著者
加嶋 憲作 津田 泰路 大菊 覚 横畠 和宏 西森 大地 山﨑 裕司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.635-638, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

〔目的〕最大歩行速度と独歩自立の関係を検討すること.〔対象と方法〕対象は,65歳以上の高齢入院患者262例である.院内独歩自立群と非自立群の2群に選別し,最大歩行速度を比較した.次に,歩行速度により6群に区分し,各群の独歩自立割合を算出した.さらに,独歩自立の可否を判別する最大歩行速度の至適カットオフ値を求めた.〔結果〕最大歩行速度は独歩自立群で有意に高値を示した.最大歩行速度の低下にしたがい独歩自立割合は減少した.独歩自立の可否を判別する至適カットオフ値は1.038 m / secであり,高精度で検出可能であった.〔結語〕最大歩行速度と独歩自立の可否には関連があり,最大歩行速度が一定の水準を下回る場合,独歩自立の可能性は低くなる.
著者
野元 友貴 石田 学 稲森 友梨江 本田 英義 山下 剛司 高島 嘉晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0491, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 頚部深層屈筋群は頚部痛などにより活動低下し、萎縮、脂肪化のような変化により、機能低下が生じると報告されている。その機能低下は頚部痛発生直後から認められ、神経系運動制御に対する早期リハビリテーションの必要性を示唆している。しかし、急性期の理学療法介入は疼痛が強度でリスクも高い事が多く、敬遠され易い為、より低強度のエクササイズが求められる。現在、水平眼球運動と後頭下筋群の関係は認められているが、眼球運動と頚部深層屈筋群の関連性は、垂直眼球運動において多数の報告があるが、効果を検討している研究は少ない。その為、本研究では眼球運動による頚部深層屈筋群への低強度のエクササイズ考案の為、垂直眼球運動に着目し、超音波画像を用い垂直眼球運動と頚部深層屈筋群である頚長筋の関係を検討した。【方法】 対象は頚部に基礎疾患が無い。成人男性6名、女性6名、年齢25.9±3.9歳、身長167.1±6.5cm、体重59.8±8.8kgとした。頚長筋画像は樋口らの方法を用い、被験者を背臥位とし超音波診断装置(GE横河社製 LOGIQ400MD)のプローブをC5レベルの胸鎖乳突筋上部に位置させ体表面から胸鎖乳突筋、総頸動脈、頚長筋の三層構造をイメージングした。事前に3人の理学療法士(業務にて超音波検査を行っている者、超音波検査を練習中の者、超音波検査初心者)が3人の被検者の頚長筋幅を10回測定し、検者間信頼性を級内相関係数(以下ICC)を用い測定の信頼性を確認した。測定方法はJullの方法を用い、頚部深層屈筋群を収縮させるCranio-Cervical Flexion Test(以下CCFT)を行い、CCFT26mmHg時の胸鎖乳突筋と頚長筋の筋腹幅を垂直眼球運動前後で3回ずつ記録し平均した。垂直眼球運動は荒木の方法を参考にし、30cmの棒の端にマーカーを付け、上のマーカーを水平に置き、下への眼球運動の振り幅が最大になるまで近づける。メトロノームを1秒に1回のリズムに設定し、背臥位のまま水平、下の順番に垂直眼球運動を1分間で往復30回行ってもらった。統計学検討は眼球運動前後のCCFT時の胸鎖乳突筋幅と頚長筋幅の平均を対応のあるt検定により比較検討し、有意水準は1%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、事前に被験者に口頭にて実験内容と利益、不利益を十分に説明し同意を得た。【結果】 事前に行った3人の検者間のICC(2,3)は0.93、0.84、0.81となり、各被験者においても高い信頼性を得られた。各値の3回の平均は胸鎖乳突筋幅は眼球運動前6.8±1.8mm、眼球運動後6.5±2.1mm、頚長筋幅は眼球運動前10.4±2.3mm、眼球運動後12.5±2.6mmとなり、胸鎖乳突筋幅は変化が無く(P>0.05)、頚長筋幅と有意に増加した(P<0.01)【考察】 垂直運動後のCCFT時の頚長筋筋腹の幅と比率が増加した。これは垂直眼球運動により頚部深層屈筋群である頚長筋への神経機構が働いたと推察される。垂直眼球運動は視覚と眼球運動による体性感覚の入力が上丘に送られる。伊藤らは上丘より視蓋脊髄路を介し頚髄前角へ投射され、頚部の姿勢制御に関連していると報告しており、小野寺らは上丘よりcajal間質核脊髄路により、小脳片葉、小脳虫部を介し頚部深層屈筋に投射していると報告している。これらの神経機構より、垂直眼球運動によって頚部深層屈筋群への収縮刺激が入る事で、CCFT時に頚長筋優位の収縮に変化し頚長筋筋腹の幅が増加したと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究にて垂直眼球運動が頚部深層屈筋群である頚長筋に対し収縮刺激が入り収縮時の筋腹幅が増加した。この事は頚部痛発生直後から起こる、頚部深層屈筋群の機能低下を予防する低強度のエクササイズになりえると示唆された。今後はエクササイズとして確立する為に対象を検討し研究を進めていく必要があると考える。
著者
溝口 敦子 土屋 幸宏 森 勇輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_549-I_556, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
10

