著者
大森 智恵
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.242-251, 2005 (Released:2005-06-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究では,女子大学生の中の摂食障害傾向を持つ者にはどのような性格特性があるのかについてMMPIを用いて検討することを目的とした.その結果,摂食障害傾向を持つ者は11の臨床尺度で摂食障害傾向を持たない者よりも有意差に高い値を示した.各尺度に注目すると,摂食障害傾向を持つ者は自己統制がきかず衝動的に行動する傾向を示す第4尺度(精神病質的偏倚尺度)が高くならず,活動的で自己主張性を示す第5尺度(男子性・女子性尺度)が低くならなかった.これらのことから摂食障害傾向を持つ者は摂食障害者が示すとされる受動攻撃性はみられなかった.第4尺度が高くなかったことについては過食・嘔吐を抑制する可能性が,また受動攻撃性がみられなかったことについては気持ちや感情などを歪めずに表出できる可能性が考えられ,それらが摂食障害の発症を抑制している可能性が示唆された.
著者
福田 雅子 中森 正博 今村 栄次 小川 加菜美 西野 真佐美 平田 明子 若林 伸一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.527-533, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
19

認知症診療において臨床検査技師も積極的に神経心理学的検査を行うようになっている。その中に,軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)の評価スケールとして開発された日本語版Montoreal Cognitive Assessment(MoCA-J)がある。今回,MoCA-Jの特性を検証するため,当院外来でMoCA-Jを施行した患者75名を対象とし,リスク因子との関連を頭部MRI所見を含めて後方視的に解析した。また認知症疾患ごとにMoCA-Jサブスコアでの検討を行った。平均年齢74.6 ± 9.1歳,MoCA-J中央値21(最小値8,最大値30)であった。認知機能正常者においてMoCA-Jと関連する因子の多変量解析を行ったところ,脳室周囲高信号域(periventricular hyperintensity; PVH)は有意に独立した相関因子であった。疾患毎のMoCA-Jサブスコアの比較を行ったところ,血管性認知症では注意・遂行において正答率の低値が認められた。また,記憶の正答率は認知機能正常者も含めてすべての群で低かったが,認知機能正常者,MCI,認知症の順で 顕著に低下していた。MoCA-Jは特に前頭葉機能を反映する注意・遂行の配点が高いことが特徴である。その点を踏まえて脳画像所見との比較や認知機能低下の鑑別に活用する意義は大きいと考えられた。
著者
森 重文 藤野 修
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.294-319, 2017-07-25 (Released:2019-07-26)
参考文献数
32
著者
窪山 達也 森吉 泰生
出版者
一般社団法人 日本燃焼学会
雑誌
日本燃焼学会誌 (ISSN:13471864)
巻号頁・発行日
vol.58, no.183, pp.20-26, 2016 (Released:2018-01-26)
参考文献数
20

A low speed preignition (LSPI) is one of the critical issues in recent supercharged direct injection SI gasoline engines. LSPI is strongly demanded to be solved because knocking with high intensity which is called “super-knock” or “mega-knock” follows it, and sometimes provides severe engine damage. LSPI is occasional phenomena and is often occurs in a sequential manner intermittently including normal SI combustion cycles. Though some possible sources inducing LSPI have been found and reported, chemical and physical mechanisms of LSPI phenomena have not been cleared in detail, yet. This report reviews some studies and discussed about mechanisms of LSPI in supercharged DISI engines focusing attention on the effects of lubricant oil and its additives on LSPI and the LSPI induced by hot deposit fragments detached from the wall.
著者
小森 めぐみ 村田 光二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.2-14, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
29
被引用文献数
3

本研究では,社会的状況を手がかりとした自発的感情推論が生じるかどうかを,そして視点取得がその推論に果たす役割を,記憶課題を用いて検討した。実験1では,参加者はさまざまな状況に置かれた人物についての記述文を記憶した。記述文から推論される感情語が後に手がかりとして呈示された場合には,手がかりがない場合と比べて記述文の再生が促進されることが示された。実験2では,参加者は特定の感情が表出された人物の顔と名前の対を記憶した。その表情が事前に呈示された同一人物の記述から推論される感情と一致する場合には,そうでない場合と比べて対連合記憶課題の成績が良いことが示された。これらの傾向は視点取得した場合(実験1)にはより強く見られ,状況に注目した場合(実験2)には記憶課題全体の成績を向上させた。二つの実験で見られた記憶の促進効果は,人が表情などの表出行動からだけでなく,他者の置かれた状況からも,その人の感情を自発的に推論する場合があることを示しているだろう。また,視点取得が他者の置かれた状況への注目を強め,推論を促進させる可能性も示しているだろう。
著者
横山 紀子 福永 由佳 森 篤嗣 王 瑞 ショリナ ダリヤグル
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.79-89, 2009 (Released:2017-06-21)
参考文献数
11

