- 著者
-
梶田 真
- 出版者
- 一般社団法人 人文地理学会
- 雑誌
- 人文地理 (ISSN:00187216)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2, pp.167-183, 2019 (Released:2019-07-13)
- 参考文献数
- 34
本稿は,大分市を事例として,1990年代以降における中等教育改革が,各学区の生徒の進学行動にどのような影響を及ぼしたのかを解明し,その結果に基づいて居住地選択にどのような変化をもたらすのかを考察した。一連の中等教育改革を通じて,県立高校では学校間の序列化が進み,公立中学校の進学実績にも有意な学校差を生み出した。最も進学実績の良い2つの中学校の校区では,他の校区に対しホワイトカラー層の卓越傾向が強まっていることが確認され,隣接学校選択制の結果においても,両校は最も人気が高く,競争の激しい中学校となっていた。一方で,こうした校区を志向する,子供のいるホワイトカラー層の世帯と,教育環境を重視する必要性の低い単身者/DINKs(double income no kids)等の子供のいない世帯の居住分化を示唆する動きもみられた。これらの知見は中等教育改革による学校内の同質化と学校間の差異化が,学区内の同質化と学区間の差異化という形で地理的に投影されていることを示すものである。