著者
佐々木 庸郎 石田 順朗 小島 直樹 古谷 良輔 稲川 博司 岡田 保誠 森 啓
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.160-167, 2008-03-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

症例は50歳の男性。視力障害,意識混濁により医療機関を受診した。当初心房細動,大脳基底核の両側対称性病変,視力障害からtop of the basilar syndromeを疑われ,脳血管造影を施行したが否定された。その後昏睡状態に陥り,CT,MRI上の両側対称性の被殻病変,重度の代謝性アシドーシスの存在から,メタノール中毒が疑われた。集中治療室へ入院し,気管挿管,血液浄化療法,エタノール投与,活性型葉酸投与などを行った。意識は回復したものの,ほぼ全盲であり見当識障害が残存した。その後妄想性障害のため精神病院へ転院となった。メタノール中毒において,治療の遅れは重篤な後遺障害につながる。メタノールの血中濃度は迅速に測定することができないため,臨床症状,血清浸透圧較差,CT及びMRIの特徴的な病変から疑い,迅速に治療を開始する必要がある。
著者
森村 進
出版者
一橋大学
雑誌
一橋法学 (ISSN:13470388)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-22, 2006-03
被引用文献数
1
著者
森田 毅 中嶋 一彦 肥塚 浩昌 下山 孝 田村 俊秀
出版者
兵庫医科大学
雑誌
兵庫医科大学医学会雑誌 (ISSN:03857638)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-27, 2003-04-25

Helicobacter pylori (H. pylori)の主なvirulence factorとしてcag PAI (cag pathogenicity island)が挙げられている.cagPAI は作用物質であるCagA蛋白質と,それを感染宿主に注入するtypeIVsecretion systemから成る.後者を形成する遺伝子群の一つ,cagBはcagAとそれぞれのプロモーターが相接してcagA-cagB間隙(cagA/B)を形成しており,CagA蛋白質とそのsecretion systemの相互関係を,本菌の疾患との関連において知り得るに適していると考えた. そこでcagA/Bを兵庫医大臨床分離株36株,欧米登録株2株とのデーターベース上で全塩基配列が引用される26695株を基準として比較検討した.その結果次のことが判明した.(1) H. pyloriのcagA/B約400bpの"long type"と約250bpの"short type"に大別され,本邦分離株はほとんど"short type"である.またいくつかの塩基欠損の部位により11typeにわけられる.(2) cagA/B間にcagAの転写開始点は2ケ所,cagBの転写開始点は1ケ所見出された.また-10コンセンサス部位は認められたものの,-35は明らかでなかった.(3) β-galactosidase (lacZ)によるプロモーターアッセイでは,cagA, cagB菌株間に顕著な差異が認められた.(4) cagA, cagB変異株,野生株いずれの株においてもcag PAIの他の遺伝子(cagC, cagD)を発現しcagAまたはcagB欠損の影響はみられなかった.cagA/Bプロモーター領域は全cagPAIの一部ではあるが,株間の構造,活性に大きな差があり,cagPAIの多様性を示唆するものである.また,さまざまなH. pyloriに由来される疾患とcagA/Bの多様性の間に優位の関連性は認めがたく,cagPAIは宿主とあいまって,病原性よりも病原修飾因子として論議すべきであると推察する.
著者
緒方 雄一朗 薮田 ひかる 中嶋 悟 奥平 恭子 森脇 太郎 池本 夕佳 長谷川 直 田端 誠 横堀 伸一 今井 栄一 橋本 博文 三田 肇 小林 憲正 矢野 創 山下 雅道 山岸 明彦 たんぽぽ ワーキンググループ
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.175-175, 2011

始原小天体有機物は、太陽系および生命原材料物質の起源と進化を理解するための重要な情報を記録している。「たんぽぽ計画」では、大気圏突入時の熱変成や地上での汚染を受けていない宇宙塵を、国際宇宙ステーション上に超低密度シリカエアロゲルを設置して回収を試みる予定である。しかし、この方法では、宇宙塵のエアロゲルへの衝突により変成する可能性を考慮する必要がある。そこで本研究では、宇宙科学研究所・スペースプラズマ実験施設の二段式高速ガス銃を用いて、隕石微粒子の高速衝突模擬実験を行い、マーチソン隕石微粒子をシリカエアロゲルに撃ち込んだものを取り出し、2枚のアルミ板にはさみハンドプレスして圧着された隕石微粒子を、片方のアルミ板に載せた状態で、赤外顕微分光装置と顕微ラマン分光装置で測定を行った。また、SPring-8, BL43IRの高輝度赤外顕微分光装置IFS120HRでイメージング測定を行い、衝突前後の隕石有機物の分子構造の変化を見出すことを目的とした。
著者
森安 竜大 松森 唯益 永岡 真
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.854, pp.17-00144-17-00144, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
26