山地河道の階段状河床形状,Step-poolの定義は研究者によって異なり,形成過程等を踏まえた整理が必要と考える.通常のStep-poolは大礫がStepを形成し形状を決めるものであり,長谷川らは横断方向に列をなして礫が集積し落差が少ないTransverse ribsをStep-poolとは区別し定義している.著者らは状況によっては礫の集合体が瀬淵構造またはStep-poolになると考え,まずTransverse ribesに近い状況での礫の集合体形成過程の検討,砂の流出後の表層状態の確認を行う.特に,山地河道における礫の集積形成過程を明確にするため,実験で反砂堆と礫の集合体の形成について調べた.まず,礫の集合体形成には遡上反砂堆がかかわる実験例ともに,進行方向で礫の集積の仕方が異なることを示した.そのうえで,砂礫の比率を変えた河床を用いて遡上反砂堆の形成実験を土砂供給をしながら行うことにした.実験では特に各粒径の流送形態がどのように変化するなどを詳細に調べ,混合率によって砂が流出した後の礫の集合体の形成状況が異なることなどを明らかにした.
著者
山本 健 山近 重生 今村 武浩 木森 久人 塩原 康弘 千代 情路 森戸 光彦 山口 健一 長島 弘征 山田 浩之 斎藤 一郎 中川 洋一
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.106-112, 2007-09-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
23
被引用文献数
16

ドライマウスにおける加齢の関与を検討するため, 2002年11月から2007年4月までに鶴見大学歯学部附属病院ドライマウス専門外来を受診した2, 269名を対象に, 1.性別と年齢, 2.主訴・受診の動機, 3.全身疾患, 4.常用薬剤, 5.唾液分泌量, 6.ドライマウスの原因の集計を行い, 次のような結果を得た。1) 受診者の男女比は17: 83であり, 男女とも50歳代から受診者数が増加し, 女性では60歳代, 男性では70歳代の受診が最も多かった。2) 65歳未満と比較し, 高齢者では男性の受診率が増加しており, 高齢者での性差の縮小がみられた。3) 口腔乾燥感を主訴とする受診者は44.1%であり, 口腔粘膜の疼痛 (28.7%), 唾液や口腔内の粘稠感 (8.3%), 違和感・異物感 (7.1%), 味覚異常 (3.1%), 口臭 (1.9%) の順に多かった。4) 全身疾患は, 高血圧が30.7%に認められ, 次に脳血管障害を含む精神・神経系疾患 (25.4%) が多かった。5) 非シェーグレン症候群性ドライマウスは92.5%にみられた。6) シェーグレン症候群は, 全調査対象の7.0%であり, そのうち65歳以上の高齢者が53.5%を占めていた。以上のような結果から, ドライマウスの成立機序には加齢に伴う複合的な要因の関与が示唆された。
著者
一関 雄輝 宮本 宏太 齋藤 俊輝 森 一生 町田 好男
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.217-222, 2015 (Released:2015-11-27)
参考文献数
17

