著者
小林 吉之
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,ヒトが歩行中に転倒するもっとも主要な要因である『つまずき』が生じる一因を解明するために,これまで著者らが行ってきた研究で得られた知見を基に,ヒトが歩行中に足部の位置をどの程度正確に知覚できているか,その特性を実験的に明らかにすることを目的とした.本研究の結果,ヒトの足部は歩行中遊脚期にも30mm程外側に偏っている事が確認された.
著者
白井 克彦 林 良彦 平田 裕一 久保田 淳市
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.706-714, 1985-07-15
被引用文献数
3

日本語文の構造は 文の構文的・意味的な構造に大きく関わっている.よって 日本語文の処理を行う場合 その係り受け構造を明らかにすることが重要である.計算機により日本語文の係り受け解析を行う研究は広く行われているが そのために必要な知識の獲得・構造化を半自動的にかつ適応的に行うための研究は少ないように思われる.本論文では テキストデータに対する分析から直接的に以後の成長の核となる初期辞書データベースを構成する方法 および成長のための学習機能について検討した.この辞書データベース中では 単語はその係り受け特性に基づいてクラスタリングされ 分析対象としたテキスト中の単語間の係り受け関係は クラスタ間の係り受け可能関係として抽象化されて記述される.本辞書データベースは 実験文解析システムESSAYによる文解析に適用され その評価を受ける.さらに 解析が不成功である文において そのネガティブな状況より獲得される情報を用い 学習構造化の処理を受ける.このように 言語要素(単語等)の使われ方に基づいて知識の獲得を行うため 対象世界における拘束を緩やかに含んだ形の知識を得ることができる.また辞書データベースという記述的な形で構造化を行うため それ自身インクリメンタルに成長することが可能となった.
著者
末永 斂 宮城 一郎 氏家 淳雄 林 薫 三舟 求真人 二ッ木 浩一
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.136-142, 1967-12

アーボウイルスの分離と関連してTanzania国のMwanza地方で1966年8月から1967年2月まで蚊の調査を行なった,蚊からのウイルス分離成績については別報でのべられるので,本報では採集された蚊の種類とそれらの生態についてのべる.この地方は海抜1000米以上の高地で比較的涼しく,6月頃から10月頃迄の乾期と11月頃から5月頃迄の雨期とに区別される.Mwanza及びその周辺における蚊の発生可能水域としてはVictoria湖岸の大小の湿地帯,一部破損した古い水洗便所の浄化槽,流れのとまった小さな河川の水たまり,及びその河口附近の岸辺等がある.成虫の採集は湿地帯の附近,市街地の人家内,森林地帯など9カ所(第2表)で実施し,この中3ケ所では二重蚊帳による夜間吸血活動の時間的消長についても調べた.9地点で採集された蚊は9属約38種,雌25185個体,雄2264個体で,この中,Bukobaの森林地帯で採れたHodogesia sanguinae, Eretmapodites grahamiの2種はTanzania国から初めての採集記録であると思われる.恒久的湿地帯の近くではMansonia africanaとMansonia uniformisが圧倒的に多く,市街地の屋内ではCulex pipiens fatigansのみが採集されるが湖に近い人家の附近ではこれらの3種が共にかなり採集される.H356ウイルスが分離されたCulex decensは比較的大きな恒久的湿地帯の近くでかなり採集された.湿地帯を内部にもったBukobaの閉鎖的森林地帯ではMansonia, Aedes, Orthopodomyia, Culex等に属する18種の蚊が採集された.Anopheles gambiae, An. funestus, Aedesaegypti等は少数採集されたにすぎない.Mansonia africana, M. uniformis及びCulex decensの3種は日没と共に飛来し始め,真夜中にピークを示し,日の出前迄吸血活動をつゞける.Culex pipiens fatigansは日没と同時に飛来し,午後8時頃ピークに達し,一且減少するが,早朝にもう一度ピークを示し,日の出前迄活動するように思われる.Mosquito survey in the highland district of the Republic of Tanzania,mainly in Mwanza region situated at south lake-side of Lake Victoria,Were carried out from August 1986 to February 1967. Over twenty seven thousand mosquitoes representing about 38 species of 9 genera were collected mainly by using human baited traps at nine different sites. Four mosquito species, Mansonia africana, M. uniformis, Culex pipiens fatigans and C. decens, were in about 91 per cent of all mosquitoes obtained in the survey. These Mansonia species and Culex decens seemed to breed in the open-permanent swamps near Lake Victoria, and Culex pipiens fatigans was breeding in cesspools and gutters around dwelling houses. Hodogesia sanguinae and Eretmapodites grahami which had not been found in Tanzania were collected at Munene and Ruasina forests in Bukoba area, and Anopheline mosquitoes, though very small in number, were collected in 10 species. The majority of mosquitoes collected were used for the isolation of arboviruses, however out of them only one strain (H336) was isolated from a pool of Culex decens collected nearby a open-permanent swamp, Mwanza. We wish to express our sincere thanks to all staffs of East African Institute for Medical Research, Mwanza for their kindness to accomplishment of our survey and to staffs of East African Virus Research Institute, Entebbe, Uganda for their kind advices, and also to officers of Mwanza Regional Forest Office and its branches for their kind help to collect mosquitoes in forests.
著者
上倉 庸敬 藤田 治彦 森谷 宇一 神林 恒道 渡辺 浩司 永田 靖 天野 文雄 奥平 俊六
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