A topology optimization method is proposed for the design of shallow-flow channels based on quasi-three-dimensional flow models of laminar and turbulent flows. The models for laminar flow and turbulent flow are derived from the Navier-Stokes equations and the Reynolds-Averaged Navier-Stokes (RANS) equations, respectively, by integrating along the direction of channel thickness. The thickness is employed as the design variable in the topology optimization. The design variables are updated using a time-dependent diffusion equation with a design sensitivity which is calculated by a discrete adjoint approach. Numerical examples for minimizing dissipation energy or variance of flow velocity magnitude using the topology optimization demonstrates that the proposed method is capable of finding optimal solutions that satisfy the KKT conditions. In the former example, the design domain was clearly divided into domains where the thickness was either near the upper limit or near the lower limit. However, in the latter example, the thickness was at an intermediate level in almost the whole the design domain. The distribution of the thickness varied depending on the Reynolds number in both examples.
著者
森川 清 野崎 文男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.654-659, 1961-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11

ニッケル- シリカ触媒上, 200 ~ 500 ℃ でトルエンの水素化反応性を検討した。その結果, トルエンと水素の混合物を触媒上に通ずると反応温度いかんにより種々の反応が起ることがわかった。250℃ から350℃ の温度域では核水素化反応は負の温度係数をもち,350℃ 付近にトルエンの比較的安定な温度域があった。またメタンの生成量にはピークがあった。これらの事実は核水素化反応の平衡論的制限によるものである。400℃ 以上になると水素化脱メチルが起りベンゼンとメタンが生成し,480℃ 以上になると核の水素化分解により多量のメタンが生成する。またメチル基をもたないベンゼンの反応性をトルエンのそれと比較したところ,両者のベンゼン核の分解する温度は異なり,前者の方が低温で分解する。換言すればメチル基がベンゼン核の分解を抑制していることを見出した。またトルエンの水素化脱メチル反応に対する触媒活性の経時変化と触媒還元温度との関係を吟味した結果,高温にて還元処理すると触媒活性の時間的変動が僅少となることを知った。
著者
児玉 麻衣子 小林 美貴 片山 寛次 田辺 公一 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.311-316, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
19
被引用文献数
4

医療者による緩和ケアの質評価尺度のうち,アウトカムの評価尺度としてGood Death Scale(以下,GDS)があり,その信頼性と妥当性が確認されている.本研究の目的は,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順に従い,GDS日本語版(以下,GDS-J)を作成することである.順翻訳においてGDSの問3. Has the patient arranged everything according to his/her own will? の“will”の日本語訳と,その日本語訳「意思」の逆翻訳に意見の相違が見られた.研究チームで言語として原版と同等であると言語的妥当性を検討し,最終的には原版の開発者に承認を得てGDS-Jの確定とした.医療者による緩和ケアの質評価尺度であるGDS-Jを使用することで,自身の行う緩和ケアの質が評価可能となり,より質の高い緩和ケアの提供に役立つことが期待される.
著者
塩﨑 麻里子 三條 真紀子 吉田 沙蘭 平井 啓 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.753-760, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

【目的】本研究の目的は,がん患者の家族が,終末期における治療中止の何に,どのような理由で後悔をしているか記述的に明らかにすることである.【方法】がん患者の遺族37名を対象に,意思決定当時と現在の2時点にかけての心理的プロセスに関する半構造化面接を行った.結果は,内容分析によって整理した.【結果】約40%の遺族に何らかの後悔についての発話がみられた.後悔の内容は,8カテゴリーに分類され,決定当時の4カテゴリーから,現在は7カテゴリーに多様化した.後悔に関連する理由は43カテゴリーに分類された.後悔がない理由は,患者や家族の要因や医療者との関係といった当時の状況に関するものが多かった.後悔がある理由は,意思決定のプロセスや選択肢,心理的対処といった意思決定の仕方と医療者との関係が多かった.【結論】後悔の性質と機能的な心理的対処の関連を理解することで,遺族の後悔制御方略を提案できる可能性が示唆された.
著者
杉森 保
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
1994

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(理学) (課程) 学位授与年月日:平成6年3月25日 副論文・参考論文はPDFに含まれていません。
著者
金井 一彦 森鼻 英征 山崎 敏樹 寺田 邦夫
出版者
日本造船学会
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
no.132, pp.269-279, 1972
被引用文献数
1

