著者
亀尾 佳宏 杉村 淑人 竹内 一郎 武田 伸二
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.243-248, 2003-10-10
被引用文献数
3 1

現地発生材(掘削残土や河床堆積物)のコンクリート骨材への有効利用を検討するため,昭和33年に建設された砂防ダム堆砂部でハイブリッドボーリングエ法(気泡式ボーリング,以下「HB工法」という)によるサンプリングを行った.調査対象は,過去40年間に堆積した腐植物や粘土,砂,礫などの変化の著しい河床堆積物よりなる.HB工法は,高濃度気泡の安定供給と気泡送圧力の微調整により,地下水位以深での良好なコア採取が可能であり,HB工法によって原位置での堆積状況を示すほとんど乱れのないコアが採取できた.また,これにより堆積層ごとの代表的な区間で,有効な室内土質試験が行え,土木材料への転用の可否が明らかとなった.従来,河床堆積物の分布状況を把握する調査では,トレンチや普通工法によるボーリングが実施されてきた.しかし,調査対象の河床堆積物が厚さ20m以上である場合,トレンチでは深部まで調査を実施することが困難である.また,普通工法によるボーリングでは,コアが乱され精度の高い試料を採取することが困難である.これに対して,HB工法は河床堆積物の分布が厚い場合も,良好なコア採取ができる.河床堆積物の有効利用を検討するうえで,HB工法は有効な調査手段であることが明らかとなった.
著者
武田 千香 柴田 勝二
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

マシャード・デ・アシス(1839-1908)は、夏目漱石(1867-1916)とほぽ同時代に地球の反対側に生きたブラジル文学を代表する写実主義作家である。当時、日本とブラジル両国の間にはまだ活発な文化交流がなく、両作家の間にも接触はなかったと思われるにも拘わらず、双方の文学の間には親和性がある。本研究は、間テキスト性にその原因を求めることのできない親和性がなぜ生じたのか、その要因を明らかにすべく行なわれた両作家の文学の比較研究である。研究の結果、まずは両者がアレゴリーという文学的手法を用い、主要な登場人物にそれぞれの国やその外交関係を仮託することによって、当時の近代日本や近代国家ブラジルに対する批判的精神を盛り込んだことが明らかになった。そして、その批判的精神自体にも明らかな共通性がみてとれる。これはおそらく当時のブラジルと日本が、似たような地政的な状況に置かれていたことに起因するものであろう。すなわちブラジルも日本も19世紀に西欧の外圧を受けることにより、200年〜300年の長きにわたって閉ざしていた門戸を開け、突如すでに構築されていた地球規模的国際関係や西欧的知的枠組みに組み込まれ、新生近代国家として急速な近代化を進めざるを得なかったのである。いずれの作家もそうした激動の時代を生き抜き、その経験を各自の作品の中に描きこんだ。すなわち両者の文学はともに西欧から働きかけられた近代化の波に襲われた非西欧的周辺国で生まれたものなのである。このように考えれば、両者の文学の親和性は必然的な結果だということができる。以上は、11にある成果を通して明らかになったことである。
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 武田 喬男 塚本 修
出版者
岡山大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき,海上も含めた梅雨前線帯付近の広域降水量分布とその変動を評価するとともに,GNS雲データによる雲量や深い対流雲域の出現頻度,及び全球解析データによる水蒸気収支との関係について冷夏・大雨/猛暑・渇水(1993/1994)年の夏を中心に解析を行ない,次の点が明らかになった。1.1993年には,8月に入っても日本付近で梅雨前線帯に対応する降水域が持続したが,前線帯の位置の違いだけでなく,そこでの総降水量自体が1994年に比べて大変多く,それは,例えば5日雨量100ミリを越える「大雨域」の面積の違いを大きく反映したものである事が明らかになった。2.1993年の夏の多量の降水は,すぐ南の(〜28N)亜熱帯高気圧域からの大きな北向き水蒸気輸送により維持されていたが,日本の南の亜熱帯高気圧域内で〜28Nに近づくにつれて北向きの水蒸気輸送が急激に増大しており,単にグローバルな東アジア域への水蒸気輸送とは別に,亜熱帯高気圧自体の水輸送構造の違いが両年の降水分布の違いに密接に関連している事が明らかになった。3.7〜8月頃の梅雨前線停滞時には,1993年についても,5日雨量で見た広域の「大雨」には深い対流雲群の頻出が大きな寄与をなしていたが,台風が日本海まで北上した時には,大規模場の層状雲域である〜38N以北においても,その南側の対流雲域と同等な「広域の大雨」が見られるなど,冷夏年における梅雨前線と台風の水の再分配過程の興味深い違いが明らかになった。また,いくつかの興味深い事例について,個々の降水系のマルチスケール構造とライフサイクルについても検討を行った。
著者
武田 将明
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