最終年度をむかえるにあたって本研究が直面していた課題は以下のとおりであった。現在、日本の「芸術」は二極化している。ひとつは純粋化を維持しようとする「芸術」であり、いまひとつは「あたらしさ=総合」という視点からクロスオーバーをめざす「芸術」である。それは実は、日本のみならず、世界の各局地における「芸術」概念の共通構造である。「芸術」の事象における世界的な傾向とは、各局地に通底する先述の構造を孕みつつ、各局地で独自の展開をくりひろげている多様さのうちにこそある。では、(1)日本の近代「芸術」概念が成就し、また喪失したものはなんであるか。(2)なぜ、近代の芸術「概念」は死を迎えねばならなかったか。(3)「ユニ・カルチャー」の傾向にある現代世界で、日本に独自な「芸術」概念の現況は、どのような可能性をもっているか。(4)その可能性は日本のみならず世界の各局地に敷衍できるかどうか。解答の詳細は成果報告書を見られたい。解答をみちびきだすために準拠した、わたくしたちの基本成果はつぎのとおりである。(1)西欧で成立した「芸術」概念が19世紀半ばから100年、世界を支配した。(2)その支配は世界の各局地で自己同定の喪失をもたらした。日本も例外ではない。(3)20世紀半ばから世界の各局地で自己「再」同定がはじまった。(4)再同定は単なる伝統の復活ではなく、伝統による「死せる芸術概念」の取り込みである。(5)再同定は芸術「事象」において確立され、芸術「概念」において未完である(6)日本における「芸術」概念の誕生と死が示すものは、2500年におよぶ西洋美学理論の崩壊である。
著者
森 英樹 右崎 正博 大久保 史郎 森 正 大川 睦夫 小林 武
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

