著者
加藤 松三 清水 弘子 久松 完 小野崎 隆 谷川 奈津 池田 廣 市村 一雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.385-387, 2002-05-15
被引用文献数
2 19

カンパニュラメジウム切り花の受粉花と未受粉花の老化とエチレンとの関係を調べた.カンパニュラの小花の老化はエチレン処理により促進された.受粉により花弁の老化は著しく促進されたが, 柱頭の圧砕ならびに柱頭を含む花柱の除去は老化を促進しなかった.未受粉花では小花全体, 花弁および雌ずいのエチレン生成量は非常に低い値で推移したが, 受粉によりこれらの器官からのエチレン生成量は著しく増大した.エチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩処理は未受粉花の老化を著しく抑制した.以上の結果より, カンパニュラメジウムの花はエチレンに対する感受性が高く, 受粉はエチレン生成を増加させ, 花弁の老化を促進するが, 未受粉花では老化に対するエチレンの関与は少ないと考えられた.
著者
藤腹 明子 得丸 定子 清水 茂雄 田宮 仁
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的としては、まず日本的「いのち」教育の必要性と意義、さらにはその教育の在り方について、仏教を基調として論拠をもって明確にすることであった。そのために、日本における「いのち」教育の歴史的な系譜の整理と確認、あるいは欧米のみならずアジア各国の義務教育レベルでの実情を把握し、その上で、幼児、義務、専門、生涯等の各教育段階に即したカリキュラム、テキスト、教材等を、指導時期・場所(媒体)・方法論と併せて作成することを当初の目的とした。研究分担者の田宮や得丸らが粗織した「新潟大・上越教育大 いのちの教育を考える会」で、13年度に「いのち教育実践のための研修講座」を上越教育大で開催し、学校教育現場における「いのち教育」の実態や問題点、教員の抱えているニーズを把握することができた。また、医学や看護学教育に携わる教員、仏教者、ビハーラ僧、患者や一般の方から「いのち教育」に対する期待やニーズ等を知り得たことは、今後の研究に向けての課題や示唆となった。3年間の研究を振り返ってみると、当初の目的をすべて果たすまでには至らなかった。しかし、当初の目的であった、本研究の成果を形にするということでは、上記の公開講座の企画・実施、さらには学校教育における小学生高学年向けの「いのち教育」の教材作成等について、それなりの成果を得たのではないかと考えている。今後は、本研究を通して知り得た「いのち教育」に関する知識・情報・技術・教育方法等を、研究分担者それぞれが、看護教育、学校教育の場において活用していくとともに、今後は、家庭や社会における「いのち教育」のあり方や必要性の検討についても取り組んでいきたいと考えている。
著者
山崎 哲 高本 正樹 細井 賢三 山崎 均 新井 悟司 清水 和義
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.66, no.642, pp.619-626, 2000-02-25
参考文献数
12

The partial flow dilution method is one of the typical measurement methods for particulate matter emission from diesel engines. In this method, exhaust gas at a transient flow rate should be transferred to a dilution tunnel at a constant ratio of exhaust gas. The present partial flow dilution method is used under steady-state engine operating conditions in lieu of direct flow rate measurement of exhaust gas. A more practical control of exhaust emission is, however, required world widely; therefore development of an exhaust gas flowmeter is indispensable in the partial flow dilution method for transient engine operating conditions. An ultrasonic exhaust gas flowmeter has been developed and been demonstrated to be capable of measuring the exhaust gas flow rate with sufficient accuracy.
