著者
小森 瑞穂 上平 員丈 鈴木 雅洋
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.11-14, 2009
参考文献数
4

筆者らは,美術館の絵画など非電子画像の著作権・肖像権を無断撮影からの保護を目的に透かし情報を光を用いて埋め込む電子透かし技術の研究を行っている.この技術では,観察者に気付かれないように光に透かし情報を含ませることがポイントになる.今回,被写体上に照射された透かし情報を含む光について透かしパターンが知覚されない条件を検証した.実験結果から,不可視性はパターンのコントラストに依存するが,本技術を応用する上での実用的な状況において不可視性の可能性を示し,本技術の実現性を示すことができた.
著者
亀甲 博貴 松吉 俊 John Richardson 牛久 敦 笹田 鉄郎 村脇 有吾 鶴岡 慶雅 森 信介
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.847-873, 2021 (Released:2021-09-15)
参考文献数
40

近年,シンボルグラウンディングや言語生成,自然言語による非言語データの検索など,実世界に紐づいた自然言語処理への注目が高まっている.我々は,将棋のゲーム局面に付随する解説文がこれらの課題の興味深いテストベッドになると考えている.解説者は現在の局面だけでなく過去や未来の指し手に言及しており,これらはゲーム木にグラウンディングされることから,ゲーム木探索アルゴリズムを活用した実世界対応の研究が期待できる.本論文では,我々が構築した,人手による単語分割・固有表現・モダリティ表現・事象の事実性のアノテーションを行った将棋解説文コーパスを説明する.
著者
酒向 史代 森 悦子 渡部 博之
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-196, 1994-08-20
被引用文献数
2

中国野菜のタアサイ、チンゲンサイ、クキニンニクについて、各種調理後の9種の無機成分の含有量の変化を検討した。1)生のタアサイ、チンゲンサイの各部位の含有量を比較すると、Mn、Zn、Cu、Feは葉身が葉柄の2.5〜8.5倍であった。2)タアサイは、葉身の水ゆで、塩ゆでのK、葉柄塩ゆでのFeで残存率が33〜47%と低くなった。3)チンゲンサイは葉身の炒め操作で、Pの残存率が55%で最も低かった。4)クキニンニクは顕著な損失がなく、いずれの無機成分も残存率が67%以上であった。5)これまでに報告されている野菜類と比較すると、全体に残存率が高かった。本研究の概要は、平成5年度日本調理科学会において発表した。
著者
森園 哲也 山田 陽滋 山本 貴久 梅谷 陽二
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.69, no.679, pp.705-712, 2003-03-25

There are many tasks in which cumbersome protective suits or large mass of objects to be manipulated obstruct "intuitive" skills such as picking up and grasping. Workers engaged in such tasks are distressed for inefficiency or early fatigue. However, the efficiency or fatigue will be improved if they can perform their intuitive skills even in those tasks by wearing an intelligent machine. Based on this idea, we proposed the concept of the wearable robot "SkilMate". This paper proposes a new type of mechanism named "wearable HEXA" as a prototype shoulder joint of the SkilMate. This mechanism is designed wearable and to give no constraint caused by geometrical factors for a wearer, so that movements of his/her shoulder necessary for the intuitive skills are not impeded and interfered. Detail of the mechanism and its design process are described, and evaluation for an experimental mechanism manufactured along the design process is demonstrated.
著者
森岡 周
出版者
日本認知運動療法研究会
雑誌
認知運動療法研究 (ISSN:13473433)
巻号頁・発行日
no.1, pp.83-97, 2001
著者
森本 米紀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.859-864, 2003-10-25
被引用文献数
2

