著者
伊永 隆史 田沼 絢子 森 勝博
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-38, 2019

2018 年7 月の西日本豪雨に代表される緊急事態に、国民に危険情報を知らせ、避難を促すのが「全国瞬時警報システム(J アラート)」である。J アラートが発信されると、市町村が防災行政無線を起動し、屋外スピーカー等から警報が流れるほか、携帯電話にエリアメール・緊急速報メールなどが配信される。ところが、重大な危機が発生した直後、自治体が住民の生命財産を守るために行う警報や避難命令などを配信する「防災行政無線」が全国で機能不全に陥っていることが分かった。そのため、防災行政無線による市町村の住民に対するリスクコミュニケーション機能を補強する目的で、直接各家庭のテレビの地デジチャンネルに映像、音声、データ放送を送り込める「エリア放送」は地方自治体における防災・危機管理に欠かせない先進ツールとなりつつある。エリア放送による防災・危機管理の機能及び地域活性化に関する社会貢献活動について、総合危機管理の視点から展望する。
著者
土屋 悟 松山 昌史 森 勇人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_355-I_360, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
9

火山活動に伴い発生する津波は,地震による断層運動を要因とする津波より発生頻度が低く,その実態はあまり明らかになっていない.また,火山活動に伴い発生した津波の国内外事例を対象に解析的検討が実施されているものの,発生過程は多様であり未解明な部分が多い.そこで本研究では火山活動に伴い発生する津波のうちカルデラ陥没に着目し,水理模型実験によりカルデラ陥没を想定した津波の発生機構を明らかにするとともに,数値計算により既往の検討手法の妥当性を検証した.その結果,水理模型実験によりカルデラ陥没に伴う津波の発生機構が確認できた.また,水理模型実験結果の再現計算により既往の検討手法による初期波形計算手法でカルデラ陥没に伴う津波の発生が表現可能である.
著者
森 武夫
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-41, 2019

<p>日本では古くから文学作品の中では心や魂のいろいろな面が書かれてきたが,心を科学的な目で見ることはなかった。明治維新以後,海外で心理学を学び帰国した教師たちによって心理学の研究や教育がなされるようになった。日本の大学で心理学を学んだ寺田精一は,刑務所にいる囚人の調査,研究により,多くの犯罪心理学の著書や論文を発表した。こうしたきっかけから内務省では多くの心理職員を嘱託として採用していたが,やがて正式の職員として採用するようになった。心理テストは精神科医による鑑定書に用いられた。</p>
著者
森田耕喜
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 = Bulletin of International University of Health and Welfare (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-42, 1996-08-31

死についての哲学的洞察は、哲学がこれまでどのように死を問うてきたかという哲学史的問題へと我々を向かわせる。死とは何かという問いが、古来、哲学者達にとって根源的であり続けてきたのは、人間が本質的に死という未来によって限定された存在であるからである。ヘーゲル哲学における死の概念の考察が本稿の目的であるが、最初に死の概念について歴史的に概観し、次にヘーゲルの初期論稿と『精神現象学』における存在概念として特徴づけることによって、ヘーゲル哲学において生命と死の概念がもつ意味を考察する。初期論稿において生命は世界の存在概念として特徴づけられ、その存在性格が愛による運命との和解という初期思想の根本概念を規定している。「意識の経験の学」としての『精神現象学』に至って、生命は自己意識として捉えられ、生命は精神の生命となる。その際、死は生命の終わりでもなく、生命の対立概論でもなく、生命に内包され再生と新たな生命創造の契機であることが明らかになる。ヘーゲル哲学を含め近代西欧哲学はデカルトにより発見された「我思う」の自我、即ち、意識の哲学であるが、生命と死の概念についても、それが精神としての生命であり、意識の死であることが結論づけられる。Diese vorliegende Arbeit ist ein Versuch, den Begriff des Todes in der Hegelschen Philosophie aufzuklären. Das Problem des Todes oder die Frage nach dem Tod war immer wieder das bedeutendeste Problem für alle Philosohen, weil das Sein des Menschen wesentlich vom Tode beschränkt ist. Wollen wir zeigen, warum es sinnvoll ist, philosophische Betrachtungen über Tod anzustellen, so müssen wir zunächst erklären, wie Philosophie bis heute nach dem Tode gefragt hat.IN dieser Arbeit zuerst verblicken wir historisch und philosophisch den Befriff des Todes. Veispiel, da die Seele unsterblich und der Tod die Trennung von Leib und Seele sei. Für Decartes bedeutet der Tod des Menschen nur das Ende der automatischen Maschine.Dann wollen wir den Begriff des Lebens und Todes in Hegels Philosophie in Betracht ziehan. In den Hegels Theologischen Jugendschriften bezeichnet das Leben das Wirkliche d.h. die Weise des Sein. Auch in Phänomenologie des Geistes wird das Leben als Seinsbegriff klar.Seit Decartes und Kant könnten wir sagen, da Subjekt der neuzeitlichen Philosophie in anderen Worten, Vermittler Bewußtsein ist. SO in diesem Sinne ist der Tod des neuzeitlichen Menschen der Tod des Bewußtseins.
著者
山森 徹雄 植原 典子 清野 和夫 谷 信幸 島崎 政人 高橋 秀美 中原 元 斉藤 彰久 浅井 政一 長山 克也
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.245-248, 1996-04-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

