著者
清水 智恵 山中 沙織 西田 雄太 田中 淳 普後 一 島田 順
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.33-37, 2014 (Released:2014-09-03)

シロヘリクチブトカメムシを室内で省力的に増殖することを目的に,人工飼料による飼育方法の開発を試みた。クチブトカメムシの一種であるP. maculivientrisおよびP. sagitta用に開発された飼料(De Clercq and Degheele,1992)にカイコガ蛹乾燥粉末を加え,パラフィルムで密封処理した飼料片を作製した。冷凍保存したこの飼料片を用い,高い生存率でシロヘリクチブトカメムシを飼育することができた。また,16L8Dを長日,8L16Dを短日として若虫期,成虫期を飼育したところ,雌成虫に産卵を誘導するためには,成虫期の長日のみならず若虫期にも長日が必要であることが明らかとなった。1齢若虫期のみの長日条件でも成虫期が長日であれば産卵個体を得ることができるが,若虫期の長日期間が長いほど産卵個体が多くなることが示唆された。25℃飼育下における本種の生殖休眠は,成虫期の短日条件,あるいは全若虫期を通した短日条件で誘導されることが判明した。
著者
清水 克正
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.4-10, 1999-08-30 (Released:2017-08-31)

The present study is concerned with the voicing contrasts of stop consonants in Japanese and English, and examines phonetic characteristics of their contrasts. The examination is mainly based on the acoustic analysis of initial stops in the two languages. Based on the analysis, it can be said that Japanese and English use several acoustic features such as voice onset time (VOT), Fo and its curve, and the onset of the first formant frequency for distinguishing voicing contrasts. Phonetic differences of the voicing contrasts in the two languages can be represented by the selection of the laryngeal features /VOICE, ASPIRATED, TENSE/, and the implementation of these selected features.
著者
塚本 友康 清水 愛 山本 敦 小玉 修嗣 上茶谷 若 井上 嘉則
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.58-64, 2010
被引用文献数
1

夾雑成分の多い試料から親水性農薬を簡便かつ迅速に測定するために,陰イオン交換基と長鎖疎水基を併せ持つ新規逆相陰イオン交換型(RP-SAX) 固相抽出剤を合成した.RP-SAX固相抽出剤は,グリシジルメタクリレート,グリセリンジメタクリレート,ステアリルメタクリレートを懸濁重合によって合成し,陰イオン交換基としてジメチルエチルアミンを導入した.合成したRP-SAXをシリンジ型カートリッジに充填し,野菜抽出液中からのアセフェートの固相抽出により,その機能を評価した.野菜抽出液中のアセフェートは定量的にRP-SAXに吸着し,50% (v/v) メタノールで調製した 30 mmol/L リン酸三ナトリウム溶液 3 mL で溶出された.その溶出液をHPLC分析した.アセフェートの検出は紫外可視光検出器で行った.アセフェートは 5 mg/L となるように野菜抽出液に添加した.測定の結果,野菜抽出液中からのアセフェート回収率は77~100% であった.
著者
鈴木 雅之 黒岩 龍 印南 圭祐 小林 俊平 清水 信哉 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.3, pp.644-654, 2013-03-01

日本語テキスト音声合成において,任意の入力テキストに対し正しいアクセントを推定することは,自然な合成音声を得るために不可欠である.日本語は,単語が文中で発声されると,アクセントが前後の文脈に応じて変化する,アクセント結合と呼ばれる現象が発生する.本研究では,この日本語のアクセント結合を統計的に自動推定する課題に取り組む.まず本研究の遂行に必要な,文発声時のアクセント情報がラベル付けされた文章データベースを作成した.ここでは6334文の日本語文セットを対象に,日本語東京方言話者の作業者一名が,アクセント句境界,文中の単語アクセント型のラベリングを行った.そしてこのデータベースを利用し,条件付き確率場を用いた日本語東京方言のアクセント句境界及び文中の単語アクセント型推定手法を提案する.アクセント句単位でアクセント結合自動推定の正答率を調べたところ,規則処理(87.48%)と比較して,提案手法(94.66%)はより高精度にアクセント結合を推定できることが示された.更に規則処理によるアクセント結合処理を用いた合成音声と,提案によるアクセント結合処理を用いた合成音声とを,聴取実験により比較したところ,提案手法は合成音声の自然性を有意に向上させられることが分かった.
著者
坂井 陽一 越智 雄一郎 坪井 美由紀 門田 立 清水 則雄 小路 淳 松本 一範 馬淵 浩司 国吉 久人 大塚 攻#橋本 博明
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.7-20, 2010