本考察の目的は、旧都市計画法における受益者負担制度の展開を、実務的・具体的都市レベルにおける主体・制度・実践・思想の相互作用として捉えることにある。方法として、神戸市を対象に、各都市個別に制定された実施細則である受益者負担規程の制定段階・実践段階・再検討段階、以上3段階について、それぞれ分析する。神戸市を対象としたのは、1)全国2番目の受益者負担規程制定都市であり、2)初期的・典型的な負担者による反対運動が発生・長期化し、3)神戸市規程が全国に普及版的な役割を果たしたためである。制定段階においては、受益者負担制度の制度的特質が、旧法体制の意思決定手順を通して、都市レベルにおける諸主体(内務官僚・都市官僚・市会議員)の合意のもと、受益者負担規程上で確立したと言える。その制度的特質とは以下の4点。特質(1)官僚勢力による負担義務決定過程の独占、特質(2)負担義務遡及基準の明確化、特質(3)負担金短期回収方針、特質(4)「著しい利益」に対する広義の解釈及び「著しい利益」と負担義務の数値的整合性追究の不必要性。実践段階において、負担者による反対運動が特に問題としたのは、既設路線に対する負担義務の正当性、及び、負担義務の根拠となる「著しい利益」の解釈であった。前者は特質(2)、後者は特質(1)及び(4)の不当性を問題化していた。しかし負担者らの主張は、官僚勢力に全面却下され、負担者らの代表となり得る市会議員勢力が対応策として提示し得たのも、負担金回収期限の延長、つまり特質(3)の改善のみであった。実践段階におけるこの主体間の主張の食い違いは反対運動を継続・発展させる。このような反対運動の発生とその長期化における諸主体の対立は、1920年代半ば以降、受益者負担規程制定都市において多発する。その解決は旧法下における都市計画事業推進上の全国的共通課題となり、受益者負担規程は再検討段階に至る。特に内務官僚の一部から提案された対応策には以下の2つの方向性が存在した。(1)「著しい利益」の限定的解釈と土地評価委員制度の導入、(2)回収期限延長など暫定的措置と思想善導・啓蒙策の実施。(1)の方向性は、多発・長期化する反対運動が問題とする、特に特質(1)と(4)に転換を迫る受益者負担規程の改正を実現化させようとするもので、直接的な対応により、運動の収束を企図したものであった。「著しい利益」を、金銭的(数値的)に算定し得る個別的な特別利益に限定し、その範囲内での数値的精密度を追究した負担義務とすべしとされ、また、その上で、官僚のみならず負担者も加入した土地評価委員制度の設置により、負担義務決定過程への負担者の介入が構想された。対して(2)の方向性は、既往の受益者負担規程運用の絶対性の強化による特質の遵守によって、受益者負担制度の実効力を高めようとするものであった。負担者の不満に対しては、思想善導・啓蒙策で対応し、負担者の負担義務決定過程への介入排除の徹底化をはじめとする、官僚勢力の独占的主導性の再強化によって、負担金回収成績の向上を図ろうとした。結局、悪化する都市計画事業財源逼迫状況によって、受益者負担金の早期かつ確実な回収の緊要性がさらに要求された、神戸市をはじめとする実務的・具体的都市レベルにおいて選択されたのは、後者(2)の方向性であった。「著しい利益」の限定的解釈により、賦課し得る負担義務の可能性を狭め、また、負担者も介入する土地評価委員制度の導入により、負担義務決定までに長期間の複雑な協議を要する事態は、採用し得なかったのである。それに伴い、神戸市においても、反対運動への対応策として、新聞・雑誌上で積極的な思想善導・啓蒙活動が展開される。また規程改正案としても、回収期限延長の提案程度に止まり、反対運動は収束することなく、より長期化する。神戸市が、反対運動が言及する制度的特質の転換に踏む込む規程改正を成し得なかったことで、実態との矛盾は拡大、受益者負担規程は失効し、受益者負担制度そのものの地位が低下する。同様の傾向は、他の規程制定都市でも見られ、旧都市計画法上の受益者負担制度の衰退に至る。以上、本考察を通して明らかとなった、受益者負担制度の展開における、実務的・具体的都市レベルの主体・制度・実践・思想のあり方が、都市空間にいかに反映したのか、また、以降の都市計画事業・都市計画制度の展開に、神戸市内部及び全国的にいかに影響したかについてを、今後の課題としたい。
著者
近藤 久禎 島田 二郎 森野 一真 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 明石 真言 谷川 攻一 岩崎 泰昌 市原 正行 小早川 義貴 小井土 雄一
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.502-509, 2011-12
被引用文献数
1