It was attempted to apply barrel finishing to improve the surface texture of the basal surface of the complete denture. The effect of barrel finishing on the denture base resin of rough surface should be confirmed to understand the alteration of the basal surface of complete denture after barrel finishing, because it is corrugated. The denture base resin samples with standardized corrugated surface were made using a metal mold, then each sample was divided into halves. One of the halves was barrel finished following the manufacturer's instruction after masking the datum plane, whereas the other one was used as a control without finishing. Both samples were observed under the reading microscope, and the distances between the base line and the top of each corrugation or the bottom of each corrugation were measured. Observation under the scanning electron microscope was also made. The results were as follows:1. The scanning electron microscopic observations showed that the top of the corrugation was obviously made round and smooth by barrel finishing, and that the bottom of the corrugation was also made smooth but it was less smooth than the top of the corrugation.2. The cutting depth of the denture base resin was 218.13μm at the top and 3.53μm at the bottom of the corrugation.These findings suggest that there is no problem after barrel finishing of the basal surface of complete dentures even if attention was paid to the height of the bead established for the posterior palatal seal.
著者
太田 恵 小川 智美 遠藤 正樹 森島 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100446, 2013

【目的】近年の学生の一部には、教育上無視できないコミュニケーションスキルやソーシャルスキルの低さが認められる。それらの能力不足は、臨床実習で不合格になる要因になり得るが、学力とは必ずしも相関しないため、学科試験だけで見抜くことは難しい。そこで本研究では、入学試験時における面接試験の成績とその後の臨床実習の成績との関係を明確にし、入学直後からの学生指導の可能性を検討した。【対象と方法】平成18年度から21年度までに当校に入学した者のうち、臨床実習より以前に退学した者および現在の在校生を除外した190名(男性136名、女性54名、平均年齢25.9±6.3歳)を解析対象とした。当校では、入学試験において、口頭試問および集団面接の二種類の面接試験を実施している。前者は、3名から4名の受験者に対し、試験官である教員が一人ずつに質疑を行う形式である。一方後者は、8名から10名の受験生がグループになり、他の受験生と提示された課題を進めていく形式で、他者との関わりを見るものである。それぞれ3名から5名の教員が試験官となり、服装・言葉使い・積極性・適正・対人適応等の観点から 1点(非常に悪い)から4点(非常に良い)の段階評価を行なった。複数回受験している者に関しては、最後の試験の成績を採用した。全試験官の評定がいずれも3点以上だった群85名(入試高位群: 男性56名、女性29名、平均年齢24.4±5.3歳)と2点以下の評定が付いた群105名(入試低位群: 男性80名、女性25名、平均年齢27. 