平成4年度は、3年間にわたる本研究の最終年度であったため、2年間の成果をふまえ総括的な検討をおこなった。すなわち、日本を含む先進資本主義国の従来の憲法学における議会制民主主義と政党制の理論史的枠組みを検討し(1年目)、各国の集中的検討による普遍性と固有性を析出し、あわせて日本の現状分析をおこなう(2年目)という研究成果にもとづき、日本の政治文化状況のもとで政党への国庫補助の妥当性にかんして一定の結論をみちびき出した。具体的には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、ニュージランドの各国における政党国庫補助の現状分析と、それを支え、あるいは批判する理論状況を検討したが、その結果みえてきたのは、各国における大衆社会の進行による議会制民主主義の形骸化、それにともなう選挙戦の変容などの共通点とともに、その背景にある各国の議会制民主主義の歴史の偏差であった。これらの成果をふまえ、日本で進行中の「政治改革」による選挙制度改革と政党国庫補助導入の動きを批判的に分析した。かくして、日本の「政治改革」を、先進資本主義諸国で共通に進行する新たな統治戦略としての政治改革との連動性のなかに位置づけることができ、日本固有の政治風土のなかで、いかに国民主権と民主主義を実現することが可能かについての共通の認識をうることができた。
著者
馬嶋 正隆 藤田 朋恵 林 泉
出版者
北里大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

マウス皮下組織にsarcima-180あるいはNFSA腫瘍細胞株を接種するとゆっくりとした腫留の形成が認められる。これらの動物にACE阻害薬のリジノプリルあるいはAT1受容体格抗薬のTCV-116を投与すると、血管新生および腫瘍増殖は強く抑制された。腫瘍周囲ストローマを含む試料でAT受容体サブタイプの発現解析を行うと、AT2およびAT1bは全く検出されず、AT1aのみ検出された。免疫組織化学でAT1の組織内発現を調べると、AT1を発現しているのは腫瘍細胞ではなくむしろ腫瘍周囲めストローマであった。致死量の放射線をWTのC57BL/6に照射し、WTあるいはATlaノックアウトマウスめ骨髄細胞を尾静脈より移植し、その後LLCを接種すると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、腫瘍増殖および血管新生の著しい抑制がみられた。AT1aノックアウトマウスには、欠損する遺伝子にLacZ遺伝子を導入しているので、β-galの免疫組織化学をおごなうと、確かにAT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、ストローマ部位で陽性像が認められた。さらに同部位でVEGFの発現を調べると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、減少していることが判明した。骨髄より間質に浸潤するストローマ細胞のAT1aを選択的にノックアウトすることで、がん依存性の血管新生、増殖が抑制され、遺伝子を改変した骨髄細胞移植が固形腫瘍の治療になりうることを示すことが出来た。
著者
林部 敬吉 辻 敬一郎 中谷 広正 阿部 圭一 東山 篤規
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

研究成果は次の通りである。1.バーチャル・リアリティ空間における視覚特性について人工的に出現させたバーチャル・リアリティ空問の視覚特性が自然空間とどの程度類似しているかを、双曲空間特性、ホロプター特性、大きさ恒常性、奥行距離特性についてそれぞれ測定した。その結果、両眼視差、パースペクティブ、テクスチャ、陰影を奥行手がかりとした条件では、視覚特性で比較する限り、自然空間は限定的にしか再現されず、また個人差も大きいことが明らかにされた。2.バーチャル・リアリティ技術を応用した対象の3次元可視化についてVR技術を用い3次元可視化したときの視覚特性を考慮した次の3通りのシステム、すなわち人間の脳の3次元可視化システム、室内デザイン支援システム、初等プログラミング教育支援システムを開発した。人間の脳の3次元可視化システムでは、人間の脳の全体と部分が立体的に知覚できるようにし、同時に、脳の構造と機能とが理解できるように工夫された。室内デザイン支援システムでは、VR空間内に置かれた様々な対象(イス、机、棚など)をデータグローブを使用して仮想的に移動し配置(デザイン)させることができ、もし対象とデータグローブとが接触すれば、接触判定を行い、同時に接触したことをユーザーに視覚的、聴覚的信号で知らせて使用者の利便性を高めた。初等プログラミング教育支援システムでは、小学生や中学生等に対してバーチャル・リアリティの技術を利用することでプログラムするとはどういうことかを理解させ、同時にプログラムの結果を、ミニカーやミニロボットをプログラムに従って動かして確認することができるようにした。
著者
難波 陽介 中務 桂佑 説田 章平 大石 真也 藤井 信孝 若林 嘉浩 岡村 裕昭 上野山 賀久 束村 博子 前多 敬一郎 大蔵 聡
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第103回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2010 (Released:2010-08-25)