海外の日本語教育では,聴解技能が弱点であるばかりでなく,聴解技能開発の必要性やその方法論に対する認識が一般に低いことが指摘される。このような海外の日本語教育における課題を解決に導く事例として,カザフスタンおよび中国で非母語話者日本語教師が実践したピア・リスニングの試みを紹介した。ピア・リスニングとは聴解の過程をピア(学習仲間)で共有し,協力しながら理解を構築していく教室活動である。ピアの話し合いを文字化した資料および学習者からの意見聴取をデータとして,実践の成果を分析した。ピア活動では,言語知識の共有および欠落した理解を補う方策の共有が行われていた。また,ピア学習に合わせ,カザフスタンでは聴解を仮説検証的に進めていくためのタスク中国では学習者のモニターを促進するために「質問」を作るタスクを導入したが,これらのタスクとピア活動が相乗的な効果を上げたことを考察した。
著者
森髙 初惠 中西 由季子 不破 眞佐子 谷井 涼子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-122, 2012 (Released:2014-03-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1

米飯摂食後の血糖値上昇抑制を目的として,米飯へ0~2.5%寒天を添加した効果について,嗜好特性,熱特性ならびに血糖値を測定して検討した。 高い濃度の寒天を添加した米飯においては,味,香り,外観は悪いと評価され,硬さは硬いと評価された。昇温DSC曲線における最も高温の吸熱ピークは,寒天添加により高温側へシフトし,エンタルピーは小さくなった。米飯摂取後120分間の血糖応答曲線において,寒天の添加により血糖値は緩慢に増加し,最大血糖値は低下した。グリセミックインデックスは,寒天無添加米飯で大きく,寒天濃度が増加すると減少した。
著者
石川 昭義 西村 重稀 矢藤 誠慈郎 森 俊之 青井 夕貴
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.30-38, 2013-03-31

平成23 年8 月に,A市(政令指令都市)の保育所289 園とB県の保育所278 園の所長を対象に調査を依頼した(保育所長の保育所運営に係る意識に関する調査).本稿では,調査質問項目の中から,四大卒及び男性保育士の採用に係る調査結果と併せて,新たに実施したヒアリング調査の結果を報告する.保育所長は,四大卒保育士の採用については,「どちらともいえない」という回答が最も多く(56.1%),ついで「ややそう思う」(24.1%)という回答が多かった.四大卒の保育士に期待する領域としては,「子どもの発達過程の理解」,「ソーシャルワークの知識・技能」,「保護者からの相談対応」が高かった.今後の男性保育士の採用については,「どちらともいえない」(38.4%),「ややそう思う」(30.0%)という回答が多かった.男性保育士の採用をめぐる自由記述では,採用に積極的な意見から消極的な意見まで,多様な見解があることが判明した.同時に,保育士の給与のベースとなる運営費の在り方という課題も浮かび上がった.
著者
森川 郁也
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-46, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
43

機械学習技術は,適切な処理方法を人間が明示するのではなくデータから学ばせるという新しいソフトウェアパラダイムであり,幅広い応用分野に大きな進展をもたらしつつある.しかし未解明の部分も多く,それゆえに機械学習特有のセキュリティ上の弱点が見つかっており,現在盛んに研究されている.本稿では機械学習のセキュリティに関する研究の動向を紹介し,セキュアな人工知能(AI)応用システム実現への展望を述べる.
著者
中森 眞理雄 竹田 尚彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1213-1217, 2007-11-15
著者
佐藤 裕 森 浩一 小泉 敏三 皆川 泰代 田中 章浩 小澤 恵美
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.181-186, 2004-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
24
被引用文献数
3 2