2±6.8歳)に分けた。各群において、臨床実習で合格した者(実習合格者)、学生自ら臨床実習を中止した者(実習中止者)、臨床実習指導者の判断で不合格となった者(実習不合格者)について、それぞれオッズ比を算出し、Fisher直接確率検定を用いて解析した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本校は倫理委員会設置しておらず、同等の権利を持つ組織の承認を得て実施した。尚、個人を特定するようなデータは含まれていない。【結果】入試高位群は、実習合格者68名、実習中止者6名、実習不合格者11名であった。それに対して入試低位群は、実習合格者69名、実習中止者5名、実習不合格者31名であった。実習中止者については群間で有意差はなかったが、実習不合格者については、入試低位群は入試高位群と比較しオッズ比2.777(95%信頼区間1.292-5.969) と高値を示した。また実習合格者137名のうち、いずれの形式の面接でも3点以上だった者が68名(男性42名、女性26名、平均年齢24.7±4.9歳)、口頭試問のみ2点以下だった者が10名(男性5名、女性5名、平均年齢25.3±6.5歳)、集団面接のみ2点以下だった者が34名(男性25名、女性9名、平均年齢26.2±4.8歳)、いずれの形式の面接でも2点以下だった者が25名(男性20名、女性5名、平均年齢28.0±8.3歳)であった。しかし、実習不合格者42名では、いずれの形式の面接でも3点以上だった者が11名(男性9名、女性2名、平均年齢22.5±5.0歳)と少なく、口頭試問のみ2点以下だった者が4名(男性2名、女性2名、平均年齢27.8±10.4歳)、集団面接のみ2点以下だった者が12名(男性12名、女性0名、平均年齢27.7±8.5歳)、いずれの形式の面接でも2点以下だった者が15名(男性11名、女性4名、平均年齢29.0±6.7歳)と多かった。【考察】臨床実習では、理学療法士になるために必要な知識や技術は勿論だが、医療従事者や社会人としての姿勢や資質も要求される。本研究により、面接試験で成績不良だった学生には実習不合格者が多いことが示された。このことから、入学試験時の面接試験は、学生の臨床実習における問題点を早期に把握する上で有効な手段だといえる。また入学試験で一般的に行われている口頭試問だけでなく、集団面接を合わせて実施することにより、問題点をより明確に抽出できると考える。今後は学生の問題点を早期に把握するだけでなく、臨床実習を念頭に置き、入学当初からどのような学内教育に取り組んでいくのが有効なのか、検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 入学試験において面接試験を実施して教員が評価することで、学力以外の問題点に対しても、臨床実習に向けてより早期から指導をすることが可能になると考える。
著者
雨越 康子 森下 正修
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.339-350, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
44

本研究では,集団での絵本の読み聞かせ方法を工夫し長期間(約100日)実施することで,幼児の語彙力やワーキングメモリ(WM)等の認知能力に向上が見られるか否かを検討した.実験群では,保育園で子どもたちに同一絵本を3,4日反復して読み聞かせし(文中の言葉の記銘,想起を求める群と求めない群があった),統制群では保育園で通常通り毎日異なる絵本を読み聞かせした.読み聞かせの前後で言語性・視空間性WM,短期記憶,語彙力を測定し2群の変化を比較した結果,同一絵本を反復読み聞かせした2つの実験群は統制群よりも語彙力が有意に上昇していた.また,家庭での読み聞かせ頻度は,読み聞かせによる言語性WM や語彙力の伸びやす さに関連する可能性が示唆された.
著者
北道 淳司 森岡 澄夫 東野 輝夫 谷口 健一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.123-124, 1993-09-27

ハードウェア記述言語では,複数の動作の並列実行を自然に記述できるものが多い.しかし,複数の動作が同じレジスタ,バス,端子等に異なるデータを転送する(データ代入の衝突)かどうかを判断することは難しい.高信頼という観点からは,データ代入の衝突が起きないことを保証し,その記述から高位合成することが望ましい.本論文では,2.において,同期式順序回路を対象とし,複数動作が実行される順序回路の一モデルを示し,そのモデル上でのデータ代入の衝突を定義する,3.において,衝突が起きないことを検証するアルゴリズムを与える.
著者
山田 健代 森脇 智秋
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.35-41, 2021-03-31 (Released:2021-07-19)
参考文献数
30