【目的】キスペプチンは,Kiss1遺伝子にコードされ,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌刺激因子として注目されている神経ペプチドである。我々はウシKiss1遺伝子のcDNA塩基配列を同定し,ウシ型キスペプチンが53アミノ酸残基からなると推定した(第101回日本繁殖生物学会大会)。また,黒毛和種成熟雌ウシにおいて,ウシ型キスペプチンC末端部分ペプチドの末梢投与が黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を刺激することを示した(第102回日本繁殖生物学会大会)。本研究では,ウシにおけるキスペプチンの生理作用についてさらなる知見を得るため,全長ウシ型キスペプチン(bKp-53)の末梢投与によるLHおよびFSH分泌に対する効果と,第1卵胞発育波における主席卵胞の発育刺激効果を検討した。【方法】動物は黒毛和種成熟雌ウシを供試した(n=5)。プロスタグランジンF2α投与により誘起した発情日をDay 0とした。Day 5に,bKp-53 (0.2 nmol/kg)またはGnRH (0.2 nmol/kg)を静脈内投与した。投与前4時間から投与後6時間まで10分間隔で採血し,血漿中LHおよびFSH分泌動態を調べた。また,実験期間を通じて毎日,主席卵胞の直径を超音波診断装置により測定した。【結果】bKp-53の静脈内投与により,LHおよびFSH分泌の一過性の亢進がみられたが、主席卵胞は排卵しなかった。一方,GnRHの静脈内投与により,LHおよびFSH分泌は顕著に亢進し、投与後30時間から42時間までに主席卵胞の排卵を確認した。以上より,GnRHによる強力な性腺刺激ホルモン分泌刺激効果とは異なり、ウシにおいてキスペプチンはLHおよびFSH分泌を緩やかに亢進させる可能性が示唆された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。
著者
小林 哲夫 森 牧人 長 裕幸 荒木 卓哉 安武 大輔 北野 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

半乾燥地の黄河上流域(甘粛,中国)に実験圃場を設置し,また日本における室内実験を併用して,二種類の塩類化土壌の改良技術,すなわち灌漑畑地の塩類化プロットから塩類を除去する有効な技術として著者によって提案されたPSW-Well法と,土壌からの塩類吸収能力が高い作物(クリーニングクロップ)の栽培に基づく生物学的改良法,についての実験を行った.その結果,両方法が有効に機能するための必要条件が示された:(1)PSW-Well法は,流域内の帯水層系が均質で,宙水面が発達しないことが有効に機能するための必要条件である.(2)クリーニングクロップは,塩類をよく吸収するだけでなく,水要求度が低いことが必要である.
著者
小林 淳二 野原 淳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脂質代謝を制御する酵素であるLPLとHTGLの活性を測定する簡便な系を確立し、その臨床意義を検討した。LPL活性はTG、RLP-TG,sdLDLと逆相関、HDL-Cと正相関したしたが、ANGPTL3と相関なし。一方、HTGL活性はTG、RLP-TG、sdLDLと相関せず、HDL-C、ANGPTL3と逆相関した。ANGPTL3によるHTGL活性抑制は見られなかった。以上から、ANGPTL3とHTGL両者の上流にそれらの制御にかかわる因子が存在し、それぞれを逆方向に制御する可能性が示唆された。
著者
池田 光穂 太田 好信 狐崎 知己 小林 致広 滝 奈々子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