われわれはこれまでプロペラ法を中心にMR画像のノイズパワースペクトル(NPS)計測の検討を行い,その二次元NPSはサンプリング密度を反映し,k空間軌跡どおりの周波数分布を示すことを報告してきた.一方,X線イメージング領域では,扱いも容易で数値解析がしやすい一次元NPSが使われることも多い.そこで本研究では,2つの代表的な一次元NPS計測法を用いて,プロペラMR画像の一次元NPSを検討した.「円周平均法」から求めた一次元NPSは,二次元NPSの同一空間周波数域のNPS値を平均化した特性を示し,「仮想スリット法」から求めた一次元NPSは,スリット走査方向のみのNPS値の周波数特性を表していた.また,NPS値の計測精度について検討を行い,円周平均法では低周波領域で計測精度が低いが,仮想スリット法と比較して精度のよい一次元NPS計測が可能であることがわかった.
著者
瀬戸 康雄 井浦 一光 金森 美江子
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.49-61, 2005 (Released:2007-12-10)
参考文献数
20
被引用文献数
5 5

Gas chromatographic mass-spectrometric analysis was performed for chemical warfare agents and related compounds including sarin, soman, tabun, VX, mustard gas, lewisite 1, 2-chloroacetophenone, o-chlorobenzilidenemalononitrile and capsaicin, under electron ionization and methane chemical ionization conditions using apolar and polar capillary columns. It was possible to identify the tested compounds with respects to their retention indices and mass spectra. Under the analytical conditions of split ratio (50:1), electron ionization and scan mode data aquisition, the limit of detection ranged from 0.06 to 7 μg/ml, except for the low detection sensitivity of lewisite 1.
著者
田村 美穂子 田尾 龍太郎 米森 敬三 宇都宮 直樹 杉浦 明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.306-312, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
24 41

カキ属(Diospyros)のカルスを用いてゲノムサイズおよび倍数性を決定した.カキ(D. kaki Thunb.)9品種およびカキ以外の12種のカキ属(Diospyros)植物の葉原基由来カルスの核DNA含量をフローサイトメーターを用いて測定した.核DNA含量が既知のニワトリ赤血球およびタバコと比較することで6倍体のカキ品種のゲノムサイズは5.00-5.24 pg/2Cであり, 9倍体品種は7.51-8.12 pg/2Cであることが明らかとなった.また6倍体のD. virginianaのゲノムサイズは5.12 pg/2Cであり, 4倍体のD. rhombifoliaは3.76 pg/2Cであった.他の2倍体の種のゲノムサイズはD. montanaを除いて1.57-2.31pg/2Cであった.D. montanaは2倍体であるが, そのゲノムサイズは4倍体と同程度の3.48 pg/2Cであった.D. montanaを除くカキ属植物の倍数性とゲノムサイズの間には強い一次相関が認められ, ゲノムサイズより倍数性の推定が可能であるものと考えられた.本研究ではカルス細胞を用いた染色体観察法も検討し, カキ'宮崎無核'の染色体数は2n=9x=135, '次郎'とD. virginianaの染色体数は2n=6x=90, D. rhombifoliaは2n=4x=60, その他のカキ属植物の染色体数は, 倍数性が未知の4種を含めて2n=2x=30の2倍体であることを示した.この倍数性は, D. montanaを除いてフローサイトメトリーから推定した倍数性と一致した.
著者
丹羽 悠輝 森山 三千江 大羽 和子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.257-265, 2007