瀬戸内海安芸灘に位置する大崎上島の沿岸魚類相について,餌釣りと潜水観察による調査を実施した。ガラモ場の存在する桟橋を中心に調査定点を島の南部北部それぞれに設定し,オキアミ類とゴカイ類を餅に約10名が1時間釣りを行う作業を2007年5月から2008年3月まで隔月で実施し,出現魚類の季節変化を検討した。また,2007年5月から7月にかけて,屋代島から竹原までの安芸灘広域に9ゾーン26調査点を設け,同様の調査を実施し,出現魚類の水域ゾーン間の相違を検討した。本調査により総計29科63魚種を記録した。そのうち高水温期にのみ出現する南方系魚種は4種のみであった。記録した魚種の76%(48種)は伊予灘で記録されているものであった。一方,宇和海での魚類相データとの魚種共通率は30%前後に留まり, 安芸灘を含む伊予灘以北の水域が生物地理学的に中間温帯区(西村, 1981)と定義されていることの妥当性が裏付けられた。大崎上島において周年および冬期を除き常時記録されたのは,カサゴ,メバル,ハオコゼ,クジメ,アサヒアナハゼ,マダイ,ウミタナゴ,スズメダイ,メジナ,コブダイ,ホシササノハベラ,キュウセン,ホンベラ,クラカケトラギス,ホシノハゼ, イトヒキハゼ,ヒガンフグ,コモンフグであった。これら18魚種の多くは安芸灘広域調査においても広く出現が認められ,安芸灘の浅海魚類群集の基本構成種と考えられた。ホシササノハベラは愛媛県中島周辺水域での出現頻度が極めて高く,同様の安芸灘における主要な個体群が安芸灘南西エリアに存在する可能性が示唆された。また,過去に瀬戸内海での記録のないホシノハゼが安芸灘広くに確認され,急速に分布拡大を進めていることが示唆された。
著者
清水 建美 近田 文弘 山本 雅道
出版者
信州大学環境問題研究教育懇談会
雑誌
信州大学環境科学論集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-88, 1985-03-31

This study was supported by the Grant in Aid for Scientific Research of the Nissan Science Promotion Foundation, No. 831-15. A method of environmental monitoring based upon the evaluation of several ecological and geographical characteristics of the components of any local floras was discussed. The characteristics adopted for this purpose are degree of tolerance to the sunshine, size of distribution area,h abit and habitat. In each category,a point was given to every floristic components from the viewpoint of nature conservation, viz. either one of 1 to 5. The frequency distribution of the point in each category and the sum of the points in each category were used as indicators of the environmental naturalness.
著者
古賀 由紀夫 紺野 章子 井川 喜裕 清水 晃
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.61-62, 1993-09-27
被引用文献数
1

危険区域への接近・侵入などの不審動作を画像処理技術を用いて監視する際,不審動作の有無のみの警報出力では,環境の変動や小動物等による誤報の恐れがある.本報告では,検出対象となる物体の形状,及び,動作の各特徴量をファジィ集合と考えて各特徴量のメンバシップ関数を定義し,これらを演算して得らられたファジィ類似度の値,すなわち,形状と動作を組み合わせて得られた値に基づき不審動作を検出し,警報を段階的に出力する方式を提案する.
著者
田村 宏 名和 厳 清水 憲政 柳 良美 玉木 彰 兪 陽子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.80-85, 2017-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
11

【背景】高齢期の誤嚥性肺炎患者に対する呼吸管理において,排痰援助は効果的であるという報告は散見されるが排痰援助を主体に看護師と協働したものについては限定される.本研究では看護師の意識調査を基に排痰援助の共有化を図り,包括的アプローチの有用性を明らかにすることを目的とした.【方法】高齢期の誤嚥性肺炎患者を対象に通常の看護ケアを実施した群85名(対照群)と理学療法士より排痰援助の共有化を図り看護ケアに導入した群70名(介入群)の在院日数を比較検討した.また排痰援助の共有化を明らかにするため介入群の活動前後に病棟看護師に対して意識調査を実施した.【結果】在院日数は対照群に比して介入群の方が有意に短縮した.意識調査では介入群に有意な理解度の向上を認めた.【結論】高齢期の誤嚥性肺炎に対する排痰援助は看護師と協働して実践することで治療効果の向上が期待される重要な包括的アプローチであることが示唆された.
著者
清水 俊
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
no.1, pp.146-156, 2006-03

本稿では、ハンス・ヨナスの『責任という原理』において、ヨナスが責任をどのようなものとして捉え、そして私たちが何をしなければならないと考えていたかを明らかにする。そのためにまずヨナスの形而上学的な論理を明らかにし、その後に今日の科学技術文明において求められる責任原理による倫理学の必要性について検討する。
著者
清水 直子 田代 雅文 須加原 一博
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.138-141, 1998-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
8

