著者
川戸 湧也 長谷川 悦示 木内 敦詞 梶田 和宏 中川 昭
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.775-792, 2020 (Released:2020-11-18)
参考文献数
37

The purpose of this study was to design and implement judo courses of physical education (PE) in higher education (HE) based on the ADDIE model and to validate the students’ outcomes and issues. The ADDIE model is part of the Instruction Design (ID) theory of educational technology. The subjects were 162 first-year undergraduate students (91 males: 71 females) attending judo courses in a designated sports university, and the lecturer who was responsible for instruction. Courses were implemented corresponding to each of the ‘analysis’, ‘design’, ‘development’, ‘implementation’ and ‘evaluation’ phases of the ADDIE model. In the analysis phase it was confirmed that the role of the course was to provide a PE teacher’s license. Therefore, the content was designed in accordance with the course of study for junior high and high schools. Considering the lesson time (a total of 50 minutes) in junior high and high schools, the time allocation for one lesson in the course was developed with an introductory 10-minute lesson followed by a 40-minute lesson each in the first and the second half. A learning notebook (learning portfolio) was also created in order to ensure the achievement of cognitive and emotional goals, and students were asked to describe their learning during each lesson. Course implementation was by the lecturer, based on systematic observational analysis of the teaching-learning process and self-reflection. Course evaluation was conducted based on the results of the systematic observational analysis, the distribution of student grades, and self-evaluation by students. Analysis of the teaching-learning process showed that the motor learning duration was sufficiently secured while the management duration was kept low. However, visualization of the teaching-learning process revealed that the initial planned time allocation was not realized. Through these results, the importance of a systematic observational analysis can also be recognized in the PEHE. The verification of the grades distribution and the students’ self-evaluation showed that the courses had the expected outcomes as a subject related to teacher’s qualification license. Furthermore, application of the ADDIE model in this judo course highlighted some critical issues, such as increasing students’ opportunities to teach each other, adjusting the learning environment through control of temperature and hydration, and creating special teaching materials for low-skilled students. Thus, in order to guarantee and improve the quality of PEHE, the authors propose an effective approach for course design and implementation that utilizes the ADDIE model.
著者
中井 優理子 岡崎 龍太 蜂須拓 佐藤 未知 梶本 裕之
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.50-54, 2014-09-12

ぬいぐるみに人とのインタラクション機能を付与する従来の提案の多くは,ぬいぐるみに音声や手足および眼球の動き,呼吸や心拍に伴う動き等を付与するものであったが,不完全に実現されたインタラクションはかえってぬいぐるみに対する没入感を損なう危険があった.今回我々はぬいぐるみに生き物感を付与する最小限の構成として,目の表面の涙のゆらぎを表現する手法を提案する.涙のゆらぎは鏡面反射によって拡大して知覚されるため,微小な動きで人に知覚させることが出来,また感情表現を行える可能性がある.今回は水中の気泡と振動子を用いるだけの簡易な手法で目のゆらぎを実装し,その効果を検証した.
著者
梶村 光郎
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-16, 2019-04

