著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1-I_20, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
94
被引用文献数
3 3

建築家ヴィルヘルム・ベックマンが明治19年(1886)に立案した東京の都市計画(東京計画)は,国会議事堂の位置を,現在と同じ永田町の丘に示した初めての都市計画である.しかし,この事実は歴史に埋もれ,これまで研究の対象とされてこなかった.本研究は,国会議事堂の位置選定に主眼を置いて,ベックマンの東京計画を初めて詳細に論じ,主に次のような事実を明らかにした.1) 彼の議事堂の位置選定は,当時の政府の方針や新聞・雑誌の報道とは異なる,斬新なものであった,2) それは,彼の確固とした意思と見解,そして,東京の地形への確かな理解に基づくものであった,3) 議事堂の位置を永田町の丘としたことは,放射状道路網の線形設計をはじめ,彼の東京計画全体に支配的な影響を与えた.
著者
神谷 純広 清水 智治 園田 寛道 目片 英治 遠藤 善裕 三宅 亨 山口 剛 森 毅 仲 成幸 谷 徹
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.826-831, 2012 (Released:2013-08-25)
参考文献数
14

(症例)42歳女性,既往歴:23年前からうつ病,20年前にも針を誤飲.自殺企図にて3日前に5cmほどの縫針5本をプリンと一緒に飲んだという.排便時に肛門痛を自覚し当院を救急受診した.初診時,肛門部皮膚には異常は認めなかった.胸腹部X線写真にて上腹部に1本,下腹部に2本の陰影を認めた.腹部CTにて胃・上部および下部直腸内に陰影を確認でき,下部直腸では管腔外に脱出している可能性が示唆された.初診12時間後に肛門部右前方皮下に異物を触知し局所麻酔下に針を摘出した.胃内の針は内視鏡下に摘出した.上部直腸内に残存する針は2日後には自然排出を確認した.誤飲した針が肛門括約筋外から排泄された症例は極めて稀である.針のような臓器損傷の可能性が高い異物は,アプローチしやすい部位に存在する場合は積極的に摘出処置を行い,それ以外の部位では誤飲から日が浅ければ経過観察することも可能であると考えられた.
著者
尼崎 光洋 森 和代 清水 安夫
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-14, 2011 (Released:2012-11-17)
参考文献数
53
被引用文献数
1

目的:本研究の目的は,性感染症の予防行動意図尺度(Preventive Behavioral Intention Scale for Sexually Transmitted Infections:PBIS)を開発することである.方法:調査対象者は,第1調査では,大学生335名(男性177名,女性158名)であり,第2調査では,大学生422名(男性136名,女性286名)であった.調査内容は,安全な性行動に関する事柄を測定するSexual Risks Scaleから,性感染症の予防に対する行動意図に関する7項目を用いた.また,性感染症の予防行動として,性交時のコンドームの使用行動について回答を求めた.分析方法は,確認的因子分析,ステップワイズ因子分析,多母集団同時分析,単回帰分析を用い,Cronbachのα係数及びΩ係数を算出した.結果:PBISは1因子5項目であることが確認され,信頼性(α=0.829,Ω=0.829)と構成概念妥当性(GFI=0.996,AGFI=0.985,CFI=1.000,RMSEA=0.012)が確認された.また,PBISは.男女間において,因子構造と因子負荷量,観測変数の誤差分散が変わらないことが示された.さらに,単回帰分析の結果,PBISは,コンドームの使用行動を説明することが可能であることが示された(R2=0.321).結論:本研究で開発したPBISは,性感染症の予防に対する行動意図を測定する尺度であることから,性交や性的接触などの性行動を経験した大学生だけでなく,性行動を経験していない大学生をも対象とした性感染症の予防教育の効果を評価する指標として用いることが可能な尺度であると示唆された.
著者
清水 潮
出版者
Japanese Society of Food Microbiology
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.87-94, 2002-11-30 (Released:2010-07-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1
著者
清水 弘明 林田 滋 我妻 永利
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.108, no.12, pp.1203-1208, 1988-12-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

