著者
深田 陽久 橋口 智美 柏木 丈拡 妹尾 歩美 高桑 史明 森岡 克司 沢村 正義 益本 俊郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.678-685, 2010 (Released:2010-10-11)
参考文献数
33
被引用文献数
6 9

養殖ブリの高付加価値化を目的として下記の試験を行った。試験 1 ではユズ果汁をブリ飼料に添加することによって血合筋の褐変を抑制できるか検討した。飼料 1 kg にユズ果汁を段階的に添加し,ブリ幼魚に 40 日間給与した。ユズ果汁の添加によって,成長を損なう事無く,血合筋の褐変が抑制されていた。試験 2 としてユズ果汁を添加した飼料を 30 日間与えたブリの筋肉中からユズ香気成分の検出と同定を行い,香りの成分が果汁を添加した飼料より移行し,蓄積されたことを明らかにした。
著者
森 津太子
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.31-39, 2012

近年、自由意思に関する関心が心理学者、とりわけ社会心理学者において高まっている。しかし研究者間の見解の相違は大きく、何が争点であるのかも明確ではないのが現状である。そこで本稿では、2009年に開催されたSocietyfor Personality and Social Psychologyの年次大会の中で行われた二人の著名な社会心理学者(John A. BarghとRoy F.Baumeister)による自由意思の存在をめぐる討論と、それに関連する論考に着目し、社会心理学における自由意思の問題について考察を行った。自由意思の存在を肯定するBaumeisterと、その存在を懐疑的に見ているBarghは、興味深いことに、いずれも進化心理学的な観点からこの問題を捉えようとしていた。しかし、Baumeisterは自由意思を進化的適応の産物と見なし、自由意思こそが人間が文化を営む上で必須のものだと考えているのに対し、Barghは自由意思の存在を否定し、そのような"何ものによっても引き起こされない行為の原因"を仮定することは非科学的だと主張している。彼は、無意識的過程こそが進化的適応の産物であり、意思すらも自動化されたものだと主張する。彼によれば、意思とは「遺伝的に継承されたものと、幼少期に吸収した文化的規範や価値観と、個人の人生経験の合流点」なのである。二人はまた、自由意思を信じることの心理学的意味においても意見を違えており、Baumeisterが自由意思を信じることには心理学的な効用があると考えているのに対し、Barghはそのような効用は限定的で、時には有害にすらなると反論する。このように、彼らの見解は平行線を辿り、最後まで一致を見ることはなかったが、彼らの討論の内容を吟味することにより、社会心理学における自由意思をめぐる問題の重要なポイントが何なのかが明確になった。
著者
森下 総司
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨髄増殖性腫瘍(MPN)には,主として真性赤血球増加症(PV),本態性血小板血症(ET),原発性骨髄線維症(PMF)などが含まれる。我が国のMPN症例におけるJAK2遺伝子変異の陽性率はPVが94.4%,ETが51.9%,PMFが54.7%であった。PVと診断されたにも関わらずJAK2遺伝子変異が陰性であった5例について,JAK2の全エクソンを次世代シークエンサーで解析したところ,共通する遺伝子変異を2つ同定できた。これらはアジア人に特有のSNPであったが,アミノ酸の置換を伴わない変異であった。以上のことから,我が国におけるPV診断ではJAK2遺伝子変異検査が重要であると考えられる。
著者
清水 哲朗 加藤 博 山下 巌 斎藤 智裕 竹森 繁 中村 潔 穂苅 市郎 山田 明 島崎 邦彦 小田切 治世 坂本 隆 唐木 芳昭 田沢 賢次 藤巻 雅夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.753-757, 1990-03-01
被引用文献数
6

食道の小細胞型未分化癌に対し,温熱療法を併用した集学的治療を施行し,約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.昭和62年7月より嗄声,嚥下困難が出現,近医にて食道癌と診断され,11月16日当科入院となった.入院後の諸検査により,ImEiIuにわたる切除不能食道癌で,生検により小細胞型未分化癌と診断された.11月30日より放射線療法計47Gy,免疫・化学療法として,BLM計65mg,CDDP計150mg,5FU計4,500mg,VP-16計180mg,OK432計57.2KE,PSK99gを投与し,これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により,症状はもちろん,食道造影上も,腫瘍陰影が消失した.しかし,昭和63年7月になり,多発性肝転移により再入院,8月6日死亡した.放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが,より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
著者
森田 まり子
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, 2002

