著者
森 良和
雑誌
論叢:玉川大学教育学部紀要 (ISSN:13483331)
巻号頁・発行日
no.2016, pp.117-134, 2017-03-31

ウィリアム・アダムズ(三浦按針)の日本人妻の人物像については従来ほとんど踏み込んだ研究はなされていない。史料がごく限られるからである。しかし,これまでは特に吟味されることなく,夫人の出自と名前が「馬込勘解由の娘おゆき」とされることが多かった。本稿では主に当時来日していた西洋人の記録を検証しながら,これらについて改めて考察し,自身の見解を示していく。
著者
谷 英樹 福士 秀悦 吉河 智城 西條 政幸 森川 茂
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.229-238, 2012
被引用文献数
2

アレナウイルスはアレナウイルス科に属するウイルスの総称で,細胞内で増殖し,ウイルス粒子内に宿主細胞のリボゾームが取り込まれ,これが砂状に見えるのでラテン語の砂粒(arenosus) にちなんで命名された.感染症法において1類感染症に指定されているラッサ熱を引き起こすラッサウイルス,南米出血熱の原因ウイルスとしてフニンウイルス,グアナリトウイルス,サビアウイルス,マチュポウイルス,チャパレウイルスなどが,ヒトに強病原性のアレナウイルスとして知られている.いずれも一種病原体に指定されている.また最近では,2008年にアフリカ南部地域で小規模なウイルス性出血熱が流行し,新規のアレナウイルス(ルジョウイルス)が同定された.日本では1987年のラッサ熱患者の1症例を除きアレナウイルスによる出血熱患者の発生はないが,他のウイルス性出血熱と同様に,いつ我が国で輸入症例が発生してもおかしくない状況であることから,病状や致死率を考えると診断や治療を行えるように整備しておく必要がある.本稿では,アレナウイルス感染症について,基礎研究から診断方法,ワクチン開発までを広く概説する.
著者
森本 弘一 島原 宏文 谷 純子 辻 靖子
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.91-102, 1997-11-10

Recently, there is a problem that insurance companies reject applications of genetic disease carriers in the USA. It is said that the educational content in a primary school should contain genetic content as there is a genetic teaching material in the USA. It is "You, Me, & Others' In the future, we predict that these situations will happen in Japan. So, we have developed genetic teaching material as worksheets for elementary schools. In order to examine the potency, of developed worksheets, we taught the students in an elementary school attached to Nara University of Education using these worksheets. The titles of the worksheets used in this practice are "Similarity and Difference between us" and "Continuity of Life". The response of children was good. From this result, we confirm that these worksheets are useful for elementary school eduation. We hope that many elementary schools will use the genetic teaching material which we developed.
著者
森 こず恵 Mori Kozue
出版者
松本歯科大学
巻号頁・発行日
2019-03-14