さつまいものビタミンC(VC)量及び1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉活性は調理直後に減少したが,通常調理品より真空調理品のほうが残存率が高かった。ポリフェノール量では差は見られなかった。VC及びDPPHラジカル捕捉活性は,さつまいもに砂糖を加えると有意に減少が抑制され,大根及び里芋に醤油を加えると減少が促進された。さつまいものDPPHラジカル捕捉活性は主にアスコルビン酸量と相関関係にあり,大根及び里芋は主にポリフェノール量と相関関係にあった。さつまいも及び里芋の官能評価では真空調理品が好まれたが,大根ではテクスチャーが真空調理品より通常調理品のほうが好まれた。
著者
村山 篤子 古田 和浩 金子 慶子 田中 照也 伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 堀田 康雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.174, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 生体活動により、生物内に強い酸化作用を有する過酸化物(ラジカル)が発生する。野菜は、この過酸化物を打ち消すために、体内で還元力の強いビタミンCを生成する。一方、野菜を厳しい環境ストレス化におくことで、それに対抗するために、酵素の働きを活性化させて、抗酸化物質「ビタミンC」をより多く生成して体を守ろうとする。今回、これらのメカニズムを応用した低温スチーム調理方法を考案した。<BR> <B>【方法】</B><BR> ビタミンCを有する野菜として、春菊およびほうれん草を用いた。これらの野菜を、スチーム機能を有する家庭用オーブンレンジを用いて、庫内温度を40℃程度にコントロールし、低温スチーム調理にて加熱をおこない、ビタミンC含有量の差を測定した。<BR> <B>【結果】</B><BR> その結果、春菊では低温スチーム調理温度が約37℃~47℃で10分、ほうれん草では約38℃~48℃で27分の加熱で、野菜内のビタミンC含有量が増加する結果を得た。これは、この温度帯において、野菜が環境ストレスを受け、それに対抗してビタミンC生成酵素の働きが活性化されたためであり、37、38℃未満では十分な環境ストレスを与えられず、また47、48℃より高温になると生体活動が抑制されてしまうためであると考える。また、これらの野菜を電子レンジ加熱調理すると、生の状態から電子レンジ加熱した場合に比べて、低温スチーミングによって一旦ビタミンC含有量を増加させた後に電子レンジ加熱をした場合の方が、調理後のビタミンC残存量が多かった。<BR> このことより、40℃程度で短時間の低温スチーム調理を施すことで、春菊やほうれん草のビタミンCを増加させることができ、より多くのビタミンCを摂取することができる。
著者
中島 素子 三浦 克之 森河 裕子 西条 旨子 中西 由美子 櫻井 勝 中川 秀昭
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.647-654, 2008 (Released:2014-07-01)
参考文献数
20

目的 医科大学敷地内禁煙化の実施によって,医学生の喫煙率はどのように推移したか,喫煙についての学生の意識はどのように変化したかを明らかにする。方法 北陸のある医科大学において敷地内全面禁煙化が2004年に実施された。2001年から2007年まで,毎年約640人の医学生の喫煙状況を定期健康診断時に調査した(回答率91.2%)。また2000年度入学から2006年入学までの新入生全員の喫煙状況を経年的に追跡し,進級による喫煙率の変化が敷地内禁煙化によりどのように変化したかを調査した。さらに,喫煙者の喫煙に対する意識の変化や,敷地内禁煙準備期間から禁煙を開始した禁煙群と継続喫煙群の喫煙に関する意識の比較を行った。結果 2001年から2007年までの 7 年間の全学生の喫煙率は,敷地内禁煙実施前と比較すると,実施後に低下し,男子でもっとも喫煙率の高かった2002年の喫煙率41.2%と,2007年の喫煙率22.1%では19.1ポイントの差があった。毎年の新入生の喫煙率の推移を追跡すると,敷地内禁煙実施前は進級とともに喫煙率は上昇していたが,実施後は進級ごとに喫煙率が低下傾向を示した。敷地内禁煙実施前後に同じ対象者で比較すると,男子学生の喫煙率が実施前の36.0%,から実施後の25.6%へ有意に減少した(P<0.05)。また喫煙者のうち「喫煙をやめたい」と答えた人の割合が,実施前は39.1%であったが,実施後では60.2%と有意に増加していた(P<0.01)。さらに敷地内禁煙準備期間から禁煙した禁煙群70人と,継続して喫煙している継続喫煙群90人の 2 群間の意識を比較したところ,将来患者さんに積極的な禁煙教育ができないと思う者は,禁煙群20.8%,継続喫煙群50.0%であり,継続喫煙群で有意に高かった(P<0.01)。結論 医科大学敷地内全面禁煙化は,医学生の禁煙と喫煙への意識の変化に強い効果がある可能性が高いと考えられた。
著者
佐々 友章 西岡 亨 舞原 文女 本多 泰揮 山根 雅之 森田 修 西山 直宏
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-208, 2015 (Released:2015-08-03)