1909年から29年までの20年間に,約60ものバレエ作品を上演したセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスは,その後の20世紀の舞踊史に多大な影響を与えた。今回の発表では,このバレエ・リュスによって初演された作品の中で,現在でも評価の高い初演と同じ形式で上演されることもある《結婚》という作品を取り上げた。「ロシアの舞踊的情景」という副題のついたこの作品は,1923年にパリのゲテ・リリック劇場で初演されたバレエ・カンタータである。音楽とリブレットはイーゴリ・ストラヴィンスキー,振付はブロニスラワ・ニジンスカ,衣装を含めた舞台美術はナタリア・ゴンチャローワが手掛けた。典型的なロシアの農民の結婚儀礼を題材に創られたこの作品は,これまでの先行研究では,音楽学,舞踊学,バレエ・リュスの文化史というそれぞれの専門領域の中で語られることが多かった。今回の発表では,総合的に作品分析を行い,それを同時代のステージアート史のコンテクストに照らし合わせることで,この作品の持つ新しさ(=スペクタクル性)を明らかにしようと試みた。この作品は,ロシアの農民の結婚儀礼という劇(ドラマ)に完全には束縛されずに,首尾一貫したプロットを形成していない歌,機械的なオーケストラ,様式化された衣装と装置,抽象的な振付など,舞台を構成する各要素が独立した世界を形成しているアンチ・近代的ステージアートの一形態である。この作品は,舞台を構成する各要素が劇(ドラマ)を軸に統一性をもって統合されている近代的ステージアートというよりも,むしろ舞台を構成する各要素を自由に浮遊させ,それらが結婚儀礼という劇(ドラマ)によってわずかに交錯するように創られている「スペクタクルとしての結婚」ともいうべき作品だといえよう。コラボレーション故の差異を孕んだスペクタクル的な作品そのものはアンチ・近代的ステージアートの流れから自然に生まれたものであったといえるが,1つ注目すべきことは,この作品が作曲家ストラヴィンスキーの発案によって創作されたということである。つまり《結婚》というステージアートの鍵は,ストラヴィンスキーのステージアート観の中にあったのだ。こうした舞台人としてのストラヴィンスキー像は,音楽学からの研究だけでは見えてこないものである。このように,バレエ・リュスの《結婚》を多角的なアプローチによって分析することによって,近代とアンチ・近代のステージアートというコンテクストにおいて,《結婚》は「スペクタクルとしての結婚」というコンセプトに基づいたアンチ・近代的ステージアートの一形態であるということ,そしてこの作品の鍵が作曲家ストラヴィンスキーのステージアート観の中にあったということを,この作品研究における新たなる側面として提示することができよう。
著者
小笠原 恵 氏森 英亜
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-56, 1990-09-30

本研究では、重度の精神発達遅滞児の要求言語形成のために、機会利用型指導法にマンド・モデル法を付け加えた指導法を導入した。本児のマンド発現を促すために、強い強化機能をもつと推測される遊具を導入し、その効果を検討した。また、指導者からの言語的手掛りや言語モデルを除去していく手続きの検討を加えることを目的とした。そのために本児がベースライン期に最も長い時間遊んでいたことから、強化機能が強いと推測されるブランコを本児が一人では乗ることの出来ない高さまで上げた。そのうえで、本児がブランコに触った時に、指導者は「なーに」という言語的手掛りを与え、反応が無いときには「やって」という言語モデルを示した。介入期1では言語モデルを、介入期2では言語的手掛りを固定遅延呈示し、介入期2で言語モデルを、フォローアップ期で言語的手掛りを除去した。その結果、介入期1では、マンド・モデル法を導入することにより、反応型を形成できた。介入期2では言語的手掛りに反応するという日常場面でよくみられる自然な形での反応へと移行した。さらに、言語的手掛りも除去し、ブランコという物理的刺激および指導者の存在という対人的刺激のみにしたフォローアップ期でも、一定水準の要求語の自発がみられた。
著者
森 敬子
巻号頁・発行日
2013

筑波大学博士 (システムズ・マネジメント) 学位論文・平成25年3月25日授与 (甲第6375号)
著者
細川 大二郎 森 寛一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.166-172, 1983-04-25