吃音者の聴覚言語処理における大脳左右機能の分化異常について, 多チャネル近赤外分光法を用いて測定した.音刺激には音韻もしくは抑揚の異なる対立を用い, 左右それぞれの聴覚野付近にて得られた総ヘモグロビン量の反応ピーク値を基に側化指数を算出し左右差を検討した.その結果, 吃音者群では音韻・抑揚対比セッション間で側化指数に有意差がなく, 言語処理の半球優位性が見られないことが確認された.また, 個人内の検定では, 健常右利き成人の85%で音韻処理が左優位と判定できるのに対し, 右利き成人吃音者の80%は左優位を示さず, 逆に右優位となる被験者も存在した.これらのことから, 吃音と言語処理の大脳半球優位性の異常との関連が示唆され, この手法により吃音者の聴覚性言語処理の機能異常を個人ごとに捉えられることが判明した.
著者
森 類臣 Tomoomi Mori
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.89, pp.31-87, 2009-10-10

本研究は、2003年に盧武鉉元大統領が行った「記者クラブ」解体のプロセスに焦点を当てている。記者クラブは、日本による朝鮮半島植民地支配の遺物として、日本だけでなく韓国にも戦後継続して存在していた。官庁や大企業などの主要情報源におかれていた記者クラブを、韓国の歴代政権は情報統制に利用し、また、記者クラブ自体が排他的・閉鎖的・差別的構造を持っていたことは、日韓とも同じであった。2003年の記者クラブ解体前には、『ハンギョレ新聞』『オーマイニュース』などによる対記者クラブ闘争があった。
著者
三浦 麻子 小森 政嗣 松村 真宏 平石 界
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.4, no.Si, pp.26-32, 2019-02-28 (Released:2019-03-11)
参考文献数
18

The present study explored social sharing of negative emotion on social media related to the 3.11 earthquake. A dataset was created from tweets that included one or more of the nuclear disaster at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (F1-NPP) related vocabulary, which were extracted from all Japanese tweets from March 11th, 2011 to April 16th, 2012. The results show anger was less susceptible to attenuation over time and this trend was more obvious in regions farther from the F1-NPP. Anxiety was more commonly shared in regions with a nuclear power plant, but a tendency to decrease over time was observed and this trend was more prominent the closer one was to the F1-NPP.
著者
上林 大志 森 寿仁
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.256-266, 2022 (Released:2022-11-03)
参考文献数
11

本研究では,ペップ・グアルディオラ監督が体系化した5 レーン理論に基づいたハーフスペースを利用したサッカー戦術の特徴を明らかにすることを目的とした.対象試合はイングランドプレミアリーグおよびヨーロッパチャンピオンズリーグなどの18 試合とし,ペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティFC の対戦試合11 試合およびその他のチーム同士の代表的な試合7 試合とした.そして,ハーフスペースを利用した戦術に関わると考えられる13 項目を試合映像から分析した.その結果,マンチェスター・シティFC はペナルティエリア(PA)内への侵入回数が多く,PA 内のハーフスペース(ポケット)でボールを受ける動きが多いことが明らかとなった.一方で,ポゼッションによる攻撃戦術であるため,PA 侵入前の守備選手が多いことも明らかとなった.これらのことから,ハーフスペースを利用した戦術を取ることでPA 内に多く侵入でき,シュート機会にも恵まれやすいが,守備選手が多いために難易度の高いシュート状況となり,シュートを打つ選手(フィニッシャー)のシュート能力が重要となる戦術であることが明らかとなった.
著者
力武 正浩 小島 博己 山本 和央 田中 康広 森山 寛
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.125-130, 2013 (Released:2015-04-16)
参考文献数
9
被引用文献数
8

画像診断の進歩により高分解能側頭骨CTにおいて耳硬化症病変の有無や進展範囲を評価することが可能となりつつあるが、耳硬化症症例における術前CT所見と術後成績について検討した。側頭骨CTを施行し耳硬化症と診断され、初回アブミ骨手術を行った67人81耳を対象とした。術前CTにて卵円窓前方および蝸牛周囲の脱灰の有無を判断した。術後成績はAAO-HNSの基準案に準じ術後気骨導差が10dB以下に収まるものを成功とした。CTにてfenestral typeと診断されたものが59.3%、蝸牛にも脱灰像を認めたretrofenestral typeと診断されたものが9.9%、所見なし30.9%であった。卵円窓の狭小化例が9.9%あり、アブミ骨底板の肥厚例が22.2%であった。全症例における手術成績は79.0%であった。CT上、卵円窓の狭小化が認められた例の成功率は42.9%、アブミ骨底板の肥厚が認められた例では66.7%であった。病態が進行したと考えられる卵円窓狭小化、アブミ骨底板肥厚が認められた症例では手術成功率が低かった。