小論は、沖縄県内の小学校教育のお手本と目される沖縄県師範学校附属小学校が方言札を導入した1911年度を沖縄の方言札の歴史における一つの画期と見なし、それ以前の方言札の事例を調査し、1900年代以前にも方言札が存在したことと、その事実が意味することを考察するものである。考察の対象となる事例が19あることと、方言札の最も古い事例は1903年であるという「通説」を覆す、最も古い事例が1895年度・1896年度頃のものであることを明らかにした。また、1911年度以前の方言札の実態を回想・証言・第一次史料を用いて眺めてみると、時期がまちまちであり、地域も沖縄全県にまたがっており、札の形状も様々であることが確認できた。罰の内容も方言札を手渡されるだけですむ場合と、札を首に掲げられる場合があり、それに加えて立たされたり、掃除当番をさせられたり、修身の点を下げられたりするなどの罰があることが確認された。さらに、方言札は、教師の目が届かない時間や場所で、取り締まりの係や児童・生徒同士によって監視され、札を手渡されたりなどするものであった。そうしたことが日常的に行われていたが、特別に「方言札の日」を設定して行われたりしている場合もあった。方言札の学校への導入については、生徒間の取り決めに基づく事例(県立一中)を除けば、学校・教員側が主体となって行った事例ばかりだった。罰との関係で言えば、方言を使用した場合、①方言札を手渡される罰、②方言札を首にかけられる罰、③方言札とそれ以外の罰を課されること、④方言札をもち続けることに伴う制裁という形が見られた。一方、下級生がいじめを怖れ上級生に方言札を渡せないという事態も起こり、廃止された事例も見られた。その事実は、方言札の教育方法や教具としての欠陥を示すものであった。また、沖縄県師範学校附属小学校の標準語教育実践の例から見ると、この学校では、方言札の使用だけでなく、普通語と対照させた方言集を用意したり、談話会を設けて言語の練習をさせたりすることなど、標準語を正しく使用させるための取り組みや工夫があった。このことは、方言札だけで標準語の教育・励行・普及が図られるとは考えられていなかったことを示している。 以上のことを踏まえ、方言札の出現の時期や出自などの問題を検討し、方言札の出現には、方言を使用させないで標準語を話させようという学校・教員の強い意志が関係していること。その意味で、どの時点でも方言札は出現する可能性があることを指摘した。
著者
高橋 裕史 梶 光一 吉田 光男 釣賀 一二三 車田 利夫 鈴木 正嗣 大沼 学
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.45-51, 2002 (Released:2008-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
8

洞爺湖中島において移動式シカ用囲いワナの一種であるアルパインキャプチャーシステム(Alpine Deer Group Ltd., Dunedin, New Zealand)を用いたエゾシカ Cervus nippon yesoensis の生体捕獲を行った.1992年3月から2000年2月までに,59日間,49回の捕獲試行において143頭を捕獲した.この間,アルパインキャプチャーの作動を,1ヶ所のトリガーに直接結びつけたワイヤーを操作者が引く方法から,電動式のトリガーを2ヶ所に増設して遠隔操作する方法に改造した.その結果,シカの警戒心の低減およびワナの作動時間の短縮によってシカの逃走を防止し,捕獲効率(捕獲数/試行数)を約1.1頭/回から3.5頭/回に向上させることができた.
著者
竹増 まゆみ 梶谷 真也 徳本 和哉 要田 芳代 川上 恵子 只佐 宣子 堀川 俊二 福原 和秀
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.904-908, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
6
被引用文献数
1

急性薬物中毒患者が搬入された際には,薬剤師が中毒原因物質に関する情報を迅速に収集し,個々の症例にあった適切な情報と治療方法を医師,看護師に提案する必要がある。 今回,ジフェンヒドラミン(以下,DPH)含有軟膏を大量に誤飲した99歳女性の救命治療に対して,胃洗浄を含めた治療方法と,患者の血中DPH濃度を経時的に測定することを提案した。その結果,血中DPH濃度の低下とともに臨床症状の改善が認められ,DPH含有軟膏誤飲例に対して胃洗浄を施行したこと,および血中濃度測定の臨床における有用性が示唆された。
著者
出雲 信夫 重山 昌人 田口 真穂 長嶋 大地 長野 将大 菊池 絵里 橋口 宏司 藤澤 順 村田 実希郎 礒部 隆史 梶原 康宏 五十鈴川 和人 埴岡 伸光 渡邉 泰雄 寺町 ひとみ
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.246-254, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

Massive bleeding induced by disintegration of breast cancer tumors for 4 yrs (88 yrs-old lady) was treated by applying Mohs' paste (75g/45mL of Zinc complex). This huge site healed quickly and the healing effects were sustained for 48 days. Based on this clinical evidence, the hemostatic mechanism of Mohs' paste was evaluated using the hind limb ischemia model in mice. Unilateral hind limb ischemia was induced in 6 week-old male C57BL/6JJmsSlc mice by resecting the right femoral and saphenous arteries. Mice were painted once a day with Mohs' paste containing 0, 37.5, 50 and 62.5g/45mL of zinc after the surgery. Hind limb blood perfusion was measured by using a laser Doppler perfusion imaging system (moorLDI2-Ⅱλ : S/N 5489). To identify capillaries, the thigh muscles were harvested on Day 1 to make a tissue section and immunostained for CD31. One day after painting of Mohs' paste, blood flow suppression to the ischemic leg was significantly enhanced in a dose dependent manner. Furthermore, anti-CD31 immunostaining revealed that Mohs' paste decreased capillary density in the ischemic muscle. The results of both the clinical and animal studies suggest that Mohs' paste suppressed angiogenesis due to the acute effects of aggregated protein and the sustained effects of decreases of CD31.
著者
田辺 裕 稲石 貴弘 森本 大士 直海 晃 田中 友理 柴田 有宏 高瀬 恒信 中山 茂樹 梶川 真樹 矢口 豊久
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.116, 2010 (Released:2010-12-01)

