏之 佐藤 敏紀 小林 義徳
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-7, 2010-12

我々は,クエリ訂正を統一的に行う手法として,検索クエリログとクリックスルーログを用いたグラフに基づく手法を提案する.提案手法では,クリックスルーログを用いたラベル伝播により,入力されたクエリで検索を行った場合と同一のページに到達するクエリを獲得し,これをクエリの訂正候補とした.次に,獲得した訂正候補に対して,検索クエリログから生成した言語モデルを用いて尤度を計算し,ラベル伝播時のスコアとあわせて候補のランキングを行った.これによって,人手による学習コーパスを必要とせずに,入力されたクエリと高く関連し,かつクエリとして適切な候補をログから抽出できることを示す.In this paper, we propose a new method to refine web search queries. This method is based on a graph theoretic label propagation and uses web search query and clickthrough logs. Our method first enumerates query candidates with common landing pages with regard to the given query. Then it calculates likelihoods of the candidates, making use of language model generated from web search query logs. Finally the candidates are sorted by their scores calculated from the likelihoods and the label propagations. As a result, we are able to extract appropriate candidates from web search query and clickthrough logs, without using hand-crafted training data.
著者
門馬 綱一 池田 卓史 長瀬 敏郎 栗林 貴弘 本間 千舟 西久保 勝己 高橋 直樹 高田 雅介 松下 能孝 宮脇 律郎 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2014年年会
巻号頁・発行日
pp.36, 2014 (Released:2019-03-20)

千葉県南房総市荒川から、千葉石と共生して産出した未命名シリカ鉱物について、新鉱物bosoite「房総石」として国際鉱物学連合新鉱物命名分類委員会の承認を受けた。房総石はケージ状骨格構造中にメタンやエタンなどのガス分子を含み、構造H型のガスハイドレートと同形構造である。
著者
高橋 彰 若林 宏 本多 和彦 加藤 忠哉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-274, 1978
被引用文献数
1

ABおよびABA型のスチレン-テトラヒドロフランブロック共重合体 (テトラヒドロフランプロックの分子量60,000~70,000) のぬれと表面のモルホロジーを検討した. シクロヘキサン溶液から製膜したフィルムへの水の接触角 (θ) 測定とオスミウム酸で染色したフィルムの電子顕微鏡観察を行った. cosθはブロック共重合体の組成に依存せず, テトラヒドロフランに富む共重合体のぬれはポリスチレンにほぼ同じであり, スチレンに富む共重合体はこの逆であった. 電子顕微鏡写真の解析からスチレン部の表面組成を求めた. スチレン部あるいはテトラヒドロフラン部の表面への蓄積はテトラヒドロフラン部の結晶化または界面活性によることが示された. cosθ, すなわち, ぬれは表面のモルホロジーに無関係に共重合体の表面組成の関数であることが分かった.
著者
松下 紀子 小宮山 浩大 田辺 康宏 石川 妙 北條 林太郎 林 武邦 深水 誠二 手島 保 櫻田 春水
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1117-1121, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
10

症例は,45歳,男性.通勤時に突然の上腹部痛を自覚し他院へ搬送された.精査のために施行した腹部造影CTで上腸間膜動脈に解離を認め,急性上腸間膜動脈解離症と診断され,加療目的に当院へ搬送となった.来院時は血圧 143/85mmHg,上腹部に自発痛と圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.血液検査ではアシドーシスは認めず,CK 182U/Lと軽度高値,D-dimerは正常範囲内で腸管虚血を示唆する所見は認めなかった.軽度の腹痛は残存するものの,症状は落ち着いていたため保存的加療の方針とし,禁食・ヘパリン持続投与を開始した.来院8時間後に,急な腹痛を訴え腸管の虚血所見を認めたため緊急カテーテル検査を施行した.上腸間膜動脈起始部から解離を認めIVUSでは偽腔により真腔が大きく圧排されていた.解離を修復するように遠位より,2本のステント(PALMAZ Genesis® 6×15mm,E-Luminexx® 10×60mm)を留置し,良好な血流が得られ腹痛も軽快した.急性上腸間膜動脈解離は比較的稀であり,その治療法も一定していない.今回,われわれは急性期に反復する腹痛と腸管虚血を呈した上腸間膜動脈解離に対してステント留置を行い良好な結果が得られた.文献的考察を踏まえて報告する.
著者
加藤 博之 松谷 秀哉 小林 只 大沢 弘
出版者
弘前大学21世紀教育センター
雑誌
21世紀教育フォーラム
巻号頁・発行日
no.11, pp.31-37, 2016-03-31

【背景と目的】医学部1 年生に対し、入学後のモチベーションの低下を防ぎ、能動的な学習姿勢を修得させ、さらに医師のプロフェッショナリズムを涵養する教育方法は、未だ確立されたものがあるとは言い難い。本学では1 年次に「臨床医学入門」の授業を通年で行なって、この問題への対応に努めており、本稿では本科目の全体像について報告する。【対象と方法】1 年次学生を対象とし、平成21年度より開講している科目「臨床医学入門」は毎週水曜の午後行われる。教育方法は講義、実習、演習(ワークショップ)など多岐にわたる。授業内容としては、(1)「こんな医師になりたい」をテーマに作文を書き、同級生全員の前で自己紹介を兼ねて発表、(2)「患者さんの願いと医師が果たすべき役割」をテーマとしたワークショップ、(3)「弘前大学医学部の歩みとこれから」の講義、(4)アーリーエクスポージャー、(5)地域医療の最前線の医師による講義「現場の医療を知ろう」、(6)コミュニケーション実習「模擬患者さんと話してみよう」、(7)地元について知る講義「津軽学」、(8)まとめのワークショップ、などから成っている。これらの教育内容はいずれも、Intrapersonal professionalism、Interpersonalprofessionalism、Public professionalismの涵養に通じるものである。これらは医師になる者の基本であり、特に本学学生の約半数を占める地域枠入学者のPublic professionalismの修得は重視されている。【結論】プロフェッショナリズムの涵養に焦点を当てた初年次教育は、長期的な効果が期待できる。
著者
伊藤 健一 野村 龍太郎 小林 一隆
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.43-52, 1973-01-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
9

X線テレビあるいは電子顕微鏡といった, 本来白黒の情報しかない映像にその濃淡に応じて着色するカラーディスプレイのひとつとしてスライス方式のものを完成した.本又ではその着色原理および使用したスライス回路, カラーマトリックス, ビデオフィルター, マグニファイア回路シェーディング補正回路などにつき説明し, 最後に本方式の誤差に言及した.
著者
本田 剛 林 雄一 佐藤 喜和
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
24
被引用文献数
11

農業被害を引き起こすイノシシの行動を明らかにするため,被害を受ける農地と森林の境界となる林縁周辺で捕獲した個体を対象とし,季節及び時間ごとの環境選択を解析した.2004~2005年の5~11月にイノシシを6頭捕獲・追跡し,標高及び植生に対する選択性を一般化線形混合モデルにより調べた.このうちの1個体は森林外で一度も確認されず,林縁から1,000 m以上離れた林内まで利用した.一方,森林外を利用した5個体のイノシシの内,4個体は林縁周辺を集中的に利用した.森林外を利用した個体の環境選択を季節及び時間別にみると,春夏期の日中は低標高地と森林内を好み,夜間は低標高地と森林外を選択的に利用した.森林外の利用地は主に農地と耕作放棄地であった.以上のことから,農地を加害するイノシシの捕獲は,林縁周辺で実施することが効果的であると結論した.