本研究では妊娠期の「疲労感」に着目した。妊婦の疲労感は妊娠中のマイナートラブルの一つとして見過ごされ,医学的には問題がないとされることが多い。健康でより快適な妊娠期を過ごすため,「疲労感」に着目しその実態を把握するために文献検討を行った。医学中央雑誌Web版を用い,妊婦の疲労感に関する21文献を分析した。妊婦の90%以上が全妊娠期間を通して疲労感を感じていた。妊婦の疲労感の原因は妊娠に起因するものと考えられることが多く,ほとんどの妊婦が疲労感を感じながら妊娠期を過ごしていた。妊婦の疲労感に関連する身体的,社会環境要因については多くの研究がなされていた。今後の課題として,妊婦の疲労感と心理的要因との関連を明らかにしていくことの必要性が示唆された。
著者
庄司 隆夫 森 美紀 松崎 英樹 井口 幸洋 山田 輝彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.169-170, 1997-03-12

PLA (Programmable Logic Array) は規則的な構造ゆえ論理回路の設計の自動化が容易なことから広く用いられている. 単一のPLAについては入カパターンのビット表現とPLA構造の規則性を活用した並列ビット演算を基に、各テストパターンで検出できるクロスポイント故障を演繹して高速化をはかったシミュレーション手法が提案されている. しかし、この手法を相互に、接続されたPLAにそのまま適用することはできない. そこで、この手法を拡張してPLAのネットワークを取り扱える故障シミュレーションの手法を示す. また、この手法を用いて開発した故障シミュレータ PLANCS (PLA Network Crosspoint Fault Simulator) の性能を評価する.
著者
大森 みさき 今井 理江 佐藤 修一 堀 玲子 長谷川 明
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-48, 2000-03-28
参考文献数
18
被引用文献数
11 5

日常, 特に口臭を認めない日本歯科大学新潟歯学部の学生および職員30名の口臭の変動を口腔内の揮発性硫黄化合物の濃度を測定するポータブルサルファイドモニター (Halimeter RH17&reg;Interscan社, アメリカ) を用いた揮発性硫黄化合物量測定と官能試験によって1日5回 (朝食前, 朝食後, 昼食前, 昼食後, 夕食前) 経時的に測定しその日内変動を調べた。また, そのうち8名に対し経時的に口腔内診査を行い, 安静時唾液量, 唾液pH, プラーク, 舌苔の付着などを調べ, 口臭と臨床的パラメータの関連についても検討を行った。<BR>その結果, 性別による口臭に差がないことが明らかになった。また, 朝食前では何らかの口臭を認めることが示され, 食事の摂取によって減少する傾向がみられた。臨床的パラメータと口臭との関係では朝食前において舌苔付着量とハリメーター値との間に有意な関係が認められたが, 他のパラメータとでは有意ではなかった。これらの結果から舌苔が生理的口臭に影響を与えていることが示唆された。
著者
松井 勝弘 手塚 隆久 原 貴洋 森下 敏和
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.49, pp.11-17, 2008-03

「そば中間母本農1号」は夏型品種の「牡丹そば」に普通ソバの近縁自殖性野生種Fagopyrum homotropicumを交配し、その後「牡丹そば」を戻し交配して選抜育成された自殖性の普通ソバである。「そば中間母本農1号」の花はおしべとめしべの長さがほぼ等しい花形をしており、この花形から自殖性が識別できる。「そば中間母本農1号」はF. homotropicum由来の子実脱落性対立遺伝子を除去してあるため、普通ソバと交配した後代でも子実が脱落することはない。「そば中間母本農1号」の種子の大きさは「牡丹そば」並みである。生育は旺盛でないが、自殖性の育種素材として利用できる。
著者
松井 勝弘 原 貴洋 手塚 隆久 森下 敏和
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.59, pp.23-37, 2013-02

普通ソバ品種「さちいずみ」は耐倒伏性が優れる中生の「朝日村在来 3」を母,早生で子実外観品質が優れる対馬収集の在来種「SOBA」(農業生物ジーンバンクJP番号86258)を父として,人工交配を行った雑種集団より選抜育成した。「さちいずみ」の開花期は「常陸秋そば」とほぼ同じで,「鹿屋在来」よりやや早い。成熟期は「常陸秋そば」とほぼ同じで,「鹿屋在来」より10 日以上早い中生である。草丈は「鹿屋在来」より短く,耐倒伏性は「鹿屋在来」より強く,鹿児島県における収量性は「鹿屋在来」を 20%程度上回る。麺の食味は「常陸秋そば」や「鹿屋在来」と同程度かそれ以上に良食味である。栽培型は秋まきに適している。栽培適地は,関東以西の様々な地域である。