症例1 20歳代男性 H21年5月 祭りの最中に人を乗せた馬に腹部を蹴られた。救急病院入院したが翌日まで腹痛治まらず当院に転院。腹部は板状硬。CT上腹腔内遊離ガスと腹水を認め消化管破裂と診断。緊急開腹手術施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸単純縫合術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で11日目に退院した。 症例2 60歳代女性 H21年7月 馬の調教をしている時に後ろ足で上腹部を蹴られ、救急車で当院受診。右上腹部に軽度圧痛認めた。CT上肝内側区域に不整な低濃度領域あり。採血上GOT/GPT 279/223と肝逸脱酵素の上昇が見られた。外傷性肝損傷と診断し、安静目的に入院。入院翌日にはGOT/GPT 90/136と低下しており、CT上も血腫の増大なく退院とした。 症例3 30歳代男性 H21年10月 馬の世話をしている時に右鼠径部を蹴られ、救急車で当院受診。腹部は板状硬。CT上モリソン窩に少量の腹水を認めた。腹部所見から消化管破裂による腹膜炎を疑い緊急開腹手術を施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸部分切除術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で10日目に退院した。 馬に蹴られたことによって入院、手術が必要となった症例を続けて経験した。 馬に蹴られるという外傷は、狭い面積に強い力がかかり、内部臓器損傷のリスクも高くなると考えられる。このようなケースの診療に当たる際はそれを踏まえてアンダートリアージのないようにする必要がある。
著者
坂本 治也 秦 正樹 梶原 晶
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_303-2_327, 2020

<p>1990年代末以降、日本では特定非営利活動法人 (NPO法人) や一般社団法人などの新たに創設された法人格を有する (広義の) NPOが多数誕生した。組織レベルでみた場合、NPOの活動は明らかに活性化している。にもかかわらず、一般の人々のNPOへの参加は依然としてまったく広まっていない。</p><p> なぜ多くの日本人はNPOへの参加を今なお忌避しているのであろうか。どのような要因が参加忌避を引き起こす原因となっているのであろうか。どうすればNPOへの参加をより増やしていくことができるのだろうか。</p><p> これらの点を探索的に解明するために、本稿では筆者らが独自に実施したオンライン・サーベイのデータを用いて、コンジョイント実験 (conjoint experiment) を通じてNPOへの参加の規定要因の解明を試みた。</p><p> 分析の結果、デモなどの政府への抗議活動を行うこと、多額の寄付を集めること、自民党寄りないし立憲民主党寄りの組織であることは、参加忌避に大きな影響を与える要因であることが明らかとなった。つまり、NPOの 「政治性」 やNPOの 「金銭重視」 姿勢が参加忌避をもたらす主要な原因になっていることが本稿の分析から示唆される。</p>
著者
梶谷 康介 神庭 重信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.465-472, 2013-05-15

抄録 感情失禁は脳梗塞などの脳器質性疾患に伴う,些細な刺激に反応して生じる制御不能な感情の表出である。脳梗塞後に起こる感情失禁は患者のADLに大きな影響を与えるが,その治療法は十分確立されていない。抑肝散は近年アルツハイマー病など認知症の周辺症状に対してしばしば使用される漢方薬である。以前我々は,偶然にも抑肝散が脳梗塞後の感情失禁を軽快させることを見出し,2症例を報告した。今回さらに4使用経験例を加え,抑肝散が脳血管障害後の感情失禁に対して有効な治療法となりうるかを検討する。
著者
梶丸 岳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