グアイアズレンスルホン酸ナトリウムsodium 1, 4-dimethyl-7-isopropylazulene-3-sulfonate (I) は抗炎症, 抗アレルギー作用を有することから胃炎, 口内炎等の治療薬として使用されている. しかしながら, Iは熱光に対し不安定であり, 室内で保存すると徐々に退色, 分解してグアイアズレン (II) になることが報告されている (Chart 1).また, IはpH7.5-8.5附近の弱アルカリ性では安定であるが, pH5以下になると急激に分解することが知られている.これらIの水溶液中又は固体状態での分解反応及び安定化については種々の報告があるが, いずれも温湿度条件下による検討が主であり, 光照射条件下におけるIの分解反応や安定化についての詳細な報告は見あたらない.そこで著者らは, Iの光分解反応及びその安定化法を検討し, 錯体形成の観点から考察を加えた.
著者
上山 剛 吉賀 康裕 土居 正浩 吉田 雅昭 平塚 淳史 福田 昌和 加藤 孝佳 文本 朋子 松崎 益徳 清水 昭彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_88-S3_95, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
5

症例は54歳,女性.発作性上室性頻拍に対して心臓電気生理学的検査を施行した.逆伝導の最早期心房興奮部位は左側後壁であり,減衰特性は認めなかった.再現的な頻拍の誘発・停止が可能であり,正方向性房室回帰性頻拍と診断した.経大動脈的逆行アプローチにて施行したアブレーションでは離断に難渋し再伝導を繰り返した.14回目のアブレーションにより副伝導路は通電開始直後に離断され,以後の再伝導は認めなかった.イソプロテレノール負荷による再伝導も認めず,最終離断から60分以上経過した時点でATPによる評価を行った.ATP10mg急速静注により房室結節を介する逆伝導のブロック後に副伝導路を介する室房伝導の一過性出現を認めた.副伝導路の出現はATP投与時のみに認めるため,アブレーション困難と判断し,追加通電は施行せずに初回セッションを終了した.逆行性副伝導路は約1カ月後にインセサント型頻拍となって再発した.再セッションは経中隔弁上アプローチで行い副伝導路の恒久離断に成功した.
著者
清水 慶子
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

霊長類の生殖生理および配偶者選択におけるフェロモン作用やケミカルコミュニケーションについて調べた結果、チンパンジーの膣分泌物中のいくつかの物質が性皮の腫脹や月経周期と同期することが分かった。また、同所飼育のニホンザルにおいては、月経周期の同調が見られることが分かった。ニホンザルでは、射精を伴う交尾行動は排卵周辺期に限局されること、妊娠したメスではその後も交尾行動が見られることが分かった。さらに、交尾行動が観察された時は、糞中および尿中estrogen代謝産物の値が高いことが確認された。
著者
清水 克彦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-20, 2002-11-29 (Released:2014-12-25)
被引用文献数
2

初等中等教育段階の算数・数学教育において電卓の活用が注目され推進されている。本稿では、算数・数学教育用に開発された諸電卓の機能をまとめ、その教育的可能性を指摘する。さらに、その活用の実際について、外国のカリキュラム・ドキュメント、国際調査の結果、日本の指導要領、教科書、算数・数学教育研究の点から検討し、日本での活用が遅れていることを同定した。さらに、活用の推進を遅らせている要因について、外的・内的の2面から指摘した。
著者
野寄 亜矢子 清水 佐知子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.850-860, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
46