背景:2011年3月11日に発生した東日本大震災による地震と津波は東京電力福島第一原子力発電所を襲い,甚大な被害を引き起こし,多量の放射性物質を環境中に放出した.この事故対応において,多くのDMAT隊員が派遣された.今回,その活動について意義を検証し,今後のDMAT活動,緊急被ばく医療における課題を提示することを目的とした.方法:高線量被ばく・汚染(緊急作業従事者)への緊急被ばく医療対応,住民対応,入院患者の移送対応などDMAT活動実績をまとめ,課題を抽出した.結果:DMATの入院患者移送対応は,福島第一原子力発電所から20〜30km圏内の病院を対象に3月18日〜22日に行われた.入院患者454名を搬送したが,搬送中の死亡は防げた.DMATは緊急被ばく医療体制でも重要な役割を果たした.DMATは原子力発電所からJビレッジを経由し二次被ばく医療機関,三次被ばく医療機関に分散搬送する流れをサポートする体制を確立した.その為の,研修会の実施といわき市内へのDMATの待機のための派遣を行った.いわき市内へのDMAT派遣は,いわき市立総合磐城共立病院を拠点として,4月22日から9月7日まで22次隊,のべ127名が派遣された.DMATによる住民一時立入り対応においては,中継基地における医療対応を行った.具体的には,会場のコーディネーション,Hotエリアの医療対応を行うとともに,救護班としても活動した.活動期日は5月3日から9月2日のうち60日に及び,スクリーニング・健康管理の対象者は14700人以上で,さらに傷病者131名に対応した.これらの活動を通じて,重篤な傷病の発生,スクリーニングレベルを上回る汚染は,DMATが活動したところにおいては,ともになかった.考察:本邦の緊急被ばく医療体制は,原子力施設立地道府県の地方自治体毎に構築されており,いくつかの問題が指摘されていた.問題の一つは放射線緊急事態への対応の教育,研修はこれらの地域のみで行われていたことである.さらに,他の災害との連携,整合性に問題があることはたびたび指摘されていた.DMATが医療搬送を行うことにより,454名の患者を安全に搬送したことと,住民一時立入りでのDMATの活動の意義は深かった.今回の事故対応の経験から,被ばく医療も災害医療の一つであり,災害医療体制との整合性は必須であることが示唆された.今後は,やはり災害医療体制の中で,緊急被ばく医療もしっかりと位置付けられることが必要である.そのような観点からの緊急被ばく医療体制のあり方について研究していくことが今後は必要である.
著者
家森 信善
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.390, pp.34-49, 2011