従来民俗学の流れに属する民謡研究は伝統的な場で歌われるうたのみを「民謡」と捉えてきたため、現在「民謡」として実践されている芸能の研究はほとんど進んでいない。そこで本発表では現在の「民謡」が実践される社会を捉える試みの一環として、秋田県における一曲民謡大会の運営と大会参加者に焦点を当て、大会が地域経済や民謡の規範化と民謡人の組織化、民謡の場の変遷といった要因が絡み合いつつ成立していることを示す。
著者
中野 倫靖 後藤 真孝 梶田 秀司 松坂 要佐 中岡 慎一郎 横井 一仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1222-1235, 2014-03-15

本論文では,ユーザ歌唱における顔表情を真似てヒューマノイドロボットの顔動作を生成するVocaWatcherについて述べる.ここで,我々が以前開発したVocaListenerを用い,ユーザ歌唱の歌い方(音高と音量)を真似て歌声合成も行う.従来,歌唱ロボットに関する研究はあったが,手作業による動作制御が主で,その自然さに限界があった.それに対して本研究では,単一のビデオカメラで収録した人間の歌唱動画を画像解析し,口,目,首の動作を真似て制御することで,自然な歌唱動作を生成した.ここで口の制御には,VocaListenerから得られる歌詞のタイミング情報を用いて,歌声に同期した動作を生成できる.さらに,ロボットによるより自然な歌唱を実現するために,我々が以前開発したブレス音の検出技術とVocaListenerを組み合わせ,ブレス音を真似て合成できるように拡張した.In this paper, we describe VocaWatcher that is a facial-motion generator for a singing robot by imitating user's singing. It can synthesize singing voices by using our previous VocaListener to imitate pitch (F0) and dynamics (power) of user's singing. Although singing humanoid robots have been developed with synthesized singing voices, such robots do not appear to be natural because of limitations of manual control. To generate natural singing expressions, VocaWatcher imitates a human singer by analyzing a video clip of human singing recorded by a single video camera. VocaWatcher can control mouth, eye, and neck motions by imitating the corresponding human movements. To control the mouth motion, VocaWatcher uses lyrics with precise timing information provided by VocaListener. Moreover, we extended VocaListener by combining our previous method of breath sound detection to imitate breathing sounds that make the robot singing more realistic.

2 0 0 0 OA 配向

著者
梶山 千里
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.833, 1996-12-01 (Released:2011-10-14)
著者
寺床 幸雄 梶田 真
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.4, pp.607-626, 2016
被引用文献数
2

&emsp;Minamata city is well known as the company town of Chisso Corporation, as the site of Minamata disease and, in recent times, as a city with environmentally friendly policies. The postwar experiences of Minamata city are often compared to a microcosm of Japanese modernization. A few decades earlier, the city faced and tackled several problems that most non-metropolitan cities currently face, such as an aging population and economic decline. There are meaningful lessons and suggestions we can adopt from Minamata city for sustainable development policies suited to non-metropolitan cities. This paper focuses on the economic history of Minamata (which includes not only Chisso but also other manufacturing companies and industries) and the dynamic relations between its local economy and politics. In Minamata, social tensions, such as those between the perpetrators and the victims of Minamata disease and between Chisso's labor and management, gradually disappeared due to reconciliation efforts and generational change. Minamata city office changed its vision of future development from being an industrial city to an environmentally friendly one, bearing in mind not only the experiences of Minamata disease victims but also the city's varied environmental resources. The residents of Minamata offered their support for these policies in recent mayor elections. Nevertheless, new problems began to emerge in the city. Jobs for the young had been limited for a long time, especially for men and those who were highly educated. One of the reasons for this is that Chisso prioritized retaining employees and restricted new hiring. Besides, the economic dominance of Chisso prevented local leaders and enterprises from growing. As a result, although Minamata's town planning, with its emphasis on environmentally friendly policies, received much attention and support, those policies could not be effectively implemented due to a lack of local human and institutional resources. Recently, however, young residents have begun to construct new social networks. It is worth noting that they share environmentally friendly visions. We can regard these kinds of movement as the results of continued efforts by Minamata city office and citizens. The economic and social dynamics of Minamata and the problems mentioned here are likely to be common to many non-metropolitan cities. Those cities must not be nearsighted about depopulation problems, but should investigate and try to maintain the conditions needed for long-term social and economic sustainability.
著者
梶原 良道
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.299-315, 1994