目的:看護師の自己教育性尺度を開発する.方法:概念分析より抽出した看護師の自己教育性の属性より看護師の自己教育性尺度項目を作成し,内容妥当性を検討し尺度原案62項目からなる質問紙を作成した.300床以上の医療施設に勤務する看護師1,080名に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.結果:416名から回答が得られた.そのうち,259名を因子分析の対象とした.因子分析の結果,《自ら学ぶ力》《省察する力》《看護への興味と仕事の充実感》の3因子27項目が抽出された.尺度の信頼性の検討では,Cronbach’s α係数.945,再テスト法による級内相関係数.858であった.妥当性については,構成概念妥当性と基準関連妥当性で確認された.結論:看護師の自己教育性尺度を開発し,尺度の信頼性と妥当性が検証された.
著者
原田 晋 吉崎 仁胤 夏秋 優 清水 秀樹 福田 均 永井 宏 池田 哲哉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1279-1284, 2005-11-30 (Released:2017-02-10)

【目的】ムカデ刺傷後に全身性の蕁麻疹およびアナフィラキシー症状を呈し, かつムカデ毒のプリックテストが有意な陽性を示した事より, ムカデアレルギーと診断した3症例を経験した.さらに, 過去にムカデアレルギーとハチアレルギーとの関連性について論じた報告が認められたため, これらの症例に対してハチアレルギーに関する検討も加えた.【方法】3症例に対してハチ毒特異的IgEの測定を行い, うち1例ではハチ毒の皮内テストも施行した.またハチアレルギーと診断された別の3症例に対して, ムカデ毒のプリックテストを行った.【結果】ムカデアレルギーの3症例共にハチ毒の特異的IgEが陽性であり, 施行した1例ではハチ毒皮内テストも同様に陽性であった.しかし, ハチアレルギーの3症例ではムカデ毒のプリックテストは全例において陰性であった.【結語】以上より, ハチアレルギー患者のうちのごく一部でムカデアレルギーを包括するといった両者間の関係を疑った.ムカデアレルギーの報告は過去にはきわめて稀であるが, 現実的にはしばしば生じうる現象であると考えられる.また, ムカデアレルギー症例に対しては, 今後ハチアレルギーに関する検討をも加えていく事が必要であると考えた.
著者
森下 剛久 清水 鈴昭 井村 洋 岡本 昌隆 小野 芳孝 斉藤 稔 中村 康一 松井 俊和 重村 はるひ 井野 晶夫 江崎 幸治 平野 正美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.627-639, 1984 (Released:2009-01-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2

Pulmonary complications were studied in 213 patients with leukemia and lymphoma. The incidence of pulmonary lesions was 38.5% and diffuse changes were encountered twice more frequently than localized ones. Etiological diagnosis during life was difficult. In 38 out of 62 cases with diffuse lesions, their etiology was not determined. In 9 out of 28 cases with localized lesions their etiology was not clear. In some of these cases autopsy clarified their etiology.Among localized cases, infection, mainly of bacterial origin and infiltration of underlying diseases were two main etiologies. On the other hand, diffuse lung lesions were of various etiology; 29 infections (bacteria 8, fungus 9, virus 8, p.carinii 2), 11 tumor infiltrations, 11 interstitial pneumonia, 3 vascular origins. In these cases with diffuse lesions of different etiology, clinical findings such as fever, cough, dyspnea, low PO2, high LDH, increased CRP, and hypoalbuminemia were observed, but not helpful in differentiating the etiology. Eight out of 11 cases of interstitial pneumoonia occurred during or after tapering of glucocorticoid.The mortality rate was as high as 54.4% of all lung diseases. Retrospective studies on the chest X-ray pictures showed that diffuse ill-defined opacities or multilocated consolidations were associated with poor prognosis.The diagnostic value of transbronchoscopic lung biopsy and therapeutic implications of empirical glucocorticoid administration for etiologically undiagnosed lung lesions were also discussed.
著者
高取 千佳 村瀬 由伎 宮脇 勝 北村 淳一 清水 裕之
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.645-650, 2020-03-31 (Released:2020-06-09)
参考文献数
15