This paper analyzes commodity investmenttrusts and commodity Exchange Traded Funds(ETFs) as methods for investing in commodities,which are expected to be important toolsfor individual investors who wish to participatein commodity investments. The "Financial BigBang" reforms initiated by Prime MinisterRyutaro Hashimoto during the latter half ofthe 1990s substantially changed the Japanese financialsystem, which had been strictly regulated. However, more than 50% of Japanesehouseholds' financial assets are still cashand bank deposits, and the ratio of risky assetsin households' portfolios remains low. Onereason that households hold few risky assets isthat individual investors do not feel they haveenough knowledge to risk their money on suchinvestments. Therefore, collective investmentvehicles such as investment trusts, which allow individual investors to hold risky assets withoutextensive knowledge, are expected to playan important role in the future. Among commodityinvestments, commodity investmenttrusts and ETFs seem most promising. Thanksto substantial deregulation, the listing of variousETFs became possible in the early 2000s.Initially, all ETFs were linked to certain kindsof stock indexes, such as Nikkei 225 andTOPIX. Gradually, new types of ETFs, whichare linked to indexes or prices of non-stock asse ts , have be en introduc ed. The f ir st commodity ETF in Japan, linked to the priceof gold in London, was offered in August 2007.Soon, other commodity ETFs followed. Today,thirty commodity ETFs are listed on the TokyoStock Exchange and the Osaka SecuritiesExchange. However, this paper finds that manycommodity ETFs are thinly traded. Therefore,we need to implement policies as soon as possibleto encourage Japanese investors toparticipate in the commodity ETF market. Encouragingmore commodity ETF transactionsmay also lead to active arbitrages between ETF markets and commodity future markets.This paper analyzes commodity investment trusts and commodity Exchange Traded Funds (ETFs) as methods for investing in commodities, which are expected to be important tools for individual investors who wish to participate in commodity investments. The "Financial Big Bang" reforms initiated by Prime Minister Ryutaro Hashimoto during the latter half of the 1990s substantially changed the Japanese financial system, which had been strictly regulated. However, more than 50% of Japanese households' financial assets are still cash and bank deposits, and the ratio of risky assets in households' portfolios remains low. One reason that households hold few risky assets is that individual investors do not feel they have enough knowledge to risk their money on such investments. Therefore, collective investmentvehicles such as investment trusts, which allowindividual investors to hold risky assets withoutextensive knowledge, are expected to play an important role in the future. Among commodityinvestments, commodity investment trusts and ETFs seem most promising. Thanks to substantial deregulation, the listing of various ETFs became possible in the early 2000s. Initially, all ETFs were linked to certain kinds of stock indexes, such as Nikkei 225 and TOPIX. Gradually, new types of ETFs, which are linked to indexes or prices of non-stock assets, have been introduced. The first commodity ETF in Japan, linked to the price of gold in London, was offered in August 2007. Soon, other commodity ETFs followed. Today,thirty commodity ETFs are listed on the Tokyo Stock Exchange and the Osaka Securities Exchange. However, this paper finds that many commodity ETFs are thinly traded. Therefore, we need to implement policies as soon as possible to encourage Japanese investors to participate in the commodity ETF market. Encouraging more commodity ETF transactions may also lead to active arbitrages between ETF markets and commodity future markets.
著者
竹内 徳男 稲荷 妙子 森本 仁美
出版者
全国味噌技術会
雑誌
味噌の科学と技術 (ISSN:03691047)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.211-219, 2004-06
被引用文献数
2
著者
三瀬 遼太郎 井原 雄人 森本 章倫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.652-658, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

パリ協定で定められた温室効果ガス削減目標を達成するためには、特に影響が大きい交通環境負荷の低減が不可欠である。そこで、複数の低炭素な次世代交通機関を導入することで、交通環境負荷を削減する試みが注目されている。本研究では、電気自動車(EV)、次世代型路面電車システム(LRT)、自動運転車、電動バスに着目して、交通量、EV普及率、発電構成比の観点から、実際の交通流の想定下で次世代交通が及ぼす環境改善効果を定量的に評価した。その結果、対象地である宇都宮市においてLRTが開通した際に環境負荷を低減するには、10%以上の自動車交通量の削減が必要であることを明らかにした.さらに、宇都宮市を対象に、次世代交通の導入を想定したうえで、公共交通を推進する政策や太陽光発電を推進するエネルギー政策の導入を仮定し、交通環境負荷の将来推計を行った。その結果、現状では公共交通を推進することで大きく環境負荷が低減するが、将来的に自動車のEV化が進み、かつ電力のCO2排出係数が小さくなると、その利点は薄れることを明らかにした。
著者
森 一郎 矢吹 雅之 石田 浩彦 柏木 光義
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.222-229, 2016-05-25 (Released:2020-09-01)
参考文献数
16