Multiplication and distribution of cucumber mosaic virus during the development of systemic infection in tobacco plants (Nicotiana tabacum cv. Xanthi) inoculated to the middle leaf were investigated by the use of fluorescent antibody technique. After the virus multiplied in the inoculated leaf, the virus antigen was first detected in the upper stem and leaves, and later in the lower stem and roots. In the early stage of a long distance movement of the virus, the virus antigen was first observed in separate areas along the phloem. This mode of virus movement differed from that in the parenchyma tissue, in which the virus moved from cell to cell, suggesting that the virus move a long distance through sieve tubes. Thereafter the virus progressively spread from the infection site in the phloem to surrounding tissues and caused the systemic infection. In the upper leaves, the appearance of symptoms such as veinclearing and yellowing followed the distribution of virus antigen in the tissues. After the virus antigen had distributed throughout all the tissues in a certain part of the plant, it gradually decreased.
著者
白石 光昭 森 典彦 杉山 和雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.95, pp.9-16, 1993-01-10

オフィスの評価は視覚的要因・環境工学的要因・使い勝手要因の3つが考えられる。これまで環境工学的・使い勝手要因からの評価は多く行われているが,実験・調査が多く手間と時間がかかる。これに対し,視覚的要因はオフィスの第一印象に大きく影響するにもかかわらず,評価方法や評価はまとめられていない。オフィスプランナーは長年の経験から,実験・調査を行わなくても,的確にオフィスの問題点を指摘できる。そこで,彼らの知識をまとめることで,1つの評価法を提案している。知識をまとめる方法としてFTAを応用する。また,視覚,つまり,見た目の評価にはあいまいさが含まれるのでファジイ集合をとりいれている。オフィスを見た目に悪くする要因を95項目抽出し,これらをFTAにそった分析を行うことで,構造的に,かつ,項目に対する主観的な評価を定量的に,把握することが可能になった。
著者
三上 岳彦 森島 済 日下 博幸 高橋 日出男 赤坂 郁美 平野 淳平 佐藤 英人 酒井 慎一 大和 広明
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

東京首都圏に設置した独自の気温・湿度観測網と気圧観測網のデータ等を用いて、夏季日中のヒートアイランドの時空間変動を明らかにするとともに、熱的低気圧の動態と局地的短時間強雨発生との関連およびその要因の解明を試みた。夏季の気温と気圧データに主成分分析を適用した結果、上位主成分に、海陸風循環、ヒートアイランド、北東気流に関連した空間分布が認められた。局地的短時間強雨の事例解析を行い、豪雨発生の前後で気圧の低下と上昇が起こり、海風起源の水蒸気量の増加が確認できた。領域気象モデル(WRF)による都市域での短時間強雨発生に関する数値実験を行い、都市域で夜間の降水が増えていることが明らかになった。
著者
森川 輝 村上 求 小篠 裕子 勝手 壮馬 伊沢 亮一 森井 昌克 中尾 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICSS, 情報通信システムセキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.86, pp.109-114, 2009-06-11

インターネットの普及に伴い,不正アクセスやマルウェア感染による被害は増加傾向にある.マルウェア感染の被害を最小限にとどめるためには迅速な解析を行い,マルウェアに対して適切な対策を講じなければならない.本稿では類似度判定で得た類似度から未知のマルウェアが有する機能を推定するマルウェア解析システムを提案する.提案システムを用いることでマルウェアの詳細な解析を行うことなく機能を推定することが可能である.さらに提案システムは解析マシンの高速復元も可能である.
著者
安本 幸希 森井 昌克 中尾 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.347, pp.31-36, 2007-11-14
被引用文献数
1

一般にマルウェアのほとんどは,既知のマルウェアの亜種,もしくは既知のマルウェアと同一であるにもかかわらず,パッキングと呼ばれるコード変換をされたマルウェアである.解析対象となるマルウェアが,既知のマルウェアの亜種であることが判明すれば,新たに解析をする必要はほとんどなく,機能の大部分を推定することが可能となる.本稿では,未知のマルウェアに対して,既に解析されたマルウェアとの類似度を与える手法を示し,その類似度から未知のマルウェアが有する機能を推定するシステムを提案する.