私たちの研究は、メキシコとグアテマラ両国における先住民(先住民族)について、先住民運動の中にみられる政治的アイデンティティについて現地に赴く民族誌調査を通して明らかにしてきた。具体的には、世界の他の地域での民主化要求運動、すなわち自治権獲得運動、言語使用の権利主張や言語復興、土地問題、国政への参加、地方自治などの研究を通して、(a)外部から見える社会的な政治文化としての「抵抗」の実践と(b)内部の構成員から現れてくる文化政治を実践する際の「アイデンティティ構築」という二つのモーメントと、その組み合わせのダイナミズムからなる資料を数多く得ることができた。
著者
伊藤 龍 寺井 明子 林 聰 金子 憲司
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.188-196, 1994-03-28
被引用文献数
2 2

ブラッシング圧が歯ブラシ毛を介して,口腔内組織に伝達される応力分布を定量的に明らかにするために,非線形有限要素法を用いて2つのケースの歯ブラシ毛の挙動を動解析し,次の結果を得た。1.歯肉モデル上のブラッシング運動の解析毛先形態が新規な形状である高度テーパード毛とラウンド毛の2種類の歯ブラシについて,毛の強制変位量が1mmとなるように歯肉に押しつけ,水平方向に6mmの振幅の運動を加えた。この時,ラウンド毛歯ブラシでは,歯肉に発生する応力は300〜600g/cm^2であったのに対し,高度テーパード毛歯ブラシでは,130〜200g/cm^2となり,かなり小さかった。2.歯周ポケットモデルへの毛先侵入の解析毛先形態が高度テーパード毛とテーパード毛の2種類について,各々2本の歯ブラシ毛を歯周ポケットに侵入させた。この時,高度テーパード毛は容易に歯周ポケットに侵入するが,テーパード毛では容易に侵入せず,周辺歯肉に対し高度テーパード毛の6〜7倍の高い応力を発生させた。また,高度テーパード毛の滑らかな侵入は,角度を変えてもほぼ同じ結果であった。
著者
林 ひょん情
出版者
山口県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本語と韓国語の呼称表現がそれぞれの場面、相手、発話内容などに応じて、発話の中で戦略的意図を持って使用されていることに着眼し、ポライトネス・ストラテジーの観点から両言語の呼称の使い分けを対照・分析した研究である.その結果、「社会距離」と「力関係」の要因が発話場面の負担の度合いに関係なく、両言語の呼称選択の丁寧度に強く影響していることが分かった.また、両言語の呼称語によっては、述語表現の選択にかなり柔軟性を持っ表現があることが明らかになった.性差にっいては、とりわけ聞き手が話し手より同等か目下の関係において影響が強いことが分かった.
著者
小林 優
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ホウ素は植物の生育に不可欠の元素であり、欠乏すると組織の壊死や不稔など多様な生理障害が発生する。しかしホウ素が不足することでそれら障害が発生するメカニズムは明らかでない。このメカニズムを解明するため、植物の培地からホウ素を除去したときに生じる応答を詳細に解析した。その結果ホウ素が欠乏すると細胞に活性酸素が蓄積し、それが原因で細胞死に至ることが明らかとなった。また植物細胞は培地からのホウ素消失を直ちに感知することも明らかとなった。
著者
工藤 眞由美 金田 章宏 狩俣 繁久 木部 暢子 佐藤 里美 山東 功 林 明子 吉村 裕美 吉村 裕美 三ツ井 崇
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、国際的にも大いに多様化の進んでいる日本語のバリエーションの問題について、言語類型論(Language Typology)、言語接触論(Contact linguistics)の立場から包括的に考察を試みた。具体的には、格やとりたて構造に関する言語項目調査について、諸方言に適用できる「統一した調査票」の改善についての検討を行った。また、ボリビア共和国サンタクルス県オキナワ移住地を対象とする言語的日常実践を描くエスノグラフィー的研究や、ドイツをフィールドワークとする、言語接触論的観点からの在外駐在日本人の言語生活調査を実施した。
著者
河村 毅 大谷 幹伸 保坂 義雄 東海林 文夫 福谷 恵子 横山 正夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.288-295, 1981
被引用文献数
1