異型狭心症の治療中に, 腹痛や腹部膨満などイレウス症状を繰り返し, 腹部症状が狭心症発作を誘発する症例を経験した. 持続硬膜外ブロックによって腹痛や腹部膨満などのイレウス症状はもちろん, 狭心症症状も著明に改善した. しかし, 硬膜外注入を停止するとイレウス症状の増悪だけでなく狭心症発作が頻発するため, 2カ月以上にわたって持続硬膜外ブロックによる管理を必要とした. 入院が長期にわたるため, 外泊および外来通院による管理を余儀なくされた. 硬膜外カテーテルの長期留置による効果の減少, 注入時の背部痛などが生じ, カテーテルを抜去せざるをえなくなった. 保存的治療にて症状が改善せず, 最終的に手術が施行された.
著者
清水 幸丸 鈴木 利明 松崎 健 森 健次朗
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.64, no.625, pp.2844-2851, 1998

Sport science progresses step by step in the world. The paper describes, the first, the relationships between fluid drag for a model of woman swimmer and the flow around it. The flow around the model swimmer is very complicated, and includes, for example, wave, some kinds of vortices, hydraulic jumping and so on. The complicated flows are visualized by the surface tufts method and so on. Second, the possibility of the reduction of fluid drag for a woman athlete swimming suit is challenged. The boundary layer control is applied to reduce the fluid drag. The separation occurs around the breast of a woman swimmer. The separation can be suppressed by the boundary layer control. Many beads are distributed on the breast area of a woman swimming suit. As the result, it is found that the fluid drag for the model swimmer can be reduced in a range of 1.5%∼2% by the suit with the boundary layer control, which is carried out by many beads.
著者
豊島 由樹子 鶴田 恵子 長峰 伸治 熊澤 武志 鈴木 知代 酒井 昌子 樫原 理恵 野崎 玲子 黒野 智子 宮谷 恵 小平 朋江 藤浪 千種 清水 隆裕 藤本 栄子
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-10, 2019-03-31

本稿は、本学看護学部の2019 年度教育課程改定における活動内容の概要を記した。2012 年に教育課程変更を行って5年が経過したことや、教育職員免許法の改正により養護教諭課程の再課程認定に伴い、2019 年度に向けて看護学部教育課程の改定を行うことになった。2017 年度からカリキュラム検討委員会を中心に教育課程の検討を行い、2年間に渡って教育課程改定に向けて活動した内容をまとめた。2019 年度新教育課程としては、地域包括ケアシステムの推進に基づく社会の変遷にあわせた教育課程へと発展させるための学修内容の追加、本学の強みである充実した実習環境をもとに行われている臨地看護学実習を通して「生命の尊厳と隣人愛」に基づく教育理念を継続的に意識づけられるような教育課程を策定することができた。指定規則改正に伴う次の教育課程の改定に向けて、今回のプロセスが参考となることを期待する。
著者
松添 弘樹 七星 雅一 角谷 誠 大西 祥男 清水 宏紀 畑澤 圭子 中村 浩彰 熊谷 寛之 辻 隆之 井上 通彦 則定 加津子 高見 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.54-60, 2014

症例1 : 30歳代, 女性. アルコール依存症, 神経性食思不振症にて精神科外来加療中であったが1 年前より通院を中断していた. 2012年5 月下旬の夕食後, 突然の痙攣様発作で救急要請. 救急隊到着時, 心室細動波形で心肺蘇生を開始, 合計3 回の電気的除細動が施行され当院搬入となった. び漫性左室壁運動低下を認め, 血清カリウム2.2mEq/L, 血清リン1.1mg/dLと電解質異常を認めていた. 入院後電解質補正を行い不整脈は消失したが, 低酸素脳症のため意識レベルの改善なく経過した. 症例2 : 40歳代, 男性. 2012年5 月下旬より下肢筋力低下, 起立困難から脳梗塞を疑われ近医で頭部精査入院となったが, 明らかな脳神経疾患は認めなかった. 前医第2 病日の朝食後, 突然心室細動が出現し心肺蘇生が施行されるも, 難治性心室頻拍となり某院救急センターへ搬送. 冠動脈造影にて有意狭窄はなかったが, 薬剤的, 電気的にもコントロール困難で経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 挿入下に当院に紹介搬送となった. 当院では多形性心室頻拍 (torsades de pointes ; TdP) を認め, び漫性に左室壁運動が低下しており, 血清カリウム : 1.6mEq/L, 血清リン : 1.6mg/dLと電解質異常を認めた. 入院後電解質補正によりTdPは消失, PCPS抜去にいたるも低酸素脳症から意識障害が遷延し第10病日に死亡退院となった. 両症例ともアルコール依存症を背景に持ち, カロリー摂取後の致死的不整脈出現からrefeeding症候群の関与が疑われた. 慢性低栄養患者に発症した若年性心肺停止患者ではrefeeding症候群の可能性を常に考慮する必要があると考えられた.