During the 20th Century, most part of Japanese paddy fields were transformed to productive efficient allotments by the “Agricultural Land Improvement Projects”. However, the rich biodiversity, which was maintained in traditional paddy field forms with nature-near water supply systems, has led to a loss. In this research, the methodology of sustainable paddy field management which is aimed at balancing “efficient paddy field management” and “ecosystem conservation” was proposed by conducting the following three points. The focused site was Asami district in Matsuzaka city. First, the paddy fields were classified into 3 types according to the introduction of the agricultural land improvement project. Secondly, the differences of biodiversity and labor productivity by farmers among the three types were clarified. Thirdly, the future paddy field management scenarios were proposed and examined by considering a compromise point in this trade-off relationship between biodiversity and labor productivity.
著者
近藤 しずき 清水(肖) 金忠
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.281-286, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3

プロバイオティクスによるコレステロール低下などの血中脂質改善作用に関しては, in vitro実験,動物実験およびヒト試験にて多数の報告があった.その作用機序としてコレステロールの菌体への吸着や脱抱合型胆汁酸との共沈による吸収抑制,ビフィズス菌や乳酸菌の持つ胆汁酸脱抱合酵素の作用による胆汁酸排泄促進および,腸管において産生される短鎖脂肪酸によるコレステロール合成抑制などが考えられている.ヒト試験において,特に高い胆汁酸脱抱合酵素活性を持つビフィズス菌や乳酸菌による改善作用が多く報告されている一方,一部の乳酸菌について効果は認められない報告も散見され,プロバイオティクスによる血中脂質改善効果について更なる検証が必要である.また,近年,腸内細菌叢と肥満や脂質代謝の関係についても急速に研究が進んでおり,今後の発展が注目される.
著者
長谷 康二 竹腰 隆男 藤井 彰 馬場 保昌 武本 憲重 加来 幸夫 清水 宏 小泉 浩一 尾形 悦郎 太田 博俊 西 満正 柳沢 昭夫 加藤 洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.252-255, 1993-06-18 (Released:2015-07-15)
参考文献数
17

生検で十二指腸球部の腺癌と診断し,切除標本に癌巣を認めなかった症例を経験したので報告する。症例は49歳男性。上部消化管X線検査で十二指腸球部後壁に小隆起性病変を認めた。内視鏡検査で同部に発赤調の約7mmの隆起性病変を認めた。生検では正常十二指腸上皮に囲まれ,粘膜内に限局した腺癌を認めた。第2,3回の内視鏡検査時には,病変は約3mmと縮小していた。外科的に縮小手術を施行した。切除標本では術前の点墨の肛門側に接して3mmの発赤した隆起性病変を認め,病理組織学的に連続的切片を作成して検討した。粘膜筋板の乱れ,線維化を伴うBrunner腺の過形成と再生上皮を認めるのみで,癌巣は認めず,生検により摘除されたと考えた。早期十二指腸癌は1991年までに122例123病変の報告があるが,生検で癌と診断し,切除標本で癌が消失していた報告は本例が1例目である。
著者
清水 誠治
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.606-612, 2021 (Released:2021-11-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

腸間膜静脈硬化症は右側結腸を中心に慢性静脈性虚血性変化をきたすまれな疾患である.内視鏡所見では特徴的な粘膜色調変化(青銅色~暗紫色),半月ひだの肥厚がみられ,潰瘍を認めることも多い.生検では粘膜固有層の膠原線維沈着がみられる.CT所見では腸管壁内外の静脈の線状ないし樹枝状石灰化と腸管壁肥厚が特徴的である.病因として山梔子を含む漢方薬の長期服用が関与することが明らかとなった.症状は腹痛,下痢が多いが無症状例も少なくない.病変が進行し通過障害が高度になると手術が必要になる場合があり,これまでに約20%の症例で手術が施行されている.山梔子を含む漢方薬服用が確認されれば中止により病変の改善とともに手術を回避できることが多い.炎症性発癌の可能性は低いと考えられているが,今後癌の合併も注視していく必要がある.