【目的】本研究では,インプラント体表面への歯周組織との接着性を高めることによりインプラント維持機能を永続させるインプラント体を開発することを目的として,G4チタンで作製したインプラント体表面にレーザーによるマイクロ形状加工を行い,in vitroにおける細胞の変化およびin vivoにおける骨形成の状態について組織学的観察を行った.【方法と結果】 機械研磨(MS),ブラスト加工(BL),ディンプル状レーザー加工(WL)されたG4チタンプレートにヒト未分化間葉系幹細胞(hMSC)をhMSC分化培地で1-14日間培養した.培養終了後,MTT assayにて細胞増殖能,Ⅰ型コラーゲンおよびアクチン染色にて細胞の付着状態と形態について観察をした.また,一部よりmRNAを抽出しRT-PCRにてⅠ型コラーゲン,VEGF,インテグリンα5,オステリックスの遺伝子発現を解析した.その結果,hMSCは,MS,BLおよびWLの何れのチタン表面形状においても,3,7,14日後においてミトコンドリア代謝活性に有意な変化を示さなかった.また,hMSCの形態は,MSでは研磨溝に沿って扁平に細長く伸展し,BLでは方向性なく不定形に伸展し,一方,WLでは細胞がディンプルの形状に一致して入り込むように存在し円形を呈していた.また,インテグリンα5,VEGF,I型コラーゲンおよびオステリックスのいずれの遺伝子においてもWLはMSおよびBLに比べて有意な発現の上昇を示した.動物実験ではφ3.0㎜×長さ5.0㎜のインプラント体に,MSおよび WLを施し,日本家兎(17-19週の3.0㎏,雌)の大腿骨骨幹部へ埋入した.埋入後,3および7週でインプラント体を周囲組織とともに摘出し,光重合レジンに包埋後非脱灰研磨切片を作製し組織学的に観察した.その結果,WLではMSに比べて埋入後3週より内骨膜側からインプラント体周囲に新生骨形成の有意な増加を認めた.【結論】 以上より,WLはこれまでに例にない特異な加工表面形状であり,種々の細胞培養の基盤として,また生体材料として組織への適合や接着および機能発現に効果を発揮する可能性が期待される.
著者
大森 隆生 萩野 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.181-186, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
17

〔目的〕理学療法学生の臨床実習前後における自己効力感の変化を調査し,その変化に関連する要因について検討した.〔対象と方法〕対象は理学療法士養成校の4年生の学生142名で,アンケート調査を実習前,1期実習終了後,2期実習終了後に実施した.アンケート項目は,特性的自己効力感尺度,実習に関する質問を中心に調査した.〔結果〕自己効力感は,実習前と比較して2期実習終了後は有意に向上した.自己効力感の不変向上群は,低下群と比べて,2期実習終了後の実習に関する質問において担当数,目標達成,課題達成,症例理解,指導者の肯定的言動,達成感の項目で有意に高かった.〔結語〕自己効力感の変化には,臨床実習を積み重ねることと最後の実習内容が影響してくることが示唆された.
著者
関島 恒夫 森口 紗千子 向井 喜果 佐藤 一海 鎌田 泰斗 佐藤 雄大 望月 翔太 尾崎 清明 仲村 昇
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1922, (Released:2021-08-31)
参考文献数
55

オオヒシクイが集団飛来地あるいは渡りのルートとして主に利用する北海道道北地方から本州にかけての日本海沿岸域は、良好な風況が見込まれることから、現在、多数の風力発電施設の建設が進められている。大型風車の設置は、鳥が風車に衝突するだけでなく、風車群を回避することによる迂回コストの増大などにより、中継地や越冬地利用の放棄など生息地の劣化あるいは消失に繋がる可能性があり、地域個体群に対する負の影響が懸念されている。オオヒシクイなど大型水禽類の生息地を保全しつつ、再生可能エネルギーの拡大を目指して風力事業を推進するには、鳥類への影響が大きい区域を提示したセンシティビティマップに基づき、風力発電事業の計画段階で事前に衝突リスクの高いエリアを回避する手続きが有効である。本稿では、はじめに大型水禽類を対象にしたセンシティビティマップの現状と課題を説明し、続いて、オオヒシクイを対象として、全国の主要な集団飛来地における風車回転域飛行確率を考慮したセンシティビティマップと、北海道道北地方から本州日本海沿岸域にかけての主要な渡りルートにおいて渡り中の飛行高度規定要因を考慮したセンシティビティマップの 2つのマップ作成手順を紹介する。最後に、これらセンシティビティマップを用いた風力発電施設の立地に係る検討手続きを提案する。
著者
森 忠洋
巻号頁・発行日
no.602, 1979

1 0 0 0 埋葬と法

著者
森 謙二
出版者
日本法社会学会
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.62, pp.87-98,193, 2005