グリンタフ地域の黒鉱鉱床と石油鉱床の形成には西黒沢階来の環境異変に伴って背弧海盆に異常濃集したPUMOS(含重金属有機堆積物の愛称)が共通起源物質として関与した可能性がある,とする著者の一昔前の仮説を,その後蓄積された地球化学データに徹して再吟味し,以下の考察を行った.1)黒鉱硫化物と原油有機硫黄は互いに酷似した硫黄同位体化を有しており,両者はともに無酸素海盆での海水硫酸イオンのバクテリア還元によって生じた生起源硫黄に由来したとみなせる.2)原油の炭素同位体比は黒鉱層準近傍の地層に含まれているケロジェンのそれと類似しており,黒鉱生成期付近においてこれらに共通の有機物の集積があったことが示唆される.3)黒鉱硫化物鉱石および石膏鉱石の初生的なストロンチウム同位体比はそれぞれ近傍油田産の原油および当時の海水の値に比較でき,黒鉱鉱化作用の初期過程に有機堆積物源および海水源のストロンチウムが本質的に関わった可能性が示唆される.4)黒鉱鉱床の鉛同位体については,広域的な均質性を示唆する情報と,鉱床間および鉱種間の有意な不均一性を示唆する情報が得られている.仮に後者を重視しても,鉛の海洋平均滞留時間が極めて短いことおよび後熱水作用による母岩との同位体交換の可能性を考慮するかぎり,PUMOS仮設を否定する材料とはならない.5)黒鉱鉱石の重金属元素組成と大洋底マンガン団塊のそれとは,PUMOSのモデル組成(定常海洋等のフラックス比)に対して補完的な関係にあり,両者が共通の海洋システムコントロールを受けていること,つまり,PUMOSの共役的な酸化還元分化産物である可能性を強く示唆している.黒鉱鉱床の形成は,局地的なマグマ熱水活動の一部ではなく,地球表層圏における生物地球化学過程によって本質的に規制されている現象であることに注意を喚起したい.
著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 村松 由崇 斉藤 豊
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.389-392, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
10

エコーを用いて,腱板断裂患者,凍結肩患者,反復性肩関節脱臼患者,健常人の第5頸椎(以下C5)神経根の断面積を比較検討した.対象は腱板断裂患者36例,凍結肩患者16例,反復性肩関節脱臼患者10例と,健常人100人とした.エコーを用いて頚椎横突起レベルのC5神経根の断面積を算出し,各疾患の患健側,健常人の間で比較した.腱板断裂では患側は7.8mm2±2.7mm2,健側は7.9mm2±3.0mm2,凍結肩では患側は8.7mm2±2.7mm2,健側は8.3mm2±2.4mm2,反復性肩関節脱臼では患側は6.6mm2±2.3mm2,健側は6.2mm2±2.1mm2,健常人では7.0mm2±1.9mm2であった.全群において両側間で有意差がなかった.健常人に比べ腱板断裂,凍結肩では,患健側とも有意に肥大を認めた.腱板断裂患者と凍結肩患者ではC5神経根は患側・健側ともに健常人と比較して肥大していた.肩関節由来の痛みにC5の肥大が関与することが示唆された.
著者
細川 恭子 宇佐美 清英 梶川 駿介 下竹 昭寛 立岡 良久 池田 昭夫 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.530-536, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