国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適正に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)は、衣料用洗剤に配合される陰イオン性界面活性剤である。LASは近年、化審法優先評価化学物質に指定されたほか、環境省の水生生物保全環境基準に追加されたことにより、その河川水中濃度や環境影響への関心が高くなっている。一般に、河川などに存在する化学物質の実態把握はモニタリング調査により行われるが、環境濃度推定モデルを用いることでより広範囲かつ短時間に環境濃度を把握することが出来る。今回演者らは、(独)産業技術総合研究所が開発した水系暴露解析モデル AIST-SHANEL (以下、SHANEL) を用いてLASの河川水中濃度を日本国内全ての一級河川109水系を対象に推定した。SHANEL によって得られた推定値とモニタリング値はFactor 10(10分の1から10倍の範囲)で良好に一致することを確認した。一致性の低かったごく一部の地点については、同一地点における継続的な環境濃度の推移や汚水処理施設の普及状況などから要因を調査した。その結果、得られたLASの推定値は、水生生物に対する予測無影響濃度や環境省が定めた水生生物保全環境基準値を下回ることが明らかとなった。暴露実態の解析手法および解析結果に基づくヒト健康および環境リスクアセスメントについて議論する。
著者
森本 兼曩
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.141-149, 2003-05-01 (Released:2011-03-18)
被引用文献数
1 1
著者
小泉 敬一 勝又 庸行 星合 美奈子 戸田 孝子 喜瀬 広亮 長谷部 洋平 森口 武史 松田 兼一 杉田 完爾
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.246-253, 2015-09-01 (Released:2015-12-04)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

背景:当施設で施行した重症川崎病に対する持続的血液濾過透析併用緩徐血漿交換療法(SPE+CHDF)の有用性と安全性について報告する.方法:当施設でIVIG不応性重症川崎病に対してSPE+CHDFを施行した12例を後方視的に検討する.結果:SPE+CHDFを12例13コース施行した.SPE+CHDF施行前の心機能検査所見は,ANP値,BNP値,心胸郭比がすべて高値であった.SPE+CHDF施行前と比較した施行1時間後,3時間後の心拍数の変化率,収縮期血圧の変化率は共に有意差はなかった.SPE+CHDFを施行中に,強心剤の使用例や血管内カテーテル感染,人工呼吸器関連肺炎合併例はなかった.全例でSPE+CHDF開始後1~4日(中央値1日)で解熱した.SPE+CHDF施行前に冠動脈病変を認めた7例は,1年以内に全例で退縮した.結論:重症川崎病には血漿交換療法(PE)が有効である.しかし,重症川崎病は循環動態不良例が多く含まれている.このため,重症川崎病に対して安全にPEを行うためには,SPE+CHDFが有用な方法の一つである.

1 0 0 0 OA 梵鐘の解説

著者
森永 卓一 養田 實
出版者
社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金屬學會誌.A (ISSN:03694607)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.22-26, 1951-01-20 (Released:2009-02-12)
参考文献数
17

1 0 0 0 OA 理性の射程

著者
嶋津 格 森池 豊武
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.44, pp.2-17,341, 1992-04-30 (Released:2009-01-15)
参考文献数
16

It is illuminating for the understanding of Hayek's theory of law to summarize his arguments for the refutation of socialism, or collectivist economic planning, which were started in as early as 1935 and have constantly been enriched till his latest Fatal Conceit. His theory of law is laid as one of the cornerstones of the normative part of his entire social theory, in which individual freedom under the rule of law is contrasted with serfdom in collectivism. But although his line of thought is attractive enough, I find his theory about what the law in the era of active legislation should be like not very clear and open to our imaginative interpretations. So, in order to proceed in the task of giving a more explicit Hayekian conception of legislative law, I start from his idea about what legislation should not be like, which is quite unequivocal.