著者
遠 征 清水 基夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.85-95, 2007-10-10

100年単位の長期間における将来の中核的エネルギー源と想定される太陽光発電方式に関し、グローバルなエネルギーの発生と輸送のトータル・システムについて工学的開発プログラムの視点から考察を行った。屋上設置型などの現状の地域分散型太陽光発電方式は、発電規模と発電可能時間の面で能力は限定的で、その役割は補完的である。将来、太陽光を中核的な一次エネルギー源として使用するためには、世界各地に設置した大規模な基幹的太陽光発電施設とグローバルな超電導ケーブル網の連携運用が必要である。本研究では三つの主要な消費地(中国、米国、EU)と5つの基幹太陽光発電基地を結ぶグローバル電力ネットワークの原型的モデルについて考察し、必要となるシステムへの要求を検討した。
著者
足立 明 山本 太郎 内山田 康 加藤 剛 井上 昭洋 清水 和裕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、非西欧世界における「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容を、保健医療に関わる開発現象を中心に検討することであった。そのため、これまでの公衆衛生の社会史、文化史の成果を整理し、また各研究者の蓄積してきた諸社会の民族誌的・歴史的経験をもとにして、保健医療の導入と「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容に関する分析枠組みの検討・整理を行おうとしたのである。平成11年度は、西欧世界を中心とした保健医療の導入とその社会文化的影響に関する既存の文献を収集し、それらを分担して検討した。その主な内容は、上下水道の導入に関する社会文化的影響、保健医療の制度化と宗教の世俗化、保健医療の導入と疾病傾向の変容、キリスト教宣教師と「清潔」「衛生」概念であった。これにたいして、平成12年度は、各自の蓄積してきた諸社会の資料を整理した。その結果分かってきたことの一つは、20世紀初頭の植民地下で西欧の健康概念と西欧的核家族概念が結びつき、社会変容に寄与する可能性である。また、このようなテーマで研究する上で、新しい研究視角の議論も行い、人、モノ、言葉のネットワークをいかに把握するかという方法論的検討も行った。もっとも、現地調査を前提としていないこの研究では、資料的に限界があり、その意味で、本研究は今後の海外学術調査の予備的な作業という性格が強いものとなった。今後は、さらなる研究に向けた体制の立て直しを計る予定である。
著者
白井 汪芳 宮田 清蔵 東原 秀和 八森 章 鳥海 浩一郎 梶原 莞爾 清水 義雄 白井 汪芳 中沢 賢
出版者
信州大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度から5年間の先進繊維技術科学に関する研究拠点形成について、研究業績、拠点形成、国際ネットワーク形成等についてまとめ、21世紀COE先進ファイバー工学研究教育拠点への移行を進めた。研究業績面では、8班による研究により、多くの研究論文、特許、事業化を行い、このような基礎研究がナノファイバーテクノロジーの開発、ハイパフォーマンス繊維の開発、新バイオファイバーの開発、オプトエレクトロニクス繊維およびデバイス化技術、環境・ヘルスケア機能繊維開発、特殊機能系、不織布およびそれらの生産システム開発、繊維生産ロボティクス、感性産業要素技術開発など新しい繊維総合科学技術に向けての実績を得た。本COE研究では、萌芽・基礎研究、応用研究から事業化・起業化へ向けての産学連携プロジェクト研究までを行ってきたが、開発研究を行う産学連携拠点としては研究交流促進法の全国で2例目になる、アサマ・リサーチエクステンションセンター(AREC)をキャンパス内に設置し、平成13年2月より稼動させ、5テーマの開発研究に着手した。さらに、国際ネットワークの形成としては、平成14年度は11月に第2回先端繊維上田会議、第2回アジア若手繊維科学技術会議、第1回日米欧3極会議を上田市内のホテルおよび信州大学繊維学部内で開催した。8月にはアジア繊維学会発会式を韓国大邱市嶺南大学で開催し、本拠点が事務局となることを決定した。
著者
清水 唯一朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では戦前日本の二大政党制下における政官関係の研究をベースに、現代日本で現出しつつある戦前日本の二大政党制下における政官関係との比較分析を行った。特に2009年の政権交代以降進行しつつある政治主導と公務員制度改革について、政権交代と政界再編、官僚の政治任用と党派化の問題から現代に有効な知見を得ることができた。それらの成果については『法学研究』などの学会誌をはじめ『朝日新聞』『WEDGE』など一般紙に発表し、現在、書籍としてまとめるべく作業を進めている。
著者
湯山 賢一 西山 厚 鈴木 喜博 岩田 茂樹 内藤 栄 稲本 泰生 吉澤 悟 宮崎 幹子 谷口 耕生 野尻 忠 研清水 健 岩戸 晶子 斎木 涼子 北澤 菜月 永井 洋之 中島 博 有賀 祥隆 前園 実知雄 東野 治之 根立 研介 藤岡 穣 高橋 照彦 山崎 隆之 梶谷 亮治 杉本 一樹 成瀬 正和 尾形 充彦 西川 明彦 森實 久美子 原 瑛莉子