ヒト尿の腐敗に伴い生成する臭気成分の一つとしてフェノール化合物があるが,これらは排尿直後の尿中においては大部分がグルクロン酸もしくは硫酸が結合した無臭の抱合体として存在することが知られている.今回,腐敗尿中の抱合体をLC-MS/MSにより分析したところ,グルクロン酸抱合体のみが分解していることが確認された.これよりグルクロン酸抱合体の分解抑制により尿臭気の生成を抑制できるものと考え,抱合体分解酵素(β-グルクロニダーゼ)の阻害剤を探索した.香料化合物約200種よりスクリーニングを実施した結果,8-シクロヘキサデセン-1-オンをはじめとする大環状化合物が優れた阻害効果を有し,フェノール化合物等の尿臭気の生成抑制に有効であることを見出した.
著者
佐藤 聡 高島 秀敏 吉村 俊朗 迫 龍二 森 正孝 辻畑 光宏 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.39-42, 1984-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1年間にわたる抗生物質の長期投与で治癒した脳膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は55才,女性.昭和55年10月13日,右上下肢の脱力が出現, 15日からは発語障害も加わり, 19日には右完全片麻痺となり当科に入院した.入院時,右片麻痺,運動性失語を認めた. CT scanにて左頭頂葉に大きな等吸收を示すmassがあり,周囲に著明な脳浮腫を伴つていた. enhance CT scanでring enhancementを示した.脳膿瘍の診断のもとに,抗生物質,ステロイドホルモン,グリセオール,で治療を開始し, CT scanにて治療経過を経時的に観察した.経過中,臨床症状の増悪をきたし, CT scan上も病巣がさらに拡大しているのが認められたが,抗生物質の変更で,軽快し, 1年後,症状はほとんど消失,固定した. CT scan上もring enhancementが消失し小点状のenhancementのみとなつた時点で治療を中止したが現在まで再燃していない.従来,脳膿瘍の治療としては,外科治療の比重が大きかつたが, CT scanにて,病巣の状態を直接,経時的に観察できるようになつたため,治療の変更などがすみやかに行なえるようになり,内科的治療のみで治癒したとの報告がふえている.抗生物質の投与期間については,少なくとも症状がほとんど固定化し, CT scan上病巣がすみやかに縮小しており,脳浮腫が著明に減少または消失していることが条件と考えられた.ステロイドホルモンの投与は,脳浮腫の改善に有効であり,文献上も有効例が多く使用してさしつかえないと考えられた.
著者
若林 久嗣 沢田 健蔵 二宮 浩司 西森 栄太
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.239-240, 1996-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
1
被引用文献数
19 32

最近全国的に流行しているアユのシュードモナス病の特徴を明らかにすることを目的に, 1994~1995年に徳島県と滋賀県の養殖場の病魚を検査し, 原因菌を分離培養した。最も特徴的な症状は, 血液の混じった腹水の貯溜で殆ど全ての病魚に認められた。病原菌は Pseudomonas putida に近い性状を示したが, 色素を産生せず, 硝酸塩を還元するなどの点で定型的な Ps. putida とは異なった。また, 原因菌に対する抗血清は, Ps. putida とは反応しなかった。分離菌株の大部分は, API 20NE の数値プロフィルが1-140-457で, 残りの菌株も近似の数値であった。
著者
今西 純一 奥川 裕子 金 鉉〓 飯田 義彦 森本 幸裕 山中 勝次 小島 玉雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-14, 2011-08-31
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

サクラ類は全国に広く植栽され,地域の重要な景観資源となっている。サクラ類を適切に管理するために,活力度の評価が必要となるが,開花期の着花状況に基づく活力度評価の方法は定まっていない。そこで,本研究は,奈良県吉野山のヤマザクラを対象として,着花状況に関する 4 つの評価項目の検討を行った。その結果,樹頂部の頂枝における芽の数や,葉芽と花芽の比率は,栄養成長と関連を持ち,活力度の評価項目として適切であることが明らかとなった。一方,1 つの花芽から出る花数は,様々な生育段階を含む集団の活力度評価には適さなかった。個体全体の満開時の着花量は,活力度評価には適さないと考えられた。