著者
大森 愛
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.57-65, 2007-03

学校で教えるカリキュラムは,国家の政治的,経済的,社会文化的要因が複雑に絡み合い形成されている.本稿のねらいは,アジアの初等教育における外国語または公用語としての英語教育と国語教育の時間配分に,国家の政治的,経済的,社会文化的要因がどのように影響しているのかを検証する.対象国が限定されていることから,統計的に有意な要因を特定化することが困難であった.しかし,本稿の目的は,統計的に有意な結果のみを検討するのではなく,言語カリキュラムの時間配分におそらく関連があると考えられる要因を探ることにある.結果は,英語教育の時間配分には,英語圏による植民地化の歴史め有無が最も強く関連していた.その他,国家の経済水準も関連している可能性がある.国語教育の時間配分には,国家の民族的言語的多様性と経済水準,さらには政治的多様性と独立した年がこの順め強さで関連している可能性があると考えられる.英語と国語の時間配分を規定している要因は国家の能動的な行為を反映していると考えられ,世界システムの影響は認められなかった.言語カリキュラムと国家の構造特性との関連を検討することは,その確立過程と現状を考える上で有益である.より統計的に有意な議論を可能にするために,充実したカリキュラムのデータ・ベースの整備が求められる.
著者
森口 哲史 藤田 勉 市村 志朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.19-28, 2008

フラダンスは,生涯スポーツとして中高年女性を中心に愛好家が増加している.しかしながら,その健康運動としての有効性を検証した研究は極めて少ない.本研究は中高年女性14名を対象にフラダンスを行った際の心拍変動,足圧重心動揺および気分プロフィールの変化について検討することを目的とした.その結果,フラダンス中の平均心拍数は60%HRmax程度であり,血中乳酸濃度の顕著な上昇はみられなかった.また,フラダンス直後の重心動揺総軌跡長は有意に短縮し(pく0.05),動揺面積も減少した. POMS検査では活気気分が有意に上昇し(pく0.01),すべての陰性気分が減少した.これらの結果より,フラダンス実践は,低強度の有酸素的運動としての効果が期待でき,運動刺激が一過的に重心動揺を制御する可能性が示唆された.また,陽性の感情変化は運動継続と精神的健康維持に寄与するものと推察された.本研究により,フラダンスは中高年者の健康運動活動として,心理生理的に有効性が高い可能性が示唆された.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007-10-01
被引用文献数
9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.<br>
著者
堀越 昌子 大森 久和
出版者
滋賀大学
雑誌
滋賀大学教育学部紀要. 自然科学 (ISSN:04886291)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.94-101, 1980

Tar dyes were determined quantitatively in ice candies by double-wavelength spectraphotometry. Tar dyes were detected in 80% of colored ice candies, The meanvalue of the concentrations of tar dyes in ice candies was 7.78±6.40ppm. Tartrazine(Y4) was used most extensively and detected in 77% of ice candies which contained tar dyes. Brilliant blue FCF(B1) was detected in 43% of them. The mean value of the concentration of tartrazine was 7.21ppm and that of brilliant blue FCF was 0.76ppm. Ice candies which contained a single dye were 37%. The most ice candies contained plural species of dyes. The ratio of the mixture of dyes was determined by double-wavelength spectrophotometry. When there were many samples which contained a mixture of dyes and their specific absorption peaks different with one other, the double-wavelength spectrophotometric method was very useful.
著者
今井 亮太 中野 英樹 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.401-405, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3

〔目的〕本研究の目的は,物体の視覚的提示に伴う腱振動刺激による運動錯覚時の脳活動を明らかにすることとした.〔対象〕振動刺激によって錯覚を経験した際の錯覚強度が4以上であった11名を対象者とした.〔方法〕以下の3条件にて手関節総指伸筋腱を振動刺激した.条件1:物体提示なし.条件2:手関節を掌屈すれば物体に接触する距離に物体を提示.条件3:手関節を掌屈しても物体に接触しない距離に物体を提示.脳活動は,機能的近赤外分光装置を用いて測定した.〔結果〕条件1と条件3に比べ,条件2において右運動前野,右感覚運動野,右頭頂領域にoxy-Hbの有意な増加が認められた.〔結語〕物体の提示位置が異なることにより,運動錯覚時の脳活動が変化することが示唆された.
著者
三森 一司 細田 智子
出版者
聖霊女子短期大学
雑誌
聖霊女子短期大学紀要 (ISSN:0286844X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.41-47, 2006-03-31