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「奈良朝仏教美術の主要作例、もしくはその国際性を考える上で重要な周辺作例の中から対象とする文化財を選定し、それらに関する基礎資料を学界の共有財産として提供する」という目的に沿って調査研究を行い、22年度末に5部構成・2分冊からなる研究成果報告書を刊行した。薬師寺に伝来した藤田美術館所蔵大般若経(魚養経)全387巻の撮影及び書誌的データの集成、蛍光X線分析による香取神宮所蔵海獣葡萄鏡や東大寺金堂鎮壇具の成分分析を通した制作地の特定などが、代表的な成果である。
著者
米倉 誠一郎 島本 実 崔 裕眞 宮崎 晋生 平尾 毅 川合 一央 星野 雄介 清水 洋
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトは、日本企業の製品開発における外部の経営資源の活用を考察することを目的としたものであった。特に、近年になり外部の経営資源を活用した価値づくりは、「オープン・イノベーション」として大きな注目をあつめるようになった。本研究プロジェクトではオープン・イノベーションを中心として研究を進め、日本企業の課題を分析してきた。より具体的には異なる企業間のコラボレーションを上手く進めるための組織体制や、外部の経営資源を活用する上での戦略などを議論してきた。それらの一部は『オープン・イノベーションのマネジメント』として2015年に出版された。
著者
渡部 幹 山本 洋紀 清水 和巳 番 浩志 山本 洋紀 清水 和巳
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

制度の維持と変容を司る心理変数について、それらがどのような役割を果たしているか、そしてそれが制度とどのように関係しているかについて、3つの実験シリーズを行った。それぞれ、公共財における懲罰行動の分類とその行動に対する評価、他者の信頼性を判断する際の脳の賦活動、公正分配の規定要因、についての研究を行った。その結果、交換ネットワークの流動性や懲罰についての共有理解がそれらに影響を及ぼし、制度の生成基盤になる可能性が示された。
著者
菅原 陽心 溝口 由己 河村 哲二 清水 敦 苑 志佳 王 東明 WANG Dongming 植村 高久 横内 正雄 竹野内 真樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,中国における市場経済化の進展過程を市場経済の多様性という視角から分析し,中国型市場経済を類型として明らかにすることを目的として、企業システム,経済政策,金融改革の三つの側面から実証分析を行った。企業システム分析では,国有企業,郷鎮企業,外資系企業の実証分析を行い,中国の企業システムあっては,欧米型のそれとは異なって,中国社会に基底的なネットワーク関係が軸に据えられたものであることが明確になった。経済政策の分析ではWTO加盟等この間の環境変化の中で、経済政策がどのように変化したのかをヒアリングを中心に調査し,政府・党の役割は非常に大きいものの,その役割を間接的なものにしていくという方向で改革政策が進められていることが明確になった。金融改革の分析は,ネットワークを軸にした中国型市場経済の中で,金融制度改革が,欧米流の個人の自由な取引に基づいた金融市場の構築という方向で進展しているということを踏まえ,中国型ネットワークと欧米型「市場」のせめぎ合い,相互適応・融合という視角から分析を行ったが、国有企業改革がはらむ問題等から、証券市場の整備が順調ではないこと、また、国家資産の管理などにも種々の問題が生じていることが明確になった。本研究は実証的な成果を前提にして、社会主義市場経済の類型化を図ることを最終的な目標としてきた。しかし、実証分析の深化を図るとともに、現在の状況が大きな変化の途上にあるということ、また、市場経済化の進展は地域によって様々異なった様相を呈していることが明確になった。そこで、全体的な類型化としては、政府・党によるマクロ・ミクロ両面から支えられた市場経済という極めて抽象度の高いものに留まらざるをえず、より具体的なモデル化は、調査地域の違いに応じた類型化、ならびに、今後の状況の変化を織り込むことによって可能であることが明確になった。
著者
清水 裕子
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-46, 2006-03

わが国は国土の70%が森林に覆われ,その40%が人工林であるが,その多くは昭和35年ごろの拡大造林期によって造林された。しかし,昭和40年代後半からの林業の低迷により,国内村の供給低迷が恒常化し,広大な人工林で間伐時期を超過した放置林分の増加が問題となって現在に至る。一方,1970年代以降,森林の多目的利用に対する関心が高まっている。中でも森林の保健・休養利用であるキャンプやエコツーリズムのようなアウトドア・レクリエーション利用や,自然観察,林間学校のような環境教育など,現代の多様な価値観に伴った多様な需要が増加している。こうした需要に対応できる,魅力的で風致を感じる自然的要素の濃い森林を創出する事は急務であるといえる。 このような森林の風致向上を目的とした施業方法を「風致施業」という。現在,放置人工林を風致の感じられる森林へと改良向上する技術が必要とされている。