昭和40年から昭和54年までの15年間に東大分院泌尿器科であつかった15歳以下の小児尿路結石症は17名で,この間の全結石症例の1.6%に相当した.性別は男12,女5で男女比は2.4:1であった.年齢は最年少が8カ月,8例が5歳以下で最年長に15歳であった.結石部位は上部結石13例(腎結石9,尿管結石4),下部結石2例(膀胱結石2),上部と下部結石合併2例(尿管と膀胱結石1,尿管と尿道結石1)であった.臨床症状は肉眼的血尿6例,発熱3例,側腹痛3例,膀胱刺激症状3例,尿閉1例,尿失禁1例とさまざまであった.上部結石13例のうち観血的治療をおこなったのは11例,13回で,このうち腎摘例が2例で腎保存出来たものは9例であった. 10例に結石成分の分析をおこない燐酸塩系結石4,蓚醗塩系3,シスチン2,キサンチン1例であった.原因疾患の判明したしのは9例,52.9%で,その内訳はシスチン尿症2,キサンチン尿症1,尿路奇形と感染3,長期臥床1,薬剤の副作用2例であった.結石 freeの状態となった12例の平均追跡期間は9.6年で,この間の再発は1例のみで再発率は8.3%であった.小児尿路結石症は結石の早期診断と原因疾患の検索が必要であり,このためには前もってたてたスケジュールにしたがって原因疾患の検索をおこなう必要がある.またX線陰性結石の疑いのある場合には腹部 CTが診断上有用である.
著者
桑原 浩平 窪田 英樹 濱田 靖弘 中村 真人 長野 克則 池田 光毅 林健 太郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

個人差(心肺能力,暑熱順化)が生理量に及ぼす影響を既往の研究データと被験者実験により検討した。暑熱環境における直腸温を,作業強度起因の直腸温と暑さ起因の直腸温の増分として定義し,個人の心肺能力(最大酸素摂取量)を考慮することを可能にした。次に暑熱順化が発汗量および着衣のぬれに及ぼす影響について検討し,平均皮膚温36℃を境に暑熱順化前後の発汗量と着衣のぬれの特性に差が見られた。
著者
小林 太郎 武部 純 似内 秀樹 古川 良俊 石橋 寛二
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-15, 2006-01-10
被引用文献数
3 2

症例の概要: 患者は54歳の男性. 1992年6月に左側口底部の腫瘤に気づき, 岩手医科大学歯学部附属病院口腔外科を受診した. 同年9月に下顎左側口底癌の診断のもと, 腫瘍摘出術が施行された. その後, 左側下顎骨放射線性骨壊死と下顎骨骨折が認められたため, 1993年3月に左側下顎骨区域切除が行われた. 術後経過は良好であったが再建は行われず, 1996年2月に補綴的機能回復を目的として第二補綴科を受診した. 下顎の患側偏位により上顎との咬合接触関係が失われていたため, 下顎顎義歯装着後, 1997年11月に下顎顎義歯ならびに下顎歯列との咬合接触部を設けた口蓋床を製作し装着した. 2001年4月に下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床を再製作後, 患側への偏位の抑制と咀嚼機能の改善が認められている.<BR>考察: 下顎の偏位の防止と咀嚼機能の回復を目的として, 口蓋部の咬合接触域にパラタルランプを付与した口蓋床を装着した. その結果, 咀嚼筋のバランスを保つことができ, 下顎の患側への偏位の抑制を図ることができた. 咀嚼機能と構音機能の改善程度を評価したところ, 下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床の装着により摂取可能食品の増加が認められた. また, 狭まったドンダーズ空隙を広げることにより, 構音機能の改善も認められた.<BR>結論: 下顎骨非再建症例における下顎顎義歯と, これに咬合接触する口蓋床の装着は, 下顎の患側への偏位の抑制と咀嚼機能の回復に有効であることが示された.