The concept of "cemetery" in Japanese law, the ground which build graves, has been affected by the idea of ancestor worship, because the Code Civil of Japan positioned the graves as a device for ancestor religious services, which are entrusted with his descendant, and the graves which ancestor buried are reburied as the unrelated grave, if the descendant disappear.<br>In Europe, the burial laws have regulations about "burial compulsion" and "burial duty", but in Japan the decisions whether the dead should be buried, are referred with his family or his descendant.<br>The current system of Japanese burial and cemetery is not be effective, because it is not possible to produce an Atotsugi (successor), the continuation of religious worship is threatened due to the changing family structure and a declining birth rate.
著者
内田 幸子 小柴 朋子 田村 照子 森本 美智子 田辺 文憲
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.44-51, 2014

<p>臨床現場で働く看護師にとってナースウェアは,看護業務を行っていく上で不可欠であり,超高齢社会に突入した我が国において,高齢者のケアに多くの時間を要する看護師の衣環境の工夫は急務である.本研究の目的は現状のナースウェアについて調査し,問題点を抽出して今後の改善課題を明確にすることである.アンケート調査は東京都,山梨県で実施,対象者は554名である.ナースウェア選択時に重視する項目は「動きやすさ」「素材」「デザイン」が上位で,回答者の45%が現行のナースウェアに「動きにくさ」を感じていた.ナースウェアの型としてはパンツスーツ型が,開きではファスナー開きが好まれていた.ナースウェアの色は「白」が最も好まれ,次いで「ピンク」であった.洗濯は大多数が病院契約のクリーニング業者で行っていた.ナースウェア選択基準の特性について因子分析を行った結果,耐洗濯性,素材,付加機能,デザイン性,動きやすさを重要視していると解釈することができた. </p>
著者
天野 定雄 黒須 康彦 中山 寿之 三宅 洋 松田 健 遠藤 潔 上田 仁 森田 建 佐藤 公望
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.2313-2320, 1991-10-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

最近9年間に経験した鼡径部ヘルニア821例について統計的観察を行い,また施行された手術術式,術後合併症,術後再発,術後愁訴などについて検討した.ヘルニア種別頻度では外鼡径ヘルニアが76.1%,内鼡径ヘルニアが13.6%,大腿ヘルニアが8.2%,内外鼡径ヘルニアが1.9%であった.手術術式は外鼡径ヘルニアではMarcy法,内鼡径ヘルニア,大腿ヘルニア,内外鼡径ヘルニアではMcVay法が最も多く行われていた.術後合併症は3.7%に認められ,血腫形成が最も多かった.再発率は全体で3.1%であった.内鼡径ヘルニア型再発と大腿ヘルニア型再発が主であり,これらの症例の中には全身の併存疾患を有していたものが多かった.術式別愁訴に関してはMcVay法で程度は軽いものの牽引痛の頻度が著しく高かった.再発や愁訴を減少させるためには,ヘルニアの基本的な理解と確実な手術手技が重要と思われた.
著者
前田 達郎 松本 尚之 須藤 昌吉 中原 良樹 上野 邦明 中山 英 森田 啓介 丹羽 雄紀
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.523-524, 2017-03-16

電力システム改革に伴う計画値同時同量制度の導入により、発電事業者は30分毎のゲートクローズ(需給計画の提出締切)やインバランス回避のために、定期点検等の運用上の制約のほか、気温等環境要因による発電能力の補正、燃料ガス導管の流量や燃料在庫管理等の複雑な制約も加味した緻密な発電計画を迅速に作成する必要がある。これらの制約のもとで、最大100台の発電機群の運転状態を決める大規模な最適化計算を、ヒューリスティック計算およびソルバー計算を併用することで、実用的な時間で解くことのできるハイブリッド最適化手法を東京電力フュエル&パワー株式会社と共同開発したので報告する。
著者
近森 高明
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.202-212, 2017 (Released:2018-04-13)
参考文献数
30