「風致施業」は明治時代の林学導入と共にわが国に導入された「森林美学」から端を発し,昭和10年前後までには保健休養・風景維持のための施業方法としてその定義が確立し,研究がなされたが,第二次世界大戦によって中断された。戦後復興期の森林は経済復興の基礎資材生産の場として位置付けられたが,1970年代頃からようやく森林の風致的取扱いの研究が社会の要求にこたえる形で再開された。しかし,長い間の研究の中断や社会のニーズの変容で森林を取り扱う際に,「風致施業」は現在,さまざまな意味として捉えられており,その明確な目的の定義と方法論としての技術の体系的な展開は困難を極める。さらに森林は国土の被覆として,林業とレクリエーションなどの多目的利用に二分されるものではなく,両立しなくてはならないことが大きな課題である。 本研究では,この「風致施業」を戦前の風致研究に立ち返り,かつ現代の社会状況に合わせて定義づけをし直し,「風致施業」の継承と技術的な展開の可能性を考察することを目的とした。特に技術的な展開可能性について,林業との両立の課題から経済性の高いヒノキ林を取り上げることとした。 本論文の構成は5章からなる。 第1章では戦前を中心に現代に至るまでの「風致施業」の系譜を考察すると共に,現在問題であり,かつ地方再生の可能性を秘める山麓部の放置人工林,特に放置に関わる問題の深刻なヒノキ人工林に焦点を当て,その具体的な風致施業のあり方を考察した結果,森林風致改良の当面の目標として,強度の間伐による針広混交不斉多段林である択伐林型造成が適すると結論付けた。 第2章では,信州大学構内演習林で実際に行われた,2通りの間伐方法の違いによる,放置ヒノキ人工林から針広混交不斉多段林への変換を試みた結果,かつて田村や今田などが提唱したような,不均一な林木配置を作り出すポステル間伐に類似した間伐方法に効果があった事が明らかになった。 第3章では,ヒノキ人工林の構成単位としての単木樹形を把握するため,かつ実際の選本に必要な寺崎式樹型級区分を定量化するための基準を定量化するために,ヒノキの単木自然樹形の稚樹から成木に至るまでの経年変化とその樹形形成要因を調査・分析した。その結果,ヒノキの樹冠形の変化は1次回帰式に近似し,成長と共にうちわ型から円錐形へ,鈍頭型から尖頭型の樹冠を形成し,その変化には樹幹の外樹皮形成が関与することが明らかになった。 第4章では,前述した間伐方法の実際の現場での実行を視野に入れ,異なる林齢の放置ヒノキ人工林に対して,樹型級による選木基準を考察した。その結果,ヒノキ林は相当な過密状態でも隣接木との種内競争は樹形に反映しないことが明らかになり,その結果,単木的な選木ではなく,機械的に大きさの異なる樹冠ギャップを造ることで目標の林型を創出できることが明らかになった。 第5章では,以上の結果をまとめた。放置人工林に対する「風致施業」は,森林の経時間的変化を楽しむことの可能な自然的な森林と定義づけられ,技術的にもその効果的な創出は,可能であった。ところで,「風致施業」の最終目標林型である針広混交の不斉多段林は択伐林型として,林学では集約的技術と共に,林地の健全性やその森林機能向上にも寄与することは,戦前から言及されている。しかし,戦後は経済的林業の下で択伐方式は技術的に認知されていなかったが,70年代以降の一斉皆伐方式の造林に対する批判などから現在,再認識されつつある。このことからも,放置人工林に対する「風致施業」は,保健休養などの利用のみならず,将来的には山麓の広い範囲で林業と両立して適用される可能性のある技術であると結論付けた。
著者
太田 安彦 清水 淳三 小田 誠 林 義信 OSARI Ayumi 梶田 剛司 渡辺 洋宇
出版者
The Journal of the Japanese Association for Chest Surgery = 日本呼吸器外科学会雑誌
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.539-544, 1996-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
5

最近われわれは, 稀な胸腺腫瘍の2例を経験した.症例1は72歳, 女性の胸腺に発生した悪性黒色腫であった.悪性黒色腫の胸腺発生例は本邦報告史上2例を認めるのみであり, 本例は第3例目に相当した.腫瘍は6.5×5.5×3.5cm大の被包化された充実性腫瘍であった.周囲組織への浸潤はなく, 周囲のリンパ節に転移はなかった.原発巣不明黒色腫の転移の可能性は否定しきれないが, 胸腺原発を最も疑った.正常胸腺を含めて腫瘍を摘出した。術後5ヵ月を経て再発なく生存中である.症例2は21歳男性に発生した胸腺脂肪腫であり, 周囲の脂肪組織を含めて腫瘍を摘出した.摘出腫瘍の重量は390gであり, 重症筋無力症の合併はなかった.
著者
小林 聡 宮川 眞一 清水 明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌細胞に特異的に結合するペプチドが同定できれば、そのペプチドで抗癌剤を修飾し、癌組織により高濃度に、また非癌部組織により低濃度に抗癌剤を分布させ、効果を高めつつ副作用の低減を図ることが可能となる。当研究では、ファージライブラリーを用いたバイオパンニング法という方法で、肝細胞癌に特異的に結合するペプチドを同定した。同ペプチドを提示したファージ、ならびにビオチン修飾した同合成ペプチドを用いて、各種悪性腫瘍由来細胞株ならびに肝細胞癌手術切除標本において、その肝細胞癌結合性を確認した。