英国18世紀小説の特徴を再考するために、Daniel DefoeやEliza Haywoodの作品について研究し、口頭発表と論文で成果を公表した。特に、従来は内在的に発展したとされてきた英国18世紀小説のリアリズムが、実は17世紀フランス文学との影響関係のなかで育まれたことを示した。また、文学史に関する考察や、現代日本文学と英国18世紀小説の関係を考察する論考も発表した。
著者
小柳 公代 武田 裕紀 内田 正夫 永瀬 春男 野呂 康 デコット ドミニック ジュスラン オリヴィエ
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

パスカルの自然学を、我々がこれまでの研究によって位置づけた科学史的な評価に加えて、彼が探求成果を論文としてまとめるさいに投入したさまざまな技巧という観点から検討し、実験の実行者というよりも、レトリックを駆使する論証の天才としてのパスカル像を提示することに成功した。またこの過程で、パスカル研究の完璧な底本として流通しているメナール版のテクスト・見解にもいくつかの変更を迫ることができた。
著者
菅井 勲 高木 昭 武田 泰弘 入江 吉郎
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究代表者らが開発した制御型直流アーク放電法を用いて厚さ300-400.ug/cm^2のHBC-フォイルを作成し東工大の3.2MeVのDCネオンビーム、KEKの650KeVのDC負水素イオンビーム、それに米国ロスアラモス研究所の800MeVのパルス負水素イオンビームを用いて照射性能試験を行った。結果はいずれの場合でも1800K-2300Kの高温環境下に加熱されたHBC-フォイルは市販のフォイルの250倍、ナノダイヤモンドフォイルの100倍以上の寿命を示した。
著者
武田 紀久子 大久保 みたみ 高崎 禎子 唐沢 恵子 石川 尚子 大関 政康 大竹 美登利 川端 博子 斉藤 浩子 林 隆子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-13, 1992-01-15
被引用文献数
3

第3報では,高齢者の食生活に関する分析を行った.現在70歳の高齢者は,結婚年齢である20代に第二次世界大戦を迎え,子育て期には戦中戦後の食糧難による耐乏生活を経験し,働き盛りの30代には戦後の急激な生活の変化に遭遇したというまさに波乱に富んだ人生を生
著者
照井 哲 原野 悟 武田 文 三宅 健夫 横山 英世
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

研究目的 現在わが国では、急激な高齢化社会を迎え疾病構造からみても生活習慣に係わる病気が死因の大部分を占めている。厚生省の打ち出した生活習慣病の予防対策の一環として、簡易医療機器による自己検診を普及させることで、健康に対する意識を向上させ、さらに行動変容に結びつくよう本研究を行った。研究対象 企業や保健所の健康教室受診対象者に対し血圧計、血糖計、歩数計、体温計など簡易医療機器を貸与し自己測定を行わせ結果を解析した。また老人保健法並びに学校保健法の健康診断の結果を費用便益法で解析して、自己健康診断との比較を行った。結果及び考察 平成7年度に行った自己検診(血圧・検尿・体温・歩数)や平成8年度に行った自己血糖測定の結果を集計し、性別・年齢階級別に解析を行った。この結果健康に意識を持つ集団においては頻回に自己測定を行っており、特に不安の多い60歳以上の対象者が関心が強い。さらに質問票の集計から成人病健康診断結果並びにその後の事後措置結果を踏まえて、自己健康診断による健康に関する意識の変容が行動変容に結び付きいていることが示された。さらに糖尿病患者における自己血糖測定においては、血糖の改善のみならず脂質や肝機能、尿酸などの最終的に生体情報値の改善に結び付いていることが示され、個々人の生活全般に自己検診が良い結果を呈したことが明らかになった。また、学校保健法及び老人保健法の健康診断の費用と自己健康診断の費用との比較検討を行い、自己健康診断の費用便益が示された。結語 わが国の疾病構造において中心をなす成人病は、日々の生活習慣に由来するところが大きい。自分の健康は自分で作るという習慣の形成がこれら疾病の一次予防上最も重要であり、この自己検診による行動変容は成人病対策上極めて有用と考えられ今後の普及が望まれる。
著者
武田 徹
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
恵泉女学園大学紀要 (ISSN:09159584)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.91-108, 2007-03

This article discusses how the idea of publicness has changed in the history of broadcasting in Japan. The Three Radio Wave Laws established in 1950 (Dempa Sampo): including the law defining the principle for regulation of broadcasting (Hoso Ho), the law regulating the use of radio waves (Dempa Ho) and the law establishing a commission to supervise its usage (Dempa Kanri Iinkai Setti Ho) were intended to terminate the government.controlled broadcasting system dictated under the war government, and to build a new public broadcasting system independent from any kind of governmental control. But, soon after the San Francisco Peace Treaty in 1951, the commission to supervise radio wave usage disappeared, and the decision.making capacity to allot the frequency waves moved back to the Ministry of Post and Telecommunications . This meant that the independence of the broadcasting system also disappeared, because the government regained its ability to rule the broadcasting system again by controlling the licensing of radio waves. In additon, recently, as the Internet has been covering our society, the citizen's `right to know' is fulfilled not only by mass.broadcasting, but also by search engines like Google. How should the broadcasting system maintain its position to be `public' under such circumstances ? This article discusses the possibilities of broadcasting to remain a `public' system by referring to John Rawls' "A Theory of Justice" and the idea of `liberal irony' by Richard Rorty.
著者
友部 博教 松尾 豊 武田 英明 安田 雪 橋田 浩一 石塚 満
出版者
社団法人 情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1470-1479, 2005-06-15
被引用文献数
7