松皮および松皮餅に含まれるポリフェノール物質について検討した結果、次の点が明らかとなった。(1)生の松皮には、100g当たり14.8×10^3mgのポリフェノールが含まれていた。(2)松皮を加熱処理すると、1時間後に約60%のポリフェノールが損失し、9時間後には殆ど残存していなかった。(3)加熱処理により、松皮のポリフェノールは水溶液中に溶出し、加熱時間が長くなるにつれ増加した。(4)松皮のポリフェノール損失量よりも抽出液中のポリフェノール量が少なかったことから、ポリフェノールが酸化や分解により他の物質に変化していることが推察された。(5)二次元のペーパークロマトグラフィーにより、松皮に含まれるポリフェノールの殆どは、不動性会合型タンニンであることが推測された。
著者
森村 茂 叶 秀娟 重松 亨 木田 建次
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.417-423, 2002-09-25
被引用文献数
13

焼酎蒸留残渣を利用して醸造酢を製造する場合,クエン酸耐性を有する酢酸菌を用いて,添加エタノール濃度5%(v/v)の条件で好気培養を行えば,焼酎蒸留残渣の固形分の有無,滅菌の有無,従来法あるいは返し仕込みで副生する焼酎蒸留残渣の種類に関係なく,容易に酢酸発酵が行えることを明らかにした.さらに,流加培養を行うことにより,回分培養と比較してより高い酢酸生成収率が得られた.製造した醸造酢は市販の黒酢と同様の優れた抗ラジカル活性およびACE阻害活性を示し,それらの活性は焼酎蒸留残渣由来の物質によることがわかった.このように,焼酎蒸留残渣から機能性を有する醸造酢を製造することができた.
著者
齊藤 美奈子 加賀谷 煕彦 森井 秀樹 中川 喜直 木村 直人 吉田 博幸 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-40, 1991-02-01
被引用文献数
1

rights: 日本体力医学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110001929615/The purpose of this study was to clarify some of the characteristics of race-walking, especially the relationship between walking speed and oxygen requirement, and stride in race-walking and normal walking, and to examine whether rase-walking is effective for the maintenance and promotion of health. The subjects were five male race-walkers (race-walker group) and five male college students (control group). The results obtained were as follows : 1.Under race-walk conditions,the highest speeds attained in the race-walker and control groups were 200〜220 m/min and 160m/rnin, respectively. Under normal walking conditions, however, the values were 140 m/nlin in both groups. 2.A lower oxygen requirement was observed at slower speed during normal walking and at a higher speed(over 130 m/min) during race-walking. 3.Oxygen requirement(ml/kg/100 m) in the race-walker group was minimal at 60〜80 m/min during race-walking and at 60 m/min during normal walking.Values in the control group were minimal at 60 m/min under both walking conditions. 4.The oxygen requirement in the race-walker group was less than that of the control group under both walking conditions. 5.Under normal walking conditions,as the speed increased,both step-length and step frequency gradually increased,until step-length reached a limit of 80 cm. Thereafter, walking was maintained only by an increase in step frequency.However,in the race-walkes group,the subjects were capable of increasing their step-length further,and maintaining a higher speed(up to 220m/min). 6.It was suggested that race-walking is one of the most efficient exercises for maintaining and improving health.
著者
森 奈実子 久住 憲嗣 中西 恒夫 福田 晃
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2010-MBL-53, no.12, pp.1-8, 2010-03-19

ドメイン特化型開発では,特定の市場領域に属するソフトウェアを効率的に開発できる DSL (Domain-Specific Language) を定義し,開発者はその言語を用いてソフトウェアを開発する.しかし,ドメイン特化型開発では特有のテストプロセスは定義されていない.そこで,本稿では DSL の分類に応じたテストケース自動生成手法を援用したテストプロセスを提案する.ケーススタディとして小規模な DSL に提案手法を適用し,その結果を基に従来手法との比較を行った.
著者
森 俊勇 井上 公夫 水山 高久 植野 利康
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.44-49, 2007-09-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21

As many as 19 landslide dams have been formed in the northern region of Nagano prefecture, central Japan, in last 500 years except one case. Of this number, seven were formed when the Zenkoji Earthquake occurred in 1847. This abundance is likely because of the geotectonic background of this area which is located at the western end of the “Fossa Magna, ” or Japan's central graben belt.The Tobata landslide occurred in the early morning of June 24, 1757 due to heavy rain. Blocking the Azusa River, which is upstream of the Shinano River, a landslide dam with a height of 130 m and a storage capacity of 85 million m3 was formed. Around 10 a.m. on the third day (54 hours later), this landslide dam burst and its water flooded the area up to the confluence with the Narai River. According to calculation using the Manning's formula, it is estimated that the flood water ran down the river in a concentrated path with a velocity of 12 m/s and a peak flow of 27, 000 m3/s.When the dam burst, local people were quickly ordered to evacuate and no casualties were caused during this flood.