Underground shopping areas are distinctive environments built in many of Japan’s major cities in the 1950’s and 1960’s. This article seeks to delineate the logic and principles underlying the spatial formations of those facilities. A model description can be found in Rem Koolhaas’ famous book, Delirious New York, in which he retroactively reconstructed ‘Manhattanism’ by focusing on how a set of systematic principles work within the seemingly chaotic conditions of skyscrapers. Such principles are derived from the ‘culture of congestion’ of Manhattan, which were also observable in Japanese urban conditions in the 1950’s and 1960’s. Following Koolhaas’ reconstruction, this article introduces the concept of ‘undergroundism’ and reconsiders Marc Augé’s concept of ‘non-place,’ which is widely referred to in the context of how globalization has transformed the urban space. The concept of ‘non-place’ is convincing when it describes the spatial quality of shopping malls, airports and motorways, which are all spaces dealing with the flow of people and things. However, the concept’s limitations are revealed when one considers how it relies on the narrative of globalization. It can be demonstrated that there were spaces before the age of globalization that shared qualities in common with those described by Augé as non- place; one of those is the Japanese underground shopping mall. The first Japanese underground shopping facility was built in 1930. It is crucial to note that the facility was annexed to a subway station, which meant that it targeted the flow of people using the subway to attract potential customers. That fact captures the essence of the facility: namely, as an apparatus to transform the flow of traffic into one of consumption. In the 1950’s and 1960’s, when Japan experienced rapid economic growth, the underground shopping facility was incorporated into the basic scheme of urban redevelopment. During the days of urban redevelopment, major cities were suffering from the problem of congestion and permanent traffic jams. It was determined that the solution would be to develop underground spaces, which would not only realize the separation of pedestrians from vehicles, but also create an ideal vehicle-free shopping area in the city center. A paradigm was invented for that, enabling the scheme of building underground shopping facilities to spread rapidly throughout the country. An analysis of the underground shopping facility identifies the following characteristics: that they 1)are parasitic, 2)multiply themselves, 3)are self-confined artificial spaces, 4)rely on the digital order of urban space, 5)are apparatuses for transforming flows and 6)are ruled by the principle of probability. Those are the principles that constitute undergroundism, which can suspend the narrative of globalization underpinning Augé’s use of the term of non-place. They also enable us to reconsider the continuity and transformation of non-place-like spaces within the history of urban space.
著者
森木 良太 小寺 浩二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.113, 2008

新河岸川は江戸時代から舟運が盛んであり、流域には舟問屋が建ち並んでいた。東上線開通後は水上交通が衰退しつつあったが、流域には水田が広がり、現在でも河川との関わりは深い。一方、支流上流部や河川から離れた地域においては、江戸時代から茶や芋の生産が盛んである。畑作中心の地域では、本川や流域下流部とは異なり、河川への関わりはあまりない。本研究では流域全体の小学校の校歌を調べ、自然景観との関わりの地域差を明らかにする。 小学校は、川越市、ふじみ野市、富士見市、志木市、朝霞市、新座市、和光市、所沢市、狭山市、入間市の公開分の校歌を使用した。 新河岸川流域について歌われている小学校は108校中28校であった。富士見市、朝霞市、新座市の小学校で多く歌われていることがわかった。一方、同じ流域であっても、所沢市、狭山市ではあまり歌われていない。新河岸川流域は、戦後のベットタウン化により新設された小学校が多いが、昭和以降に新設された小学校ほど流域の表現が歌詞に出てこない傾向があった。 新河岸川流域の歌詞が存在する小学校の多くが、明治時代からあった小学校だということがわかった。ただし、歴史のある小学校でも新河岸川流域の表現が歌詞に出てこない小学校はあった。流域で最も歴史のある小学校は川越や志木、所沢にあり、いずれも明治初期に開校しているが、いずれも新河岸川流域が歌われていない。川越で最も古い中央小学校では、歌詞には入間川の表現が使われ、新河岸川の表現が出てこなかった。