In order to obtain the collapse strength data on the spherical shells suitable to the pressure capsule of DSSV, collapsing tests were conducted using spherical shell models by means of MHI 1,200kg/cm^2 hydrostatic tank. These models were made from several kinds of materials including ultra-high yield strength steels such as 18% Ni maraging steel, 10% Ni dual-strengthened steels etc., and machined into near-perfect spherical shape or spheres with initial imperfection of various thicknesses. From these experiments the following conclusions are obtained : (1) Collapse pressure of relatively thick shells (h_a/R_<10>≧0.03) agrees to the theoretical inelastic buckling pressure by Gerard et al. (2) The effect of initial imperfections are evaluated by local radius in case of relatively thick shells. But for thinner shells, this method is not sufficient and nonlinear elasto-plastic analysis will be required. (3) Present results will not always agree with Krenzke's data, especially in thinner shells with flat spot. (4) Fracture appearance of collapsed shells are closely related to the fracture toughness of materials.
著者
森達也 森隆知
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.725-726, 2013-03-06

旅行の記録といえば、カメラによる写真や動画がしばしば用いられるが、それら多くの主題は視覚的情報であり、音が主役として用いられる場面は少なかった。写真や映像を併用しながらも、音に意識を集中させて、音を主役として扱うシステムの提案を行う。システムはAndroid端末で動作して、録音、編集、再生機能を持つ。観光地における被験者実験により、記録された音を聴き返したときに想起される記憶や、新たな発見の度合いを調べた。被験者は観光地で録音作業を行い、後日、録音された音の聴きとり作業を行う。実験では、音を聴いたときの記録想起と新たな発見をアンケート上で評価させた。その結果から本研究の有効性が示された。
著者
雪田 和人 後藤 時政 水野 勝教 中野 寛之 一柳 勝宏 後藤 泰之 森 豪
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. A, 基礎・材料・共通部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A, A publication of Fundamentals and Materials Society (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.130, no.1, pp.95-102, 2010-01-01
被引用文献数
3 2 2

Recently the importance of Monozukuri (manufacturing) has been watched with keen interest as a social; problem, which has a relation with schoolchildren's decline of their academic standards, pointed out by the reports of PISA of OECD and TIMSS, etc., and their "losing interest in science" and "dislike of science", some people worry about, which will lead to the decline of technology in the home industry, the top-class personnel shortage, and the decrease of economical power in this country in the future. In order to solve such a problem, science pavilions, universities, and academic societies of science and engineering etc. in various places hold "Monozukuiri Classrooms" or "Science Classrooms". We can say that various activities which try to hold off "losing interest in science" and "dislike of science." in the whole society. Under such a situation, Aichi Institute of Technology (AIT) to which we belong, also tries to contribute to the activity of solving the problem, and holds various engineering education lectures which intend for elementary, junior high school and senior high school students. AIT has held "The Whole Experience World" which tries to bring up a talented person who has a dream and hope towards science and technology, grows his/her originality, intellectual curiosity and spirit of inquiry, and supports the nation based on science and technology in the summer vacation since 2001.<br>This paper reports the result of a questionnaire about what kind of the long-term learning effect on the children who participated in "The Whole Experience World" and "Boys and Girls Robot Lectures". As the conclusion of the study, we can say that the lectures could give the participants who were interested in science and technology more interest. And we could give them the idea of what the study of science and technology is. As a result, we could contribute to the participants' decision of the courses' selection in life.
著者
横山 卓志 楠田 哲士 曽根 啓子 森部 絢嗣 高橋 秀明 橋川 央 小林 弘志 織田 銑一
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-214, 2012-12-30
参考文献数
12

飼育下キンシコウ(<i>Rhinopithecus roxellana</i>)の新生仔における行動発達を明らかにすることを目的とし,名古屋市東山動物園で2009年4月に生まれた雌の新生仔において,8ヶ月齢までの成長に伴って観察された行動の経日変化を記録した.また,それらの結果を,中国の国立陝西周至自然保護区の半野生集団および他の飼育下個体における報告と比較した.東山動物園の新生仔は,出生後約1ヶ月間は母親に依存していたが,1ヶ月齢から周辺環境や姉に興味を示し,積極的に接近や探索の行動を開始した.2~3ヶ月齢では姉と2頭で過ごしたりグルーミングに似た行動をしたりするなど社会行動が観察された.生後60日目以降,積極的に姉に近づくようになり,姉の存在がその後の新生仔の行動発達に影響を与えたと考えられた.自然保護区と比べ,木の登り降りや餌に興味を示す行動の発現が著しく早く,また5ヶ月齢以降,腹部接着や支持,近接,接近,離反およびグルーミング受容の行動スコアがほぼ一定となったことから,5ヶ月齢が行動発達の1つの区切りであったと考えられた.東山動物園におけるキンシコウ新生仔の行動発達過程は,群れの数や環境が大きく異なる中国の自然保護区の結果と一致していた.しかし,一部の行動の開始時期には大きな差が認められ,木の登り降りや餌への興味といった行動の発達は,成育環境に影響を受けているとも考えられた.<br>