Web上では,あらゆる人があらゆるトピックについて何でも書くことができる.セマンティックWebでは,情報の信頼性をWeb of trustにより計算することが重要な技術である.我々はこれまで,研究者の協働関係ネットワークをWeb上の情報から抽出する研究を行ってきた.本論文では,Webから抽出した情報を用い,人の関係性をセマンティックWebの枠組みの中で記述できること,得られたネットワークの中心性の解析をすることで,コミュニティにおける著名な人物が分かること,それが信頼性につながる別の尺度と相関していることを示す.セマンティックWebにおいて,人のネットワークを情報の信頼性の計算に用いる1つの新しい方法を提案していると考えている.Anyone can say anything about anything on the Web. In the context of Semantic Web, it is important to caluculate the trust of information based on "Web of Trust." We have developed an automatic extraction system of a social network among researchers from the Web. In this paper, we describe that the extracted relation is useful for human relation description in the context of Semantic Web. Moreover, we can extract the central persons in a community by analizing the network centality. Centrality measures are used as a surrogate of trust degree. Our approach shows an overall architecture to calculate the trust of information based on a social network.
著者
武田 信幸 西海 弘城
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.364-367, 2000-12-25
被引用文献数
3

畜水産食品中のオキシテトラサイクリン (OTC) をHPLCで分析するために, 0.25%メタリン酸-メタノール-アセトニトリル (6 : 2 : 2) を抽出溶媒とし, 銅イオン負荷金属キレート樹脂を利用した迅速で簡便な前処理法と, 移動相からMg<sup>2+</sup>を除去してOTCピークの消失を視認できる簡易なオンライン確認法を確立した. 食肉類及び水産食品など9種類の試料を用いた添加回収実験 (0.1及び1μg/g) での平均回収率は80%以上, 定量下限は0.02μg/gであった. 市販畜水産食品40試料を分析し, うなぎ浦焼 (0.04μg/g) とえび (0.39μg/g) からOTCを検出した. 陽性試料は開発したオンライン確認法で確認を行った.
著者
甲平 一郎 二宮 庸太郎 武田 明雄 小幡 典彦
出版者
JAPAN EPILEPSY SOCIETY
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.167-173, 2002-10-31
被引用文献数
1

てんかん重積状態で入院した35歳の女性例を報告した。34年間の部分発作と全身痙攣発作を有するてんかんの病歴があった。入院時には右上下肢の強直性間代性痙攣へ二次性に進展していく顔面の運動発作が2分置きに出現していた。入院直前10時間の間に経静脈的にフェニトイン750mgとアセタゾラミド500mgで加療を受けていた。入院後直ちにミダゾラム10mg、ベクロニウム10mg、プロポフォール200mgを静脈内にボーラスで投与後発作は消失した。気管内挿管し人工呼吸器管理を行い、ミダゾラムの持続点滴を開始した。発作消失26時間後より顔面の痙攣が出現し2日続いたため、プロポフォールの持続点滴を開始した。プロポフォールの静脈内投与にて全ての発作は消失した。発作が消失して17日経過して再度てんかん重積状態となりプロポフォールの経静脈内投与を行ったところ発作は直ちに消失した。2回目のてんかん重積状態の治療は経静脈的にはプロポフォール単独で行った。今回の症例はフェニトインやミダゾラムに抵抗性の難治性てんかん重積状態の治療においてプロポフォールが有用である可能性を示唆している。<br>
著者
河原 達也 李 晃伸 小林 哲則 武田 一哉 峯松 信明 伊藤 克亘 伊藤 彰則 山本 幹雄 山田 篤 宇津呂 武仁 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.175-180, 1999-03-01
被引用文献数
39

「日本語ディクテーション基本ソフトウェア」は, 大語彙連続音声認識(LVCSR)研究・開発の共通プラットフォームとして設計・作成された。このプラットフォームは, 標準的な認識エンジン・日本語音響モデル・日本語言語モデルから構成される。音響モデルは, 日本音響学会の音声データベースを用いて学習し, monophoneから数千状態のtriphoneまで用意した。語彙と単語N-gram(2-gramと3-gram)は, 毎日新聞記事データベースを用いて構築した。認識エンジンJULIUSは, 音響モデル・言語モデルとのインタフェースを考慮して開発された。これらのモジュールを統合して, 5,000語彙の日本語ディクテーションシステムを作成し, 種々の要素技術の評価を行った。本ツールキットは, 無償で一般に公開されている。