18歳男性,右利き.17歳より,視野全体に長く一本の斜線が入り,その上下で視野がずれて見える,両視野の眼前の光景が波状に見える,視野全体に大きな数個の斑状暗点が出現するなど多彩な視覚症状が生じ,その後に体外離脱体験(out-of-body experience,以下OBEと略記)として,“自分の姿を左後ろから見ている状態”が生じた.症状は1時間持続し頭痛が後続した.頭部MRIで両側後頭葉の軽度萎縮を認めた.本症例は多彩な視覚症状とOBEを呈し,部分てんかん発作との鑑別を要したが,症状が多彩で持続が長いことから前兆のある片頭痛と診断し,少量のバルプロ酸が著効した.OBEを伴う片頭痛は稀に存在する.
著者
梶村 啓二
出版者
平凡社
雑誌
こころ
巻号頁・発行日
vol.53, pp.104-121, 2020
著者
林 知代 梶原 麻世
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s57-s60, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
7

本稿では、書作品の鑑賞における展示会の意義をアンケート調査により明らかにし、360度パノラマ画像による展示会のデジタルアーカイブ化による書道鑑賞の充実を試みた。書道を学ぶ学生へのアンケート調査の結果、書作品の鑑賞は書道展が重要な役割を果たしており、書作品の雰囲気、構成、書き振りが感じられるデジタルアーカイブが必要であることが明らかになった。360度パノラマ画像の記録し、VRコンテンツを制作し、検証したとこと、展示会の雰囲気を味合うことはできたが、作品の雰囲気を味合までには達することができなかった。詳細なデータ記録をすることで、VR技術を用いた書作品の鑑賞を現実的なものとすることができると考える。
著者
佐藤 誠亮 久保 高行 四海 公貴 船引 達朗 大内田 友規 小田川 絢子 梶村 政司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20
被引用文献数
2

【はじめに】平和カップイン広島・国際交流車いすテニス大会(以下ピースカップ)は「広島から世界にpeace」をスローガンに、広島県車いすテニス協会(以下HWTA)の主催で開催されている。当初この大会のフィジオサービス(以下PS)は理学療法士(以下PT)の有志のみ(組織対個人)で運営されていたが広島県理学療法士会(以下当会)が会員活動を支援するためにHWTAと協議し当会の事業として位置づけた(組織対組織)ことでピースカップPSでの会員活動の負担が軽減した。現在では連携がさらに強まりHWTAが当会会員に対しての車いすテニス講習会を開催し当会会員PTの質の向上に役立っている。<BR>【変遷】1996年第51回ひろしま国体が開催され、続けて第32回全国身体障害者スポーツ大会・おりづる大会でスポーツ理学療法室が設置され当時のメンバー4名がピースカップでのPSを運営した。1997年HWTAより当会に正式要請があった。<BR>【現在の活動状況】当会からピースカップへ:大会期間中のPS運営を行う。2007度実績は1日利用者平均33名5日間延べ件数207件1日平均スタッフ数11名治療対象部位別件数は頭頚部87腰背部110肩上腕152肘前腕146手手指41治療方法は徒手療法63マッサージ149ストレッチ131テーピング42アイシング39物理療法39PS運営総経費は\77,328であった。ピースカップから当会へ:車いすテニス体験会の講師派遣してもらい障害者スポーツ研修の一助となっている。組織対組織として当会がピースカップPS運営に関わるようになり当会で運営のための予算を設け1.スタッフの交通費支給2.スタッフ確保が容易に3.物理療法機器レンタルが可能に4.事故発生時の責任問題の明確化5.PSでの使用物品の購入が可能になる事で参加会員の負担の軽減になった。<BR>【大会当日までの流れ】1.車いすテニス体験会の開催2.車いすテニス選手ケアのための研修会開催3.PSスタッフ参加募集4.PS運営のための大会直前研修会開催<BR>【考察および今後の展望】この取り組みのように他団体と本会が組織対組織で活動することで1.会員誰もが活動する機会が平等に与えられる。2.PTは障害を有するものを主な対象者として接するが実際には障害を有し社会復帰した後のものを対象として接する機会は少ない。障害を克服した方と接することで我々が臨床の場でよく接する障害を克服する前の対象者に還元できる事は十分にある。3.優秀な人材を発掘しその人材が本大会での活動のリーダーシップをとり質の高い選手ケアが提供できるようになる。これらは公益職能団体として不特定多数へ貢献できる活動といえる。全国的にみてもPT会が他団体の活動をサポートしている報告は散見される程度であるため、当会としてはこのような活動を組織として行うことのメリットを全国に発信していきたい。<BR>